新段階迎える東アジアの地域統合
石
川 幸 一
(亜細亜大学アジア研究所教授)【要約】
東アジアの地域統合は、2010~2011 年に新たな段階に入りつつある。 21 世紀の幕開けとともに始まった第 1 段階では、ASEAN(東アジア諸国聯合)を核とするFTA のネットワークがほぼ完成した。ASEAN では AFTA
(ASEAN 自由貿易地域)が実現し、ASEAN と中国、韓国、日本、イン ド、豪州・ニュージーランド(NZ)との FTA が締結された。新たな段階 は、東アジアあるいはアジア太平洋地域の広域 FTA が課題となってい る。広域FTA(自由貿易協定)は、ASEAN プラス 3(日中韓)、ASEAN プラス6(日中韓、インド、豪州・NZ)と FTAAP(アジア太平洋自由貿 易地域)が提案され、研究されてきた。一方、2006 年に発効した P41 に 米国、豪州などが参加して2010 年に交渉が始まった TPP(環太平洋連携 協定)は、アジアでは新しいタイプの広域FTA である。TPP の特徴は、 ①自由化率が極めて高く、②労働と環境を含む包括的なFTA であり、③ 米国が参加していることである。米国は平等な競争条件、知的財産権の 保護強化などのルール策定を重視しており、その背景には中国を国際通 商ルールに組み込むという長期的な目的がある。新たな段階はTPP が大 きな影響を持ちながら広域FTA の形成が進むであろう。
キーワード:ASEAN 経済共同体、「ASEAN プラス 1」FTA ネットワーク、
TPP(環太平洋連携協定)、ルール志向、自由化率
1 シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドのアジア太平洋地域の 4 カ国の
一 はじめに
東アジアの地域統合は、現在、新しい段階を迎えている。2010 年
は東アジアの地域統合に大きな動きがあった。まず、1 月に ASEAN
自由貿易地域(AFTA)、ASEAN と中国の FTA、ASEAN と韓国の FTA
がほぼ実現した。同時期に、ASEAN と豪州、ニュージーランドとの FTA、ASEAN とインドの FTA が発効した。日本との EPA(経済連携
協定)は 2008 年に発効しており、ASEAN をハブとする主要国との
FTA ネットワーク(ASEAN+1FTA)が完成しつつある。
北東アジアの3 カ国の中では韓国の積極的な FTA 外交が注目され
る。2010 年には再交渉を行っていた米国との FTA に最終合意、また
EU(欧州連合)との FTA を締結し、巨大市場との FTA が大きく前
進した。中国は6 月に台湾との両岸経済協力枠組み協議(ECFA)を 締結した。 次に、全く新しい広域FTA として TPP の交渉が 8 カ国により 3 月 に開始された。その後、マレーシアが参加し 9 カ国で交渉している TPP は米国の参加、自由化率の高さ、対象領域の広さなど従来の東 アジアの広域 FTA 構想とは全く異なった新しい FTA である。2011 年11 月の APEC 首脳会議での妥結を目標に交渉を進めているが、大 枠での合意になるとみられる。 こうした動きの中で、日本は ASEAN との FTA を中心に 12 カ国 (2011 年 8 月時点)と FTA を締結したものの、農業の自由化に踏み 切れないため足踏み状態が続いており、TPP 交渉への参加も出来な かった。 本論は、2010 年を分水嶺として東アジアの FTA が、新しい段階に 入りつつあることを論じている。それは、二国間・地域間FTA から
太平洋での広域 FTA への動きである。広域 FTA 構想では、EAFTA (東アジア FTA)、CEPEA(東アジア包括的経済連携)、FTAAP(ア ジア太平洋自由貿易地域)、TPP(環太平洋連携協定)の 4 つの構想 があり、最も先行しているTPP の重要性が増している。TPP は、ア ジア太平洋地域の広域FTA の形成に極めて大きな影響を与えるであ ろう。
二 地域統合の第一段階が終了
2010 年は東アジアの地域統合の歴史で節目の年となった。大きな 動きとして ASEAN をハブとする FTA ネットワークが完成段階を迎 えたことがあげられる。2010 年 1 月から AFTA(ASEAN 自由貿易地 域)がASEAN 6(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピ ン、シンガポール、タイ)の間で関税撤廃を実現し、ASEAN と中国、ASEAN と韓国の FTA が ASEAN 6 と相手国の間であるが、関税を撤
廃した。また、ASEAN とインド、ASEAN と豪州・ニュージーラン
ドのFTA が発効した。ASEAN と日本の EPA は 2008 年 12 月に発効
している。これらのFTA の概要をみておこう2。
1 AFTA の完成と経済共同体の創設
AFTA は、2010 年 1 月 1 日に ASEAN6 で関税が撤廃された。ASEAN
後発4 カ国(CLMV)3の関税撤廃は2015 年である。 AFTA は、当初は自由化率、利用率とも低く評価は低かったが、段
2 これらの FTA の詳細については、石川幸一「ASEAN の経済統合と東アジア経済連携」 塩見英治・中条誠一・田中素香編『東アジアの地域協力と経済・通貨統合』(中央大 学出版会、2011 年)を参照。 3 ASEAN のうち、後発国であるカンボジア(Cambodia)・ラオス(Laos)・ミャンマ ー(Myanmar)・ベトナム(Vietnam)の 4 か国。
階 的 に 自 由 化 率 を 高 め 原 産 地 規 則 な ど 手 続 き 面 の 改 善 を 進 め て き た。原産地規則は40%累積付加価値基準を採用していたが、2008 年 から関税番号変更基準(HS4 桁)も採用された。現在では、東アジ アのFTA の中では自由化率が高く日本企業が最も多く利用する FTA である。 AFTA がほぼ完成したことから ASEAN の統合の目標は経済共同体 の創設に移っている。「物品、サービス、投資の自由な移動、資本の より自由な移動、熟練労働者の自由な移動」の実現を目指すASEAN 経済共同体(AEC)は 2015 年に実現を目指している。関税撤廃に続 い て、非関税 障壁の撤廃 、サービス 貿易自由化 、規格の相 互承認 、 シ ングル・ウ ィンドウの 創設と税関 統合など貿 易円滑化が 課題と な っている。 経済共同体実現のための行動計画とスケジュールがAEC ブループ リ ントであり 、スコアカ ードにより 実行状況を チェックし ながら 、 行動計画を実施している。 AEC 創 設 に 向 け て 法 制 度 の 整 備 も 進 め ら れ て い る 。 貿 易 分 野 で は、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)が 1992 年に調印された AFTA -CEPT(共通効果特恵関税)協定に代わる協定として 2009 年 2 月 に締結されている。 ATIGA の意義は、①AFTA-CEPT 協定が短く曖昧だったためその 後 多くの補完 する協定や 議定書が出 され利用者 からみて極 めて複 雑 となっていたAFTA 関連の法制を整理・総合した、②ASEAN 経済共 同 体創設を目 標とし関税 撤廃以外の 分野を含む 包括的な行 動計画 、 スケジュールなどを盛り込んでいる、③FTA のベスト・プラクティ ス (最適な実 施)を参考 として包括 的で明確な かつ透明性 を強調 し たルールをベースとした規定となっている、ことである。 投資については、ASEAN 包括的投資協定(ACIA)が 2009 年 2 月
