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四 「体制」、「運用」の考え方

前述のとお り、中国は 長期にわた って、西側 の多党制や 三権分 立 制度の導入を強く拒否してきた。しかし、ガバナンスと善き統治は、

主 流の政治体 制のイデオ ロギーの維 持に抵触し ないため、 その導 入

52 中共中央辦公廳・國務院辦公廳「關於實行黨政領導幹部問責的暫行規定」人民網、

2009 年 7 月 3 日、http://leaders.people.com.cn/BIG5/9639620.html を参照。

に は抵抗感が 少ないこと から、中国 は、民主主 義は社会現 代化段 階 と 密接な関係 があり、ガ バナンスや 善き統治の 導入を自主 的に刷 新 す るものであ るとのロジ ックを選択 した。これ は、イデオ ロギー の 制 約の下、歴 史的・社会 的な条件を 与えた中で 、正当な制 度導入 に つ いてのロジ ックを選択 させ、ガバ ナンスや善 き統治の分 析枠組 が 中 国の政治発 展のメタセ オリーとな ったことを 説明してい る。ガ バ ナ ンスと善き 統治の解釈 や論証は、 現況を否定 することで はなく 、 現 代社会が必 要とする民 主主義政治 運営の枠組 みを再構築 するこ と である53。効果的なガバナンスと党の支配権の間で、組織的環境の制 約 下における 党エリート の適応能力 に対する挑 戦は、組織 環境と 一 致する政策の構築を模索するもので、これは中国の伝統的な「体制」、

「 運用」の概 念を政治発 展の行動ロ ジックとす るものであ る。し か し 、「体制 」「運 用」の考え の下、現状 を死守する には、執政 の独 占 に 影響を与え る改革要素 を排除する 必要があり 、前述のガ バナン ス 改革の目標との間で衝突が生じる。

1 公開 vs.保秘

透明性の面をみると、「第 17 回党大会」以降、中国は行政管理体 制改革の深化を総目標とした。「公開条例」と「保秘法」改定実施以 降 は、国民と 政府の関係 や、情報非 公開の伝統 的な姿勢に も変化 が 生 じ て い る だ ろ う 。 し か し 、 陝 西 省 「 華 南 虎 」 事 件 に つ い て は 、8 カ 月を要して ようやく偽 証が証明さ れ、三鹿粉 ミルク事件 をめぐ っ ては42 日も公表が遅れたことからも、一つや二つの法規に頼るだけ では、大きな改革は成し遂げられないことが分かり54、例えば米国議

53 同上、頁63。

54 「陝西省終於承認華南虎照造假」財經網、2008 年 6 月 29 日、http://www.caijing.com.cn/

会の行政部門中国委員会(CECC)は、これは新たな発展ではなく、前 述 した社会の 重大問題に 対する政府 の態度は依 然として不 明瞭だ と 指摘している55

例を挙げると、「保秘法」では、情報が機密か否かを決定する権利 は県レベル以上、保秘期限は最高30 年と明確に定めており、秘密決 定の責任制度等を構築し、「透明化」と「知る権利」の精神を反映し よ うとしてい る。しかし 他方で、同 法はとりわ け電子媒体 とネッ ト 情 報のコント ロールを対 象としてお り、国家機 密漏えい案 件の調 査 に関し、ネット・電信業者に対し関連部門への協力を要求している。

こ うしたやり 方に対し、 外界は中国 が情報流通 のコントロ ールを 強 化 したがって いるものと 受け止め、 コントロー ルに異議を 唱える 者 は 、ネットの 脅威に対応 するため、 海外のネッ ト業者にも 安全部 門 に協力するよう迫ることは、「透明性」の精神に反すると訴えている。

師濤事件をめぐるヤフーへの情報提供要請56、Skype 顧客情報の政府 監 督・コント ロールと情 報保存、審 査要求を避 けるための グーグ ル

2008-06-29/100072120.html;「河北承認毒奶粉事件延報 將嚴查官商勾結」新華網、

2008 年 9 月 18 日、http://big5.xinhuanet.com/gate/big5/news.xinhuanet.com/video/2008-09/

18/content_10073886.htm。

55 Congressional-Executive Commission on China, “SEPA Issues Measures on Open Environmental Information,” http://www.cecc.gov/pages/virtual Acad/index.phpd?

showsingle=101942.

56 2004 年、湖南「当代商報」の記者、師濤氏が、電子メールを海外の民主化運動団体 に送り、中国政府の六四事件15 周年の報道を禁止する資料を公開した。ヤフーが中 国政府に師濤氏の個人資料を提供したことにより、師濤氏が国家機密情報を漏洩し た罪により、禁固10 年の刑を受けた。米議会公聴会で、ヤフーの楊致遠・社長と・

キャラハン副社長が師濤氏とその母・高琴聲氏に謝罪した。以下資料参照:「無國界

記者:「師濤案」雅虎公司說謊」BBC 中文網、2007 年 7 月 26 日、http://news.bbc.co.uk/

chinese/trad/hi/newsid_6910000/newsid_6918100/6918198.stm;「雅虎就師濤案向師濤親 屬公開道歉」RFI 中文網、2007 年 11 月 7 日、http://www.rfi.fr/actucn/articles/095/article _4476.asp。

