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日韓両国における「北東アジア観」の乖離

ここまで見 てきたよう に、いつの 間にか、日 韓両国を取 り巻く 状 況 が大きく変 化し、また それ故に、 両国の人々 が国際関係 を見る 目 も 、大きく異 なってしま っている。 そしてここ での大きな 問題は 、 こ のような状 況にもかか わらず、両 国の人々が この何時し か生ま れ た 両国間の国 際社会に対 する理解の 大きな間隙 を十分に認 識して い な いことであ る。言い換 えるなら、 日韓両国は 依然として 、相手 側 も また自分と 同じ視覚で 国際社会を 理解してい る、という 前提で 議 論を構築し、互いの関係に臨んでいる。

つ まり、 日本 人は、 依然 として 、か つて自 らが アジア 唯一 の経済 大 国であった 時代のイメ ージで、韓 国をはじめ とするアジ アの国 を 眺めている。だからこそ、韓国もまた、「経済的不況に陥れば、経済 大国である日本を頼る筈だ」と多くの人は漠然と考える33。事実、日 本 の書店に数 多く並ぶ「 嫌韓本」の 多くは、韓 国経済があ たかも 崩 壊 寸前である かのように 論じ、だか らこそ韓国 はやがて日 本に対 し て屈服することになる、と主張する34。アジア通貨危機当時の韓国の イ メージだと 考えればわ かり易い。 だが勿論、 今の韓国に おいて 日 本 はそのよう な存在では ない。既に 紹介したス ワップ協定 を巡る 駆 け 引きにも表 れているよ うに、かつ てよりも遥 かに力と自 信をつ け た 韓国は、国 際社会にお ける様々な パイプを利 用して、日 本を飛 び 越 えて多様な 資源を利用 することが できる。し かしながら 、多く の

33 エコノミックニュース「中国経済急減速、ウォン高で韓国経済危機感増幅」2013 年 8 月 10 日、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130810-00000067-economic-bus_all(最終 確認2013 年 12 月 7 日)。

34 例えば、三橋貴明『いよいよ、韓国経済が崩壊するこれだけの理由』(ワック、2013 年)

日 本人はこの ような韓国 の変化を見 落としてい る。だから こそ、 彼 等 には韓国政 府や韓国人 が行うこと は著しく非 合理に見え る、と い うことになる。

同 じこと は、 韓国の 人々 につい ても いうこ とが できる 。今 日の韓 国 にとって中 国の存在は 極めて大き なものであ り、だから こそ、 彼 ら は中国との 円滑な関係 を望んでい る。既に述 べているよ うに、 こ の 数年間の韓 国では、か つて中国に 対して警戒 的であった 保守メ デ ィ アが、中国 との友好関 係を積極的 に訴える、 という変化 が進行 し て いる。この 点について は、例えば 朝鮮日報の ような韓国 の代表 的 な 保守メディ アによるこ の数年間の 中国に対す る論調の変 化を調 べ て 見てみると 面白い。か つては頻繁 に見えられ た中国脅威 論は今 日 の韓国の保守言論ではすっかり影を潜めている35。今では、FTA 問題 等 において農 業的利益の 保護を訴え る進歩派の メディアの 方が中 国 との関係改善にむしろ及び腰であるかのように見えるほどだ。

だ からこ そ、 そのよ うな 韓国か ら見 れば、 領土 問題や 歴史 認識問 題 によって中 国と韓国が 協力して行 う抗議活動 に反応しよ うとし な い 日本は極め て非合理的 な存在に見 える。だが 勿論、日本 側の行 動 に は理由があ る。日中貿 易の不振等 は、少なく とも現在の ところ 日 本経済に大きな影響を与えていない36。逆に、中国と韓国の一致した ように見える行動は、日本の民族主義を刺激する37のみならず、米中

35 韓国保守メディアにおける中国観の変化については、別稿にて詳しく論じる予定で ある。

36 三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社調査部「日本経済の景気動向等に関 する資料」2013 年 9 月、http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/jyukyuu/pdf/2013092501.pdf

(最終確認2013 年 12 月 7 日)。実際、2013 年上半期においては、内需の寄与度が 外需を大きく上回る形で経済成長が支えられている。

37 「中韓首脳会談 日本に問われる東アジア戦略」『読売新聞』2013 年 6 月 30 日。

関 係を、対立 を機軸に考 える日本で は次のよう に解釈され る。つ ま り 、中国はそ の経済力を 生かして韓 国を自らの 陣営に取り 込みつ つ あるのであり、その動きに乗ってはならない、と38。こうして日本側 は 更に頑なに なり、政治 的な譲歩は 困難なもの となる。し かしな が ら 、このよう な日本側の 内情がわか らなければ 、多くの韓 国人に と っ て、日本側 の行為はた だ不可解な ものと看做 されること となる 。 行きつく先は、「日本は不合理な存在」だという理解である39。こう し て日韓両国 は互いを、 不合理で不 可解な存在 であるとみ なすよ う になり、日韓関係はいよいよ迷走する。