の 首 脳 会 議 で 署 名 さ れ た 。ASEAN 投 資 地 域 枠 組 み 協 定 ( AIA) と ASEAN 投資促進保護協定(AIGA)を統合し、投資前の内国民待遇 な ど投資自由 化、投資保 護、パフォ ーマンス要 求の禁止、 投資家 対 国の紛争解決を含む包括的な協定である。 2 「ASEAN プラス 1」FTA ネットワークの形成 (1) ASEAN と中国の FTA(ACFTA) ASEAN と中国の物品貿易協定は、2005 年 7 月から関税削減を開始 し、ノーマル・トラック品目については2010 年 1 月 1 日に ASEAN 6 と中国の間で関税が撤廃された。CLMV のノーマル・トラック品目 の関税撤廃は2015 年 1 月である。ただし、例外品目の関税は撤廃さ れていない。例外品目は、2018 年までに関税率を 0-5%に削減する センシティブ・トラック品目と2015 年までに 50%を維持できる高度 センシティブ・リスト品目に分けられる。 カラーテレビ、冷蔵庫、洗濯機など家電製品、乗用車(完成車)、 ト ラック、バ ス、2 輪車、自動車部品など輸送機械は、中国および ASEAN 各国でセンシティブ・トラック品目あるいは高度センシテ ィブ品目に指定されている。そのため、現在でも自動車、2 輪車、家 電製品、農産品・食品などについては、関税障壁が維持されている。 サービス貿易協定は、2007 年 1 月の ASEAN と中国の首脳会議で 調 印された。 市場アクセ スにおける 自由化およ び内国民待 遇を約 束 す る 分 野 を 約 束 表 に 記 載 す る ポ ジ テ ィ ブ ・ リ ス ト 方 式 と な っ て お り、WTO(世界貿易機関)のサービス貿易協定(GATS)タイプの協 定 である。漸 進的な自由 化方式を採 用しており 、パッケー ジ方式 で 自由化を進める。 ASEAN 中国投資協定は、2009 年 8 月の ASEAN 中国経済貿易大臣 会 合で署名さ れた。投資 協定は、投 資保護と紛 争解決につ いては 国
際 的に一般に 採用されて いる規定と 同様な規定 となってい るが、 投 資 自由化の規 定はレベル が低く、投 資前の内国 民待遇は認 められ て いないし、パフォーマンス要求の禁止は全く規定されていない。 (2) ASEAN と韓国の FTA(AKFTA) 物品貿易協定は、2005 年 2 月に交渉が開始され、2006 年 8 月に合 意 、2007 年 6 月に発効と短期間で実現した。協定の構成と内容は ACFTA に似ており、ノーマル・トラックとセンシティブ・トラック に分けて段階的に関税削減を行う。 韓国ASEAN 6 は、輸入額の 90%に相当するノーマル・トラック品 目の関税を2010 年 1 月に撤廃した。輸入額の 10%以下で総品目数の 10%以内で指定できるセンシティブ・トラックのうち 7%は、2012 年 1 月に関税率を 20%以下に削減し、2016 年 1 月までに 5%以下に削減 する。輸入額の3%かつ総品目の 3%以内あるいは 200 品目以内で指 定できる高度センシティブ品目は、グループA から E まで 5 グルー プ に分 けられ 、2016 年 1 月までに関税削減の目標が設定されてい る。ただし、グループ E(40 品目)は除外されている。新規加盟国 のノーマル・トラックの関税撤廃期限は、ベトナムが2016 年、ラオ ス、ミャンマー、カンボジアが2018 年である。 高 度セン シテ ィブ・ 品目 は全般 に農 産品、 食品 ・飲料 が多 いが、 ベ トナムはス クーターと 平板圧延品 、フィリピ ンは始動電 動機、 ブ ルネイはタイヤを除外品目に指定している。 ASEAN と韓国のサービス貿易協定は、2007 年 11 月に調印された。 協定の構成と内容は ASEAN 中国のサービス貿易協定とほぼ同じで ある。投資協定は2009 年 6 月に調印されており、自由化・円滑化、 投 資保護、紛 争解決手続 きに関する 規定を含む 包括的な投 資協定 で ある。ASEAN 中国の投資協定に比べると、投資自由化の規定がより
明確になっている。 (3) ASEAN とインドの FTA(AIFTA) 物品貿易協定は 2004 年に交渉が開始され、合意は 2008 年 8 月、 調印は2009 年 8 月、発効は 2010 年 1 月 1 日となった。サービス協 定と投資協定は交渉中である。 AIFTA の特徴は、低い自由化率と厳格な原産地規則である。関税 削 減・撤廃ス ケジュール は、ノーマ ル・トラッ ク1、ノー マル・ ト ラック2、センシティブ・トラック、特殊品目、高度センシティブ・ リスト、除外品目に分けられ、国別には、インドと ASEAN5(ブル ネイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ)、インドと フィリピン、インドと新規加盟国に分けられている。 ノ ー マ ル ・ ト ラ ッ ク は 品 目 数 で 80%、 輸 入 額 で 75%を 占 め て お り、ノーマル・トラックは 1 と 2 に分けられている。ノーマル・ト ラック1 は、品目数で 71%、輸入額で 72%を占めており、2013 年か ら 2018 年に関税を撤廃する。ノーマル・トラック 2 は、品目数で 9%、輸入額で 8%を占め、2013 年から 2021 年に関税を撤廃する。 センシティブ・トラックは品目数で10%である。MFN 税率(Most
Favored Nation Tariff、実行最恵国税率)が 5%超の場合、2016 年から 2021 年までに 5%に削減する。高度センシティブ・リストは、MFN 税率を 50%に削減するカテゴリー1、MFN 税率を 50%削減する、カ テゴリー2、MFN 税率を 25%削減するカテゴリー3 に分けられてお り、2019 年から 2024 年までに削減する。 AIFTA の 原 産 地 規 則 は 、 35%付 加 価 値 基 準 と 関 税 番 号 変 更 基 準 (HS6 桁)の 2 つを満たさねばならないというものである。付加価 値比率は最も低く、関税番号変更も 6 桁と緩やかだが、双方を同時 に満たさねばならず、ASEAN+1 の FTA では最も厳しい規則になっ
ている。 (4) ASEAN と豪州・ニュージーランドの FTA(AANZFTA) ASEAN と豪州、ニュージーランド(NZ)との FTA(AANZFTA) は、2005 年 2 月に交渉が始まり 2008 年 8 月の経済大臣会合で合意、 2009 年 2 月に調印され、2010 年 1 月 1 日に発効した。AANZFTA は、 極 めて包括的 な協定であ り、自然人 の移動、電 子商取引、 協力な ど を含むが、政府調達の規定はない。 AANZFTA は自由化率の高い FTA である。品目ベースで、豪州、 NZ、シンガポールは 100%自由化(関税撤廃)を実現し、ASEAN6 は90%以上の自由化率を達成する。中でもブルネイ、タイは 100%近 い自由化率である。新規加盟国は85%から 89%となっている。豪州、 ニュージーランドとASEAN 6 は 2013 年には、インドネシアが 85%、 タイが 87.2%と若干低いものの、他の国は 90%以上の自由化を達成 する。 原 産 地 規 則 は 、40%付加価値基準あるいは関税番号変更基準を満 た している産 品(原則、 選択方式) である。サ ービス貿易 の自由 化 で は、内国民 待遇および 市場アクセ スについて ポジティブ ・リス ト 方式を採用している。4 つのモードのうちモード 4(サービス供給者 の 越 境 ) に つ い て は 、 第 9 章 の 自 然 人 の 移 動 で 規 定 さ れ て い る 。 ASEAN は、10 か国中 8 カ国が WTO での約束を超える自由化約束 (WTO プラス)をしている。 投資の規定(第11 章)では、投資前の内国民待遇が認められてい る。パフォーマンス要求の禁止については、WTO の TRIMs(貿易関 連 投資措置) 協定に整合 的でない措 置が禁止さ れている。 投資の 自 由 化はネガテ ィブ・リス ト方式が採 用され、投 資家対国の 紛争解 決 手続きについて詳細な規定が置かれている。
