(1) 石材の確保方策
石積み構造物を整備する場合には、地域性を確保するために地場の石材を利用するこ とが望まれる。しかし、地場の石材が産出されなくなっていたり、産出量が少なく工事 に利用する量の確保が困難であるなどの問題が発生することが多い。
そこで、日頃の河川管理の中で発生する石材(既存の石積み構造物を撤去し、石積み 以外の構造物を造る場合や河道浚渫・掘削等を実施
する場合に発生する石材等)をストックしておき、
その石材を活用することが考えられる。
このようなストックを実施している河川管理者 は多く、平成 18 年 1 月に実施したアンケート調査 では、回答者の約1/4程度が何らかの方法で石材 をストックしていることが明らかとなった。
石材のストック事例として、国土交通省四国地方整備局徳島河川国道事務所では、地 場材の青石で造られた護岸(空積)を河川工事等で撤去する場合に、その石を堤防の側 帯を利用した水防資材置き場にストックしておき、石材を利用する別の工事に活用して いる。
地域に残された石材を有効に利用していくためには、建設発生土の複数の事業主体間 での融通と同様の考え方を取り入れ、複数の事業主体が実施する工事等から発生する石 材のストックヤードを地域毎に確保する方策を検討することが必要である。
ストックヤードの確保方策としては、水防資材置き場や未利用の公共用地の活用が考 えられる。また、愛知県岡崎市にある石材生産会社では、土木工事で発生した石を引き 取り自らが所有する石切場に輸送しストックしておき販売するなどの民間レベルでの 石のリユースを実施している。
図-4-1 石材ストック実施の有無
写真-4-1 水防資材置き場でのストック状況
※建設発生土情報交換システム
→建設リサイクル推進計画の一環として、公共工事等で発生する建設発生土を有効に利用するため、
各機関が建設発生土の情報を登録し、残土が発生する機関と土砂を受け入れたい機関が情報を相互 利用できるようデータベース化し、土砂の利活用を図るもの
・愛知県内の石材生産会社では、自らが所 有する石切場に、土木工事で発生した石 を輸送・ストックし販売している
・このような民間の動きとも連携して、公 共事業等で発生する石材のリユースシ ステムを構築していくことが望まれる 写真-4-2 工事で発生した石材のストック状況
(2) 石積み技術者の確保方策
①人材の育成
平成 18 年 1 月に実施したアンケート調査では、石積み構造物の整備にあたり、“石を 積む石工職人が少ない”“施工会社に石積み工事の施工管理をする能力が充分にない”
等の意見が数多く見られた。このような課題に対し、一部の河川管理者は、職員を対象 とした石積み講座を開催する、外部組織から技術指導を受ける等の試みを実施している。
今後も、美しい石積み構造物を保全・整備していく為には、このような人材育成に取 り組んでいくことも必要である。
【土木技術職員の資質向上のための講座を開催 高知県】
・高知県では県職員を対象に、生態系や景観などの環境に配慮した石積みの設計や 施工管理ができる技術者の育成を目指した環境土木実践講座を開催し、実際の河 川工事現場での石積み実習や講義を行っている。
【外部組織からの技術指導 国土交通省熊本河川国道事務所】
・熊本県内には、土木技術の向上を目的として、NPO 法人熊本技術士の会が設けられ ている。この会には石工職人が所属しており、工事現場での石材加工、石積みの 知識にも精通している。そこで、国土交通省熊本河川国道事務所では、歴史的な 石積み技術を活用して新たな石積み工事を実施する際に、設計から施工までの技 術指導を受けるため、同会に石積み工法の検討及び指導業務を委託し、技術レベ ルを確保した。
写真-4-4 NPO 法人熊本技術士の会の現場調査風景
・NPO 法人熊本技術士の会では、日常的 に熊本県内の石山や石造り構造物を 調査し、それらの調査を踏まえ、今後 の活用方法を提言するなどの活動を 実施している
写真-4-3 高知県で実施されている石積みに関する講座
写真=高知県ホームページより
【石積み工事の体験 国土交通省熊本河川国道事務所】
・国土交通省熊本河川国道事務所では、石積み技術の継承の一環として、学生を対 象に石積み工事の現場見学会を開催し、学生に石積み施工を体験させることで石 の施工技術に対する関心、知識を深める試みを実施している。
②技能士の活用
一定レベルの石積み技術を確保する資格制度として、職業能力開発促進法に基づく技 能検定(技能士)制度が設けられている。これは、厚生労働省所管の『中央職業能力開 発協会』等によって実施される試験(学科・実技)に合格した者に資格が与えられるも ので、石材施工に関しては現在、石材の利用方法の違いによって、石材加工作業、石張 り作業、石積み作業の3種類に区分されている。技術レベルは、一級、二級に分けられ ている。
