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第一章 序論

1-1 研究動機と目的

1-1-1 研究動機

日本人が日常生活において、頻繁に使用している終助詞「よ」、「ね」

は、日本語を特色づける言葉であり、円滑なコミュニケーションに 重要な役割を持っている。ところが、日本語を母語としない学習者 にとっては、会話の中でうまく使いこなせない、微妙なニュアンス をしっかりつかみとることができないといった場合が往々にしてあ る。

また、終助詞「よ」と「ね」のこれまでの研究は、意味‧機能また は話し手と聞き手との心的距離などの観点から両者間の差異を明ら かにするものが多かった。しかし、中国語との対照という観点から 終助詞「よ」と「ね」を論じた研究については、あまり触れられて いないと思われる。

中国語にも話者の気持ちを表す表現について、語気助詞と特定の 言語形式などがある。その中には日本語の「よ」「ね」と似たような 表現效果を持つものもあると考えられ、中国語との対照から終助詞

「よ」と「ね」を考察することの必要性がうかがえる。

1-1-2 目的

本論では、終助詞「よ」と「ね」それぞれの機能について、中国 語との対応はどのように現れるかを考察する。つまり、中国語をど のように日本語に対応させば、「よ」と「ね」に生き生きしたニュア ンスの中国語に翻訳できるかについて考察するしようと試みる。

そうすることで、話者の気持ちを表す表現について、日本語と中 国語の相違を理解しながら、中国語母語話者が日本語の終助詞「よ」

と「ね」の運用をより把握させられるのではないかと思料され、日 本語教育においても示唆になると考える。また、終助詞「よ」「ね」

は中国語と対応する時、終助詞「よ」と「ね」の語感が理解できる ように説明できればと考える。

1-2 分析資料と考察対象

1-2-1 分析資料

本論の分析資料については、日本語の小説と中国語の小説の日本 語版、それぞれから「よ」、「ね」が使用されている例文を抽出し、

それらの例文に相当する中国語訳文、中国語小説の原文も収集した。

分析資料として使用した本は以下の表 1 に示す。資料として選ん だ理由はこの二冊は、いずれも会話文が多く、日本、台湾の原文版 とそれぞれの中国語訳版、日本語訳版があるので、分析資料にした のである。一方、「別れぬ理由」については二つの違った訳版を使用 したが、それは同じ日本語の例で中国語でどのようなに異なった訳 が出たか観察するためである。

表 1 日本語訳、中国語訳の資料 項目

国別

タイトル 出版社 作者 訳版 訳者

日本 別れぬ理由 新潮社 渡辺淳一 不離婚的理由 洪碧娟 日本 別れぬ理由 新潮社 渡辺淳一 不分手的理由 郭麗花 台湾 白色巨塔 皇冠文化

出版社

侯文詠 ザ‧ホスピタ ル(上)

桶口裕子

また、分析資料として日本、台湾の現代小説及びそれぞれの中国

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み研究対象とする。「ね」の以下の例のような文頭用法2‧間投用法3は 含まれていない。

例 1:「ねえ、今度、踊りに行きませんか」4(文頭用法)

例 2:「患者のことでね、すぐ戻ってくる」5(間投用法)

一方、「よ」も文頭用法‧間投用法6があるが、二冊の小説ともこ のような例がないので、本論では論じないこととする。

1-3 研究方法

本論は台湾の小説と日本の小説及びそれぞれの日本語訳版、中国 語訳版をデータとして用いるものである。日本語小説と中国語小説 の日本語訳の会話文から「よ」「ね」の用例を集め、それらの用例に 相当する中国語訳文と中国語小説の原文も同様に収集した。多数の 用例に基づき、「よ」「ね」と中国語との対応しているものおよび対 応していないものについて考察し、明らかにしたいと考える。例え ば、

例 3:「パパとママで二人で、ゆっくりデートしてくるといいわ」

「でも、すぐ近くの神社よ」 p305(別れ)

の文を

2 「ね」の文頭用法:親しみをこめた呼びかけ。(多くが「念押し」‧「同意求め」

の気持ちを含む)(『日本語を学ぶ人の辞典』p1023 による)

3 「ね」の間投用法:語調の調整、強調、念押し。(『日本語を学ぶ人の辞典』p1023 による)

4 「別れぬ理由」p38 による。

5 「別れぬ理由」p46 による。

6 「よ」の間投用法:呼びかけ。例えば、「花子よ、どこへ行くのだ」

聞き手の注意を引く(粗野な感じになることが多い)。例え ば、「それがよ、だめだったんだなあ」(『日本語教育辞典』

5

「爸爸和媽媽兩個人好好地約會吧!」

「只不過是到附近的神社走走而已啊!」 p325、p326(訳版 1)

「爸,你還是跟媽媽兩個人好好地出去約會吧!」

「我們只是在附近的神社拜拜啦!」 P342(訳版 2)

二つの訳版と対照すれば、下線を引いた日本語の終助詞「よ」は中 国語の「啊」と「啦」に相当する。一方、

例 4:「でも、奥さま、あなたを愛しているのね」

「どうして……」 p117(別れ)

の文を

「你太太還是很愛你。」

「為什麼……」 P12(訳版 1)

「這表示你太太很愛你。」

「何以見得……」 P137(訳版 2)

同じく二つの訳版と対照すると、日本語の終助詞「ね」は対応す る中国語の語気助詞が出ていないので、無対応となっている。本論 はこのように分析用例を採集する。

また、「よ」「ね」と対応していないものについて、その中身をさ らに考察し、中国語でどのような範疇の言語形式によって表される のかを究明する。さらに、日本語の終助詞「よ」「ね」のそれぞれの 機能の用例を取り上げ、どのような機能はどのような中国語の語気 助詞と対応しているかを究明してみたい。

なお、本稿で取り扱う「よ」と「ね」の用例において、「……」と いう符号は原文から元にある発話者の省略を表し、「~」という符号 は筆者が原文の「よ」「ね」と関係ない部分を抜粋する。

1-4 本論文の構成

本論文の構成としては、以下の通りに進めていく。

まず、第一章において、研究の動機と目的、分析資料と考察対象、

そして研究方法について述べる。

第二章では、日本語の終助詞「よ」「ね」に関する諸家の考えをま とめるが、中国語における語気助詞の定義も説明する。そのほかに、

「よ」「ね」と中国語の語気助詞との結びつきにも触れる。

第三章では、収集した用例から、日中両言語における「よ」「ね」

の対応状況を明らかにし、「よ」「ね」と中国語の語気助詞の間に、

機能が重なっているところも解釈してみる。さらに、「別れぬ理由」

の二つの訳版に、日本語の終助詞における「よ」「ね」の対応状況の 異同について比較する。

第四章では、日本語小説における「よ」「ね」の各機能の出現頻度 を調査した。また、「よ」「ね」それぞれの機能を取り上げ、中国語 の語気助詞との対応‧「無対応」はどのように現れるかについて、統 計した結果を述べる。

第五章では、中国語の語気助詞以外のカテゴリーでは、どのよ うな表現形式によって日本語の終助詞「よ」「ね」と対応している かを究明することを試みる。

第六章では、結論として、これまでの論を整理し、筆者の浅見を 述べたいと考える。

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