今回の金融危機が短期間のうちにアメリカから全世界に急速に波 及したのを受け、各国は低迷する市場の購買意欲を高めようと、金 利を引き下げる等の金融緩和政策を採用して国内需要の拡大を図っ たほか、次々と追加預算を提出して財政拡大政策による景気の刺激 を行った。しかし、前述したとおり、日本の金利はすでにほとんど 引き下げる余地が残っておらず、財政困難等の要因もあり、日本が 採ることのできるる対策は他の国々に比べて限られていた7。しかし
7 日本は 1990 年代のバブル経済崩壊後、低迷した国内景気を活気づけるため、大量な 財政支出を行った。2008 年の日本財政赤字は GDP 比で 170%に昇り、同時期のアメ リカ(65.8%)、イギリス(49.8%)、ドイツ(64.2%)、フランス(71.0%)、イ タリア(117.1%)、カナダ(64.4%)よる遥かに高い数値となっている。
ながら、この急激かつ深刻な金融危機に対応すべく、2008 年 8 月以 19.82%を占めるに過ぎなかったことである。1992 年から 2000 年に かけて、日本政府がバブル経済後の低迷する景気を引き上げようと
生活対策 2008.10.30 1.家計緊急支援対策
(出所)内閣府(2009)『平成 21 年度年次経済財政報告書』(http://www5.cao.go.jp/
j-j/wp/wp-je09/09f13100.html、2009 年 8 月 5 日確認)第 1-3-10 表により著者作 成。
本市場に混乱をもたらした。そのため、2008 年 10 月、第二次経済対 策として、定額給付金(台湾の消費券に類似)を給付し、生活家計 の援助と金融資本市場の安定を図った。
第三の経済対策は、2008 年 12 月に、全世界需要の大幅な減少によ る日本の生産と輸出の急激な減少が国民生活に影響をもたらしたた め、雇用補助の拡大による雇用対策、政策金融公庫による「危機対 応業務」の発動等、金融市場・資金調達対策、住宅ローン減税など を実施した。
また、2009 年 4 月、企業不景気が深刻になり、この状況が更に深 刻に雇用、国民全体の消費意識などの家計に影響したため、第四の 経済対策として、雇用拡大と金融対策をいっそう強めるほか、エコ カーの購入、健康長寿・育児などを重点として補助を行った。また 今回の経済対策は、事業規模が56.8 兆円、財政負担が約 15.4 兆円に 達する等、それぞれ過去の対策規模を超えている。
これら一連の経済対策の効果は、まだ完全には現れていないが、
最近の日本経済は底打ち反発の兆しが見られ、実質 GDP、輸出、鉱 工業生産などは、全て下落幅が縮小し、またゆるやかな成長傾向に ある。以下では、今回の世界金融危機において影響の大きい個人消 費、金融・倒産などの例により、経済対策の初歩的な効果を検証し ていく。
1 個人消費
前述したように、世界金融危機により国外需要が大幅に減少した ため、内需拡大は、しだいに日本政府の金融危機経済対策の主要な 任務の一つとなった。特に、2009年3月から、高速道路料金の値下げ、
エコカー減税・補助、エコポイント、定額給付金などを順に実施し、
内需拡大効果の加速を狙った。日本内閣府消費総合指数によると、
日 本 の 消 費 増 加 幅 は 小 さ い が 、2009年 3月 か ら 連 続 4ヶ 月 間 前 月 比 0.4%~0.8%9増加している。以下、上述の政策効果を概観する。
ま ず 、 1 人1.2万~2万円の定額給付金であるが、この制度は2009 年3月15日から各自治体が給付の日時を決め、申請書の郵送による振 込み、振込みの窓口申請、窓口での現金受領などの受領方法が選択 できる。申請期限は受付開始日から半年間である10。7月27日現在ま でにすでに給付対象世帯の91.4%が受領済みとなっており、そのうち の6割の自治体はプレミアム付き商品券を発行し、購買意欲を高め ることを狙っている。内閣府の「景気ウォッチャー調査」はその報 告にて、定額給付金がすでに家計消費において効果を奏していると 指摘している11。
また、高速道路料金の値下げであるが、この対策には日本政府が 2008年度に第二次「補正予算」として5,000億日本円を投じている。
2009年3月25日より大都市圏、日本各地の一般自動車の週末(土、日)、
祝日の高速道路料金の上限を1,000円とし、平日の料金を3割引以下に するなど実施した。値下げ後3ヶ月内の高速道路の主要区間休日交通 量が、前年比同期の約40~100%増加しているほか、日本高速道路機 構は、7,300億円程度の観光消費、2,000億円程度の物流コスト削減等、
こ の 政 策 実 施 後2年以内に1.7兆円程度の経済拡散に直接つながる効 果が見込まれると推測している12。
9 内閣府ホームページ(http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei.html、2009 年 8 月 8 日確認)
を参照のこと。
10 当 規 定 詳 細 内 容 に つ い て は 、 総 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ ( http://www.soumu.go.jp/
