現 状から すれ ば、馬 政権 二期目 の両 岸政策 の基 本ベー スは 第一期 目 と同じであ るため、対 外援助政策 においても 大幅な変化 はなく 、 前 述した前政 権と異なる 三点につい ても同方針 を維持する と見ら れ る が、新たな 課題につい ては克服し ていかなけ ればならな い。 図 2 か らも明らか なように、 台湾の対外 援助額は明 らかに減少 傾向に あ り 、援助を外 交関係と引 き換えにし なくなった ことがその 要因の 一 つ ではあるが 、政府の財 政悪化もま た逃れられ ない一因で ある。 現 在、財政難を理由に対外援助予算を削減せよとの世論はなく、また、
近年の台湾の対外援助額が GNP に占める割合は僅か 0.1%前後であ り 、その他各 国と比較し ても、特に 大盤振る舞 いというわ けでも な い 。しかし、 財政事情が 厳しいのは 否定できな い事実であ り、馬 政 権 二期目の対 外援助政策 においては 、如何に効 果的に援助 予算を 運 用 するかが正 視すべき問 題になると みられ、こ の点につい ては、 経 済 貿易利益の 重視、民間 との連携の 二つの側面 から着手す べきで あ ると考える。
1 経済貿易利益の重視
対 外援助 が、 人の役 に立 ち、且 つ自 国の核 心的 利益も カバ ーでき る のであれば 、対外援助 の効果を増 幅させるこ とができる 。対外 貿 易は台湾経済の主要な源であり、台湾の核心的利益でもある。仮に、
対 外援助が同 時に台湾の 経済貿易利 益にも貢献 するのであ れば、 対
48 財團法人國際合作發展基金會、前掲資料。
外 援助費によ り生み出さ れる効果も 極大化され る。予算を 掌握す る 立 法院は、既 にこの点に 明らかに気 付いており 、外交国防 委員会 は 2012 年に臨時決議を可決し49、外交部が対外援助を実施する際には、
ま ず国内メー カーの産品 を優先的に 購入し、国 内の航空会 社や海 運 業 者の運輸サ ービスを利 用しなけれ ばならない とした。外 交部も 同 様で、2012 年の政府組織改造の際には、元々あった「経済貿易事務 司 」に「科」 を一つ増設 し、名称を 「国際合作 ・経済事務 司」と 変 更 し、今後、 援助計画を 立案する際 には、援助 と経済貿易 利益を リ ンクさせるよう一層の注意を支払わねばならないようになった。
し かし、 立法 院の付 帯決 議では 、台 湾が発 展途 上国に 援助 を提供 する際の供給メーカーには制限があり、所謂紐付き援助(Tied aid)
となっている。OECD の見積もりによると、紐付き援助のコストは アンタイド援助(Untied aid)のコストより、15%から 30%も割高で ある50。よって、DAC は 2001 年、DAC 加盟国による LDCs(後発開 発途上国、Least Developed Country)への援助は、紐無し援助とする よう決議し、逐年、各 DAC 加盟国の実施状況を追跡調査しており、
DAC 加盟国のうち、紐付き援助の割合が最も高いのは韓国となって いる。DAC 加盟国には、紐付き援助の割合を逐年減少する履行義務 が課せられ、2008-2009 年における紐付き援助の割合は平均 58%であ るが、韓国が同意してから 2012 年までに LDC に提供した援助は全 て紐無し援助であることから、2015 年までには、ODA 全体の紐無し 援助の割合は75%以上に達すると見られている51。ここから、紐付き
49 『 中 時 電 子 報 』 2012 年 10 月 9 日 、 http://news.chinatimes.com/politics/110101/
112012100900119.html。
50 Catrinus J. Jepma, The Tying of Aid, (Paris: OECD Publishing, 2001).
51 OECD, “Korea,” in Development Co-operation Report 2011: 50th Anniversary Edition,”
(Paris: OECD Publishing, 2011).