(5) ASEAN と日本の FTA ASEAN と日本との間には、2 国間協定と ASEAN 全体との協定の 2 種類の協定が締結されている。2 国間協定は、2002 年に発効したシ ン ガ ポ ー ル と の EPA( 日 本 ・ シ ン ガ ポ ー ル 新 時 代 経 済 連 携 協 定 、 JSEPA)以降、ラオス、カンボジア、ミャンマーを除く 7 カ国と締結 さ れ て い る 。ASEAN 全 体 と は 日 本 ASEAN 包 括 的 経 済 連 携 協 定 (AJCEP)が 2008 年 4 月に調印され 8 月に発効している。AJCEP は 初の複数国間のEPA であり、2 国間 EPA が締結されていなかったカ ンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)の 3 カ国とも EPA が締結さ れることになった。また、2 国間 EPA では、日本から ASEAN に輸 出し加工後に他のASEAN に輸出する場合、AFTA の 40%付加価値基 準 という原産 地規則を満 たさないケ ースがあっ たが、累積 原産地 規 則を導入したことにより解決した。 ASEAN と日本の 2 国間 EPA は、極めて広範な分野を対象とする 包 括的な協定 であり、特 定分野での 人の移動( 日本での就 労)と 日 本 からの産業 分野への協 力、エネル ギー資源の 安定供給、 ビジネ ス 環境整備など他の「ASEAN+1」FTA にない分野を含んでいる。 原産地規則は JSEPA 以降変更があり、現在は、40%付加価値基準 と関税番号変更基準(HS4 桁)の選択制となっている。 3 完成した東アジアFTA 形成の第 1 段階 AFTA および「ASEAN+1」FTA ネットワークがほぼ完成したこと は、2002 年の日本とシンガポールの FTA 締結により幕を開けた東ア ジアのFTA の第 1 段階が終了したことを意味する。第 1 段階の特徴 は、①東アジア域内で2 国間・地域の FTA が締結されたこと、②一 部に例外はあるが自由化率が米国の締結するFTA などと比べ高くな いこと、③日中韓の間でFTA が締結されていないこと、④アジア全
域 あ る い は ア ジ ア 太 平 洋 地 域 の FTA が締結されていないことであ
る。ASEAN を中心とする FTA ネットワークが形成されたのは、2001
年に開始された日本シンガポールのFTA 交渉が中国と ASEAN との
FTA 交渉の誘因となり、中国 ASEAN の FTA が日本、韓国、インド、
豪州・ニュージーランドと ASEAN の FTA を誘発するなど ASEAN
市場を巡りアジア太平洋地域の主要国によりASEAN との FTA 競争 が展開されたためである。ASEAN+1 の FTA の形成により企業の調 達、販売戦略の選択肢は多様化したが、協定の対象範囲、自由化率、 原産地規則など様々であり、FTA の利便性の点では課題が多い。
三 日本と韓国の
FTA 競争
日本が最初のFTA であるシンガポールとの経済連携協定(JSEPA) を締結したのは、2002 年 1 月である。1993 年に開始された AFTA を 除くと、2 国間 FTA では、東アジアではシンガポールとニュージー ランドの FTA が 2001 年 1 月に発効しているだけであり、日本は東 アジアのFTA 競争の先頭に位置していた。 しかし、現在、日本は先頭グループから脱落しつつある。21 世紀 初頭には遅れをとっていた韓国は巨大市場とのFTA 締結で日本を追 い越しており、FTA 相手国への輸出額の輸出総額に示す割合である FTA 比率は、韓国の 36.2%(EU を含む)に対し、日本は 16.5%であ る4。 日韓のFTA の締結・交渉状況を比べると、2011 年 8 月時点で日本 が締結したFTA は 13、交渉中は韓国を含め 3 であり、総数は 16 で ある。韓国は、締結が8、交渉中は 7、研究・検討は 8 であり、総数4 内閣官房「包括的経済連携に関する検討状況」2010 年 10 月 27 日、http://www.mofa. go.jp/mofaj/gaiko/fta/pdfs/siryo20101106pdf。
は22 となる(表 1)。 表 1 日本、韓国のFTA 取組み状況 相手国・地域 日本 韓国 ASEAN 発効、シンガポール、マ レーシア、フィリピン、 タイ、インドネシア、ブ ルネイ、ベトナムとは 2 国間FTA 締結 発 効 、2010 年 10 月に ASEAN 6 とは関税撤廃、 シンガポールとは2 国間 FTA 締結 インド 発効 発効 その他アジア 韓国と交渉中断 日本と交渉中断 豪州 交渉中 交渉中 ニュージーランド 交渉中 GCC 交渉中 交渉中 メキシコ 発効 交渉中 チリ 発効 発効 ペルー 締結 交渉中 米国 締結 カナダ 研究中 交渉 EU 検討作業後交渉入りを予 定 発効 EFTA 発効 その他欧州 スイスと発効 研究・検討 日中韓、モンゴル(2011 年3 月に研究報告書をと りまとめ) メルコスール、日中韓、 中国、ロシア、トルコ、 SACU、イスラエル、コロ ンビア (注)EFTA(欧州自由貿易連合)はリヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス、アイス ランドが加盟。GCC(湾岸協力会議)はバーレーン、クウェート、オマーン、カ タール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が加盟。SACU(南部アフリカ関税同 盟)は南アフリカ、ボツワナ、レソト、ナミビア、スワジランド゙が加盟。 (出典)ジェトロJ-File、外務省経済局「日本の経済連携協定(EPA)交渉-現状と課題 -」2009 年 10 月などにより筆者作成。 1 農業問題が足かせとなる日本 日本は、シンガポールとの FTA 締結以降、メキシコ、ASEAN 主
