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東アジア国際関係とトランプ外交

1 再保障への動き

トランプ政 権が従来の アメリカ外 交と全く異 なる政策を とるの で は ないか。そ のような懸 念がもたれ ることで、 アメリカの リーダ ー シ ップが損な われ、また 地域の不安 定化が進展 するとの懸 念が広 ま る なか、マテ ィス氏は就 任後最初の 外遊先とし て日本、韓 国歴訪 を 選 んだ。国会 審議日程の 都合により 韓国への訪 問が先にな ったと 言 われるが、両訪問とも同盟国への再保障という目的にはかなった。

2 月、日米首脳会談は異例の長さで行われた。11 月の当選直後に トランプ氏の私邸にて会談が行われたことも異例だった。50ワシント ン での会談に 続き、エア フォース・ ワンに安倍 首相も同乗 し、フ ロ リダ州にトランプ氏が個人的に保有するゴルフコースを27 ホール回 り、5 回の食事を両首脳はともにする。北朝鮮ミサイル発射の一方に

49 Dorothy Manevich, “Americans have grown more negative toward China over the past decade,” Pew Research Center, 10th, February, 2017, http://www.pewresearch.org/fact-tank/

2017/02/10/americans-have-grown-more-negative-toward-china-over-past-decade/(最終ア クセス日:2017 年 2 月 28 日)

50 山口敬之『暗闘』幻冬舎、2017 年。

接 して、トラ ンプ氏は急 遽安倍首相 と日本プレ スとの記者 会見へ の 同席を了承し、日米首脳での記者会見となった。

日本政府の 観点に立て ば、共同声 明は珠玉の 出来だった 。共同 声 明には尖閣諸島への日米安全保障条約第 5 条適用が大統領文書とし て 初めて書き 込まれ、東 シナ海にお ける協力を 深めること も約さ れ た 。さらに「 日米両国の 各々の役割 、任務及び 能力の見直 し」を 含 め 、日米安全 保障協議委 員会にて議 論を進める ことも声明 に含め ら れ ている。経 済に関して は、声明に は含められ てはいない ものの 、 麻 生財務大臣 とペンス副 大統領の協 議枠組みを 作ることが 決定さ れ た 。このこと は合意が容 易ではない 分野の先送 りを決定し たこと を 意味する。

オバマ政権期、とりわけ政権 2 期目の日米関係が決して政府間関 係 が良好とは 言えなかっ たことから 、このよう な成果は概 ね日本 国 内 で歓迎され ている。他 方で、日米 経済交渉へ の懸念も大 きく、 ま た それに答え られなけれ ば日米関係 の動力が損 なわれると の見方 も ある。

ロシアとの 関係改善に も一定のブ レーキがか かっている 。トラ ン プ 氏や側近は 対ロ協力を 模索してい た。しかし フリン大統 領補佐 官 の 辞任などロ シア問題が 政権攻撃の 材料となっ ており、く わえて 元 来、議会や軍、情報機関にはロシアへの慎重姿勢も根強い。2 月半ば に マティス国 防長官、テ ィラーソン 国務長官、 ペンス副大 統領が 相 次 ぎ欧州を訪 問、北大西 洋条約機構 を基盤とす る米欧関係 を再保 障 し 、対ロ強硬 姿勢の継続 をみせたが 、その背景 には国内事 情も影 響 し ているとみ るべきだろ う。なお1 月に核態勢 見直しの大 統領令 が で ており、ロ シアによる 地上配備型 巡航ミサイ ル導入と合 わせ、 米

ロ間で軍縮に逆行する動きが起こる可能性もある。51ただし、大統領 や 一部の高官 は依然とし てロシアと の関係打開 を模索して いると み られ、その衝動の強さは対中関係と対照的にもみえる。

2 米中関係

トランプ氏は、12 月に FOX テレビのインタビューに答えている。

蔡 英文氏から の祝意の電 話をとった ことについ て、数週間 にわた っ て 検討したも のではなく 自身 は 1、2 時間前に知らされただけであ り 、アメリカ 政府の従来 の「一つの 中国」政策 を理解して いると し た 。他方で、 人民元問題 や南シナ海 問題、北朝 鮮問題でア メリカ の た めに働いて いない中国 がアメリカ の行動をコ ントロール するこ と は出来ないとも述べている。52ここにみえるのは、中国を牽制し、交 渉 において有 利な位置を 確保するた めには、こ れまでの常 識に縛 ら れることはないという意思表明だろう。

その後、2 月の米中首脳による電話協議で、中国側の求めに応じ、

アメリカ政府従来の「一つの中国」政策を尊重すると表明している。

53小 一 時 間 に わ た っ た 協 議 で 何 が 話 し 合 わ せ れ た か は 明 確 で は な い が 、直後の北 朝鮮に対す る石炭輸入 規制を踏ま え、トラン プ氏は 生 産的な会談だったと振り返り、さらなる協力を求めている。54

51 Aaron Mehta, “Trump’s nuclear options: Upcoming review casts a wide net,” Defense News, 8th, February, 2017.

52 “Read Donald Trump’s Fox News Interview on Russia, Climate Change and His Company’s Future,” Times.com, Dec 12, 2016, http://time.com/4597416/transcript-donald-trump-fox- interview/.

