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さて最後に安倍政権が2016 年末まで一貫して追求してきたロシア

31 「安倍総理大臣演説」外務省、2013 年 1 月 18 日、http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/

enzetsu/25/abe_0118j.html、2018 年 2 月 18 日アクセス。安倍晋三『日本の決意』新潮 社、2014 年、69~73 ページ。

32 「トランプ大統領のアジア訪問から見えた新しい『インド太平洋戦略』」ZUU online、

2017 年 11 月 19 日、https://zuuonline.com/archives/181506、2018 年 1 月 17 日アクセス。

と の関係改善 の政策に、 トランプ政 権の登場が どのような 影響を 与 えたかを検討したい。まずもう一度2016 年 12 月 15 日(山口)及び 16 日(東京)というトランプ大統領登場直前に、日ロ関係がどこに いたかを簡潔に概観しておきたい。

先 ず北方 領土 問題で ある 。係争 地は 、千島 列島 の南部 で北 海道に 隣 接する「歯 舞群島・色 丹・国後・ 択捉」の四 島である。 過去の 歴 史的経緯の中から、1956 年の日ソ共同宣言でソ連は「平和条約の締 結 の後に歯舞 ・色丹を引 き渡す」こ とに同意、 日本側は「 それだ け で はだめだ、 国後・択捉 も合わせて 渡してもら わねば」と 言って 、 冷戦期、交渉は基本的には動かなかった。

ゴルバチョフの登場後、両国政府は、「この問題をなんとかしよう」

と いうことに なる。ソ連 邦崩壊とロ シア連邦成 立、エリツ ィンか ら プーチンへの政権交代でこの機運は更に高まった。1992 年春コズイ レ フ外相訪日 でロシア側 は「非公式 提案」とし ながらも、 歯舞・ 色 丹 についてま ず引き渡し 交渉をし、 それに倣っ た形で国後 ・択捉 の 交 渉をし、四 島併せて平 和条約を結 ぶという「 歯舞・色丹 と国後 ・ 択捉の時間差交渉」を提案、日本はうけいれなかった33

2001 年プーチン森の間で、日本側から、「歯舞・色丹と国後・択捉 を 分離並行協 議」すると いう空間差 提案を行い 、ロシアは これに の り かけたが、 小泉時代に 入って日本 側の方から 並行協議を ひきあ げ てしまった。

そして、2012 年 3 月大統領職に復帰する直前プーチンは「引き分 けによる合意」を提案、12 月に政権に返り咲いた安倍総理との間で

33 東郷和彦『歴史認識を問い直す-靖国、慰安婦、領土問題』(角川 ONE テーマ 21、

2013 年)94~100 ページ。

いわば「三度目の正直」の交渉が始まったのである34

こ の交渉 がウ クライ ナ問 題によ る二 年間の 遅延 にもか かわ らず継 続され、2016 年 12 月の山口・東京会談開催に繋がった経緯はすでに 述 べた。山口 で双方は「 新しいアプ ローチ」に 合意した。 どこが 新 しかったのか。ゴルバチョフ末期からエリツィン時代の90 年代、双 方 は主権交渉 という最も 難しい交渉 (主権の輪 )をやりな がら、 日 本 の四島への 現実的な関 わりをふや していくた めのビザな し交流 や 四島領海内操業についての交渉(環境の輪)を同時並行的に進めた。

「 新しいアプ ローチ」で はこの空間 差交渉を時 間差交渉に 改め、 一 旦 難しい主権 交渉を停止 し、まず日 ロ間で四島 内で何を一 緒にで き る かを考えて みようとい うことにな った。主権 の輪が解決 してい な い から、当然 やれること には限界が ある。だか らあまり難 しく考 え ないで、「とにかく「一緒にやることはいいことだ」という雰囲気を つ くれないか 。そのうえ で強化され た信頼関係 に基づき、 一気呵 成 に主権の輪をつめ、平和条約に行こう」というわけである。

も う一つ 、山 口・東 京で は、特 に極 東・シ ベリ アを中 心と する経 済 協 力 拡 大 の メ ニ ュ ー が 討 議 さ れ た 。2013 年 春 の 大 経 済 ミ ッ シ ョ ン、2016 年ソチで提案された 8 項目提案と、大プロジェクトから規 模 は小さいが 実際に役に 立ち民間も 協力にやぶ さかでない 中小プ ロ ジェクトのラインアップと実施が始まった。

