台湾の農産物市場開放は 2002 年、WTO に加盟して農産物の自由 化 約束の実施 を開始した ときに始ま った。農産 物自由化の 過程に お い て、台湾も 当然貿易政 策や構造改 革支援措置 を通して、 市場開 放
に よる打撃の 緩和、およ び国内生産 者の競争力 強化支援を 行って き た。
1 台湾の農産物市場開放と戦略
台湾は食料 品の輸入依 存度が高い ことから、 食料安全保 障と選 挙 における農民票とを考慮し、2002 年に WTO に加盟した。そして、
全 面的な輸入 開放の影響 を緩和する ため、国内 の農産物に 対して 一 定 程度の保護 措置をとっ た。その後 も国内産業 の構造改革 や経済 ・ 貿易環境の変化、例えば、中米 5 カ国、シンガポール、ニュージー ラ ンドと自由 貿易協定を 締結し、特 定市場を開 放したこと などに 応 じて、必要な措置をとってきた。
WTO 加盟後、台湾は重要農産物の輸入保護措置を WTO 農業協定 と 世界の自由 化の流れに 従い、輸入 禁止や数量 制限から関 税化へ と シ フトした。 また、日本 や韓国など の隣国のや り方を参考 に関税 割 当 て制度へと 移行した。 関税割当て については 交渉での必 要に応 じ て 国別枠を設 定し、特別 セーフガー ドも導入し た。また、 輸入開 放 で 損害を受け る国産農産 品目に対し て救済措置 も行ってい る。台 湾 の 重要農産物 である米、 豚肉、砂糖 、液体乳製 品に対する 市場開 放 対応策の組み合わせを表7 にまとめた。
米はWTO に加盟した 1 年目は、ミニマムアクセス制の下でスター トした。輸入量は14 万 4,720 トン(玄米換算)で、これは 1990 年か ら1992 年までの平均消費量の 8%に当たる。翌 2003 年から関税割当 制度に移行した。枠内は無税で、加工品は 10%~25%と低い税率に な っている。 また、台湾 政府は枠を 配分する際 に権利金を 徴収し 、 輸 入米と国産 米の価格差 を縮小して いる。枠外 の米輸入に 対する 関 税は、1 キロ当たり 45 元、加工品には 49 元と高額な関税を課してい る。この他、米保証価格買上制度を実施。2003 年にはセーフガード
表7 WTO 加盟後の台湾の重要農産物市場開放戦略
量 枠の配分が 行われる。 政府輸入米 は公共穀物 として政府 が一元 的 に管理している。2013 年から食用米(籾米、玄米、白米、米製品を 含む)に特別セーフガードを導入された29。特別セーフガードは輸入 量 が基準量を 超えた場合 、もしくは 船荷毎の輸 入価格が基 準価格 の 90%を下回った場合に発動する。措置内容は関税引き上げで、最大 で三分の一の追加関税を行う。
豚ばら肉、鶏肉(もも肉、手羽肉、その他の部位を含む)、砂糖な どの農産物は 2002 年の WTO 加盟に際し、輸入制限や輸入管理から 関税割当て制度に移行し輸入を開放した。2005 年から豚ばら肉、鶏 肉 、豚の内臓 肉、家禽の 関税割当て を撤廃し、 同時に国内 の製糖 産 業 構造の変化 に伴い、砂 糖の関税割 当ても撤廃 し、輸入の 自由化 を 実施した。2003 年、台湾・パナマ自由貿易協定発効後、パナマから の輸入豚肉に関税割当てが設けられ、豚ばら肉3,624 トンが無税とな った。また、中米五カ国との自由貿易協定の発効後は、グアテマラ、
ニカラグア、エルサルバドル、ホンジュラスからの輸入砂糖が FTA 関 税割 当てに なっ た。こ のうち 2005 年に発効したグアテマラとの FTA の関税割当ては 6 万トンで、これは台湾の年間消費量の約 12%
に当たる。2013 年から台湾の豚肉・鶏肉、砂糖にも特別セーフガー ドを導入した30。
液体ミルク(牛乳とその他の液体乳製品を含む)の輸入はWTO 加 盟後3 年間は関税割当てを適用した。割当て量は 2002 年に 1 万 649 トン、2004 年に 2 万 1,298 トンで、枠内の従価税率は 15%、枠外は 従量税で、1 年目は 1 キロ当たり 18.4 元、2004 年に 15.6 元に引き下
29 中華民國財政部關務署〈農產品採取特別防衛措施(SSG)額外關稅之課徵規定及相關 作業注意事項〉(2013 年 11 月 13 日公布)により実施。
30 前脚注に同じ。
げた。特別セーフガードは2002 年に導入。また、輸入により牛乳産 業 が損害を被 った場合は 「農産品輸 入損害救済 法」に基づ いて救 済 を行う。2013 年にニュージーランドとの FTA が発効した後は、ニュ ージーランド産の乳製品8 品目に 12 年の関税割当てが新設された。
台湾の農産物の貿易自由化協議において、表 7 や上述したことか ら 分かること は、自由貿 易と関税譲 許以外の主 な政策手段 は、関 税 割 当て、特別 セーフガー ド、および 国内支援策 である輸入 による 損 害に対する緊急救済措置である31。
2 他山の石
