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結論:不透明感強める近未来の中国

最 後に、 台頭 する中 国を どう見 るか 、そし てア ジア太 平洋 の中の 中国をどう見るか。中国を考察するときに、「表」の現象と「裏」の 現 象 を ど う 解 釈 す る か と い う 問 題 が あ る 。 表 を 見 れ ば こ う 言 え る し、裏を見れば別のことが言える。「裏」と「表」の関係はどうなっ ているのかという点は、なかなか正しく分析しにくいところである。

ただ、少な くとも事実 として言え る重要な点 は、まず中 国の成 長 率 が鈍化して きたことで ある。これ を中国当局 は「新常態 」の特 徴 として位置付けた。経済成長の減退は、2015 年の全人代で、目標は 7%成長、2016 年で 6%台後半と低下している。2007 年から 2010 年 ぐらいまでは 10%近い成長を続けていたから、成長率は下落してき て いることは 確かである 。おそらく まだ下落す るだろうと いわれ て いるが、少なくとも個人所得、購買力は伸びている。2017 年の上四 半期のGDP 成長は、幾分回復傾向を示してきた。

これは二つ の側面があ って、廉価 な労働力と しての比較 優位が 落 ち て く る 一 方 で 、 消 費 能 力 が 高 ま る と い う 二 面 性 が あ る わ け だ か ら 、人口ボー ナスはだん だん減って くるけれど も、個人消 費が高 ま っ ていく中で 経済成長率 はある程度 、維持され ると見てい いので は ないか。

このように考えると、少なくともまだ10 年ぐらいは経済成長を維 持 できる。維 持できれば 、それが何 %になるか は別として も、例 え ば5~7%の維持でいくと、今後 10 年前後を経ることで、量的には間 違 いなくアメ リカを抜い て世界最大 の経済規模 になるだろ う。こ れ は事実として認識しておかなければならない。経済力として世界第1 位 の中国が比 較的近い将 来、実現す る。そのこ とによって 中国の 国 際 社会におけ る政治経済 的インパク トも大きく 変わってく るだろ う

と 判断できる 。もちろん 、急激に経 済混乱が起 こったり、 政治的 な 激 震が走った りすれば別 であり、そ れが発生し ないとも断 言でき な い。

ただ、「新常態」から第 19 回党大会「政治報告」で主張されてき た 2 番目のことは、成長一辺倒から社会福祉政策への政策転換であ る。これは第19 回党大会の「政治報告」でも指摘されてきた。中国 は これから少 子高齢化社 会を迎える なかで、社 会福祉制度 はほと ん ど 本格的には 取り組まれ てこなかっ た状態であ るし、年金 制度と か 医 療・介護の 施設の問題 、人材育成 の問題それ から環境汚 染など も 深 刻な問題で ある。また 大きな経済 社会格差を 作りだして いる状 態 で、1 人当たりの GDP が今、8,000~9,000 ドル(JETRO)ぐらいで、

中 所得国の上 のほうに到 達している 状態である が、これを 格差の 問 題 を 考 慮 して み る と 、実 際 に 特 別に 豊 か な 一部 の 層――例えば、年 収 1 億円の人の数は中国より日本のほうが多いが、年収 5 億円にな る と、中国の ほうが圧倒 的に多いと 言われるよ うに、富が 集中し て い る 一 部 の人 々――をはずしたところで全体を見ていかないといけ な い。そうし たときに、 中国は社会 政策という ものに相当 力を入 れ てやっていかないと問題は深刻になる。

そうすると 、今後もう 少し詰めて 検討する必 要があるが 、対外 援 助 増が徐々に 負担になっ ていくので はないか。 今の「一帯 一路」 を 進めるためのAIIB 構想というのは非常に調子のいい時の話で、規模 が1,000 億ドル。その半分は中国が持つと言っているが、本当にそれ が続けられるのか。

今後の中国を見ていく場合、第 1 は、中国は世界のリーダーにな る ことができ るかという 問いがある 。中国自身 はそうなる ことを 熱 望 しているわ けである。 だが、果た してそれは うまくいく のか。 新 しい21 世紀の時代において、筆者はリーダーシップの相対化を考え

る 必要がある と考えてい る。つまり 、すべての 面で一つの 国、一 人 の 指導者が全 てを率いて いくといっ た絶対的リ ーダーとい うのは 、 新 しい世紀に は出てこな い。例えば 経済力のリ ーダー、軍 事力の リ ー ダー、ある いは環境、 医療に関す るリーダー とか、リー ダーシ ッ プ といっても 、いろいろ な分野にお けるリーダ ーシップと 考えて 、 そ の相対化さ れたリーダ ーシップが 相互に作用 し合う構造 が、こ れ か らの時代の 基本的なフ レームワー クになるの ではないだ ろうか 。 国 際社会はす べての面で 中国をリー ダーとして 扱うことは 無理で あ る が、ある面 では、中国 のリーダー 的なプレゼ ンスを受け 入れて い かなければならないだろう。

