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世界戦略の角度からみて、AIIB は中国自らが無から有を打ち立て た 多国間の国 際金融機関 であり、中 国の力を現 在の世界経 済で展 開 し てみせたも のである。 当該機構は 米国への打 診もなく、 米国か ら の 支持も獲得 せずに設立 されたもの で、米国主 導の世界金 融秩序 に 対する直接的な挑戦とみなされている。

これは、い わゆる世界 金融体制あ るいは秩序 がいずれも 人為的 な 制 度であり、 自然界のよ うに客観的 な原始状態 に存在する もので は な い。ゆえに 、世界金融 体制は当然 ながら特定 の国家ある いは集 団 が 主導する金 融システム である。現 在の世界金 融秩序は米 国が 第 2 次 世界大戦後 に打ち立て たブレトン ウッズ体制 を主体とし ており 、 AIIB による米国主導下の金融体系への挑戦が本論での分析の焦点で

35 Liao, op.cit..

36 Wan, op.cit..

あった。簡潔に言うと、AIIB の設立は現在の国際金融秩序への挑戦 という点で、以下のようにまとめられる。

(1) 既存の国際金融機制に対する融資条件への挑戦

中 国は 不干渉 原則 を遵守 し、 資金援 助を 実行す るこ とで、 世界 銀行に対して圧力を加え、既存の運用方法(modus operandi)お よ びそ の他の ガバ ナンス に関 する規 定を 修正さ せよ うとし てい る 。中 国が提 供す る資金 援助 が通常 、発 展途上 国に 対して より 魅力があるのは、中国がIMF や世界銀行といった常に融資先の 国 家に 対して 自由 市場を 基礎 とする 新自 由主義 の原 則を持 ち出 し 容赦 ない融 資規 定を提 示す る方法 とは 異なる ため である 。こ の点について、米国や専門家などは、AIIB が既存の国際融資規 則 や融 資基準 を破 壊・引 き下 げるの では ないか との 懸念を 示し ている37

(2) 米国の拒否権の影響を排除した国際金融機制の確立

AIIB の設立は、中国に独自の、米国の拒否権の影響を排除した 国 際金 融秩序 を付 与し、 自身 の利益 にか なった 国際 金融秩 序を 再構築・手配できる能力を与える。AIIB が順調に発足したこと は 、ア ジア金 融危 機以来 、ア ジア諸 国が 米国に 対し て不信 感を 抱き、IMF や世界銀行等の国際金融機構が頼りにならないと感 じ て、 地域に おけ るグロ ーバ ル金融 協力 機制を 確立 しはじ めた 成果だとみることができる。AIIB 以前に構築されたアジア諸国 に 制限 される 同様 の経済 協力 メカニ ズム の「チ ェン マイ・ イニ シアティブ」(Chiang Mai Initiative)およびアジア諸国間の地域 経済統合、 地域基金等 は、いずれ も米国の参 加を排除し 、AIIB

37 Lipscy, P., “Who’s Afraid of the AIIB: Why the United States Should Support China’s Asian Infrastructure Investment Bank,” Foreign Affairs, 2015.

設立に先立った規範となっている38

(3) 西側主導の世界金融体制下で拡散したイデオロギーへの挑戦 AIIB の設立は、ブレトンウッズ体制下の国際金融機構によって

流 布さ れた自 由民 主、自 由市 場、西 側の ガバナ ンス を西側 諸国 が 再び 利用す るこ とはで きな いとい うこ とを意 味す る。特 に中 国 の経 済発展 の成 功は西 側の 自由資 本主 義の経 済モ デルと 異な る こ と を 示 し て お り 、 中 国 特 有 の 「 国 家 資 本 主 義 」(state- capitalism)はその他の発展途上国の経済発展の模範となり得る。

中国のAIIB の主導によって、発展途上国は国際金融機構に融資 を 求め る際、 ブレ トンウ ッズ 体制下 で一 国の政 治制 度や経 済発 展に連結した作法に、やみくもに屈従する必要がなくなり39、既 存の金融機構は AIIB との競争に直面するプレッシャーの中で、

融 資条 件を通 じて 特定の アジ ェンダ をは め込む よう な現在 のモ デ ルを 修正あ るい は破棄 せざ るを得 なく なり、 機構 の運用 や資 源の配置における政治介入の要素を低減させることになる。

