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第二次安倍内閣の対中ヘッジ政策:外的バランシ ング

自民党の政権公約では、日米同盟の防衛協力の強化を、中国の台 頭や 脅威を均衡 する外的バ ランシング 措置の核心 とみなすと ともに 、 インド、オーストラリア、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)諸 国 との安全保 障協力を推 進すると主 張している 。中国の急 速な軍 事

36 北村淳「効果は絶大、与那国島に配備される海洋防衛部隊東シナ海に「蓋」をして

人民解放軍海軍を牽制」2014 年 5 月 8 日、http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40621。米

ランド研究所は 2013 年に出した研究報告では、中国の「接近阻止・領域拒否」

(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)に対抗するため、第一列島線の島々に対艦ミサイ ルを配備するような構想を描いた。Terrence K. Kelly, “Anthony Atler, Todd Nichols, Lloyd Thrall, Employing Land-Based Anti-Ship Missiles in the Western Pacific,”

http://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/technical_reports/TR1300/TR1321/RAND_TR1 321.pdf.

37 「予算等の概要(平成 26 年度)」『防衛省・自衛隊』、http://www.mod.go.jp/j/yosan/

yosan.html。

的 拡大に直面 している日 本にとって は、アメリ カとの防衛 協力が 中 国 を均衡する 最優先課題 であり、ア メリカの対 日コミット メント を 明 確にしなが ら在日米軍 の抑止力を 増強するこ とは焦眉の 急でも あ る。しかし、相対的に国力の衰退が見え始めた米国は、「アジアへの 回 帰」や「リ バランス」 を主張する うえで、日 本をはじめ 同盟諸 国 に 今まで以上 の責任分担 を求める、 かつてニク ソン米政権 が唱え て い た「グアム ・ドクトリ ン」を想起 させたので ある。これ を背景 に 日本 を取り巻く アジア太平 洋地域の平 和と安全を 確保するた めには 、 日本は米国の負担や役割を分かち合うことが不可欠である。

1 要となる日米同盟の協力強化

2012 年 12 月衆議院選挙で勝利を収めた安倍は、オバマ(Barack Obama)米大統領との電話協議で、「日米同盟はわが国の外交安全保 障 の基軸。中 国の台頭で 安全保障が 厳しさを増 す中、さら に日米 同 盟を強化していきたい」と述べた38。同月 21 日、米議会が可決した

「2013 会計年度国防権限法案」は、「尖閣/釣魚台に日本の施政権が 及 ぶという米 国の認識が 第三国によ る一方的な 行動で変更 される こ とはない」との内容を明記し39、首相に返り咲いた安倍に強心剤を打 つものであった。その後、ケリー(John F. Kerry)国務長官とヘーゲ ル(Chuck Hagel)国防長官もそれぞれ尖閣/釣魚台を日米安保条約 第五条に適用すると明言したが、2014 年 5 月の時点で、野田内閣に

38 「安倍外交まずは安全運転 日米同盟テコ、対中韓の改善探る」『日本経済新聞』、

2012 年 12 月 19 日、http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1802D_Y2A211C1PP8000/、

同日アクセス。

39 「〈米国〉尖閣は日米安保の適用範囲 国防権限法案、上院可決」『每日新聞』、2012 12 月 22 日、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121222-00000053-mai-int、同日アク セス。

よる「国有化」政策以降、およそ280 隻の中国巡視船が延べ 80 日間 にわたって尖閣/釣魚台領海に入ってきていた40。それはオバマ政権 の 対中抑止が 効かず、日 米同盟の信 頼関係に揺 さぶりをか けた動 き と思われる。こうした状況下で、2014 年 4 月に訪日したオバマは、

安 倍との共同 記者会見で 米大統領と して初めて 尖閣/釣魚 台が日 米 安保条約第五条の適用の対象になると明言した41

アメリカは 言葉による コミットメ ントにとど まらず、中 国に抑 止 の 決意と実力 を見せるた めに動き出 した。日米 両国は中国 の活発 な 海 洋進出に備 える海洋戦 略を核心と する『日米 防衛協力の ための 指 針』の見直しを検討するため、日米外交・防衛課長級協議を2013 年 1 月 17 日に東京で開催した。それを受けて 10 月 3 日の日米「2+2」