53 White House, “Readout of the President’s Call with President Xi Jinping of China,” 9th, February, 2017, https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/09/readout-presidents- call-president-xi-jinping-china(最終アクセス日:2017 年 2 月 28 日)

54 “Highlights of Reuters interview with Trump,” Reuters, 23rd, February, 2017.

しかしこれ らの動きも 、米中間で 何かしらの 取引が成立 したこ と を意味するものではない。従来の「一つの中国」政策の「尊重」は、

中 国政府の懸 念を払拭す るものだっ たが、新た な方針では ない。 今 後 、トランプ 氏を与しや すい相手と みた中国の 動きが危惧 される 。 直 後から南シ ナ海に米軍 が空母を派 遣したよう に安全保障 面での 警 戒は続くだろう。

トランプ政 権が安易な 取引を中国 と行うとい う懸念がこ れまで 指 摘 された。し かし、オバ マ政権と比 べれば中国 との関係構 築やグ ロ ー バルな協力 を重視する 高官は少な く、クシュ ナー夫妻や 経済閣 僚 が 比較的パイ プ役になる 程度だ。共 和党支持者 を中心に市 民の対 中 認 識も悪化傾 向にある。 北朝鮮問題 や貿易等で 十分な成果 が上が ら なければ、むしろ米中関係は容易に悪化するだろう。

台湾に関し ても、三つ のコミュニ ケ、台湾関 係法、六つ の保証 を 軸 とする「一 つの中国」 政策の範囲 内とアメリ カ政府が考 えるな か で 、未だ行え る米台協力 、またはア メリカの行 動は多い。 トラン プ 政 権および議 会共和党に 存在する台 湾重視の考 え方が何か しらの 形 で 結実したり 、また米中 関係の進展 が危ぶまれ る際に今一 度材料 と して浮上したりする可能性は十分にある。

米台対話の 進展がひと つの鍵にな るかも知れ ない。オバ マ政権 末 期にあたる16 年 12 月に成立した 2017 年度国防授権法は、米台軍事 交 流の強化を 求めている 。これは法 的義務を課 すものでは ないが 、 従 来のモント レー対話を はじめとし た米台協議 の枠組みの 重要性 を 再 確認し、さ らに脅威評 価や軍事ド クトリン、 戦力構成な ど協議 項 目を具体的に指摘したものと言えよう。55もし今後協議が発展し、ト

55 米台関係については、防衛省防衛研究所編『中国安全保障レポート 2017』2017 年 2 月、35-48 ページが詳しい。

ラ ンプ政権が 台湾の戦略 的重要性を 把握するこ とがあれば 、それ が 様 々なレベル の協力に結 実すること はあり得る 。高いレベ ルの武 器 売 却もあり得 る。しかし 、それらが 中国を過度 に刺激する ことな く 実 行に移され るか、また は米中関係 を大きく揺 さぶるもの になる か は、担当する政府高官人事にも拠ってくる。

3 大きな絵がみえないアジア政策

国家通商会議議長のナバロは、その副官グレイを第1 著者として、

2016 年 11 月の投票日直前に『フォーリン・ポリシー』誌に論文を掲 載している。56

同論文は、 アジア重視 には戦略的 好機が存在 していると 指摘、 そ の 意味でオバ マ政権の狙 いを認めて いる。同盟 国への再保 障を重 視

(ただしTPP は否定)し、オバマ政権に足りなかったものはむしろ 資 源であり、 そのための 軍拡を重要 視している 。具体的に は、レ ー ガ ン政権を持 ち出した「 力による平 和」創出の ために、艦 船等の 大 幅 増強など数 量重視の軍 備拡張を提 案している 。グレイは ランデ ィ

・ フォーブス 前下院議員 スタッフの 出身であり 、フォーブ スは対 中 強硬派とみられてきた。

しかし、こ の論文を除 けば依然と してトラン プ政権のア ジア外 交 の 全体像は見 えてこない 。ここまで 示してきた ような点を 踏まえ れ ば 、オバマ政 権のアジア ・リバラン ス政策と、 トランプ政 権の「 ア ジア重視」は四つの意味で明確に異なるとはいえよう。第 1 に、ト ラ ンプと側近 は中国をと りわけ経済 面で過剰に 意識してい る。 第 2 に、トランプは多国間交渉の価値を否定している。第 3 に、オバマ

56 Alex Gray and Peter Navarro, “Donald Trump’s Peace Through Strength Vision for the Asia-Pacific,” Foreign Policy, 7th, November, 2016.

政 権は人権と 民主化を重 視し、その 象徴がミャ ンマーだっ たが、 ト

七 おわりに

トランプ氏 の当選後、 あるアメリ カの元政府 関係者は次 のよう に 語った。「トランプ外交がどのようなものになるのか、それは本人を 含 め誰にも分 からない。 しかし、ア メリカが関 与を弱める かも知 れ な いという認 識を地域に 広げたこと で、アジア 諸国はその 可能性 を 織 り込んで動 くことにな る。その意 味で、我々 はすでにト ランプ 効 果のなかで考えていかなければならないのだ。」57

今 後 も 政 府 高 官 に よ る 再 保 障 を 目 標 と し た 動 き は 続 く と 思 わ れ

今 後 も 政 府 高 官 に よ る 再 保 障 を 目 標 と し た 動 き は 続 く と 思 わ れ

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