陳宏銘30の指摘では、国民党の政党組織は 2000 年の選挙での敗北 後、一旦は「選挙マシン」(選舉機器)への改造が図られたが、2004 年の再敗北、2008 年の勝利を経て 2012 年になっても、国民党は依然 と して大衆官 僚型の政党 、つまり常 態的に巨大 な組織の枠 組みを 持 っ ていた。し かし選挙時 に候補者を 補佐する機 関へと切り 替わる こ と ができるつ まり「選挙 マシン」に なれるとは 限らない。 陳は、 国 民 党が選挙マ シンである ことと同時 に巨大な組 織を維持し ようと し た が、結果と して両者と もうまくい かず、選挙 においてず るずる と
30 陳宏銘「「選舉機器」政黨轉型路線與黨政關係的建構:中國國民黨的經驗(2000-2012)
『台灣政治學刊』第17 卷第 2 期、2013 年、頁 15~69。
敗北を遂げたと指摘する。
32 Lin, Chiung-chu, “A Primary Study on Party Membership of the Kuomintang in Taiwan:
From the Party Workers’ Perspectives,” Taiwan Political Science Review, Vol. 17, No. 2, 2013, pp. 71~114.
33 周志豪「得票率 56.16% 洪秀柱當選黨主席」『聯合報』2016 年 3 月 26 日、http://udn.
com/news/story/1/1589666(2016 年 8 月 23 日閲覧)。
19 の郷鎮市区党支部があり、最多となっている。そのほか、嘉義県
な いことが分 かる。しか し相対的に 国民党の中 南部におけ る得票 率 は低く、これら党支部の昨日があまり明確ではないと思われる。図5 では、地方の党支部数と2016 年の総統選挙の得票率が反比例の関係 にあることを示している。党支部が 1 つしかない連江県や金門県な ど は得票率が 高いが、嘉 義市など低 い地方もあ る。党支部 数が多 い 嘉義県や台南市は数に相応する成績は見せていない。
図5 2016 年総統選挙の各県市における国民党得票率と地方党支部数
(出典)筆者作成。
現在、党中央には 6 つの委員会がある。それぞれ、政策会、組発 会 、文化伝播 委員会、行 政管理委員 会、国家発 展研究院、 考査紀 律 委 員会である 。これらの 委員会のほ か、任務ご とに編成さ れた単 位 が多数ある。6 つの委員会には、副秘書長、秘書長が置かれている。
この 6 委員会の主管および正副秘書長を観察すると、かなり高い割 合 で選挙の経 験があり、 民進党がし ばしば現職 あるいは前 任の立 法
委 員を任用し てトップの 主管を担当 させること と比較して 、国民 党
め、地方党支部の機能は大きく低下した。過去 8 年間、国民党は政 権 を握ってい たが、党の 発展にかな った方向性 を見出すこ とがで き ず 、地方組織 のパフォー マンスも振 るわなかっ たことへの 反応が 、 今回の選挙において噴出したと考えられる。
七 むすび
政権が交代 したのは何 が原因であ ったか、と いう最初の 問いに 戻 ると、本稿では、8 年間の国民党による施政において、総統の支持率 が低迷し、経済情勢でも傑出した実績を見せることがなかったため、
国 民党候補者 が民衆への 支持を獲得 するのは容 易ではなか ったと 考 え る。加えて 、有権者の 構成の変化 や政党の立 場の調整、 国民党 の 末 端組織の機 能不全とい った点も、 政権交代が 再び起こっ た原因 で あろう。
さらに、国民党が敗北した主要な原因は、2008 年からの 8 年間に、
国 民党が若者 層、高等教 育層からの 支持を失っ たことが明 らかに な っ た。また副 次的な原因 として、総 統の支持率 が低迷し、 経済情 勢 が以前に比べ悪くなったと回答した民衆は 23.3%しかいなかったに も かかわらず 、その多く が民進党に 投票したこ とが挙げら れる。 ま た、総統の支持率低迷が、国民党候補指名の過程で混乱を生じさせ、
国 民党候補者 が一貫して 後れを取っ たことも関 係する。国 民党の 組 織 機能の不全 は他方で長 期的な問題 となってい る。有権者 の構成 が 徐 々に変化し たことが、 なぜ国民党 に不利に働 いたのか。 この点 に つ いては、有 権者が国民 党の両岸政 策において 過度に中国 に依存 し た ことへの不 満があり、 他方では年 金改革、賃 金上昇の停 滞、労 働 権 益といった 問題に対す る反応が遅 い政府への 不満という 可能性 が あるが、さらに多くの調査データによる仮説の実証が必要である。
台湾はアジアでは数少ない民主国家の 1 つであるが、民主化およ
び 経済成長の 課題に多く 直面してい る。しかし 、問題の多 くは与 党 の 盲点となっ ている可能 性があり、 政権交代を 通じて、新 たな政 党 に より前政権 が解決でき なかった問 題を処理し 、あるいは 社会全 体 の 福祉を引き 上げること ができる。 ただし、政 権与党が実 績を収 め る か否かは、 自身の努力 のほか、民 衆による積 極的な監督 にかか っ ている。2000 年、2008 年、2016 年と 3 度の政権交代を果たし、台湾 の 民衆は理性 や長期的な 展望をもっ て新政権の 施政が民主 、人権 の 基 準にかなっ ているか検 証し、政党 競争の好循 環を達成さ せるこ と ができるだろう。
(寄 稿 :2016 年 8 月 25 日、採用:2016 年 10 月 4 日)
翻 訳 :『 問 題と研 究 』 編集 部