要国とのFTA の交渉を優先し、その後、スイス、インド、豪州、GCC などを交渉相手国に加え、現在、12 カ国と FTA を締結している。し かし、韓国との交渉は2004 年から中断しており、産業界が要望して いる中国とのFTA は政府レベルの研究もされていない。 日本政府は自国のFTA を EPA と呼んでいる。これは、物品の貿易 だけでなく、広範な分野を対象にしているためであり、貿易円滑化、 衛生植物検疫(SPS)、貿易の技術的障害(TBT)貿易文書の電子化、 電子商取引(スイスとの EPA で規定)、サービス貿易、エネルギー ・ 鉱物資源、 自然人の移 動、競争政 策、政府調 達、知的財 産権、 ビ ジ ネス環境整 備、協力、 紛争解決な どの章を含 んでいる。 自然人 の 移動では、フィリピン、インドネシアとのFTA で看護師、介護福祉 士 の日本での 就労を厳し い条件付き であるが認 めている。 ビジネ ス 環 境整備は貿 易、投資の などビジネ ス活動での 障害や問題 を解決 す るメカニズムであり、日本のFTA の特徴の一つである。 日本の FTA の課題の一つは低い自由化率である。FTA に関する WTO の主要な要件は、GATT24 条に規定されている「実質的に全て の貿易上の障害を撤廃すること」である。通常は、輸入額の 90%以 上 を自由化( 関税撤廃) すると解釈 されている 。輸入額ベ ースで 見 た日本のFTA の自由化率(無税化率)は、メキシコとの FTA を除き 90%を越えている。一方、自由化率を品目ベースで算出すると、日 本の自由化率は80%台とさらに低くなる5。
5 畠山襄「大型 FTA で海外市場の拡大をめざせ」『中央公論』7 月号(2009 年 7 月)、 202~206 ページによると、品目ベースの自由化率では、相手国側のほうが高くなる。
表 2 日本のFTA における自由化率 日本側自由化率 相手国側自由化率 日本シンガポール 日本メキシコ 日本マレーシア 日本タイ 日本フィリピン 日本チリ 日本ブルネイ 日本インドネシア 日本ベトナム 日本ASEAN 日本スイス 94.7%(84.4%) 86.8%(86.0%) 94.1%(88.8%) 91.6%(87.2%) 91.6%(88.4%) 90.5%(86.5%) 99.9%(84.6%) 93.2%(86.6%) 94.9%(86.5%) 93.2% 99.3%(85.6%) 100.0% 98.4% 99.3% 97.4% 96.6% 99.8% 99.9% 89.7% 87.7% 91.0% 99.7% (注)インドネシアの96%は鉄鋼の特定用途免税を含めた場合の数値。カッコ内は品目 ベース(タリフ・ライン)の自由化率。 (出典)外務省経済局「日本の経済連携協定(EPA)交渉-現状と課題-」(外務省、2009 年)、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/pdfs/genjo_kadai.pdf、品目ベースの自 由化率は、内閣官房「包括的経済連携に関する検討状況」2010 年 10 月 27 日、 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/pdfs/siryo20101106pdf。 日本の場合、鉱工業品では55 品目を除き関税を撤廃しており、自 由 化率の低い 理由は農林 水産品分野 での例外品 目の存在で ある。 農 林水産物は大部分が10 年以内に関税を撤廃するが、米、麦、指定乳 製品、豚肉、牛肉など450 品目が除外、360 品目が再協議となってお り 、関税割当 、段階的関 税削減とす る品目も多 い。他の主 要国の よ う に、高関税 による保護 から農家へ の直接支払 いに転換し 、農産 物 の関税削減を可能にしてFTA 推進での遅れを挽回する時期を迎えて い るといえよ う。併せて 、農業の構 造改革を進 めつつ、農 産物の 輸 出促進など攻めの農業を展開すべきである。 農業分野の障害を克服できないことが、日本のFTA が韓国に比べ 遅れをとっている要因となっている。豪州との FTA、米国との FTA は 、農業分野 の自由化を 避けて通れ ないからで ある。巨大 市場と の
FTA の遅れは日本の FTA の第 2 の課題である。 日米FTA は日米の産業界では関心が強いが、米国側は農業を含ん だ包括的でハイレベルなFTA を要求しており日本政府レベルは慎重 であった。しかし、TPP 交渉(後述)への参加は、米国との FTA 交 渉を意味しており、TPP の枠組みでの米国との FTA が実現する可能 性がある。 EU の関税は家電 14%(最高税率)、自動車が 10%(同)と高く EU と韓国のFTA による日本の製造業の不利化への懸念は大きい。日本 とEU については、民間レベルの研究会が 2007 年から日 EU 双方に 設置され、2008 年 7 月に合同報告書を発表した。EU 側は、日本と のFTA 締結には消極的であったが、日本の TPP 参加検討が始まって 以降、姿勢が変化し、2010 年 10 月のブラッセルでの首脳会談で FTA に向けて協力することを確認した。2010 年 4 月に設置された「合同 ハ イレベル・ グループ」 で、関税、 非関税措置 など全ての 関心事 項 について、共同検討作業を行っている。2011 年 5 月の定期首脳会議 で 半年程度の 検討作業を 経て正式な 交渉開始を 目指すこと で合意 し ている。 3 番目の課題は韓国、中国との FTA である。東アジア大の FTA を 構築するには、日中韓でFTA が締結あるいは合意されている必要が ある。 韓国とのFTA は、1998 年に民間レベルの研究が開始されるなど最 も早く取組まれ、2002 年 12 月に交渉が始まったが、2004 年 12 月か ら中断している。日本とのFTA では韓国側は利益の均衡を重視して いる。2008 年から開始された実務協議でも利益均衡を主張し続けて おり、交渉は再開されていない。奥田によると、日韓FTA により日
本の対韓輸出は 39 億 3700 万ドル増加するが、韓国の対日輸出は 3 億 2400 億万ドル増となり、利益の不均衡が大きい6。両国の貿易構 造 から利益の 完全な均衡 は困難であ るが、韓国 側の要求に 対応す る 努 力を行うこ とにより交 渉を再開す る必要があ る。中国は 経済大 国 であるが、政府の基本方針には米国、EU と異なり例示されていない。 2 韓国のFTA 戦略 韓国の特徴は、先進国及び巨大市場および新興国とのFTA に積極 的なことである。先進国では、EFTA との FTA が 2006 年に発効して おり、米国、EU と締結している7。米国、EU 以外の巨大市場につい ては、新興国でもあるインドとのFTA が発効しており、中国とは研 究が終了し、メルコスール、ロシア、トルコと研究を開始している。 韓国は 1999 年にチリとの最初の FTA の交渉を開始し、2003 年 2 月に署名、2004 年 4 月に発効した。チリとの FTA は締結・発効まで 長 い 時 間 を 要 し た が 、 そ の 後 は 比 較 的 短 期 間 で 交 渉 を ま と め て い る 。韓国が世 界経済で重 要な位置を 占める国・ 地域を含め 、短い 期 間で多くのFTA を締結できたのは、明確な戦略とその遂行能力によ る。韓国は、2003 年 9 月に FTA 戦略である「FTA ロードマップ」を 策定し、ロードマップに従い「同時多発的な」FTA 交渉を推進して いる8。ロードマップで提示された FTA 戦略の第 1 段階は、「橋頭堡 国家とのFTA」である。中南米ではチリ、アジアではシンガポール、 北 米 で は カ ナ ダ な ど 地 域 へ の FTA 展開の拠点となる国・地域との FTA をまず締結する。第 2 段階は、「巨大経済圏との FTA」であり、
6 奥田聡『韓国の FTA』(アジア経済研究所、2010 年)、173~174 ページ。 7 本項の記述は、奥田聡、前掲書による。 8 奥田聡、前掲書、56~58 ページ。
