3.1 解析レベルに応じた計算法の選定 4.1 解析レベルに応じた条件等の設定
5.1 解析の実施 5.2 解析の検証・調整
5.3 解析と調査を並行して実施する場合の検証・調整 図6-1-2 本章の構成と解析の実施手順
第2節 目的に応じた解析レベルの設定
<標 準>
本章の 1.1 位置付けと目的 で述べた解析の目的・用途と解析対象とする河道区間の河道特性 等について、本章の 1.3 解析レベル に示した流れ、流砂(掃流・浮遊)、河床高・粒径変化を 記述する解像度又は範囲の観点から整理するなどにより、目的等に応じて解析レベルを適切に 設定することを標準とする。
<例 示>
河床高の解析レベルは、目的・用途を満たす観点から設定することができる。
たとえば、流下能力の評価の目的では、平均河床高が得られるレベル[1DB]、また局所洗掘深 の予測の用途では、河床高の平面分布が得られるレベル[2DB]と設定できる。
ただし、直接必要とする情報が平均河床高(又は河積)である目的・用途の場合でも、たと えば河口砂州のフラッシュのように河床形状の平面的変動が卓越する事象を対象とする場合に
は[2DB]として設定してよい。
また、全体的には平均河床高が得られるレベル[1DB]で十分であるが、一部に平面的変動が卓 越する事象が含まれている場合には、その事象を特に重視する目的・用途の場合を除いて、そ の部分に適した流れ・流砂・河床高の計算法を組み込むなど(本章の 4.3、4.4 参照)の適切な 対応を行った上で、レベル[1DB]として設定することができる。
粒径の解析レベルは、対象河道区間の河床材料粒径、すなわち材料 m(第 4 章 河道特性調査 2.4 参照)に関する以下の観点を踏まえた設定とすることができる。
1)空間的な構成材料の一様性
対象区間の全域で材料 m の粒径範囲が同一であり、場所により材料 m の粒径範囲に相違が認 められない場合は、一様性が高い。
2)粒径の均一性
材料 m の粒度分布の淘汰がよく(たとえばd84/d16が小さい)、ある特定の粒径を中心に粒径範 囲が狭い範囲に集中している場合は均一性が高く、淘汰が悪く、広い粒径範囲にわたって偏り ない粒度分布となっている場合は、均一性が低い。
一様性と均一性が共に高い場合には一様粒径として扱うレベル[U]、それ以外を混合粒径とし て扱うレベル[M]とすることができる。
流砂の解析レベルは、以下の観点等を踏まえて総合的に設定することができる。
a) 解析条件とした水理量の下で浮遊形態となる粒径成分の有無(第 4 章の 6.2 参照)
b) 掃流砂との対比として浮遊砂が河床の形状・粒径の変化に及ぼす影響の大きさ
c) 目的・用途において(たとえば総合的な土砂管理等)浮遊砂量が直接的に必要とされる 情報であるか
セグメント類型が適用できる沖積河川の場合では、礫を対象とする場合には[BL]を、砂又は 砂礫を対象とする場合には[BSL]と設定することができる。
流れ場の解析レベルは、河床高の解析レベルと対応させて、[1DB]では流れ場のレベル[1DF]
と[2DF’]、[2DB]では[2DF]~[3DF]から設定することができる。
更にレベルを絞り込むに当たっては、着目した河床変動に深く関わる流速分布を適切に算定 する視点から行うことができる。
まず[1DB]については、河道横断方向の流速分布に着目し、単断面河道のように一様流速とし て取り扱える流れ場は[1DF]、複断面河道のように河床部と高水敷等で断面平均流速に有意な差 がある流れ場は[2DF’]として設定することができる。
[2DB]では平面・水深方向の流速分布に着目して設定することができる。その際、非静水圧分 布となるなど[3DF’]では取り扱えない強い 3 次元性を示す流れ場に用いる 3 次元解析[3DF]は、
河川管理の実務における実用性を高めていく段階である。
こうした状況を踏まえ、平面的流速分布を主要因とする場合には[2DF]、それに加えて 2 次流 を含む水深方向の流速分布も考慮する必要がある場合には[2DF+]又は [3DF’]として設定するこ とができる。[2DF+]として設定する際には、別途用意する 2 次流成分の算定式の適用性につい て吟味する。
て吟味するためのデータ取得の見込みも併せて検討した上で、設定の適否について判断するの がよい。
<参考となる資料>
レベル[3DF]の 3 次元性の強い流れであり、かつ砂礫粒子の運動の非平衡性を考慮して河床 変動計算を行った事例として、下記の資料が参考となる。
1) 長田信寿,細田尚,村本嘉雄,中藤達昭:3 次元移動座標系・非平衡流砂モデルによる 水制周辺の河床変動解析,土木学会論文集,No.684 Ⅱ-56,pp.21-34,2001.
2) 福岡捷二,富田邦裕,掘田哲夫,宮川朝浩:橋脚まわりの局所洗掘深推定のための実用 的数値シミュレーションの開発,土木学会論文集,No.497 Ⅱ-28,pp.71-79,1994.