(4) 金融的流通を通じて中国経済の版図を拡大・構築

AIIB によって中国は国内で過多となっている資本を十分に運用 させ、対外インフラ投資を通じて、近隣諸国の物流・経済貿易・

人 的往 来を増 加さ せ、国 をま たいだ 金融 的流通 の好 循環を 形成 し、ひいては中国企業の海外進出および市場開拓を有利に進め、

近 隣諸 国間で の人 民元の 使用 や流通 も促 進する こと で、中 国の 大 戦略 である 一帯 一路の 実践 を大い に前 進させ るこ ととな る。

も し人 民元が 貿易 決済と して より頻 繁に 運用さ れれ ば、中 国の

38 Feigenbaum, E. A., “The New Asian Order and How the United States Fits In,” Foreign Affairs, 2015.

39 Liao, op.cit..

国際金融における地位はしだいに高まり、中国主導のAIIB も今 後 さら にイン フラ 融資資 金と しての 人民 元使用 の促 進に有 利に 働 き、 ひいて は人 民元を 広く 運用す る中 国経済 圏を 構築す る潜 在力を保持するようになり40、現在世界で基軸通貨となっている 米ドルの覇権的」地位への挑戦を形成するようになる。

(5) 西側主導の国際金融機制から脱却する戦略の一環

AIIB は、西側(米国)が主導する国際金融体系から脱却するた めに注力している多項目の金融機構提唱の 1 つと言える。前述 のように、中国はAIIB 以外にも、シルクロード基金に 400 億米 ドル、新開発銀行に 100 億米ドルをそれぞれ出資している。こ れ らの 計画は いず れも、 ブレ トンウ ッズ 体制に 不参 加ある いは 主 導し ていな い新 興市場 国お よび発 展途 上国に より 共同で 、自 身 の発 展に必 要な 利益に かな った多 国間 金融機 制を 構築し 、そ れ によ って西 側主 導の既 存の 国際金 融機 制の資 金や 政策へ の依 頼 から 脱却し 、ひ いては 国際 金融レ ベル で中国 の期 待と利 益に か なっ た多元 的な 世界秩 序を 構築し 、ブ レトン ウッ ズ体制 にお け る既 存の金 融機 制の世 界金 融市場 に対 するガ バナ ンス機 能を 根 本か ら引き 下げ ようと 強く 望んで いる ことを 如実 に示し てい る。

2014 年、中国の習近平国家主席は、APEC 首脳会議において発展 と繁栄を享受する「アジア太平洋の夢」(Asia-Pacific dream)のビジ ョ ンについて 述べ、中国 が、アジア 太平洋地域 および世界 により 多 く の公共財を 提供する能 力と意思が すでにある ということ を示し た

41。この発言は、中国が世界の強権に昇りつめ、国内資源を支払う意

40 Smith, op.cit..

41 Goodman, M., & Ratner, E., “China Scores and What the United States Should Do Next,”

思 を持ち、よ り多くの世 界的責任を 進んで引き 受けるとい うこと を 宣 言したこと にほかなら ない。この 発言は、相 対的に国力 が低下 し て いる米国に してみると 、当然面白 いものでは ないが、世 界的に み て、悪いこととは限らない。

ただし本文 で述べたよ うに、いか なる主導国 家も国際金 融機構 の 提 唱に対して 、必然的に その国の国 家利益およ び国家戦略 をはめ 込 むものである。米国がブレトンウッズ体制下の世界銀行とIMF を支 持 することで 、自由市場 国家陣営の 中の国際金 融秩序の維 持者お よ び規範制定者の地位を確立したように、ADB の設立もまた日本およ び 日本企業に よるアジア 諸国の経済 拡大および 市場の浸透 にプラ ス に働いた。中国が設立したAIIB もインフラ整備への資金援助という 機 能が、大戦 略である一 帯一路構想 の具体的な 実践ツール となり 、 ひいては中国が米国主導の世界金融体系に挑戦する試金石の 1 つと なるであろう。

しかしながら、AIIB は設立して間もないため、その運用と成果は ま だ知る由も ない。半世 紀以上運用 されてきた ブレトンウ ッズ体 制 下の金融秩序に対するAIIB の挑戦が成功するか否かは、しばしその 成果を観察する必要がある。ただし、確実なのは、中国のAIIB 設立 の 衝撃および 競争の圧力 を受けて、 これまで西 側諸国の国 際金融 機 構 が掌握して きた独占に 近い権力の 下で覗かせ た傲慢で自 信過剰 な 態 度は、必然 的に新たな 調整と改革 が進められ 、これは中 国によ る 国 際金融機制 の多元化の 促進がもた らしたプラ スの効果と 言える だ ろう。

(寄 稿 :2016 年 5 月 23 日、採用:2016 年 6 月 30 日)

翻 訳 :『 問 題と研 究 』 編集 部

Foreign Affairs, 2014.

從布列敦森林體系與中國的國家戰略

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