たとえばカナダから米国へのFTA を目指す。インドや中国など新興 有 望 国 家 は 潜 在 市 場 先 行 獲 得 戦 略 の 一 環 と し て 推 進 す る と し て い る。 FTA 戦略の実施体制も整備・強化されている。2004 年に「FTA 締 結手続き規定」が制定され、FTA 協定推進委員会が設置されるとと もに外交通商本部にFTA 局が新設された。こうした FTA 推進体制の 整 備に加え、 大統領の強 いリーダー シップが大 きな要因と なって い る9。 米韓FTA は、農業分野を含む質が高く包括的な FTA である。米国 の自由化率は100%、韓国の自由化率は品目ベースで 99.7%、輸入額 ベースで99.3%である。米韓 FTA の韓国の農産物の取り扱いをみる と、乳製品など5 品目は関税を撤廃しないが無税枠を設定しており、 除 外は米だけ となった。 農業対策と して農家へ の所得補償 と競争 力 強化などに20 兆ウォンを 10 年間にわたり支出する計画である10。 2011 年 7 月に発効した EU 韓国 FTA は、米韓 FTA をベースとして おり、2016 年 7 月までに EU は農産物 39 品目を除き全品目、韓国は 93.6%の関税を撤廃する。自動車、電子電気機器、医薬品などの分野 で 非関税障壁 を撤廃し、 地理的表示 など知的財 産権保護の 強化を 行 っている。米国、EU とも韓国との FTA を今後のアジアとの FTA の ベンチマークとするとしており、高度の自由化を行ったFTA である ことが判る。
9 奥田聡、前掲書、63~66 ページ。 10 日本貿易振興機構海外調査部『韓米 FTA を読む』(日本貿易振興機構、2008 年)、1~12 ぺージ。
四 アジア太平洋の
FTA を目指す TPP
1 期を画した米国の交渉参加 TPP は、2006 年 5 月に発効したシンガポール、ブルネイ、チリ、 ニュージーランドのアジア太平洋地域の4 カ国の FTA である環太平 洋戦略的連携協定(P4)を拡大・発展させる協定である。P4 は原則 100%関税撤廃する自由化率が極めて高く、物品の貿易だけでなくサ ービスや政府調達など広範な分野を対象とする FTA である11。将来 的にはAPEC の FTA を目指し他国の交渉参加を認めていた。P4 に注 目したのは米国である。米国は2008 年 3 月に始まった投資と金融サ ービス交渉に参加を決め、その後 9 月に全分野の交渉参加を決定し た 。米国とと もに豪州、 ペルー、ベ トナムも参 加を決定し 、交渉 参 加国は8 か国となった。 P4 参加を決めたのはブッシュ政権であったが、オバマ政権も TPP 交渉参加方針を引き継ぎ、2009 年 11 月にオバマ政権は議会に TPP 交渉への参加を通告した。 TPP 交渉は 2010 年 3 月にメルボルンで 8 カ国により開始され、10 月にはマレーシアが参加し、交渉参加国は 9 カ国になった。ほぼ 2 ~3 か月に一度交渉が行われており、2011 年 11 月にハワイで行われ る APEC 首脳会議での締結を目標にしている。ただし、TPP 交渉で は参加国間で意見の相違がかなりあり、11 月の締結は難しく、大枠 での合意になるとみられる。米国の交渉参加によりTPP がアジア太11 TPP については、石川幸一「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の概要と意義」『国 際貿易と投資』81 号(2010 年 Autumn)、64~74 ページ;同「新しい協定となる TPP」 『国際貿易と投資』84 号(2011 年 Summer)、19~37 ページ;同「TPP 交渉と論点」 ( 国 際 貿 易 投 資 研 究 所 フ ラ ッ シ ュ 、2011 年 ) http://www.iti.or.jp/flash138.htm 、 http://www.iti.or.jp/flash139.htm、http://www.iti.or.jp/flash140.htm。
平洋のFTA に発展する可能性が高まり、急速に注目を集めるように なった。 米国はなぜ輸出増加が期待できない小国の FTA である P4 への参 加を決めたのであろうか。第 1 に世界の成長センターであるアジア 太 平洋地域で の米国およ び米国企業 の経済的権 益を確保す るとい う 狙いがあったためである。P4 は、ASEAN+3 あるいは ASEAN+6 など アジア地域のFTA 構想のように米国を排除していないのである。第 2 に、21 世紀のモデル FTA を作るという長期的な戦略がある。将来 APEC 地域の FTA に拡大する可能性のある TPP に参加しルールを作 っ ていくとい う戦略であ る。そのた めに早期に 参加を決め ており 、 米韓 FTA などの FTA の内容を盛り込もうとしている。第 3 に、P4 が自由化レベルが高く環境と労働を含む包括的なFTA であり、米国 が許容できるFTA であることである。 ア ジ ア の 地 域 統 合 の 枠 組 み か ら 排 除 さ れ て き た 米 国 に と り 、TPP はアジアへの経済的関与の絶好の枠組みとなった。 2 自由化率が高くルール志向 TPP は、現在、24 の作業部会(主席交渉官協議、市場アクセス〈工 業〉、〈繊維・衣料品〉、〈農業〉、原産地規則、貿易円滑化、衛生植物 検疫〈SPS〉、貿易の技術的障害〈TBT〉、貿易救済措置、政府調達、 知 的財産権、 競争政策、 サービス、 金融サービ ス、電気通 信サー ビ ス 、商用関係 者の移動、 電子商取引 、投資、環 境、労働、 制度的 条 項、紛争解決、協力、分野横断的事項)で交渉が行われている。
表 3 P4 と TPP 作業部会の対象分野 分野 P4 TPP 作業部会 市場アクセス(物品) 第3 章 工業品 市場アクセス(農業) 第3 章 農業 市場アクセス(繊維・衣料品) 第3 章 繊維・衣料品 市場アクセス(医薬品・ 医療機器) 第3 章 原産地規則 第4 章 原産地規則 税関協力 第5 章 貿易円滑化 貿易救済措置 第6 章 貿易救済措置 衛生植物検疫 第7 章 衛生植物検疫 貿易の技術的障害 第8 章 貿易の技術的障害 投資 投資 サービス 第12 章 サービス 金融サービス 金融サービス 電気通信 電気通信 電子商取引 電子商取引 商用関係者の一時入国 第13 章 商用関係者の移動 競争政策 第9 章 競争 知的財産権 第10 章 知的財産権 政府調達 第11 章 政府調達 協力 第16 章 協力 環境 協力協定 環境 労働 覚書 労働 透明性 第14 章 分野横断的事項 紛争解決 第15 章 紛争解決 目的・定義 第1 章、第 2 章 制度的事項 例外 第19 章 制度的事項 最終規定 第20 章 制度的事項 (出典)P4 協定および内閣官房「包括的経済連携に関する検討状況」2010 年 10 月 27 日、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/pdfs/siryo20101106pdf により筆者作成。 P4 と比べると TPP 交渉は、市場アクセスが 3 分野に分かれている こ と、投資、 金融サービ ス、分野横 断的事項が 入っている 点が違 っ ている(表 3)。TPP の章構成は、24 の作業部会をほぼ踏襲する形に なると思われ、文字通り包括的な FTA になろう。TPP は P4 を拡大
