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ベクション場による歩行誘導手法の提案 吉川

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Academic year: 2022

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(1)

ベクション場による歩行誘導手法の提案

吉川 博美

蜂須 拓

福嶋 政期

古川 正紘

,

梶本 裕之

,††

歩行者が入り乱れる建物内や駅構内では混雑を緩和させる目的で記号や音声による案内を設置し,

歩行者に片側通行等を呼びかけている.しかし案内の見落とし・無視により混雑は緩和されていな い.そこで我々は,これらの意味解釈を必要とする案内に置き換わる手法として,床面に設置した レンチキュラレンズより歩行者にベクションを生じさせる視覚刺激を呈示する歩行誘導手法を提案 した.本手法によって歩行者は自然に片側通行を行い,公共施設内の歩行者の混雑を緩和できると 考えられる.本稿では歩行者にベクションが生じるように設計したレンチキュラレンズによる歩行 誘導効果の評価を行った.

Vection Field: the Visual Navigation Method for Pedestrian

Y

OSHIKAWA

H

IROMI

H

ACHISU

T

AKU

F

UKUSHIMA

S

HOGO

F

URUKAWA

M

ASAHIRO†,

K

AJIMOTO

H

IROYUKI†,††

In urban crowded buildings and stations, handling pedestrians’ flow is one of the most significant issues.

Visual and audio signs asking pedestrians to keep one side are commonly used, which are mostly ignored or neglected. To cope with this issue, we proposed a new pedestrian control method, which presents visual cues that induce vection to pedestrian using animation on the floor. The animation is realized by lenticular lens and the pedestrians’ motion so that no electrical power is needed. In this paper, we evaluated our proposal focusing on the animation behavior presented by the lenticular lenses. Results revealed that the animation significantly effects pedestrians’ path way.

1.

はじめに

都心部の建物内や駅構内等の多くの歩行者が入り乱 れる環境において,歩行者の混雑を緩和するために

「右側通行」などを示す記号や音声によって交通整理 が試みられている.しかし歩行者はこれらの記号や音 声を無視したり見落としたりするため,混雑が緩和さ れていないという問題がある.歩行者は案内の意味を 解釈して行動に移す必要があるので,心的コストが要 求されていることが本問題の原因と考えられる.つま り従来の意味解釈を必要とする交通案内では混雑を緩 和することは難しいと言える.

一方で歩行者を直感的に目的地まで誘導するという 目的で,運動を誘発する感覚呈示によって方向を提示 するウェアラブルな装置が考案されている.前田ら 1) は,前庭感覚に電気刺激すると平衡感覚に作用して身 体が傾くことを利用した歩行誘導技術を提案している.

また小島ら 2)は耳が牽引される力に敏感であることに 着目し,耳を牽引することで方向呈示が可能であるこ とを明らかにした.

確かにこれらの手法は歩行者を直感的に誘導すると いう点では有効である.しかし本研究が目指す公共施 設における交通整備を考えた場合,歩行者全員に感覚 呈示装置を着用させることは実践的な方法ではない.

このことから運動が誘発される刺激は個人に装着され た装置からではなく,環境から歩行者に呈示されるこ とが望ましい.環境から呈示できる刺激として一般的 に視覚および聴覚が挙げられる.我々はこのうち視覚 のもつ視覚誘導性自己運動感覚(ベクション)に着目 した.

本研究ではベクションが生起される視覚刺激を環境 に呈示し歩行者を右側通行させる(図 1).これによ り混雑した歩行者の流れが整い,自然と交通整備が行 われる.ベクションは視覚刺激を地面に呈示した場合 に強く生起されることから 3),我々は視覚刺激を床面 に広範囲に呈示する.またベクションが及ぼされる空 間を生成するという意味でこの空間を「ベクション場」

と名付ける.