会議では共同文書が発表され、両国が取り組むべきものとして、『指 針 』の見直し 、弾頭ミサ イル防衛能 力の拡大、 宇宙及びサ イバー 空 間 といった新 たな戦略的 領域におけ る協力の向 上、情報保 全及び 装 備取得に関する連携の強化、共同訓練・演習などが挙げられた42。ま た 、中国海軍 艦船が日本 海上自衛隊 護衛艦へ火 器管制レー ダーを 照 射 したことも あって、日 米両国は中 国への抑止 力を増強す るため 、 岩崎茂・自衛隊統合幕僚長とロックリア(Samuel Locklear)米太平 洋 軍司令官と の協議を通 じて、「尖 閣有事」と 「日本有事 」とい う シ ナリオに対 処するため の共同作戦 計画と日米 相互協力計 画を策 定

40 「陸船巡釣島 80 天 日莫可奈何」『中時電子報』、2014 年 5 月 13 日、http://www.

chinatimes.com/newspapers/20140513000955-260301、同日アクセス。

41 「尖閣に日米安保適用 オバマ大統領の本心」『日本経済新聞』、2014 年 4 月 29 日、

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2700S_Y4A420C1000000/、同日アクセス。

42 「日米安全保障協議委員会共同発表」『外務省』、2013 年 10 月 3 日、http://www.

mofa.go.jp/mofaj/files/000016027.pdf。

すると報じられた43。同年11 月 16~28 日、日米両国が、沖縄周辺海 域 で南西防衛 を想定して 二国間の洋 上演習とし ては世界最 大規模 の 実動演習を行い、中国をけん制する動きをみせた44

一方、在日米軍の抑止力に係る普天間飛行場の移設を含む在日米 軍 の再編につ いて、安倍 首相は強い リーダーシ ップを発揮 し、移 設 先と される名護 市辺野古沿 岸部の埋立 て許可申請 を沖縄県に 提出し 、 仲井真弘多・沖縄県知事の承認を得た45。それにより、1996 年の日 米 合意以来、 ずっと懸案 となってい た普天間移 設問題は、 解決へ 一 歩 前進し、日 米同盟強化 の大きな障 害が取り除 かれたとい える。 ま た 、日米同盟 の信頼性に 係る集団的 自衛権の行 使について 、前述 し た 「安全保障 の法的基盤 の再構築に 関する懇談 会」の報告 書を受 け 取 った安倍は 、集団的自 衛権の行使 を部分的に 可能とする 憲法解 釈 変更を閣議決定し、2014 年内に自衛隊と米軍の役割分担を定めた新 たな日米防衛協力指針に反映させるとの段取りを明らかにした46。集 団 的自衛権の 行使が新た な指針の中 核にならな ければ、日 米同盟 の 中国に対する有効な抑止力とはなり得ないからである。

43 「尖閣、日米で防衛計画策定 衝突回避へ対中抑止」『日本経済新聞』、2013 年 3 月 20 日、http://www.nikkei.com/article/DGXNASFF19003_Z10C13A3MM8001/、同日アク セス。

44 「南西防衛、日米が連携大型演習、緊迫の最前線 空母や護衛艦、実戦を想定」『日 本経済新聞』、2013 年 12 月 22 日、http://www.nikkei.com/article/DGKDZO64452380R 21C13A2NN9000/、同日アクセス。

45 「辺野古埋め立て申請、沖縄県知事が承認 普天間移設問題」『朝日新聞』、2013 年 12 月 27 日 、 http://digital.asahi.com/articles/ASF0SEB201312270001.html?_requesturl=

articles%2FASF0SEB201312270001.htmlamp;iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASF0SEB2013 12270001、2014 年 4 月 20 日アクセス。

46 「【政府・自民が想定する今後の流れ】秋に自衛隊法改正 日米防衛協力指針の反映 目指す」『共同通信』2014 年 5 月 16 日、http://www.47news.jp/47topics/e/253510.php、