・発展させる協定だが、実態は別の協定である。協定条文は、P4 が そ のまま使わ れるのでは なく、各国 が協定条文 案を提案し て交渉 を 行っている。 TPP は従来のアジアの 2 国間 FTA とは異なる意義を持っている。 第1 にアジア太平洋地域の広域 FTA として実現可能性が最も高いこ とである(後述)。第2 に当初の 4 カ国が 8 カ国に拡大し現在は 9 カ 国 で交渉して いることが 示すように 参加国が拡 大する可能 性が大 き い。現在、TPP には日本とカナダが参加を検討しており、タイ、フ ィ リピン、韓 国が非公式 に関心を示 していると 言われる。 日本の 新 聞報道によれば、ラオスと台湾の首脳も関心を表明している12。参加 国 が増えれば 増えるほど 自国が不利 な状況にな ることを避 けたい ア ジ アの国々が 参加し、ア ジア太平洋 の自由貿易 圏に発展す る可能 性 がある。第 3 に、TPP は極めて広範な分野の交渉を行っており、原 産地規則、政府調達、知的財産権、TBT、SPS、投資、人の移動(商 用 者の一時的 入国)など の分野で作 られるルー ルが実質的 なアジ ア 太平洋地域の経済連携のルールになる可能性が高いことである。第4 に自由化レベルの高い FTA であることである。ASEAN+1FTA の自 由化レベルは全般に高くはない。TPP では、若干の例外品目は認め られる可能性はあるが、仮に認められた場合でも自由化率は 99%近 いのではないかと考えられる。 3 交渉の論点 TPP は原則として例外なき自由化を目指している。ただし、実際 に例外品目を全く認めない自由化率 100%の FTA になることが決ま
12 ラオスについては、「ラオスTPP 参加検討」『日本経済新聞』2011 年 6 月 28 日、台湾 については、「台湾、TPP に意欲」『日本経済新聞』2011 年 7 月 11 日。
ったわけではない。TPP 交渉加盟 9 カ国の間には 26 の FTA が締結さ れている。それらのFTA は、シンガポールとニュージーランドの FTA のように例外なき FTA もあるが、例外品目を認めている FTA も多 い。たとえば、米豪FTA では米国は砂糖など 108 品目を例外とし、 牛肉の自由化は18 年をかけているし、豪州は中古自動車の輸入を制 限している。したがって、既存のFTA を認めれば例外品目が残るこ とになる。豪州・ニュージーランドと ASEAN の FTA では、豪州・ ニュージーランドの自由化率は 2020 年には 100%となるが、ブルネ イは98.9%、マレーシアは 96.3%、ベトナムは 89.8%である13。 TPP 交渉では、既存 FTA の取扱いを巡って意見が対立している。
既存FTA を残し、FTA が締結されていない国の間で 2 国間 FTA を締
結 するという 交渉方式を 主張してい るのが米国 である。一 方、既 存 のFTA を再交渉し、統一された FTA を作るために統一交渉を行うと い う交渉方式 を主張して いるのが豪 州、ニュー ジーランド 、シン ガ ポールである。交渉方式の交渉を行ってきたが、2010 年 6 月に既存 のFTA を残すことがとりあえず合意され、現在は 2 つの交渉方式が 並存している14。 米国方式では例外が残ることになるが、3 月の交渉でも交渉方式に ついて合意に至っていない。米国は、既存FTA の再交渉はしない意 向といわれており、既存FTA とともに例外品目も残る可能性が高く なっている15。
13 日本機械輸出組合『アジア太平洋における FTA の在り方』(日本機械輸出組合、2010 年)、86 ページ。
14 Ian F. Fergusson and Bruce Vaughn, “The Trans-Pacific partnership Agreement”, Congress
Research Service 7-5700, June 25, 2010, p.9, http://fpc.state.gov/documents/organization/
145583.pdf, p9 を参照。
TPP 交渉は、6 月(ベトナム)、10 月(ペルー)の後、11 月にハワ イで開催される APEC 首脳会議で締結することを目標としている。 しかし、11 月の締結は難しく、大枠での合意(broad outline)になる と の見方が出 ている。こ れは、前述 のように物 品の貿易を はじめ と して多くの交渉分野で意見の相違・対立があるためである(表 4 参 照)16。 米 国を含 め各 国はセ ンシ ティブ 品目 、産業 を抱 えてお り、 特定産 業や分野を保護する政策を実施している。物品の貿易では100%自由 化 が 可 能 な シ ン ガ ポ ー ル で も サ ー ビ ス 貿 易 の 自 由 化 率 は 高 く な い し 、国営企業 の独占を認 めている国 がある。経 済的に弱い グルー プ や 先住民族に 対する優遇 措置がマレ ーシア、米 国、ニュー ジーラ ン ド で実施され ている。投 資自由化に ついては、 投資家対国 の紛争 解 決 規定の導入 を豪州やニ ュージーラ ンドが反対 しているし 、知的 財 産 権の保護に ついては米 国とニュー ジーランド が対立して いる。 米 国 と豪州・ニ ュージーラ ンドの対立 が報道され ることが多 いが、 交 渉 における対 立は、米国 対豪州・ニ ュージーラ ンドに単純 化でき な い複雑な様相を呈している。
渉をしないと語ったといわれる。 16 これらの点の詳しい説明は、石川幸一、前掲「TPP 交渉と論点」を参照。
表 4 想定されるTPP 交渉の主な課題 分 野 概 要 物品の貿易 ・ センシティブ品目の取扱い ・ 関税割当の導入 ・ 農業や繊維の特別セーフガードの導入 原産地規則 ・ 繊維の原産地規則としてヤーンフォワードの導入(米国 が提案) ・ 原産地規則の統一(スパゲッティ・ボウル現象の解消) ・ 原産地の証明を行うのか輸出者(米国)か輸入者(ニュ ージーランド)か ・ 域内原産比率の算出に取引価額(ニュージーランド)を 使うか調整価額を使うか(米国) サービス ・ ネガティブ・リスト方式の使用 ・ サービス分野の自由化をどこまで行えるか ・ 内国民待遇の例外の取扱い(米国の商船法など) 投資 ・ 投資家対国の紛争解決規定を導入するか(米国が主張、 豪州、ニュージーランドが反対) 知的財産権 ‧ TRIPs 協定なみの知的財産権の保護とするか、TRIPs 協定 を超えた保護の強化とするのか(著作権の保護期間を 50 年間から70 年に延長、並行輸入の制限など。米国が提案、 豪州が反対) 競争政策 ‧ 国営企業による独占・指定独占の制限、特にニュージー ランドの薬品管理局の補助金(米国が主張)、ベトナムの 国営企業の取り扱い 政府調達 ・ マレー系企業への優遇(マレーシア)など無差別の例外 の取扱い ・ 対象機関の範囲と基準額 途上国の 待遇 ‧ 特別かつ異なった待遇(S&D)をベトナムなどに認める のか、特別待遇は認めず途上国への協力を規定するのか (出典)石川幸一「新しい協定となるTPP」『国際貿易と投資』84 号(2011 年 Summer)、 19~37 ページ。 4 TPP 参加に踏み切れなかった日本 民主党政権が策定した新成長戦略では、「2020 年までにアジア太平 洋 自由貿易地 域を実現す る」ことが 明記されて いる。アジ ア太平 洋 地域のFTA を目指す TPP 交渉に参加することは戦略目標に沿ってい
るはずだが、現実には2010 年の APEC 開催時には TPP 交渉参加は出 来なかった。2011 年 6 月に予定されていた TPP 参加の結論は、2011 年3 月の大震災の発生により先延ばしされている。 日本のTPP 参加の意義は短期的な意義と中長期的な意義に分けて 考えるべきであろう。短期的には、まず、韓国に対するFTA 締結で の遅れを取り戻せることである。韓国は2010 年にすでに締結してい