更 にもう 一つ プーチ ンは 「日本 にと って日 米安 保条約 の重 要性は 解 るが、ロシ アにとって の安全保障 上の要諦が どこにある かをよ く 理 解し、それ を損なわな い方向でや ってほしい 」と述べた 。総論 に

34 筆者は日ロ関係につい手相当数の本を書いてきたが、この間の経緯を最も簡潔にと

りまとめたのは『返還交渉――沖縄・北方領土の「光と影」』(PHP 新書、2017 年 3 月)の第五章・第六章・終章である(167~266 ページ)。

お いて日本側 に異議があ るはずもな いので、各 論への不安 を持ち な がら2017 年が開けていったのである。

さ て、一 年が たった 。こ の一年 を総 括する なら 、双方 事務 当局が

「やっています」「やっています」と言っている割には、何も結実し て はいないで はないかと いう懸念が ぬぐえない 。鳴り物入 りで始 ま っ た「主権交 渉を先延ば しにしてま ずできる交 渉をやる」 ことに し た共同経済活動からは、まだ一つのプロジェクトも合意されない。

シ ベリア ・極 東につ いて は、フ ァイ ナンス もち ゃんと つき 、これ な ら「日ロ協 力の目玉」 と思える大 プロジェク トは結実し ない。 安 全 保障にいた っては、ど うやら、日 米安保条約 の適用の話 とミサ イ ル防衛(MD)といういわゆる迎撃兵器の問題があるらしいことが漏 れ 伝わってく るが、それ が何を意味 するかは、 いまだ、霧 の中で あ る。

さてこの交 渉の停滞は どこから来 るのだろう ?これはト ランプ 政 権 になったか ら起きたの か、それと も本質的に 別の要因が あった か らなのだろうか?

トランプと ロシアにつ いては、明 確に二つの ことを言わ ねばな ら な い。まずは トランプと ロシアとは 仲の良い関 係があり、 そこで 特 に 選挙戦の過 程で不正が あったので はないかと いう主にア メリカ の 国 内問題とし ての「ロシ アゲート」 の問題が噴 出している という 事 態 である。ア メリカ一部 の反プーチ ン・反トラ ンプのムー ドはす さ ま じいから、 もしかもし たら、トラ ンプ政権は これでひっ くりか え るかもしれない。

もう一つは 、トランプ 政権が日ロ 交渉につい て何を言っ ている か と いうことで ある。この 点について は、トラン プが日ロ関 係推進 に つ いて何か否 定的なこと を言ってい るとは、少 なくとも筆 者のと こ ろには何も聞こえてこない。

そ うだと する と、ト ラン プであ るが ゆえに 交渉 に内在 する 脆弱性 は増えたとしても、2017 年一年の交渉の遅れは、交渉に内在する難 し さゆえであ り、トラン プ政権が故 であるとい う議論はし にくい の ではないか。

七 結論

さて最後に もう一度総 括的に考え ておきたい 。北朝鮮・ 中国・ ロ シア、この三つの難しい交渉を 2018 年、ひいては、2021 年 3 年 3 期 の総裁任期 が終わるま での間安倍 政権が続け ていく間、 トラン プ 政権の政策はどのような影響を与えるのだろうか。

結論から言 えば、トラ ンプ政権に よって安倍 政権の政策 選択の 余 地 は広まった のではない かと思う。 北朝鮮とは 戦争勃発の 危機の 可 能 性は高まっ ている。し かし「危機 は機会」で ある。安倍 政権の 政 策選択のよろしきをえれば、外交の幅はひろがる。

ましてや中 国はそうで ある。トラ ンプが経済 の多数国間 主義否 定 からTPP から引いたという「危機」は、日本外交の「機会の窓」を ひろげたといえよう。2018 年はそれがどの程度ワークするか試され る時期である。

プーチンに ついても、 既述のごと く、米国内 の「ロシア ゲート 」 に よる脆弱性 の拡大はあ っても、日 ロ交渉につ いて注文を つけて こ ない(らしい)ことは、「機会の窓」の拡大であること、言をまたな い。

以上を持って結論としたい。

(寄 稿 :2018 年 1 月 18 日、採用:2018 年 3 月 1 日)

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