援 助によって 援助国自身 の経済貿易 利益を促進 するやり方 は主流 で は なく、過度 に紐付き援 助を用いる と、台湾の 国際イメー ジにマ イ ナ スの影響を 与える可能 性があるこ とが分かる 。外交部も 同様の 認 識 を持ってい ることから 、その他の 措置によっ て、台湾の 経済貿 易 利益の増進を図るであろう。
もう一つの可能な方法は日本や韓国の経験を手本に ODA と FDI をリンクさせ、まずODA によって良好な投資環境を整備し、自国の メ ーカーを引 きつけるこ とである。 しかし、台 湾と国交の あるア ジ ア 太平洋及び アフリカの 国交国のイ ンフラ状況 は良好であ るとは い え ず、デービ ス輸出加工 区(パナマ )などの失 敗のケース が足か せ に なり、各メ ーカーは中 南米への進 出に消極的 である。こ の戦略 を 実 行したいな ら、台湾と 地理的にも 近く、台湾 企業が投資 に意欲 を 示 しそうな東 南アジア地 域から着手 すべきかも しれないが 、緻密 な 計 画、経済部 ・経済建設 委員会との 密接な協力 が必要なほ か、被 援 助 国と台湾企 業の需要に ついても確 実に理解す る必要があ り、さ も なければODA と FDI のリンクを成功させることは難しいだろう。こ の ほ か 、 援 助 項 目 と 産 業 の 強 み を リ ン ク さ せ ね ば な ら な い が 、
「Lighting up Africa」と LED 産業のリンクはこの好例である。
2 民間との連携
これまでに、数多くの台湾の非政府組織(NGO、Non-Government Organization)が発展途上国に必要な援助や人道援助を行っており、
外 交部も「非 政府組織国 際事務会」 を設置し、 関連事項を とりま と めているほか、「国際交流・活動を行う民間グループに対する外交部 の助成要点」を制定した。2010 年の施行前における国際援助に携わ る民間組織及びグループの援助額についてみると、2009 年-2011 年 はそれぞれ、23.7 億台湾元、36.4 億台湾元、22.5 億台湾元となって
いる。以前、NGO は発展途上国に対する援助が政策目標と一致して いなければ容易に助成を獲得できないと不満を抱いていたが52、対外 援 助における 政治性が低 くなってか らは、この 部分には改 善が見 ら れるであろう。総体的に見れば、台湾のNGO による発展途上国への 援助は既に軌道に乗っているといえ、よって、NGO の参与は我々が 提言すべき重点ではない。
慈 濟や赤 十字 といっ た一 部組織 の財 政は比 較的 潤沢で ある が、大 部分のNGO の財務能力には限界があり、あまり多くの対外援助事業 を 実施するこ とはできな い。よって 、対外援助 経費の不足 に対処 す るためにも民間企業と連携すべきであり、これは NGO のみならず、
一 部は馬政権 の黄金の十 年政綱にも 盛り込まれ ている内容 でもあ る が53、現在までに具体的計画は進んでいないようで、著者は、少なく と も二つの側 面から着手 できると考 える。一つ は、世界的 なブラ ン ド 企業を目指 している企 業を奨励し 、良好な企 業イメージ を打ち 立 て 、間接的に 商品やサー ビスを売り 込むべく、 対外援助事 業に直 接 参 与するよう 働きかける ことである 。もう一つ は、政府と 民間企 業 がBOT やその他の制度を通して、一部は自己返還能力のある援助項 目 に支援を提 供すること である。後 者は経済貿 易利益とリ ンクさ せ る ことができ るほか、国 際組織が認 可・推奨す る援助モデ ルでも あ り、パブリック・プライベートパートナー関係(PPP、Public-Private Partnership)54と呼ばれている。
52 官有垣・邱瑜瑾「台灣民間組織與政府在國際援助事務的角色探析:現況調查及其政黨 意涵」『中國行政評論』第12 卷第 2 期(200 年 3 月)、頁 63~64。
53 「友善國際」行政院經濟建設委員會、http://www.cepd.gov.tw/m1.aspx?SNo=0017252。
54 アジア開発銀行(ADB 、Asia Development Bank)を例とすると、ADB は、特別に PPP のために一冊のハンドブックを編集製作している。詳細は、ADB ウェブサイト を参照:http://www.adb.org/documents/public-private-partnership-ppp-handbook。