† 電気通信大学

University of Electro-Communications

‡ 日本学術振興会特別研究員 Japan Society for the Promotion of Science

†† 科学技術振興機構さきがけ

Japan Science and Technology Agency

(2)

情報処理学会 インタラクション 2011

図 1 ベクション場の完成想定図

歩行者にベクションを生じさせる視覚刺激はレンチ キュラレンズを用いて呈示する.レンチキュラレンズ とは断面が半円状のレンズを無数に並べられたシート である.このレンズに尐しずつ絵柄をずらした画像を 格納すると,レンズに対して視線を任意方向に動かす ことでアニメーションを呈示することができる.また レンチキュラレンズの特性上,任意方向と逆方向に視 線を動かすとアニメーションが逆再生される.

歩行者にベクションを生じさせる視覚刺激をレンチ キュラレンズに格納し,その上を歩行することで視覚 刺激は完全無電源で生成される.また任意方向と逆方 向に歩行すると視覚刺激が逆再生され,ベクションの 向きも逆転する.したがってレンチキュラレンズによ って構成されたべクション場を二人の歩行者が対面方 向に前進すると,お互いがお互いを避けるように歩行 すると考えられる(図 1 右).

被験者がレンチキュラレンズの一点を見つめた場合,

被験者に呈示されるアニメーションの再生速度は被験 者の頭部運動速度に比例する.前回の報告で我々はプ ロジェクタと頭部位置計測システムを用いて画像を床 面に投影し,頭部運動速度に応じて呈示画像を並進運 動させることでレンチキュラレンズのシミュレーショ ンを行った 4).そして頭部運動によって並進運動する 視覚刺激が歩行誘導に有効であることを示した.

本稿では,この前回の報告に基づいて制作したレン チキュラレンズについて報告する.また制作したレン チキュラレンズが歩行誘導効果を有するかを検証する.

2.

レンチキュラレンズによる実装

レンチキュラレンズの上を歩行するとき,歩行者に は複数周期のアニメーションが観察されるので,視覚

刺激は周期的パタンをもつことが望ましい.また前回 の報告 4)で使用したランダムドットと縞模様はともに 歩行誘導効果はあったものの,前者では,レンチキュ ラレンズで実装された画像は一般的に滲んでしまうこ とから,小さなドットが歩行者に十分に観察されない 恐れがある.以上の理由から我々はレンチキュラレン ズに格納するアニメーション画像として縞模様を採用 した.縞模様には白色と黒色を用い,1 本あたりの縞 の幅を 0.2m に設計した.一周期のアニメーションは 6 コマの画像から構成され,床に設置されたレンチキ ュラレンズに対して目線を 30 度動かすことで観測さ れる.縞模様は歩行者が前進すると右方向に並進運動 するように設計した.

我々は 0.3×2m のレンチキュラレンズのパネルを 10 枚制作し,縦に並べて配置した(図 2).

図 2 制作したレンチキュラレンズ

制作したパネルを並べて配置すると,視覚刺激は前 回の報告のシミュレーションとは異なって観測された.

まず身長によって観察される画像が異なったことが 挙げられる.図 3 に示すようにレンチキュラレンズ パネルを床に敷いて同一位置からレンチキュラレンズ を注視した場合,歩行者の目線の高さによって視線の 角度が異なる.観察される画像は視線の角度に従うた め,身長によって異なる画像が呈示される.

次に縞模様が曲がって観測されたことが挙げられる.

歩行者がレンチキュラレンズの一点を注視した際,手 前から奥にかけて次第にレンチキュラレンズに対する 歩行者の視線の角度が逆余弦関数的に小さくなる.前 述のように視線の角度によって画像は変化するため,

直線的な縞模様には観察されない.またこれに伴い,

歩行中に観察されるアニメーションは前回の報告のよ うに画像全体が一定の速度で並進運動するのではなく,

手前ほど速く,奥側ほど遅く観察された.歩行者の手 前側では視線の角度変化が大きいためアニメーション が速く再生されるのに対し,奥側では視線の角度変化 が小さくなり,再生速度が遅くなるためである.

前回の報告ではこれら空間的・時間的な要素が考慮 されていなかったため,今回実装されたレンチキュラ

(3)

ベクション場による歩行誘導手法の提案 レンズの縞模様は異なる見え方をすると考えられる.