台湾は既に TPP 参加に必須の法改正や国内対応策等の調整を行っ ている32。交渉戦略や計画に関しては、これまでの政策ツールややり 方と類似しているが、日本のTPP 対応戦略やツール運用のほうが明 らかにより柔軟で目的性のある計画になっている。その日本の TPP 五 大重要農産 物の開放モ デルを検討 した結果、 その政策的 な意味 合 いを次のようにまとめることができる。まず、国家貿易制度、WTO 関税割当制度、TPP 関税割当ての新設や特別セーフガードなどの非 関 税貿易障壁 を十分に活 用すること で、輸入量 と国内供給 量をコ ン ト ロールし、 製品の国内 市場価格の 安定を図っ ている。そ して、 関
31 台湾で未だ関税割当制を実施している農産品は米、鹿茸、東方梨、バナナ、あずき、
液体乳製品、落花生、ニンニク、乾燥しいたけ、ヤシ、檳榔、パイナップル、マン ゴー、柚子、桂圓肉(リュウガン)など。台湾財政部関務署は2013 年、特別防衛措 置農産品には落花生、東方梨、砂糖、ニンニク、檳榔、鶏肉(鶏もも、手羽及びそ の他鶏肉の塊を含む)、液状乳(牛乳及びその他液状乳を含む)、動物の内臓(家禽
の内臓及び家畜の内臓を含む)、あずき、乾燥しいたけ、柚子、柿、乾燥えのき、乾
燥金針、豚わき腹肉及び米など15 種類。
32 「TPP RCEP 農業問答集」『常見問答集(FAQ)』行政院農業委員會、2016 年、
http://www.coa.gov.tw/ws.php?id=2503923。
税 の譲許に関 して、関税 引き下げに 可能な限り 長いステー ジング 期 間 を確保し、 引き下げ幅 もできる限 り小さく段 階的に行う ことで 、 国内生産者に体質や競争力を強化する機会を与えている。また、TPP 関 税割当ての 新設、つま り枠内の低 関税枠や無 税枠を拡大 するこ と で 、相手国の 要求を満た すとともに 、これによ り国内価格 が下が れ ば 、国内消費 者の経済的 な利益も図 ることがで きる。四つ 目に、 特 別 セーフガー ドの運用に おいて、市 場開放後に 効果的に各 製品の 需 給 をコントロ ールし、市 場価格を安 定させると ともに、国 内生産 者 に 体質強化の 機会を与え るため、そ れぞれの製 品に有利で 戦略目 標 にも沿った発動要件を非常に慎重に計画している。
六 おわりに
本研究は 2013 年に日本が TPP マレーシア会合に参加してから、
2016 年に署名式が行われるまでの交渉経過と合意内容から、高い自 由化水準を標榜するTPP 交渉において、何故日本は農林水産品の自 由化比率 82%、五大重要農産物の自由化率 29%という結果を得られ た かを分析し た。これが 今後台湾が 交渉に参加 する際の参 考とな る ことを期待する。
本研究はTPP 日米マーケットアクセス交渉における日本の攻防戦 略 を検討し、 三つの交渉 戦略と五つ の農産物マ ーケットア クセス 交 渉 戦略をまと めた。また 、交渉の原 則、運用し た政策手段 、主要 な 戦 略などから 、日本の農 産物マーケ ットアクセ ス交渉戦略 も分析 し た。本研究がまとめた日本の三つの交渉戦略には、TPP 商品マーケ ッ トアクセス 交渉戦略、 日米商品マ ーケットア クセス交渉 戦略、 日 米 農産物マー ケットアク セス交渉戦 略があった 。日米農産 物マー ケ ットアクセス交渉における五つの戦略には集中戦略、脅威軽減戦略、
陽動戦略、個別突破戦略、利益交換戦略があった。
日本が五大 重要農産物 市場開放に 対応するた めに使用し た戦略 モ デ ルから、そ の政策的な 意味合いを 以下のよう にまとめる ことが で きた。日本の最も重要な戦略は、国家貿易制度、WTO 関税割当制度、
TPP 関税割当ての新設、特別セーフガードなどの非関税貿易障壁措 置 の維持と運 用を行うこ とで、輸入 量と国内供 給量をコン トロー ル し、製品の国内市場価格の安定を図る。日本はTPP 関税割当ての新 設 など、関税 割当て制度 を戦略的に 運用するこ とで、それ ぞれの 国 に 対し個別に 突破口を見 つけ出し、 枠内の特定 の相手国の 低関税 枠 や 無税枠を拡 大すること で、全面的 な関税引き 下げを免れ ること が で きた。やむ を得ず関税 を引き下げ なければな らい場合で も、可 能 な 限りの長い 経過期間と 可能な限り の小さい引 き下げ幅で 段階的 に 引 き下げてい くことを関 税譲許の原 則とし、国 内生産者が 体質と 競 争 力を強化で きる機会を 確保した。 日本はまた 、市場開放 後に効 果
TPP 関税割当ての新設、特別セーフガードなどの非関税貿易障壁措 置 の維持と運 用を行うこ とで、輸入 量と国内供 給量をコン トロー ル し、製品の国内市場価格の安定を図る。日本はTPP 関税割当ての新 設 など、関税 割当て制度 を戦略的に 運用するこ とで、それ ぞれの 国 に 対し個別に 突破口を見 つけ出し、 枠内の特定 の相手国の 低関税 枠 や 無税枠を拡 大すること で、全面的 な関税引き 下げを免れ ること が で きた。やむ を得ず関税 を引き下げ なければな らい場合で も、可 能 な 限りの長い 経過期間と 可能な限り の小さい引 き下げ幅で 段階的 に 引 き下げてい くことを関 税譲許の原 則とし、国 内生産者が 体質と 競 争 力を強化で きる機会を 確保した。 日本はまた 、市場開放 後に効 果