石材施工(全体) 石材加工作業 石張り作業 石積み作業
年度 1 級 2 級 計 1 級 2 級 計 1 級 2 級 計 1 級 2 級 計 H12 年度以前の資格取得者数 6253 2570 8823 3384 1249 4633 2700 1248 3948 169 73 242 H12 年度の資格取得者数 216 102 318 80 69 149 135 33 168 1 0 1 H13 年度の資格取得者数 272 126 398 76 51 127 142 31 173 54 44 98 H14 年度の資格取得者数 248 112 360 63 58 121 150 35 185 35 19 54 H15 年度の資格取得者数 228 97 325 64 41 105 142 42 184 22 14 36 H16 年度の資格取得者数 286 81 367 96 40 136 161 24 185 29 17 46 今までの延べ人数 7503 3088 10591 3763 1508 5271 3430 1413 4843 310 167 477
石材施工全体の技能士は、1万人程存在するが、石積み作業の技能士は 500 人程度と 大変少ない。
石材加工作業や石張り作業の区分では、“技術レベルの信頼性をアピールするため”
や“作業に従事するために技能士資格が必要な場合があるため”等の理由により、多く の石工が技能士資格を取得している。一方、石積み作業の区分では、技能士資格を持っ ていなくても石を積む石工として仕事に従事できるため、石積み作業の技能士資格を取
表-4-1 石材施工技能士の資格取得者数(合格者数)
・石材加工、石張りは昭和 49 年からの延べ人数、石積みは昭和 58 年からの述べ人数
・2級から1級へステップアップした者は総数にダブルカウントされている
・既に亡くなられた方もカウント数の中に組み込まれている 資料:中央職業能力開発協会提供資料より 写真-4-5 石積み現場で石積み施工を体験する学生
写真=熊本河川国道事務所ホームページより
らなくて良い状態にあり、技能士資格者が増えない原因と言われている。
石積み工事を実施していくために参考となる文献を以下に整理する。
なお、※を付した文献は、本文中で利用したものである。
【基準関係】
◇建設省制定『土木構造物標準設計2擁壁』(全日本建設技術協会、1987 年)*3
◇建設省河川局治水課監修『多自然型河川工法設計施工要領[暫定版]』(河川環境管理財団 1994 年)*13
◇建設省監修『改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説 設計編』(日本河川協会、1997 年)*2
◇国土開発技術研究センター『護岸の力学設計法』(山海堂 1999 年)*12
◇全国防災協会編『河川災害復旧護岸工法技術指針(案)』(全国防災協会、2001 年)*14
◇国土技術研究センター編『改訂解説・河川管理施設等構造令』(日本河川協会、2004 年)*11
◇国土交通省・土木工事共通仕様書 2004 年度版*15
◇国土交通書・土木工事特記仕様書 2004 年度版*16
◇全国防災協会編『災害復旧工事の設計要領』(全国防災協会、2005 年)*1
◇全国防災協会編『美しい山河を守る災害復旧基本方針』(2006 年 河川局ホームページ)*10
【構造関係】
◇良本正勝 著『土圧と擁壁と石積』(理工図書、1967 年)
◇窪田祐 著『石垣と石積壁』 (学芸出版社、1980 年)*4
◇大久保森造・大久保森一 著『石積の秘法とその解説』(1983 年)*6
◇北垣聰一郎 著『ものと人間の文化史 58 石垣普請』(法政大学出版局、1987 年)
◇高倉正人 著『わかりやすい土留擁壁・石積の設計と解説』(現代理工学出版、1989 年)*7
◇高倉正人 著『わかりやすいもたれ式・ブロック積擁壁の設計と解説』(現代理工学出版、1990 年)*5
◇福留脩文 監修・近自然工法研究会 編『近自然工法の石組み技術』(西日本科学技術研究所、2002 年)*9
【景観関係】
◇リバーフロント整備センター 編『川の風景を考える景観設計ガイドライン護岸』(山海堂、1993 年)*17
◇三宅正弘 著『石の街並みと地域デザイン 地域資源の再発見』(学芸出版社、2001 年)
【歴史・石材産地関係】
◇日本石材振興会 編『日本石材史』 (日本石材振興会、1956 年)
◇飯島亮・加藤榮一 著『原色 日本の石 産地と利用』 (大和屋出版、1978 年)
◇中江庸 著『石材産業年鑑 2004 年版』 (石文社、2004 年)*8