しかし歩行者の運動に対して視覚刺激が並進運動する ことが誘導効果に必要な要素であるならば,前回の報 告と同様の歩行誘導効果がレンチキュラレンズによる 視覚刺激でも得られると考えられる.

図 3 目線の高さによる視線角度の違い

3.

レンチキュラレンズの視覚刺激による歩 行誘導効果検証実験

本実験では,制作したレンチキュラレンズの視覚刺 激が歩行誘導効果を有するかの検証実験を行った.

3.1 視覚刺激の設計

本実験では前章で述べたレンチキュラレンズのパネ ルを用いて視覚刺激を設計した(レンチキュラ刺激).

レンチキュラ刺激は 10 枚のレンチキュラレンズのパ ネルを床面に縦に並べて制作した(図 4 左).

また比較刺激として被験者がレンチキュラレンズ刺 激を端から直立して見たときの視覚刺激を模擬した静 止画像(静止刺激)を設計した.0.3×2m の紙に 1 本 当たり 0.2m の白色と黒色の縞模様を描き,A3 サイズ のアクリル板によってカバーした静止画パネルを用い て静止刺激を制作した.この静止画パネルを 10 枚用 意し,レンチキュラレンズ刺激と同様に,縦に並べて 床面に配置した(図 4 右).

図 4 レンチキュラレンズ刺激(左)およびレンチキュラレン ズ刺激を模擬した静止刺激(右)

静止画パネルを設置する際,カバーした A3 サイズ のアクリル板の繋ぎ目が手前から奥のパネルにかけて 直線になり,被験者が直線的に歩くための手がかりに なる可能性がある.その可能性を排除するために,パ

ネルを 1 枚毎に左右に 0~5cm ずらし,アクリル板の 繋ぎ目が直線にならないように設置した.統制をとる ため,レンチキュラレンズのパネルも同様にずらして 設置した.

3.2 被験者

本実験では男性 4 名,女性 2 名の計 6 名で行った.

被験者の平均年齢(標準偏差)は 23(±2)歳,平均身長(標 準偏差)は 164(±8)cm であった.

3.3 実験手続き

実験の様子および実験構成を図 5 に示す.

図 5 実験の様子(左)および実験構成(右)

はじめに被験者はレンチキュラレンズの端に直立し,

中心線を示す緑色の紐に身体の中心を合わせた.この 地点をスタート地点とした.その後実験者によって中 心線を示す紐は取り除かれた.被験者は,スタート地 点から 2.7m 先の赤い紐を目印として,これを注視し ながら歩行し,目印を越えたらその場で立ち止まるよ う指示された.また被験者には普段の速度で歩行する ようあらかじめ伝えられ,その際に体の力を抜き正面 に向かって歩くように指示された.

被験者が目印を越えて立ち止まった後,実験者は中 心線の紐を再び設置し,中心線から被験者の位置まで の距離を測定した.なお中心線から右方向を正と定義 した.1 名の被験者につき,レンチキュラ刺激を 5 試 行,静止刺激を 5 試行,計 10 試行が行われた.視覚 刺激はランダムな順番で呈示された.

3.4 実験結果

実験結果を図 6に示す.なお被験者 6 名のうち 1 名 が,レンチキュラ刺激の模様を観測しにくく刺激の並 進運動を感じにくかったと訴えたため,その実験デー タを除外した.

グラフにおける縦軸は中心線から被験者が停止した 地点までの平均距離を示し,エラーバーは標準偏差を 示す.グラフよりレンチキュラ刺激によって被験者が 視覚刺激の並進運動方向に誘導される一方で,静止刺 激では被験者がほぼ真っ直ぐ歩行できていたことが分 かる.また t 検定より,レンチキュラ刺激と静止刺激 の間で中心線と被験者の間の距離の大きさに有意差が あることが認められた(p<0.01).

(4)

情報処理学会 インタラクション 2011

図 6 実験結果:レンチキュラレンズによる歩行誘導効果

4.

