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本稿では脅威認識の二層構造として、1952 年から 1996 年までの米 国 における安 全保障政策 決定者の脅 威認識、お よび米国内 におけ る 対日イメージの変遷を考察した。

ま ず、日 米同 盟の軌 跡を 回顧す るこ とで、 脅威 認識の 二層 構造の 考 察を試みた 。日米同盟 は、日米双 方の必要性 から構築さ れたも の と はいえ、初 期の安保条 約は片務的 で単なる駐 軍協定に過 ぎなか っ た。しかも戦後直後であるため日米間には信頼関係が全くなかった。

続 く安保改定 によって、 日本が防衛 協力の代わ りに経済的 援助を 提 供 する形で対 等性を示す こととなっ た。日米関 係もケネデ ィ政権 期 の 修復努力に より、相互 信頼を築き 上げようと した。だが 、ニク ソ ン 政権になる と、米国は 同盟国に通 告なく対中 ・対ソ戦略 をデタ ン ト 路線へ転換 した。それ に加えて政 策執行にお ける秘密主 義的な ス タ イルが日本 や欧州の同 盟諸国に不 信感を与え た。続くフ ォード 政 権 では、現職 大統領とし て初めて日 本を訪問し 、日本の防 衛力制 限 に 容認的な態 度を示すな ど関係の修 復を試みた 。そして、 カータ ー 政 権期にはソ 連の武力侵 攻を批判し 、米ソ間で 新冷戦が始 まった 。 続 くレーガン 政権はソ連 の攻勢に対 応するため 、日本に対 し防衛 力 の 増強を要求 。中曽根首 相は日本の 防衛力を整 備すること で要求 に 応 え、レーガ ン政権はこ れを歓迎し た。その後 の冷戦構造 の崩壊 に よ り、米国の 対日政策は 経済に大き く傾き、日 米同盟が漂 流する 時 期 があったも のの、これ はナイ・イ ニシアチブ がもたらし た再定 義

によって終わった。

原 彬久に よれ ば、米 国か ら見た 日米 同盟の 戦略 意義は 、日 本の中 立 化・共産化 を防ぐこと 、対日武力 侵略を阻止 すること、 日本の 軍 事 基地と兵站 施設(特に 横須賀及び 佐世保の海 軍基地)を 使用で き る こと、およ び「極東」 の紛争で作 戦行動をと る場合、在 日米軍 基 地を使用できることである89。それに加えて、本稿で考察したように、

日 本の軍事大 国化を阻止 することも 含まれる。 つまり、米 国にと っ て 日米同盟の 戦略意義は 、多面的か つ重大であ った。にも かかわ ら ず 、一時期は 解消されて もいいとい う漂流状態 にあったこ とを鑑 み る と、対日イ メージやパ ーセプショ ンを解釈す る必要があ ると考 え る。

第3 節で述べたように、米国における対日イメージは複雑であり、

毀 誉褒貶のイ メージが同 時に存在し ていても不 思議ではな い。総 体 的に、1950 年代から 1970 年代までの対日イメージは概ね肯定的であ った。しかし、1980 年代になると、日本の経済大国化および経済摩 擦 により、そ うした肯定 的なイメー ジは悪化し 、日本は米 国の競 争 相 手であると みなされて いった。当 時、米国の 対日安全保 障政策 に 大 きな影響は なかったも のの、冷戦 の終結によ って日米安 保体制 の 必 要性は薄れ 、悪化する 対日イメー ジは安保解 消論や日本 脅威論 に 発展していった。

第 4 節では国内社会の対日観や脅威認識と政策決定者の脅威認識 の 相互関係を 考察した。 政策決定者 が国内社会 の脅威認識 や対日 観 に 影響され、 あるいは制 限されるこ とがいくつ の時期に見 える。 ま た 、政策転換 のときにし ばしば国内 社会の世論 を誘導する 動きが 見 え る。特に民 主国では、 世論が政策 を激しく反 対するとき 、政府 に

89 原彬久、前掲論文「序説 日米安保体制-持続と変容」、4~5 ページ。

と って政策実 行の障害に なるばかり か中止とい う最悪の結 果もあ り 得 る。そのた め、国内社 会の対日観 や脅威に対 する認識変 化は政 策 決定者にとって考慮しなければならないものである。

最 後に、 今後 の課題 につ いて触 れて おきた い。 本稿は あく までも 全 体像を考察 するもので 、各要素の 因果関係を 検証するも のでは な い 。つまり政 策決定者の 脅威認識と 国内社会の 対他国イメ ージに お ける因果関係(causal relations)の検証を目的としていなかった。こ れ らを検証す るため、各 時期の特定 案例を詳し く研究する 必要が あ る。80 年代から 90 年までは、米国内社会における対日イメージが最 も 悪化した時 期であり、 レーガン政 権、ブッシ ュ政権、ク リント ン 政 権の安全保 障政策にそ れぞれどの ように対日 イメージが 影響し て い たのかを検 証したい。 また、対日 イメージに 影響を及ぼ したそ の 他の要因も含めて研究課題とし改めて論じたい。

(寄 稿 :2015 年 5 月 14 日、採用:2017 年 3 月 17 日)

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