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21 世紀の最初の 10 年間が経過し、東アジアの地域統合は ASEAN を核とするFTA ネットワークをほぼ実現した。東アジア全域あるい はアジア太平洋の広域FTA 構想の中で、交渉が始まったのは TPP が 最初である。ASEAN+1 FTA ネットワークがほぼ完成を迎えた 2010 年が分水嶺の年といえ、第2 段階は TPP の交渉開始とともに始まっ たと言ってよい。

第 2 段階の課題は、東アジアあるいはアジア太平洋の広域 FTA の 実現である。東アジア大のFTA については、ASEAN+3(日中韓)に よる東アジア FTA(EAFTA)、ASEAN+6(日中韓印豪ニュージーラ ンド)による東アジア包括的経済連携(CEPEA)、アジア太平洋自由 貿易地域(FTAAP)の 3 つの構想が研究されていた。広域 FTA 構想 の中 で実現に向 けて進展し ているの が FTAAP へのビルディング・

ブロックとされるTPP である。

EAFTA と CEPEA は、原産地規則、関税品目表、税関手続き、経 済協力の4 分野について ASEAN 内での議論が 2010 年に開始され、9 月から全参加国での議論が行われている。2010 年 10 月には、政府間 の 議論につい て具体的な 目標・期限 を設定する ように首脳 から指 示 が出されている。EAFTA は中国が主導し、CEPEA は日本が推進して いるため、ともに具体化が遅れていたが、参加国を ASEAN+α とし て棚上げし、2012 年の交渉入りを目標に物品貿易、サービス貿易、

投資の 3 つの作業部会を創設するという提案を日本と中国が共同で 行うことになった17。ASEAN は別に ASEAN+3 でも 6 でもない ASEAN プ ラ ス α と い う 枠 組 み を 考 え て い る と も 言 わ れ て い る 。 EAFTA、

CEPEA とも日中韓の間が FTA 形成に合意しないと実現しない。

日中韓の間の FTA は、2 国間の FTA と 3 国間の FTA の 2 つの進め 方がある。日中韓3 国 FTA の政府間共同研究は 2011 年から 2012 年 の日中韓首脳会議前までにまとめる予定で開始されており、2011 年 の5 月の日中韓首脳会議で 1 年前倒し、2011 年中に終了することで 合意した。日中FTA は、競合国の FTA の動きが出ると締結への要望 が高まるだろう。その意味で注目されるのは、2010 年 6 月に、中国 と 台 湾 間 で 締 結 さ れ た 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 (ECFA)である。ECFA は、アーリーハーベストとして中国側が 539 品目、台湾側が 267 品 目の関税を 3 年で撤廃する。ECFA の締結を受けて韓国は中国との FTA 交渉を 2011 年に開始する可能性がある。韓国が中国と FTA を 締結すると日本への影響は大きく、日本政府は中国とのFTA を検討 せざるを得なくなるであろう。

アジア太平洋地域の広域FTA は、ACFTA など ASEAN プラス型の FTA と TPP という対照的な FTA が併存することになる。ASEAN プ ラス型は、AANZFTA を除き自由化率が 90%程度と国際的にみて高 い とはいえず 、対象分野 は物品の貿 易、サービ ス貿易、投 資など 限 定されている。TPP は 100%に近い高い自由化率を目指しており、対 象分野は包括的であり、ルール志向型である。EAFTA、CEPEA は、

ASEAN プラス型に近いものになるであろう。

17 「ASEAN との経済統合 日中、交渉加速へ協調」『日本経済新聞』2011 年 8 月 7 日。

表 5 アジア太平洋の広域FTA の 2 タイプ

ASEAN プラス型 TPP 自由化率 90%前後 100%に近く極めて高い 対象分野 物品の貿易、サービス、投資 包括的、環境と労働を含む、

分野横断的事項 特徴 AFTA が雛形となっている

米国を除外

NAFTA を雛形としルールの 策定を重視

米国を含む

(出典)筆者作成。

六 おわりに

他の広域FTA 構想と比べての TPP の特徴の一つは米国の参加であ る 。米国の意 図は前述し たが、アジ ア太平洋地 域での米国 の経済 的 権 益の維持の 背後に中国 の台頭と中 国の影響力 の拡大に対 する危 機 意 識があるこ とを指摘す べきである 。そして、 アジア太平 洋地域 の 通 商ルールを 確立する目 的の一つは 、中国を国 際ルールに 組みこ む ことであることを付け加えるべきであろう。米国の産業界がTPP 交 渉 で政府に強 く要望して いる事項に 公正・平等 な競争条件 の確保 が あ る。特に国 有企業や国 が優遇する 企業との競 争で米国企 業が不 利 な状況になることを問題視している18。また、中国の自主創新政策に よ る政府調達 での中国企 業の優遇、 中国独自の 製品規格の 設定な ど が米国企業を不利にするとして懸念を抱いている。中国は TPP 交渉 には参加していないが、TPP は中国を排除する協定ではなく、将来 的な参加を視野に入れ通商ルールを作ることを意図している。

FTA の締結は競合国を FTA に誘導する効果があるため、TPP の参

18 佐々木高成「通商政策の論点:米産業界の意向 公正な競争環境の実現を求める」

『日本経済新聞』2011 年 5 月 9 日および「通商政策の論点:国産品優遇策 中国市 場締め出しに米が危機感」『日本経済新聞』2011 年 5 月 12 日。

加国は予想のつかない展開をする可能性がある。TPP 締結がアジア 大 洋州地域に どのような ダイナミッ クな影響を もたらすの か、注 目 すべきである。

(寄稿:2011 年 8 月 7 日、採用:2011 年 8 月 26 日)

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