た米国とのFTA で最終合意に達し、EU との FTA も発効した。中国
とのFTA も 2011 年に交渉開始される可能性がある。TPP 参加により 米国とのFTA がないことによる不利は是正できる。EU は日本の TPP 参 加により日 本市場での 米国との競 争で不利に なるため、 消極的 で あった日本とのFTA に前向きになっている。 次に、市場アクセスの改善があげられる。日本がTPP 交渉参加国 と締結したEPA では自由化されていない分野が多く、TPP により市 場 開放が進め ば物品の貿 易、サービ ス、政府調 達などの分 野で利 点 は大きい。 中長期的に は、アジア 太平洋自由 貿易地域に 参加するこ とは日 本 の 経済活性化 のために絶 対必要であ ることであ る。次に、 アジア 太 平 洋地域の経 済連携のル ール作りへ 参加するこ とができ、 日本の 利 益になるルールを主張できることである。自国のFTA と異なったル ー ル、自国産 業に不利に なるルール が決められ ると日本の 国益に と り 明らかに不 利益である 。米国は自 国産業に有 利なルール を盛り 込 むために自国の締結したFTA の規定を TPP の協定文に採用すること を交渉の目標としている。 次に、農業 改革、規制 改革などの 改革が促進 されること である 。 特 に 農 業 の 改 革 は TPP 参 加問題がな くても待っ たなしの状 態で あ る。極めて高い自由化率を求めるTPP では、従来の EPA のように農 産 品について 除外、再協 議などの措 置をとるこ とは難しく なる。 関
税 による保護 から直接支 払いによる 保護に移行 し、競争力 強化を 図 るなどの抜本的な農業改革が必要になる。TPP は農業の抜本的な改 革の機会となる。
五 新たな段階に入る地域統合
21 世紀の最初の 10 年間が経過し、東アジアの地域統合は ASEAN を核とするFTA ネットワークをほぼ実現した。東アジア全域あるい はアジア太平洋の広域FTA 構想の中で、交渉が始まったのは TPP が 最初である。ASEAN+1 FTA ネットワークがほぼ完成を迎えた 2010 年が分水嶺の年といえ、第2 段階は TPP の交渉開始とともに始まっ たと言ってよい。 第 2 段階の課題は、東アジアあるいはアジア太平洋の広域 FTA の 実現である。東アジア大のFTA については、ASEAN+3(日中韓)に よる東アジア FTA(EAFTA)、ASEAN+6(日中韓印豪ニュージーラ ンド)による東アジア包括的経済連携(CEPEA)、アジア太平洋自由 貿易地域(FTAAP)の 3 つの構想が研究されていた。広域 FTA 構想 の中 で実現に向 けて進展し ているの が FTAAP へのビルディング・ ブロックとされるTPP である。 EAFTA と CEPEA は、原産地規則、関税品目表、税関手続き、経 済協力の4 分野について ASEAN 内での議論が 2010 年に開始され、9 月から全参加国での議論が行われている。2010 年 10 月には、政府間 の 議論につい て具体的な 目標・期限 を設定する ように首脳 から指 示 が出されている。EAFTA は中国が主導し、CEPEA は日本が推進して いるため、ともに具体化が遅れていたが、参加国を ASEAN+α とし て棚上げし、2012 年の交渉入りを目標に物品貿易、サービス貿易、投資の 3 つの作業部会を創設するという提案を日本と中国が共同で
行うことになった17。ASEAN は別に ASEAN+3 でも 6 でもない ASEAN
プ ラ ス α と い う 枠 組 み を 考 え て い る と も 言 わ れ て い る 。 EAFTA、 CEPEA とも日中韓の間が FTA 形成に合意しないと実現しない。
日中韓の間の FTA は、2 国間の FTA と 3 国間の FTA の 2 つの進め
方がある。日中韓3 国 FTA の政府間共同研究は 2011 年から 2012 年 の日中韓首脳会議前までにまとめる予定で開始されており、2011 年 の5 月の日中韓首脳会議で 1 年前倒し、2011 年中に終了することで 合意した。日中FTA は、競合国の FTA の動きが出ると締結への要望 が高まるだろう。その意味で注目されるのは、2010 年 6 月に、中国 と 台 湾 間 で 締 結 さ れ た 経 済 協 力 枠 組 み 協 定 (ECFA)である。ECFA は、アーリーハーベストとして中国側が 539 品目、台湾側が 267 品 目の関税を 3 年で撤廃する。ECFA の締結を受けて韓国は中国との FTA 交渉を 2011 年に開始する可能性がある。韓国が中国と FTA を 締結すると日本への影響は大きく、日本政府は中国とのFTA を検討 せざるを得なくなるであろう。
アジア太平洋地域の広域FTA は、ACFTA など ASEAN プラス型の
FTA と TPP という対照的な FTA が併存することになる。ASEAN プ
ラス型は、AANZFTA を除き自由化率が 90%程度と国際的にみて高 い とはいえず 、対象分野 は物品の貿 易、サービ ス貿易、投 資など 限 定されている。TPP は 100%に近い高い自由化率を目指しており、対 象分野は包括的であり、ルール志向型である。EAFTA、CEPEA は、 ASEAN プラス型に近いものになるであろう。
17 「ASEAN との経済統合 日中、交渉加速へ協調」『日本経済新聞』2011 年 8 月 7 日。
表 5 アジア太平洋の広域FTA の 2 タイプ ASEAN プラス型 TPP 自由化率 90%前後 100%に近く極めて高い 対象分野 物品の貿易、サービス、投資 包括的、環境と労働を含む、 分野横断的事項 特徴 AFTA が雛形となっている 米国を除外 NAFTA を雛形としルールの 策定を重視 米国を含む (出典)筆者作成。
六 おわりに
他の広域FTA 構想と比べての TPP の特徴の一つは米国の参加であ る 。米国の意 図は前述し たが、アジ ア太平洋地 域での米国 の経済 的 権 益の維持の 背後に中国 の台頭と中 国の影響力 の拡大に対 する危 機 意 識があるこ とを指摘す べきである 。そして、 アジア太平 洋地域 の 通 商ルールを 確立する目 的の一つは 、中国を国 際ルールに 組みこ む ことであることを付け加えるべきであろう。米国の産業界がTPP 交 渉 で政府に強 く要望して いる事項に 公正・平等 な競争条件 の確保 が あ る。特に国 有企業や国 が優遇する 企業との競 争で米国企 業が不 利 な状況になることを問題視している18。また、中国の自主創新政策に よ る政府調達 での中国企 業の優遇、 中国独自の 製品規格の 設定な ど が米国企業を不利にするとして懸念を抱いている。中国は TPP 交渉 には参加していないが、TPP は中国を排除する協定ではなく、将来 的な参加を視野に入れ通商ルールを作ることを意図している。 FTA の締結は競合国を FTA に誘導する効果があるため、TPP の参18 佐々木高成「通商政策の論点:米産業界の意向 公正な競争環境の実現を求める」 『日本経済新聞』2011 年 5 月 9 日および「通商政策の論点:国産品優遇策 中国市 場締め出しに米が危機感」『日本経済新聞』2011 年 5 月 12 日。
加国は予想のつかない展開をする可能性がある。TPP 締結がアジア 大 洋州地域に どのような ダイナミッ クな影響を もたらすの か、注 目 すべきである。
迎向新階段的東亞區域整合