考察

実験結果から,レンチキュラ刺激が視覚刺激の並進 運動方向に歩行誘導効果を有することが分かる.また 視覚刺激が並進運動しない静止刺激では,歩行誘導効 果は見られなかった.この結果より,歩行者の運動に 応じて視覚刺激が並進運動することが歩行誘導効果の 重要な要素であることが示唆された.

実験終了後の内観報告で「目印に近づくほど誘導さ れる」という前回の報告と同様のコメントが得られた.

目印に近づくと視線は次第に真下を向いていくため,

中心視野に占める視覚刺激の割合が大きくなり,被験 者により強いベクションが生じていたためと考えられ る.また,目印に近づくほど被験者の視線の角度変化 が大きくなり視覚刺激の並進運動速度が速くなるため,

よりベクションを強く感じていたと考えられる.

また「実験中,視覚刺激以外の周囲のものに注意が 向けられ,誘導効果が妨げられる気がした」といった 内観報告もあった.これは視覚刺激周辺のものが並進 運動しないため被験者が真っ直ぐ歩くための手がかり になったと考えられる.実際にレンチキュラレンズを 建物内や駅構内の環境下に設置する際,さらに多くの 歩行者の周囲のものが視覚刺激の妨げになると考えら れる.視野に占める視覚刺激の割合と歩行誘導効果の 関連性も今後検証する必要がある.

歩行誘導効果が見られなかった被験者については

「刺激が動いている様子が分からなった」との内観報 告を得た.原因として,レンチキュラレンズの表面上 で照明光の反射が起こる箇所があることや,レンズへ の照明光の入射角度によって視覚刺激の白色と黒色の コントラストが低くなり,刺激を観察しにくい箇所が あることが考えられる.これらの解決策として間接照 明の使用が挙げられる.間接照明を用いることでレン

ズ表面の反射を防ぎ,レンチキュラレンズに一様に光 を当てることでコントラストの低下を抑えることがで きると考えられる.

実際にレンチキュラレンズを建物内,駅構内に設置 する際には多くの歩行者がその上を歩行するため,レ ンズが摩耗することが考えられる.したがってレンチ キュラレンズの上に透明な板やシートで覆う必要があ る.また光を拡散させるシートを用いることで反射に よるコントラストの低下も防ぐことができると考えら れる.

5.

おわりに

本研究では,歩行者の動きに応じた視覚刺激をレン チキュラレンズを用いて床面に呈示して歩行者にベク ションを生じさせることで歩行誘導を行い,公共施設 の混雑を解決する手法を提案した.本稿では制作した レンチキュラレンズについての報告を行った.そして そのレンチキュラレンズによる歩行誘導効果の検証実 験を行い,レンチキュラレンズによって呈示される視 覚刺激が歩行誘導に有効であることを示した.

今後は視野に占める視覚刺激の割合と歩行誘導効果 の相互作用の検証を行う予定である.また実際にレン チキュラレンズを公共施設に設置するに当たっての問 題点や改善点についても議論する必要がある.

参 考 文 献

1) 前田,安藤,渡邊,杉本:「前庭感覚電気刺激を 用いた感覚の提示」,バイオメカニズム学会誌, 2007, vol.31, no.2

2) Y. Kojima, Y. Hashimoto, H. Kajimoto, “Pull-Navi,”

Emerging Technologies Session, ACM SIGGRAPH, 2009.

3) 佐藤,妹尾,金谷,深沢:「地面は空よりも堅固 なのか?―ヴェクション誘導における地面と空 の比較―」,亜洲藝術科學學會 學術文集,2007 4) 吉川,蜂須,福嶋,古川,梶本:「歩行誘導にお

ける自己運動を用いたベクション場の設計」,日 本バーチャルリアリティ学会第 15 回大会論文集 (2010 年 9 月金沢),2010

5) 吉田,竹中,伊東,上田,飛嶋:「オプティカル フローの提示によって引き起こされる自己運動 感覚を用いた歩行の誘導」,情報処理学会 CVIM [2006-CVIM-152],2006,pp.125-128

6) J R Lishman, D N Lee: “ The autonomy of visual kinaesthesis”, Perception, 1973, vol.2, p.287-294

參考文獻

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