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馬英九政権も台湾内部の懸念をよく理解し、中国から台湾への人

65 中国首善集団総帥が台湾を訪問し、低所得者に手渡しで 1 万台湾ドルの「紅包(お 年玉)」を配るパフォーマンスを行った。同行為は「中国人の力の誇示」として台 湾人を傷つけたと注目された。「攔路跪討紅包 立委:馬英九你不慚愧嗎」『自由時 報』2011 年 1 月 28 日、版 A4。

66 「第六次『江陳會談』順利舉行 兩會簽署『海峽兩岸醫藥衛生合作協議』」海峡交流 基金会、2010 年 12 月 21 日、http://www.sef.org.tw/ct.asp?xItem=183518&ctNode=4333&

mp=1。

的移動の拡大だけでなく、中国以外からの海外観光客、留学生を受 入のため、観光局、教育部も積極的なプロモーションを展開してい る。2011 年の台湾の国際観光戦略として 650 万人の受入目標を立て て、2010 年秋から「台北国際花卉博覧会」の開催等イベントを計画 し、同年秋に台北松山-東京羽田間が直航便就航した日本、ローコ ストキャリアの就航で2010 年大きく伸びたマレーシア、韓国、シン ガポール等からの観光客拡大を図っている67

教育部も、台湾人の教育機会、就業機会、安全保障、教育資源を 守るため、中国人学生に厳しい制限を設けている68。馬英九総統も、

中国人学生の台湾就学拡大について、私立大学の学生確保が主要目 的ではなく、台湾高等教育機関の国際化が目的であることを強調し ている69。しかし、実際、拡大の規模やスピードを考えると、中国に 比べ日本、東南アジア等からの人的移動の成長には人口、経済規模、

勢い等から限界があり、台湾が国際化を目的とした開放政策も70、結 果的に中国人比率を高める「中国化」となる可能性もある71

数億人規模で拡大する富裕層という経済力を手にした中国の魅力 は、台湾だけでなくアジア、世界を引き寄せている。香港、シンガ

67 「556 萬 7277 人次 99 年來台旅客大增百萬大陸旅客最大客源馬來西亞成長居冠」、前 掲記事。

68 両岸の大学間の交換留学で台湾に来る学生には、10 万人民元の経済力証明を求めて いない。

69 「總統出席 98 學年度全國大學校長會議」総統府、2010 年 2 月 2 日、http://www.president.

gov.tw/Default.aspx?tabid=131&itemid=19944&rmid=514&word1=%e7%be%a9%e5%ae%

88%e5%a4%a7%e5%ad%b8。

70 台湾で学ぶ留学生総数は 2008 年 16909 人。教育部統計處編『中華民國教育年報(民 國九十七年)(台北:國立教育資料館、2009 年)、頁 431。

71 以敬「兩岸教育協議勿損台生權益:張宗任專坊」『自由時報』2010 年 10 月 25 日、

A6。

ポール、韓国、タイ、そして日本もリーマンショック後の経済危機 対応として、中国からの観光客、留学生の受入政策を推進している。

中国への依存という潮流に日本ですら抗うことができない現状があ る72

中国も自国の影響力をよく認識し「観光客」を外交交渉のカード として活用する姿勢を示している。2010 年 9 月に発生した尖閣諸島 海域での中国漁船侵入事件の発生以後、レアメタル禁輸等のほか、

「学術会議」「上海万博への1000 人交流団の派遣」等文化分野での 日中交流についても「交流の雰囲気ではない」として開催が中止さ れた。「交流の雰囲気ではない」との考えは、中央、地方政府レベ ルでの公的訪問団、さらに完全に独立した自由な国際移動、渡航が 存在しない中国人観光客の訪日に直接影響を与えた73。2009 年新疆 ウイグル民主活動家ラビア・カーディル女史の映画上映をめぐり、

映画祭での上映を行った高雄市への圧力でも同様の原因が挙げられ る74

台湾が持つ中国に対する言語、地理、商習慣等の優位性を考える と、中国は非常に魅力的な有力市場である。各国が中国人観光客や 留学生の受入を積極的に推進する中で、経済的に中国への依存を高

