これまで見てきたように、2013 年に三重県の企業を対象に行った
37 許可の内容として①日本国内での輸出手続きの GMP 調査を受けた証明書、②台湾で の工場登録、③台湾での品目許可取得がそれぞれ必要である。
台 日産業連携 に関するア ンケート調 査結果と、 前項で述べ た具体 事 例 における連 携課題とは 似通ってい る。アンケ ート調査結 果でも 、 同県内企業は「パートナー探しが困難」(45.45%)、「海外進出に必要 な 人 材 の 不 足 」(35.06%)、「 言 葉 に対 応 す る 問 題 」( 27.27%)、「 投 資環境が不明」(22.08%)、「資金調達の問題」(15.58%)等が重要な 課題であった。しかし、「その他(わからない)」(29.87%)を答えて い る企業の割 合もかなり 高い。外国 語が対応で きる人材の 確保、 進 出 相手国の投 資情報不足 等の課題は かなり厳し い状態にあ ると見 ら れ る。それで も、上述の 事例をみる と、台日産 業連携政策 の推進 に よ り、台湾と 日本双方の 政府が的確 な支援を行 えば、中小 企業が 海 外 へ進出する 時の課題を 減少させる ことができ 、具体的事 例に見 ら れるように、成功に導くことは可能であろう。
同 県企業 が台 湾企業 と連 携する 時に 具体的 には どのよ うな サポー トが必要であろうか。表 2 によると、同県において、数の上で圧倒 的 に多い中小 企業にとっ て、海外進 出時のパー トナー探し 、外国 語 対 応人材の確 保、進出相 手国の投資 情報、必要 な調達資金 等につ い て 重い課題が ある。その ため、台湾 における連 携可能性が 高いパ ー ト ナー、海外 投資奨励政 策、投資環 境情報、対 応できる人 材等に つ い て、日本政 府や地方自 治体のサポ ートが必要 となる。こ れにつ い て は、ジェト ロ、地方治 自体におけ る海外投資 担当機関、 中小企 業 支 援機関、国 内銀行、台 湾の当地政 府機関等の 機関からの 支援に 対 する期待が大きい。この点で、同県と台湾で行っている「三角連携」
や ファシリテ ーターの活 用は、実効 性の高い方 策として評 価でき る のではないだろうか。
表 2 三重県企業と台湾企業と連携する時、必要なサポートと支援
いので、日台産業連携の発展が限られる」(5.19%)と答えた企業も あ ったが、お おむね、台 日産業連携 は台日双方 の産業に対 してイ ン セ ンティブが ある。ある いは双方の 政府が産業 連携誘致政 策を積 極 的 に推進すれ ば、両国の 産業連携‧交流は発展していくという意見 が 多かった。 しかし、台 湾の国内市 場は大きく ないので、 台日産 業 の 連携におい て、まず台 湾市場から スタートし 、その先に 他の国 の 市場を開拓していくというのが現実的な台日企業双方のWin-Win 戦 略であると見る向きもある。
図3 台湾と日本の産業提携‧交流の発展見込み―三重県
(注1)同表 1。
(注2)単位:%
(出典)林冠汝、前揭書『台中ECFA 締結後の台日産業提携の発展―台湾と三重県の産 業提携を中心にして―』、118~119 ページ。
七 おわりに
本稿は、「台日架け橋プロジェクト」実施以降の、台湾と三重県の 産 業連携に対 する影響、 背景と特色 、進捗状況 、具体的事 例、課 題 お よび発展の 見込み等に ついて、整 理、検討を 行った。日 本の地 方
自治体の中では、同県が先駆的な役割を果たしている。2012 年 7 月 に同県が台湾の TJPO と MOU を締結して以降、「産‧学‧官」の三 角 連携推進体 制を構築し 、ファシリ テーターと して活用可 能な組 織 と 強く連携し 、産業の海 外展開戦略 政策を支え てきた。そ の結果 、 台 湾と同県双 方の産業、 学術、文化 、観光分野 の連携‧交流が非常 に 盛んになっ ている。加 えて、同県 は、特に県 内の中小企 業の国 際 化 ‧グローバル化推進に関心を寄せており、県内の中小企業が台湾 企 業と連携で きるように 、産業連携 に対する政 策や支援体 制を構 築 し て、マッチ ングの機会 を創出して いる。そし て、県内の 中小企 業 も これに対応 し、台湾へ 進出し始め る企業が見 られる。さ らに、 共 同 開発した商 品も誕生し た。双方の 産業連携が 開始されて からの 時 間 が短いので 、成功例は 少ないが、 今後、進捗 状況を観察 し、成 功 と 失敗の要因 を分析し、 課題を見出 していくこ とは、筆者 の今後 の 重 要な仕事に なるであろ うし、多国 間産業連携 の在り方の 研究に 、 一石を投じることになるであろう。
