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2010 年 12 月の COP16 の閉幕を受け、AWG-LCA と AWG-KP の下 で それぞれの 決議文書が 合意された 。しかし今 後、これら が次期 枠 組 みの内容に 反映される かは交渉の 方式次第で あり、依然 楽観視 は できない。

四 2010 年以降の発展:交渉の方式の変化と改善への 試み

1 「ツー・トラック」間協力への試み

交 渉の 方式に 関す るコペ ンハ ーゲン での 論争の 経験 を受け 、2010 年4 月の AWG 会合ではツー・トラックに関する問題が焦点となった。

AWG-KP では、AWG-LCA との協力問題について意見が交わされ、

EU が二つの AWG による密接な協力の必要性を強調し、スイスは先 進国による緩和の誓約など相互関連事項(cross-cutting issue)に関し、

二つのAWG 間の一貫性を確保する必要性があると強調した30。また、

AOSIS が一つのコンタクト・グループを立ち上げ、特定の問題に対 する議論」、「ワークショップの開催」、「AWG-LCA と共同にイベン トを行うこと」などを提案した31。筆者は、これらをツー・トラック の 「独立性の 欠如」と「 負の競争性 」を緩和す る現実的な 試みで あ ると考える。

こ の提案 に対 し、途 上国 の多く は「 二つの 交渉 トラッ クを 厳密に 切 り離した状 態にしてお くことを希 望する」旨 で反対した 。これ は 本 来あるべき 「独立性」 を維持する 意図と考え られる。ツ ー・ト ラ ック方式の改善については、依然先進国(AOSIS など一部途上国を 含む)と途上国グループの立場が一致しなかったが、2010 年 4 月の 会合ではAWG-KP のアッシュ議長が AWG-LCA 議長のサンガーウェ 氏と会合し、「AWG-KP 議長は AWG-KP のマンデートに十分に配慮 し、自身のイニシアティブで AWG-LCA 議長と会合し、付属書I国 の 約束に関す る情報(す なわち限定 的な議題: 筆者)を交 換し、 こ れを締約国に提供することに留意する」ことで合意した32。この進展 は 規模として は小さいが 、ツー・ト ラック間で 協力の可能 性が探 ら

30 「ボン気候変動会議サマリー:2010 年 4 月 9 日から 11 日」(財)地球産業文化研究 所訳、2010 年 4 月 14 日、ttp://www.iisd.ca/climate/ccwg9/japanese/enb12460j.pdf、16 ペ ージ。

31 同上、18 ページ。

32 2010 年 4 月に開催となった第 11 回 AWG-KP の結論書(FCCC/KP/AWG/2010/L.2)。

れた事実として興味深い。

2 共有スペースの設置提案

「 独立性 」と 「積極 的競 争性」 が両 立でき ない 状況を 打破 し、議 論を前進させようとするもう一つの出来事として、2010 年 5 月から 6 月に開催された AWG 会合において、調和性の欠ける二つの AWG の間 に「共有ス ペース(common space)」を設置することが AOSIS によって提案された33。一部の途上国は、現在ツー・トラックの下で 限 定的な共有 スペースの 設置で付属 書I国の緩 和問題を討 議する こ と を支持した が、途上国 グループに は共有スペ ースの設立 に反対 す る国もあり、「このような議論は京都議定書の『死』に向かう一歩で ある」34と懸念を示した。

ツ ー・ト ラッ ク方式 の有 効性に 対し て、途 上国 グルー プ内 でも各 国の立場は必ずしも一致していない。途上国グループの G77+中国 は ツー・トラ ックを一本 化するとま では支持を 明言しない が、場 合 によっては限定された議題についてAWG-LCA と AWG-KP による共 通の議論を行う可能性があることを示唆している35

ツー・トラック間に共有スペースを設置するという案は、2010 年 4 月 AWG 会合で EU とスイスが提案した両 AWG 間協力体制の整備 と 同じ目的で あると考え られる。こ れは、独立 性を維持で きてい な い 現状に合わ せて原則を 変える手段 として評価 されるべき である 。 筆者は先進国との対立から途上国はAWG-KP の独立性を維持し共有

33 「ボン気候変動会議サマリー―2010 年 5 月 31 日から 6 月 11 日」、(財)地球産業文 化研究所、2010 年 7 月 14 日、http://www.iisd.ca/climate/sb32/japanese/enb12472j.pdf、

14 ページ。

34 同上、47 ページ。

35 同上。

ス ペースの創 設を拒み続 けるであろ うと予測す るが、実際 には明 確 に限定された議題に関しては、両 AWGs 間での情報交換や議論が容 認されている。

3 国連プロセスへの強化

ツ ー・ト ラッ クを改 善す るには 、そ もそも 国連 プロセ スを 強化し なければならない。COP15 以降、UNFCCC を補完するための「有志 連 合」が誕生 した。例え ば、スペイ ン、コスタ リカと米国 が主導 す る「適応パートナーシップ」、ドイツと南アフリカの主導となる「MRV パートナーシップ」、ノルウェー、フランスがリードする「REDD+

