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目的に応じた洪水流解析手法の選定

<考え方>

洪水流解析として、表 5-3-1 に示す計算手法を用いる。

一次元解析[1DF]とは、河道横断面内で平均した水理量(水深、流速、河床せん断力など)の 縦断分布を算定するものである。

準二次元解析[2DF']とは、河道横断面を粗度状況や水深等が同一と見なせる区間ごとに分割し て等流近似の下で横断方向流速分布を算定し、この分布を反映した運動量補正係数とせん断力の 算定式を一次元解析に組み込んで断面平均流速や水位等の縦断分布を算定するものである。

二次元解析[2DF]とは、水深方向に平均した水理量を対象として、水理量の平面分布を算定す るものである。

準三次元解析[3DF']とは、二次元解析を拡張して水深方向に平均した水理量のほか、静水圧 分布の仮定の下で二次流を含めた水深方向の流速分布を算定するものである。

三次元解析[3DF]とは、非静水圧分布となる流れ場にも適用でき、流水中の任意の位置におけ る水理量を対象として、その平面及び水深方向の分布を算定するものである。

各解析には、流れ場の空間的分布を算定する定常計算とさらにその時間変化も計算対象とす る非定常計算がある。

洪水流解析の目的 1)~6)に応じて、表 5-3-2 に従って計算手法を選定する。なお、目的 7)の計算手法の選定については、第 6 章 河床変動、河床材料変化及び土砂流送の解析で述べ る。

表 5-3-2 において<推奨>とした計算手法は、<標準>として示す手法では解析対象とした 事象を十分に再現することができず、<推奨>として示す高度な手法を採用する必要がある場 合に選定する。また<例示>とした計算手法は、<標準>として示す手法より流れ場の記述レ ベルが低い手法でも目的を十分に満たす再現性が得られ、<例示>として示す比較的簡便な手 法を採用することができる場合に選定する。

計算手法の選定に当たっては、計算に必要とされる情報の取得可能性についても併せて検討 することが重要である。なお、目的1)~7)以外の目的で洪水流解析を活用する場合でも、表

5-3-2 の「目的に対して必要となる物理量」を参考にして適切な解析手法を目的に合わせて選定 する。

表5-3-1 洪水流解析に用いる計算手法の一覧(記号は表 5-3-2 の凡例参照)

表5-3-2 目的に対して必要となる物理量と洪水流解析手法の選定

3.2 最高水位の算定における定常・非定常流解析の使い分け

<考え方>

下記1)~4)のいずれにも当たらない場合には、流出解析や流量観測等により得た最大流 量をあらかじめ与えた定常流解析を用いることが基本となる。下記1)~4)のいずれかに該 当する場合は、非定常流的特性を解析において考慮する必要性が高まるので、非定常流解析を 用いることが基本となる。

1) 分合流や遊水地等による流量の出入りの影響がないとできる河道区間において、最大流 量と最高水位時の流量に有意な差(ズレ)が生じる。

2) 分合流や遊水地等による流量の出入りの影響がないとできる河道区間において、各地点 の最大流量が河川沿いに有意に変化し、それをあらかじめ与えることが難しい。

3) 対象とする河道に、分合流や遊水地等による流量の出入りが存在する区間が含まれ、そ の出入りの量をあらかじめ与えることができず、非定常流解析によって一体的に計算す る必要がある。

4) 対象とする河道に、分合流や遊水地等による流量の出入りが存在する区間が含まれ、そ の出入りの流量をあらかじめ与えることができる場合において、その流量の出入りが、

最大流量と最高水位発生のタイミングに有意な差(ズレ)を生じさせる。

1)については、河口付近での潮位変化、支川を対象とする場合の本川との合流点付近での 水位変化、水門操作による水位制御の影響を受ける場合など、解析の境界条件である下流端水 位の時間変化に起因する場合と、対象河川の洪水伝播に関わる本来的特性による場合がある。

このうち後者に該当するかどうかを判別する考え方について及び2) (これも洪水伝播にかか わる本来的特性に起因する)に該当するかどうかを判別する考え方について以下に述べる。

一様の川幅、勾配の単断面河道を対象とした一波の洪水波の流下に伴う水位・流量変化に関 する水理特性(非定常性)の要点は、下記のとおりである。

・ 流下距離の増加に伴って最大水深は低減するが、水深の増大が生じている期間は長くな る(洪水波形の偏平化)

・ 最大水深の低減は、流下距離が大きくなるほど、水深の時間変化を表す曲線のピーク部 形状が尖鋭であるほど、また、河床勾配及び断面平均流速(又は洪水波の伝播速度)が 小さいほど顕著となる。

実河川では、上記特性に河道横断形状(複断面)や粗度・河積の縦断的な変化(たとえば樹 木群や狭窄部等)等の影響が加わる。非定常性が顕在化すると、任意の河道断面においては、

流量と水深の関係が図 5-3-1a)に一例を示すように明瞭なループを描くようになり、流量と水深 のピークが現れる時間差が大きくなる。また、流下方向には、図 5-3-2 に示すように、洪水流 の流下に伴って水深・流量の低減が顕著となる。こうした特性を踏まえて、洪水伝播にかかわ る本来的特性のために非定常流解析を使う必要があるかどうかの判断の材料は、以下の 2 点に 集約される。

① 最大流量と最高水位時の流量との差(ズレ)の大きさ(図 5-3-1a),b)参照)

② 河道内流量の出入りのない一連区間の上下流端での最大流量の差(ズレ)の大きさ(図 5-3-2 参照)

流量の差(ズレ)は第 2 章 水文・水理観測に基づく水位・流量観測結果(カテゴリー1 の観 測等)を用いて評価することができる。①②のいずれかに有意な差(ズレ)がある場合には、

最大流量を与えた定常流解析による最高水位の算定に一定の誤差が含まれる。その場合、同一 の粗度係数を用いた非定常流解析に比べて最高水位が大きめに算定される傾向を示す。こうし た傾向を加味した上で、解析の目的を満たす精度で最高水位を得るため、非定常流解析の適用 の必要性について検討する。なお、②の差(ズレ)については、図 5-3-2 に示すように一連区 間を更に細分し、各区間ごとに最大流量を適切に与えることで小さくすることができる。こう した区間割と最大流量の再設定が可能な場合には、①の観点から非定常流解析の適用の必要性 について検討することでよい。

図5-3-1 水位流量曲線図の例

図5-3-2 流下方向への最大流量の低減と区間別の最大流量設定例

第4節 計算手法の説明

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