勿 論、こ のよ うな日 韓の 「北東 アジ ア観」 の相 違は、 両国 におけ る 「将来予測 」とも繋が るものであ り、どちら かがより正 しいと 言 え るようなも のではない 。しかしな がら同時に 重要なこと は、こ の よ うな日韓両 国の異なる 「北東アジ ア観」が共 に両国と同 盟関係 を 有 するアメリ カの北東ア ジア外交に おいて大き な障害とな る、と い う ことである 。当然のこ とながら、 アメリカは 自らの外交 におい て 統 一性を持た なければな らず、日韓 両国から向 けられる異 なる期 待 の中、長期的にアメリカは両国のどちらかを選ぶこととなる。

だが、状況は韓国にとって不利なように見える。2013 年 11 月にお け る中国の防 空識別圏拡 大や、西沙 ・南沙諸島 を巡る領土 問題の 高 ま りは、アメ リカを中国 との対立へ と動かして いるように 見える 。 ま た何よりも 、アメリカ の安全保障 政策におけ る日韓両国 の地位 は

38 例えば「【主張】朴大統領訪中 日米との結束こそ重要だ」『産経新聞』2013 年 6 月 30 日。

39 例 え ば 、「정부 "집단적 자위권에 대한 기본입장, 日에 전달"」(政府「集団的 自衛権に対する基本的立場を日本に伝達」)『연합뉴스』(聯合ニュース)2013 年 10 月 22 日、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2013/10/22/0503000000AKR2013102 2142700043.HTML(最終確認 2013 年 12 月 7 日)。

大 きく異なっ ている。ユ ーラシア大 陸の東端に 位置する韓 国は、 海 軍 力において は他国を圧 倒する一方 で、陸軍力 においては 同様の 大 きな優位を持たないアメリカにとって、「守りにくい」存在である。

だからこそ、1970 年代以来アメリカは繰り返し朝鮮半島からの撤退 を論議して来たのであり、今日においてもいわゆる「作戦統制権」 - 有事において韓国軍を統制する権限 - を早期に韓国政府に返還す ることを求めている。即ち、アメリカにとって韓国との同盟関係は、

「 整理するこ とのできる 関係」であ り、時に「 整理したい 関係」 で さえあるのである。

し かしな がら 、アメ リカ にとっ て日 本の重 要性 は全く 異な ってい る 。世界第三 位の経済力 を持ち、強 大な海軍力 を持つ日本 は、北 東 ア ジアにおけ るアメリカ 軍の重要な パートナー であり、ま た何よ り も 北東アジア の海上に浮 かぶ日本は それ自身が 中国の海洋 進出を 阻 む 巨大な防波 堤であり、 不沈空母と しての価値 を有してい る。沖 縄 の 米軍基地問 題が如実に 示すように 、韓国から とは異なり 、今日 に 至 るまでアメ リカは日本 からの撤退 の意を示し たことはな く、む し ろ 同盟国との しての日本 の重要性は 次第に大き くなってい る。そ れ は 異なるいい 方をすれば 次のように なる。その 地政学的配 置から 必 然 的に、アメ リカは日本 との同盟関 係なしに、 韓国を守る ことは 出 来 ないが、韓 国との同盟 関係なしに 日本を守る ことは出来 る。だ と す れば北東ア ジアに拠点 を維持した いアメリカ が最終的に どちら を 優先するかは明らか、に思える。

九 むすびにかえて

と もあれ 、重 要なの はこ のよう な日 韓関係 の悪 化の影 響は 、単に 両 国関係を損 なうだけで なく、最終 的には両国 とその同盟 国であ る ア メリカを含 む諸国との 関係にも大 きな影響を 与えていく という こ

と である。そ して、勿論 そのことは 、我々がこ の状況を放 置して よ い、ということを意味しない。日本にとっても、貿易の6%のシェア を 持つ韓国と の関係は経 済的に重要 であり、ま た、北東ア ジアの 変 化する国際情勢の中で、世界 15 位の GDP を誇り、世界有数の陸軍 力 を持つ韓国 との関係を いたずらに 損なうのは 日本の国益 にも反 し ている。

だ とすれ ば、 日韓両 国は この問 題に どう取 り組 むべき なの だろう か 。明らかな のは、何故 相手側に自 らのメッセ ージが伝わ らない の か 、相手側を 動かす原理 がどこにあ るかを見極 めることで ある。 し か しながら、 現在の日韓 両国で行わ れているの は、これと は全く 異 な るゲームで ある。つま り、両者が 互いに自ら が奉じる原 理原則 を 突 きつけて、 状況をその まま放置し ている。厄 介なことは 、日韓 両 国 ともに互い が相手に突 きつけたカ ードに効力 があると信 じてい る 点 である。か くして日韓 両国の間で は「チキン ゲーム」が 演じら れ

だ とすれ ば、 日韓両 国は この問 題に どう取 り組 むべき なの だろう か 。明らかな のは、何故 相手側に自 らのメッセ ージが伝わ らない の か 、相手側を 動かす原理 がどこにあ るかを見極 めることで ある。 し か しながら、 現在の日韓 両国で行わ れているの は、これと は全く 異 な るゲームで ある。つま り、両者が 互いに自ら が奉じる原 理原則 を 突 きつけて、 状況をその まま放置し ている。厄 介なことは 、日韓 両 国 ともに互い が相手に突 きつけたカ ードに効力 があると信 じてい る 点 である。か くして日韓 両国の間で は「チキン ゲーム」が 演じら れ

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