72 「民主・休暇分散化構想 中国「国慶節」に配慮 3 ブロックごと 10 月に 5 連休」『産 経新聞』2011 年 2 月 11 日、5 面。

73 富裕層への個人旅行解禁で拡大が期待された中国人観光客の訪日は、同事件発生後、

大幅に減少。「1 万人」宝建集団観光団も日本から韓国へ旅行先を変更した。「訪日予 定の中国団体観光客1 万人が韓国へ」『中央日報(日本語版)』(韓国)、2010 年 12 月 14 日、http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=135747&servcode=400&sectcode=

400。

74 同事件では、高雄市への訪問を回避しただけで台湾全体の観光客数への影響は少な く、観光客及び中国地方政府の視察団・買付団が政治的リスクを考慮し高雄市訪問 を避けた。

めることと、台湾がその依存度を高めることには、根本的な違いが ある。それは、2005 年 3 月成立の「反国家分裂法」で中国が台湾と の統一に非平和的手段(武力)を行使することも排除していないと いう事実である。

当面、胡錦濤政権も政治、軍事分野での両岸協議進展を強引に求 め、2012 年に選挙を控える馬英九総統を追い込むことは考えていな い。他方、中国は、2012 年総統選挙、さらに将来の両岸関係を長期 的にとらえ、経済交流、人的移動拡大を通じ、両岸人民間の積年の わだかまりを取り、台湾人の信頼を勝ち取り、将来の「両岸問題の 最終解決」に向けた一歩を踏み出そうとしている75

勢いを増す中国に台湾は如何に対応するのか。今後、台湾と中国 との間で経済力、軍事力の格差が拡大し、国際社会からの孤立感を 深めた場合、台湾が現在の台湾社会や現状維持に対する自信を持ち 続けられるのか。今後、経済的恩恵や中国への経済依存の浸透によ って、台湾に「中国との対立を避ける雰囲気」が高まることは避け がたい。有権者の動向は、両岸関係改善を進めた与党国民党だけで なく、「台湾独立」を党是とする民進党の対中国政策にも影響を与 え、すでに「台湾のフィンランド化」の可能性等も指摘されている76

75 中国軍事科学院の羅援・中国人民解放軍現役少将は「馬英九総統の「三不政策」は

「平和的分離」を作るものであり、両岸の政治問題の矛盾は解消されない」と批判 し、軍内部には異なる意見も存在。『聯合報』2009 年 11 月 22 日、版 A16。

76 「フィンランド化」とは、冷戦期のフィンランドが米ソ対立の中、議会制民主主義 と資本主義体制を維持するもののソ連等社会主義陣営の勢力下にあったことから

(川田侃・大畠英樹編『国際政治経済辞典 改訂版』(東京書籍、2003 年)、657 ペ ージ)、台湾についても安全保障、体制等の維持を条件に中国の影響下に入る選択 についても指摘がなされている。野嶋剛「台湾の将来選択-ECFA 後の中台関係と馬 英九政権の行方」『東亜』No.523(2011 年 1 月)、18~20 ページ;門間理良「台湾の 対中国政策と台湾の戦略的・地政学的価値再考」『東亜』No.523(2011 年 1 月)、106~116

1996 年総統選挙の際、中国のミサイル演習という軍事圧力に示した 台湾の団結力を将来の台湾も毅然と表明できるか。まさに台湾の自 由、民主、多様な価値観という「ソフトパワー」が試されることに なる。

同時に、中国も台湾人の信頼獲得のためには、中国自身がより自 由、民主、法の支配といった台湾が「当たり前」と考える自由な社 会体制に向け更なる改善がなければ、台湾の不信を払拭することは 難しいだろう。

今後、両岸関係では、両岸交渉という表舞台だけでなく、中国人 観光客、学生という存在も両岸関係の推移に影響を持つことになり、

中国が台湾の政治情勢、対中関係の変化に際し、中国が手にした影 響力を如何に行使するのか、台湾の世論に変化を与えるのか、が注 目される。両岸関係の改善の中で、台湾は観光客、学生を受入れ、

中国が直接内部の利益配分を左右する「影響力」を内包化すること になった。表面的な融和ムードをよそに、内部化した中国との距離 感をめぐり、台湾の主体性を賭けた両岸の厳しい駆け引きは続いて いる。

(寄稿:2011 年 2 月 1 日、採用:2011 年 3 月 17 日)

ページ。

馬英九執政後的兩岸人民交流之

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