2 番目は、中国がアジア太平洋地域の安定要因か不安定要因か。中 国 自身は、自 分たちが積 極的に介入 することに よって安定 的な要 因 と して機能す るのだと言 っており、 本人たちは そう思って いる。 外 か ら見れば、 それが新し い秩序形成 という意味 で、既存の 秩序を ぶ ち 壊す不安定 要因になる というアン バランスな 状態となっ ている の である。

問題は、現 実に大きく なっている 中国をどの ようにアジ ア太平 洋 地 域でソフト ランディン グさせるか ということ である。そ のとき に 考 えていかな いといけな いのは、中 国自体の内 部に不安定 要因が あ る こと。それ は、指向的 には覇権的 か協調的か 、国内の政 治社会 で い くと、社会 の不安定要 因が増大し ていくのか 、安定的な のか。 今 の 社会の不安 定要因とい うのは、力 によって封 じ込めてい る側面 が 強いので、そこが非常に不安定でもある。

3 番目には中国と周辺諸国との関係で、経済の相互依存はますます 強 くなるが、 政治・軍事 の緊張は減 少していな い、むしろ 部分的 に は 緊張は増大 していると いえる。こ れは興味深 い現象で、 よく考 え て みると、日 中関係だけ ではない。 中台関係も そうだし、 東南ア ジ

ア でも中国の 台頭に関し て政治的に は警戒を強 める。だか ら、ア メ リ カのプレゼ ンスに期待 するという のは、多く の東南アジ ア諸国 が 共 有する意識 である。韓 国を見ても 、前述した ように中国 に対す る 警 戒感が非常 に強くなっ ている。朝 鮮日報や東 亜日報など 幾つか の 新聞のアンケート調査を見ても、中国脅威論は6~7 割、昨年は 8 割 を 超えるよう な状態にな っている。 このように 見ると、中 国と周 辺 諸国との関係は、ほとんどが類似したパターンである。

「一帯一路」政策に対しても、2018 年 4 月には EU27 か国(ハン ガ リーを除く )の駐中国 大使の批判 報告書が公 にされた。 そこで は EU における「一帯一路」関連プロジェクトの大部分を中国企業が受 注し、EU 企業は事実上締め出しを受けている。さらには中国が知的 財産権保護国際ルールを遵守せず、中国に進出する EU の企業に技 術 や ノ ウ ハ ウ 開 示 を 強 要 す る ケ ー ス が 目 立 つ と い っ た 内 容 で あ っ た 。さらに、 アジア各国 からも懸念 の声が聞か れるように なった 。 イ ンドネシア における高 速鉄道の入 札をめぐっ て最初は好 条件で 獲 得 した中国か ら様々な要 求を提示さ れ、凍結状 態が続いて いる。 ま た 5 月の総選挙で勝利し首相に返り咲いたマハティール氏が、ナジ ブ ・ラザク前 首相が進め た中国との 大型経済協 定の見直し を明言 し た。

さらには17 年以来ホットイシューになっている米中貿易摩擦が、

18 年春以降いよいよ本格化してきた。膨大な対中貿易赤字はもはや 逃 すことがで きない段階 に入った。 その大雑把 な数字を盛 れば、 米 国の大幅な入超と中国の大幅な出超が基本構造である。2014 年米国 の対中貿易赤字は 3,426 億ドル、2016 年は 3,470 億ドルに、17 年は 3,750 億ドルに膨らんでいる。米国の赤字全体は 7,371 億ドルでその 約半分を中国が占めることになる。ちなみに米国の赤字第 2 位は日 本であるが、その規模は2016 年で 689 億ドルと中国に比べ圧倒的に

少 ない。トラ ンプ政権の 強い異議申 し立ては簡 単には引け ない段 階 で 、これに対 して中国も 対抗策で臨 み始め、チ キンレース の様子 を 呈 してきた。 本論ではこ の問題を詳 しく分析す る余裕はな い。し か し 、米中の貿 易摩擦はた んなる経済 対立ではな く、朝鮮半 島問題 の ゆ くえ、さら にあえて言 うなら台湾 の将来の問 題をも含め て、包 括 的な米中の構造的対立になっていく類の問題なのである。

以 上のよ うに 、中国 を取 り巻く 国際 環境は 決し て良好 なわ けでは な い 。 そ こ で 現 段 階 で 外 交 を 中 心 に 中 国 の 対 応 を 予 測 し て み る な ら、次のようなことが言えるのではないだろうか。

第 1 は、「中国脅威論」の払拭に努力しソフトなイメージをアピー ル する。日中 関係の改善 、東南アジ ア諸国への アプローチ にすで に そうした兆候が見られる。

第 2 は、「遠交近攻」戦略の実践の修正である。米国、日本との直

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