同日アクセス。

2 インド太平洋の海洋安全保障を築く戦略的外交

2007 年 5 月 25 日、第一次安倍内閣時代に日米豪印四カ国はマニラ で開かれたASEAN 地域フォーラム(ARF)会議の機会を利用して、

中国の台頭に備えて民主的平和(democratic peace)を拡大するため の「四者イニシアチブ」(Quadrilateral Initiative)を協議したが、中 国の強い反発に遭った47。2012 年 12 月 27 日、第二次内閣を発足し た ばかりの安 倍首相は、 同構想を復 活させるよ うに「アジ アの民 主 的 な安全保障 ダイアモン ド」構想と 題する英語 論文を発表 し、中 国 の台頭によるシーレーン防衛への脅威に備える戦略的構想、つまり、

海洋民主国家であるオーストラリア、インド、日本、米国(ハワイ)

に よって、イ ンド洋地域 から西太平 洋に広がる 海洋権益を 守るダ イ ア モンドを形 成し、中国 が南シナ海 を要塞化し て「北京の 湖」に す る とともに東 シナ海にお ける尖閣/ 釣魚台を支 配すること を防ご う と躍起になった48

2013 年 2 月の国会施政方針演説で、安倍首相は緊密な日米同盟を 基軸とするとともに、豪州、インド及びASEAN など海洋アジア諸国 との連携を深めることを目指すと強調した49。また、『国家安全保障 戦略』では、「ペルシャ湾及びホルムズ海峡、紅海及びアデン湾から イ ンド洋、マ ラッカ海峡 、南シナ海 を経て我が 国近海に至 るシー レ ー ンは、資源 ・エネルギ ーの多くを 中東地域か らの海上輸 送に依 存 し ている我が 国にとって 重要である 」として、 日本はこれ らのシ ー

47 “Brahma Chellaney, Australia-India-Japan-US Quad,” The Japan Times, July 19, 2007, http://chellaney.net/2007/07/19/australia-india-japan-us-quad/.

48 Shinzo Abe, “Asia’s Democratic Security Diamond,” PROJECT SYNDICATE, 27 December 2012, http://www.project-syndicate.org/commentary/a-strategic-alliance-for-japan-and-india- by-shinzo-abe.

49 「第百八十三回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説」、前掲。

レ ーン沿岸諸 国の海洋安 全保障能力 の向上を支 援するとと もに、 戦 略 的利害を共 有するパー トナーとの 協力関係を 強化すべき だと訴 え た50

2013 年初め、安倍内閣は地政学を重視する「地球儀を俯瞰する外 交 」を展開し 、安倍自身 がベトナム 、タイ、イ ンドネシア を、麻 生 太 郎・副首相 兼財務大臣 がミャンマ ーを、岸田 文雄・外務 大臣が フ ィ リピン、シ ンガポール 、ブルネイ 、そしてオ ーストラリ アをそ れ ぞれ訪問した。安倍首相はこの外遊で対ASEAN 外交五原則を打ち出 し 、日米同盟 がインド、 オーストラ リアと連携 して海洋ア ジアの つ な がりを強く することで 、インド太 平洋という 地域の平和 と繁栄 を 担保すると指摘した51。南シナ海を含む東南アジア海域が日本にとっ

2013 年初め、安倍内閣は地政学を重視する「地球儀を俯瞰する外 交 」を展開し 、安倍自身 がベトナム 、タイ、イ ンドネシア を、麻 生 太 郎・副首相 兼財務大臣 がミャンマ ーを、岸田 文雄・外務 大臣が フ ィ リピン、シ ンガポール 、ブルネイ 、そしてオ ーストラリ アをそ れ ぞれ訪問した。安倍首相はこの外遊で対ASEAN 外交五原則を打ち出 し 、日米同盟 がインド、 オーストラ リアと連携 して海洋ア ジアの つ な がりを強く することで 、インド太 平洋という 地域の平和 と繁栄 を 担保すると指摘した51。南シナ海を含む東南アジア海域が日本にとっ

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