teigakukyufu/index.html、2009 年 8 月 8 日確認)を参照のこと。
11 詳 細 は 内 閣 府 ホ ー ム ペ ー ジ ( http://www5.cao.go.jp/keizai3/2009/0608watcher/
watcher1.pdf、2009 年 8 月 8 日確認)を参照のこと。
12 詳細は日本高速道路機構ホームページ(http://www.jehdra.go.jp/、2009 年 8 月 8 日確 認)を参照のこと。
そして、エコカーの減税・補助においては、2009年4月1日よりハ イブリッドカー(Hybrid Car)等のエコカーの購入に対し、自動車取 得税などの関連税金を50%以上減免し、また、4月10日より、エコカ ーへ買い替え又は新車購入時に5-25万円の補助を受けることが可能 とした13。日本経済において、世界金融危機の衝撃が大きかった自動 車産業であるが、この制度の実施後、2009年4月の新車販売数は前年 同期に比べ衰退したものの、既に前月比で連続三ヶ月3.3~5.8%増加 し て お る 。 そ の 中 、2009年 7月 の 新 車 車 種 別 販 売 第 一 位 の プ リ ウ ス
(PRIUS)ハイブリッドカーの販売台数は計27,712台であり、前年同 期に比べ392.6%増加している14。また、6月19日に申請受付を開始し た補助金制度の7月15日までの申請件数は1.9万件にのぼり、この政策 が一定の効果を挙げていることがわかる。
最後に、5月15日に開始したグリーン家電購買の際のエコポイント 制度であるが、これは、一定のポイントを集め、7月1日以降に約2万 種の商品と交換できるというもので、7月15日までにインターネット による交換申請は12万件以上にも達し、8月1日から商品の受け取り を開始している。この制度の実施してから、関東・甲信越地方の6月 の冷蔵庫、テレビ、クーラーの販売額がそれぞれ、一ヶ月前に比べ、
26.1%、19.5%、19.7%と増加するなど、日本の家電販売が継続的に 増加している。グリーン家電の販売の大幅な増加により、家電主要 メーカーは、絶えず生産体制を強化しており、経済産業省の調査に よると延べ12万人の雇用拡大効果が見込まれている。
13 関連の減税・補助制度は日本国土交通章ホームページ(http://www.mlit.go.jp/、2009 年8 月 8 日確認)を参照のこと。
14 詳細は社団法人日本自動車販売協会連合会ホームページ(http://www.jada.or.jp/、2009 年8 月 8 日確認)を参照のこと。
2 金融・倒産
前述したように、世界経済危機は2007年にアメリカにてサブプラ イムローン問題が勃発したことに起因し、欧米各国の金融機関が次 から次へと破綻の危機に陥った。そして2008年9月、リーマン・ブラ ザーズの経営破綻申請後、世界中の金融機関が泥沼へとはまってい った。このような、世界金融機関が次々に破産するというドミノ効 果を防ぐため、日本政府がとった主要な金融・経済対策には、次の ようなものがある。1.銀行などの株保有機関から大規模に株を買い戻 す、2.金融機関に予防的に公的資金を投入できる金融機能強化法の施 行、3.信用保証制度を大幅に拡充し、中小企業の資金調達を徹底的に 支援、4.中小企業税率の一時的な引き下げ、5.省エネ投資の減税の促 進、等があげられる。
中小企業に対する具体的な方法として、信用保証協会による緊急 保 証 ( 総 額 約30兆円)と、セーフティーネット貸付(総貸付額15.4 兆円)があり、2009年7月15日までに前者計62万件、貸出額12.4兆円、
後者は既に約3.1兆円の貸し出しを行っている。また、中・大型企業 に対しては、日本政策投資銀行と商工中金銀行の資金により援助を 行い、総額約2兆円の貸出、3,500億円のコマーシャルペーパー(CP)
買い取りなどを実施した。この他、日本銀行は主として政策利率の 引き下げ、長期国債の増額購買、企業金融の円滑化を行った。その うち、企業金融の円滑化として、企業金融支援操作(公開市場操作)、
コマーシャルペーパーの購入、債券の購入が行われ、2009年6月30日 ま で に そ れ ぞ れ 累 計7.5兆円、0.2兆円、1,744億円となっている。こ の一連の信用保証と貸付の提供は、企業の資金調達の持続的改善に つながっている。
また、企業破綻に至っては、世界金融危機による信用収縮や国民 実質所得の減少が需要に影響し、国外需要が急激に減少したため、
従来輸出主導にて経済発展を遂げてきた日本企業の経営に影響を与 えた。日本帝国データバンクの統計資料によると、2008年後期の負 債 が1,000万円以上の破綻件数は6,659件、負債総額8.9兆円、それぞ れ前年同期比で19.7%、204.6%増加している。2009年前半の破綻件数
従来輸出主導にて経済発展を遂げてきた日本企業の経営に影響を与 えた。日本帝国データバンクの統計資料によると、2008年後期の負 債 が1,000万円以上の破綻件数は6,659件、負債総額8.9兆円、それぞ れ前年同期比で19.7%、204.6%増加している。2009年前半の破綻件数