上 述の分 析か ら、今 後海 外、特 にア ジアへ 進出 する日 本の 中小企 業が増えることが予想される。ところが、日本の中小企業の多くは、
ア ジア市場を 開拓する能 力が不足し ている。ま た、中小企 業間は 大 企業間よりも連携が必要とされる38。そのため、縷々述べてきたよう に 、台湾企業 のグローバ ル戦略への 積極性と国 際経営に関 するノ ウ ハウの高さを活用した、台湾企業とのアライアンスが戦略の 1 つと なると考える39。台湾政府が推進した「台日架け橋プロジェクト」は、
台 日双方の産 業‧企業に対してインセンティブがあり、また、台湾
38 注 7、前掲論文。
39 黎立仁「台日經濟產業互動之回顧與展望」『全球政治評論』第 40 期号(國立中興大 學國際政治研究所、2012 年 10 月)、40~42 ページ。
企 業と日本企 業は、連携 すれば双方 にとってメ リットがあ るので 、 今後とも、台日産業連携が発展していく可能性が高い。したがって、
台 日双方の政 府が今まで 以上に積極 的に支援措 置とマッチ ングの 機 会を 提供できる かどうかが 台日産業連 携の成功の 鍵になるで あろう 。 こ れから、台 湾と日本の 地方自治体 が、連携‧交流を推進するため に は、同県は この「産‧学‧官」の三角連携が、台湾政府と他の地 方自 治体との連 携‧交流のモデルになることは先述のとおりである。
ま た、今 回は 、同県 から の視点 で、 産業連 携政 策や企 業誘 致政策 を 検討したが 、最後に同 県の課題に 若干ふれて おきたい。 改善点 と し ては、①三重県における台日産業連携の体制強化、②台湾におけ る 「駐台商務 協進連絡処 」やサポー トデスクの 設置、③台湾投資環 境 に関する情 報発信を強 化、④台日産業連携に対応できる人材の育 成 、⑤中国語や英語に対応できる人材の育成、⑥海外展開に対する 中 小企業支援 機関の機能 強化等が挙 げられる。 特に同県の 中小企 業 は 海外進出の ための経験 不足‧資源不足が、海外へ進出する場合の 障 害になって いる。海外 展開に対す る中小企業 支援機関の 体制を 強 化 し、中小企 業に対して 連携の可能 性が高いパ ートナー、 海外投 資 奨 励政策、投 資環境情報 、対応でき る人材等の 提供を推進 すべき で あ ろう。その ため、ジェ トロ、地方 治自体にお ける海外投 資担当 機 関 、中小企業 支援機関、 国内銀行等 機関からの 、中小企業 に対す る 支援が強く期待される。
そして、2010 年 6 月に台湾と中国が ECFA を締結し、貿易創造、
市 場拡大、投 資促進等の 効果がでて きているた め、近年、 台日間 の 対内外投資金額と件数が増加しつづけている40。しかし、2014 年の
40 林冠汝、前揭書『台中 ECFA 締結後の台日産業提携の発展―台湾と三重県の産業提 携を中心にして―』、111~116 ページ。
「ひまわり学生運動」以降、台湾と中国両岸は ECFA に関する「商 品貿易」、「サービス貿 易」、「貿易救済措置」、「紛争解決 」等の合意 が 中止されて おり、台湾 の対中国輸 出‧投資の拠点としての価値が な くなり、日 本企業の台 湾への進出 や産業連携 に与える影 響が注 目 さ れている。 しかしなが ら、今後も アジアへ進 出する日本 の中小 企 業が増えることが想定される中、折しも、ASEAN+3 や ASEAN 経 済共同体等の貿易自由協定が成立し、台日双方にとってASEAN が主 要 な貿易‧投資相手国となっている。台湾は地理的にちょうど東ア ジ アの中心に 位置してお り、東南ア ジアとの関 係も深く、 また、 台 湾 のグローバ ル戦略の積 極性と国際 経営に関す るノウハウ も充実 し て いる。日本 の中小企業 にとって中 国のみなら ず同地域で 国際経 営 を成功させるために、台湾企業とのアライアンスが 1 つの選択肢と な りつつある 。日本企業 が台湾企業 と連携し、 台湾企業の グロー バ ルなネットワークを活用すれば、中国市場以外のASEAN やその他の 国‧地域の市場を開拓できる可能性が高いと考えられる。
(寄 稿 :2016 年 5 月 17 日、採用:2016 年 8 月 3 日)