石 川 幸 一
(亞細亞大學亞洲研究所教授)【摘要】
東亞的區域整合在 2010~2011 年逐漸邁入新的階段。隨著 21 世紀開 始而展開的第一階段中,幾乎完成了以東協(ASEAN)為核心的自由 貿易協定網路。ASEAN 實現了東協自由貿易區(AFTA),締結了東 協 和中國、韓 國、日本、 印度、澳洲 、紐西蘭的 自由貿易協 定。東 亞 以 及亞洲太平 洋區域的廣 域自由貿易 協定成為新 階段的課題 。廣域 的 自由貿易協定,提議及研究了諸如東協加三(日中韓)、東協加六(日 中韓、印度、澳洲、紐西蘭)及亞太自由貿易圈 FTAAP(APEC 的自 由貿易協定)。另一方面,美國及澳洲等參加了 2006 年生效的 P4, 且 2010 年開始交涉的泛太平洋戰略經濟夥伴協定(TPP),是亞洲新 型的廣域自由貿易協定。TPP 的特徵有①自由化比極高,②是包括勞 動 及環境的總 自由貿易協 定,③美國 的參加。美 國重視平等 的競爭 條 件 及智慧財產 權的保護強 化等規則的 制定,其背 景是以中國 之加入 新 國際貿易規則為長期目的。在新階段中,TPP 應該會發揮廣大的影響 而廣域自由貿易協定的形成將會有所進展。 關鍵字:東協(ASEAN)經濟共同體、「東協加一」自由貿易協定網、 TPP、規則導向、自由化比Entering into a New Stage of
Regional Integration in East Asia
Koichi Ishikawa
Professor, Institute for Asian Studies, Asia University
【
Abstract】
Regional integration in East Asia has gradually entered into a new phase since 2010. In the 1st stage, which started in 2000, FTA’s networks centering on
ASEAN were almost established. AFTA and ASEAN plus One FTA were realized China, South Korea, India, Australia and New Zealand to conclude a FTA with ASEAN. In the next phase, pursuit of a region-wide FTA in East Asia or the Asia-Pacific region became the focal issue. Three groups have been proposed and studied for a region-wide FTA: ASEAN plus 3 (Japan, China, and South Korea), ASEAN plus 6 (Japan, China, South Korea, India, Australia, and New Zealand), and FTAA, which is FTA in APEC. Meanwhile, U.S. and Australia joined the P4 that became effective as of 2006, and a TPP has been in negotiation since 2010. TPP is a new type of region-wide FTA with the following characteristics: 1) extremey high ratio of liberalization, 2) a labor and environmental issue inclusive FTA, and 3) participation of the U.S. The U.S. focuses on formulation of rules for competitive equality and enhancement of intellectual property rights protection, aiming to get China to comply with international trade rules in the long run. The creation of a region-wide FTA will progress under the strong influence of TPP in the new phase.
Keywords: ASEAN Economic Community, ASEAN plus One FTA network, TPP, rule oriented FTA, ratio of tariff elimination of FTA (liberalization ratio of FTA)
〈参考文献〉 「ASEAN との経済統合 日中、交渉加速へ協調」『日本経済新聞』2011 年 8 月 7 日。 「台湾、TPP に意欲」『日本経済新聞』2011 年 7 月 11 日。 「ラオスTPP 参加検討」『日本経済新聞』2011 年 6 月 28 日。 石川幸一「ASEAN の経済統合と東アジア経済連携」塩見英治・中条誠一・田中素香編 『東アジアの地域協力と経済・通貨統合』中央大学出版会、2011 年 に所収) ______「TPP 交渉と論点」(国際貿易投資研究所フラッシュ、2011 年) http://www.iti.or.jp/flash138.htm、http://www.iti.or.jp/flash139.htm、 http://www.iti.or.jp/flash140.htm。 ______「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の概要と意義」『国際貿易と投資』81 号(2010 年Autumn)、64~74 ページ。 ______「新しい協定となる TPP」『国際貿易と投資』84 号(2011 年 Summer)、19~37 ペ ージ。 奥田聡『韓国のFTA』(アジア経済研究所、2010 年)。 外務省経済局「日本の経済連携協定(EPA)交渉-現状と課題-」(外務省、2009 年)、 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/pdfs/genjo_kadai.pdf。 佐々木高成「通商政策の論点:米産業界の意向 公正な競争環境の実現を求める」『日 本経済新聞』2011 年 5 月 9 日。 ______「通商政策の論点:国産品優遇策 中国市場締め出しに米が危機感」『日本経済 新聞』2011 年 5 月 12 日。 内閣官房「包括的経済連携に関する検討状況」2010 年 10 月 27 日、 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/pdfs/siryo20101106pdf。 日本貿易振興機構海外調査部『韓米FTA を読む』(日本貿易振興機構、2008 年)。 塩見英治・中条誠一・田中素香編『東アジアの地域協力と経済・通貨統合』(中央大学 出版会、2011 年)。 日本機械輸出組合『アジア太平洋における FTA の在り方』(日本機械輸出組合、2010 年)。 畠山襄(2009)「大型 FTA で海外市場の拡大をめざせ」『中央公論』7 月号(2009 年 7 月)、202~206 ページ。
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