の 海外移転等 からも、中 国政府がネ ットコント ロールをさ らに強 化 していることがうかがえる。

加えて、国務院は 2009 年、「三年以内の中央部門預算公開」の目 標 を定めた。 しかし、現 在の政府予 算資金が包 含する範囲 はあま り に も狭く、巨 額の予算外 予算の出所 は予算管理 外にある。 前述し た 四部門の委員会の公開予算では、「行政経費支出予算」で極めて重要 な「三公」(公金接待費、公用車支出費、公務視察費)費用等の詳細 な 支出はいず れも明確に 公開されて いない。さ らに、中国 が現在 公 開し ている財政 予算の多く は、「類」及 び「款」に とどまって おり 、 また、総支出に占める「その他支出」の割合が非常に高いため、「項」、

「 目」まで細 分化しなけ れば、前述 した「三公 」費用や労 働賃金 等 の 委細を見る ことはでき ない。これ は、情報公 開の他、公 務員給 与 と 一般労働者 の賃金格差 、各省「駐 京弁(北京 駐在事務所 )」の 広 報 費用、国有 企業の国庫 納入、従業 員の福利等 を含む利益 交渉の 問 題 が依然とし て残ってい ることを示 しており、 こうしたデ ータを 隠 す ことが政府 には都合が 良いとの判 断であるが 、一般国民 は政府 の 予 算公開は「 重い責任は 避け、軽い 責任だけ負 う」もので あると 考 え ている。そ の一方、予 算は人民代 表大会予算 工作委員会 、財政 経 済 委員会、人 民代表大会 、主席団会 議、財政経 済委員再審 査、大 会 で の表決とい ったプロセ スを踏まな ければなら ないが、こ れまで の

「 両会」では 、財政預算 審議は、熱 い中の「冷 めた話題」 で、熱 心 に 討論された ことはない 。その要因 には、政府 の予算公開 のレベ ル の 他、人民代 表大会の討 論審議時間 、専門能力 等があり、 高強・ 全 国 人民代表大 会常務委員 会予算委員 会主任でさ え、不満に 感じて い るようで、人民代表大会の予算審査の限界を説明した。

よ って、 政府 は中央 のあ らゆる 部門 の予算 公開 タイム スケ ジュー ル を初めて示 したが、各 部門・委員 会が過去の 「秘密財政 」時代 に

別 れを告げる こととなる か、多くの 人が懐疑的 に見ている 。中国 の 学者は、「引き延ばし作戦」について、名分だけの実質を伴わない非 効 率な公開は 、直面する 情報公開圧 力やいつ攻 撃されるか 分から な い 地方の窮地 打開の暫定 措置にすぎ ないと警告 している。 これは 、 中 国の当面の 予算公開が 「透明性」 を意味する のではなく 、関連 す る 制度や精神 を欠いた中 では、中国 メディアが 形容する「 ガラス の 扉 」のように 、たとえ政 府が情報公 開しても、 国民は一向 に欲し い 情報を得られないことを意味する。

2 法治 vs.法制

近 年、中 国で は法律 ・法 規の衝 突、 行政機 関の 権利侵 害等 の行政 行 為 が 益 々 増 加 し て い る が 、 こ れ は 主 に 長 期 的 な 「 行 政 の 優 越 」

(executive dominance)の統治モデルに起因する。中国の行政・立法 の 発展は、不 健全な法治 環境にある ため、「立 法法」が法 律の原 則 を 体現してい ても、行政 機関は依然 として明確 に列挙され た事項 以 外 に大きな自 由な活動空 間を有して いるため、 部門と地方 政府が 権 力を拡大する手段となっている。「立法法」の規定に基づくと、中国 の法定手続きが制定した規範的な法規は以下の七つである:法律、行 政法規、地方性法規、規則(部門の規則、地方政府の規則)、自治条 例 と単行法規 、軍事法規 と軍事規則 、授權立法 。前述した ように 、 法 律の違憲審 査手続きが なく、当面 は立法と違 憲審査監督 を受け な い「保留分野」には、軍事法規や大量の「未形式化」の「実質法規」

が含まれ、中国共産党の党章、過去の中国共産党全国党大会の公法・

決 定・中央の 文書及び党 の様々な具 体的政策等 はいずれも 権威あ る 地位を持つ57。こうした規範的な文書は、「立法法」の規範内にはな

57 中国の国民の間では、「法律は文書に及ばず、文書は指導者の条文に及ばず、指導者

いものの、(1)特定の国家機関が制定、(2)反復適用、(3)対外的 に 普遍的な効 力を持つと いった法の 構成条件を 具えている 。ただ 、 全 国人民代表 大会が、こ うした規範 的な文書を 実質的に審 査する の か、如何に審査するのかは、依然として明文化されていない。

中 国には 建国 以来、 二つ の規範 があ り、一 つは 憲法下 の法 律シス テ ム、もう一 つは中国共 産党中央が 制定する政 策規定で、 中央の 各 部・委員会、国務院及び各部が制定する文書は「実質法規」である。

後 者は、中国 共産党中央 、国務院及 び関係する 部・委員会 の指示 ・ 通 知・会議録 、中央指導 者の談話の 転達、回答 公文等によ り構成 さ

後 者は、中国 共産党中央 、国務院及 び関係する 部・委員会 の指示 ・ 通 知・会議録 、中央指導 者の談話の 転達、回答 公文等によ り構成 さ

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