第3節 計算法の設定
3.1 解析レベルに応じた計算法の選定
<考え方>
計算法の設定項目は、表 6-3-1 に示す河床形状、粒度分布、掃流砂、巻き上げ量(基準面濃 度)、土砂濃度分布として構成する。
表中の英数字記号は、計算法の【種別】を表しており、その内容について本節の 3.2~3.7 に おいて説明している。各計算法の種別は、第 2 節で設定した解析レベルに応じて表 6-3-1 に基 づいて選定するのを標準とする。
表中の各欄は、各レベルにおいて<標準>とする計算法である。一部の欄には括弧書きとし て<推奨>とする計算法を示している。
ここで<推奨>は、標準として示す計算法では解析対象とした事象を十分に再現することが できず、<推奨>として示す高度な計算法を用いる必要がある場合に選定する。
表 6-3-1 解析レベルに応じた計算法の選定(標準:種別については3.3~3.7 参照)
3.2 流れの計算法の設定
<標 準>
流れの計算法のレベル[1DF][2DF’][2DF][3DF’]については、第 5 章 河川における洪水流の水 理解析 の 4.1 と 4.2、4.3 と 4.4、4.5、4.6 に基づいて設定することを標準とする。
[2DF+]は[2DF]と別途用意する 2 次流の算定式を組み合わせた流れ場の計算法である。
3.3 河床形状の計算法の設定
<標 準>
河床形状zBは流砂の連続方程式により算定する。
種別【1B】【2B】【1BS】【2BS】の流砂の連続方程式は式(6-3-1)~(6-3-4)を標準とする。
1)種別【1B】の計算法(一次元・掃流のみ)
交換層の枠組みを用いた計算法(各種の流砂量式を含む)については、d84/d16が大きいなど
pp.55-65,1971.
2) 芦田和男,江頭進治,劉柄義:二層モデルによる複断面河道の流れ及び河床変動の数値 解析,京都大学防災研究所年報,第 35 号 B-2,pp.42-62,1992.
3) 芦田和男,藤田正治:平衡及び非平衡浮遊砂量算定の確率モデル,土木学会論文集,第 375 号 Ⅱ-6 ,pp.107-116,1986.
4) 藤田光一,山原康嗣,富田陽子,伊藤嘉奈子,小路剛志:大礫床表面における砂の堆積 状況と浮遊砂量との関係についての実験的研究,水工学論文集,第 52 巻,pp.547-552,
2008.
5) 関根正人,林将宏:礫・シルト充填河床モデルを用いた礫河道の準二次元河床変動解析,
水工学論文集,第 51 巻,pp.973-978,2007.
6) 辻本哲郎,細川迭男:急勾配水路のおける礫の限界掃流力と流砂量,土木学会論文集,
No.411 Ⅱ-12,pp.127-134,2007.
7) 芦田和男,大同淳之,高橋保,水山高久:急勾配流れの抵抗と限界掃流力に関する研究,
京都大学防災研究所年報,16(B),pp.481-494,1973.
8) 岡部健士,肥本一郎:大径礫を伴う山地河川における流砂の有効掃流力に関する研究,
第 30 回水理講演会論文集,pp.247-252,1986.
9) 長田健吾,福岡捷二:石礫河川の土砂移動機構に着目した 1 次元河床変動解析法の開発,
水工学論文集,第 52 巻,pp.625-630,2008.
<標 準>
河床の各粒径階の含有率 fbiは、各粒径階の連続方程式により算定する。種別【1fB】【2fB】
【1fBS】【2fBS】のfiの連続方程式は式(6-3-5)~(6-3-8)を標準とする。
1)種別【1fB】の計算法(一次元・掃流のみ)
2)種別【2fB】の計算法(二次元・掃流のみ)
流力τc、水の密度ρ、砂礫粒子の密度σ、重力加速度 g を必ず含む関数である式(6-3-9)を用
種別【BaBL】の掃流砂量式として、1)の分類である芦田・道上の式と Meyer・Peter-Müller 式、2)の分類である佐藤・吉川・芦田の式を用いてもよい。
・Meyer・Peter-Müller 式
*
3/2・佐藤・吉川・芦田の式
qBF g
qB u c
0
3
*
1
(6-3-14)
n≧0.025 でψ=0.623
n<0.025 でψ=0.623(40n)-3.5
ここに、nはマニングの粗度係数、Fは図 6-3-1 に示す0/cの関数である。
図6-3-1 佐藤, 吉川, 芦田の式におけるFとτ0/ τc との関係
無次元限界掃流力τ*cは、式(6-3-15)に示す岩垣式により算定することができる。
d u
d c 80.9 303
.
0 *2
22 2 31
* 134.6 303
. 0 118
.
0 d uc d
d u
d 0.118 c 55 0565
.
0 *2 (6-3-15)
32 2 11
* 8.41 0565
. 0 0065
.
0 d uc d
d u
d 0.0065 *c2 226
(水温 20℃の場合)
<考え方>
掃流砂の計算法設定の位置付けを図 6-1-1 の基本フレームに立ち返って俯瞰すると、小規模 河床波を起点として流砂量式を設定するが、その他に粗度係数、更にレベル[M]の場合には交換 層厚の設定を行い、流れ、流砂、河床状況の各計算を繰り返し行う中で、それら設定の影響が 合わさった形で計算結果である河床状況に反映される。
したがって、河床状況の再現性を向上するに当たっては、流砂量式の選定は全体の一部であ り、粗度係数等のパラメータの設定や他の計算法の設定と併せて総合的に行うことが重要であ る。
以上の設定は、図 6-1-2 に示した作業手順の「検証・調整」段階における調整項目の一つで あり、その他に各種条件等も調整項目となる。