パートナーシップ36」などがコペンハーゲン合意後に形成され、交渉 現場の片隅で会合を行った37。しかし少数のグループによる政治交渉 が国連交渉と競合し、UNFCCC の中心的役割が維持できなくなるこ と 、もう一つ はパートナ ーシップと いう形式の トラックは 合法性 と 透 明性が懐疑 視されてお り、パート ナーシップ の構築によ る政治 的 妥 協や具体的 進展が比較 的に成立し やすいこと から、この ような 新 た な試みが国 連交渉に対 し脅威とな ることが危 惧されてい る。こ の よ うな補完的 対話トラッ クは主権国 家主導の交 渉手段では あるが 、 先 進国と途上 国、先進国 間、途上国 間で行われ る協力プラ ットフ ォ ー ムと位置づ けられ、情 報の交換と 共有を目的 にしており 、既存 の 国 連交渉を妨 害しようと の考えはな い、とパー トナーシッ プ関係 者

36 REDD+とは、「バリ行動計画」の 1b (iii)「森林保全を含む、途上国における森林減少 および劣化に起因する二酸化炭素ガス排出量削減」の略称。原文は、“policy approaches and positive incentives on issues relating to reducing emissions from deforestation and forest degradation; and the role of conservation, sustainable forest management and enhancement of forest carbon stocks in developing countries.”

37 前掲「ボン気候変動会議サマリー:2010 年 5 月 31 日から 6 月 11 日」、48 ページ。

が説明している38

国連交渉を強化しようとする背景には、COP15 以降 UNFCCC の役 割 と実 効性自 体が 議論の 対象 となっ たこ とがあ る。2010 年 4 月の AWG 会合では、気候変動に関する国際協力を継続するには UNFCCC を 確保する必 要があると いう意見と 、既存の国 連交渉以外 に行わ れ て きた国際協 力がより効 率的であり 、実行性の あるもので あると 主 張 する立場と が対立して いた。例え ば、国連交 渉の外で行 われた 成 功例として、フランスとノルウェーによる暫定的な REDD+パート ナーシップの設置と、気候変動に関して主要経済国が G20 など国連 以外の場で議論することが挙げられる。

現 在、こ れま で気候 変動 問題に 対し て国連 が定 めた交 渉の 方式が 2010 年 4 月の会合において支持そして再確認され、交渉における「透 明 性かつ民主 的参加型」 という基本 方針が途上 国と先進国 によっ て 確認された。それ以降のAWG 会合では、一部の交渉国が気候変動に 関する自国開催の外部会議、例えば2010 年 4 月にボリビアで開催さ れた「気候変動と母なる大地の権利に関する世界人民会議」、ウィー ンで開かれた「アフリカ-EU エネルギーパートナーシップ第一回ハ イ レベル会議 および持続 可能なエネ ルギーに関 する第九回 世界フ ォ ーラム」と、5 月にオスロで行われた「気候及び森林会議」の会議結 果をUNFCCC に報告する動きが見られた39

4 国連以外での交渉体制の発展―アジア太平洋地域の状況 ツ ー・ト ラッ クの行 き詰 まりを 改善 する取 り組 みは始 まっ たばか り だが、国連 交渉そのも のの強化と 信頼回復を 図らなけれ ばなら な

38 同上。

39 前掲「ボン気候変動会議サマリー:2010 年 4 月 9 日から 11 日」、24 ページ。

い ことが締約 国に確認さ れたことは 、大きな進 歩である。 それだ け でなく、現在、国連の外では気候変動に関する多国間40、地域内41、 二国間交渉42が数多く行われており、各国の指導層にとって、気候交 渉に関する直接対話の機会が多く提供されている43。特にアジア太平 洋 地域には気 候変動に関 して、規模 の大きな多 国間対話・ 協力体 制 が二つ存在しており、参加国のGHGs 排出への寄与は極めて大きい。

一 つ目は 「ク リーン 開発 と気候 に関 するア ジア 太平洋 パー トナー シ ッ プ 」(the Asia-Pacific Partnership on Clean Development and Climate、APP)であり、2011 年 7 月に米国と日本の主導で設立され た 。米国の京 都議定書離 脱問題では 、中国やイ ンドなど新 興国と の 排出削減義務の不公平が焦点となったが、APP は米、中、印各国の 参 加を最低限 確保するた めに、気候 変動とエネ ルギー安全 保障、 エ ネ ルギー需要 の増大への 対処を全体 のテーマと して、法的 拘束力 の ない多国間体制を目指している。APP の参加国は現在 7 か国だが、

40 例えば、多国間交渉について G8、G20 気候変動に関する議論と閣僚ないし首脳宣言 があり、また米国による主催の「エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済 国会合(MEM)が 2007 年から三回にわたって開催された。引き続き、2009 年 4 月 から同じく米国の下で「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム」(MEF)

9 回にわたって行われてきた(2011 年 4 月現在)。

41 地域のレベルでは、EU 域内の気候政策のほかに、APEC による「気候変動に関する シドニー宣言」、環境大臣会議、さらに「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋 パートナーシップ」(APP)が挙げられる。

42 両国間交渉の場合、例えば日本が 2004 年 3 月から「日中気候変動対話」をスタート

42 両国間交渉の場合、例えば日本が 2004 年 3 月から「日中気候変動対話」をスタート

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