6.1 総説
地すべりの発生・運動機構は複雑であり、地すべり防止工事実施後の地すべり斜面であ っても地すべり滑動が活発化することがある。
そのため、地すべり防止工事実施後の地すべり斜面に対しては、地すべり災害に至る可 能性のある要因を早期に発見するために、点検・観測を実施することとする。
6.2 点検
地すべり防止工事実施後の地すべり斜面に対しては、定期点検と異常時点検を行うもの とする。
定期点検は、年1回程度、地すべりによる斜面変状や湧水の状況の変化等について、視認 可能な範囲を現地踏査により実施する。
異常時点検は、地震や豪雨等の後に定期点検と同様、目視により実施する
解説
点検には、定期点検と異常時点検がある。異常時点検実施の判断にあたっては、地すべ り施設の変状等について住民等からの情報提供が重要である。なお概成した地すべり地に おいては計測機器等が撤去、または機能を喪失しているため目視を中心に点検をおこなう 場合が多い。
定期点検は、年1回程度、次の項目について、視認可能な範囲を現地踏査により点検する。
1) 地すべりによる斜面変状(亀裂、段差、抑止構造物や道路等の変形等)の状況 2) 湧水の状況の変化
予め、亀裂、段差、抑止構造物や道路等の変形等を捉えやすくするために、必要に応じ てコンクリート舗装等で観測帯を設置することが望ましい。
なお、点検の実施にあたり、地域住民にその監視を委ねる巡視員制度が設けられ効果 を上げている事例がある。
6.3 観測
地すべり防止工事実施後の地すべり斜面のうち、保全対象の多い地すべりなどでは、目 視による点検の他に地すべり斜面の安定状況を各々監視するために、必要に応じて地すべ り地内外に計器を設置して観測する。
また、点検の結果、地すべりによる斜面の変状が認められた場合には、速やかに地表面
解説
地表面の移動量の観測には、地盤伸縮計、移動杭測量、GPS測量等を用いる。表6-
1に、地すべり斜面の観測に用いる計器を示す。
表6-1 地すべり斜面の計器観測の対象と手法 観測対象 計測機器及び手法 計測値
地盤伸縮計 地表移動量 クラック開口量 移動杭測量 地表移動量 GPS測量 地表移動量 地表
地盤傾斜計 地盤傾斜量 パイプひずみ計 地中ひずみ量 孔内傾斜計 地中移動量 縦型伸縮計 移動量 間隙水圧計 間隙水圧 地下水位計 地下水位 地
す べ り 斜 面
地中
アンカー荷重計 緊張力
6.4 資料・記録の保管
地すべり斜面の点検・観測は、斜面に関する履歴や点検等の情報を記入した斜面カルテ 等をもとに実施する。また点検・観測結果に関する資料・記録は、利用しやすいように整 理し保管する。
6.5 地すべり防止計画への反映
地すべり斜面の点検・観測の結果、地すべり災害に至る可能性のある要因が発見される など、必要な場合には、地すべり防止計画を見直し、地すべり災害を防止するための対策 を検討する。
第7章 地すべり防止施設の機能維持
7.1 総説
地すべり防止工事実施後の地すべり斜面の安定を保持するために、施工した地すべり防 止施設の機能維持を行うものとする。
7.2 点検
地すべり防止施設に対しては、定期点検と異常時点検を行う。
定期点検は、年1回程度、地表排水路の状況、地下水排除施設の状況、排土・押え盛土斜 面の状況、河川構造物等の侵食防止施設の状況について、視認可能な範囲を現地踏査によ り点検する。
異常時点検は、地震や豪雨等の後に定期点検と同様、目視により実施する。
解説
点検には、定期点検と異常時点検がある。定期点検は、年1回程度、以下の事項について、
視認可能な範囲を現地踏査により点検する。異常時点検は、必要に応じて、地震や豪雨等 の後に定期点検と同様、目視により実施する。
1) 地表排水路の状況(目地の開き、割れ等の損傷、土砂等の堆積による閉塞、集水桝の 破損、変形、土砂等の堆積状況)
2) 地下水排除施設の状況 a) 集水井
・集水井本体の破損変形、腐食の状況、湛水の有無
・集水管孔口の腐食、閉塞、集水の状況
・排水管出口の腐食、閉塞、排水の状況
・付帯施設(天蓋、立ち入り防護柵、昇降階段)の破損、変形、腐食の状況
・集水井周辺の変状(崩壊、亀裂、陥没等)
b) 横ボーリング
・孔口保護施設の破損変形状況
・集水管孔口の腐食、閉塞状況 c) 排水トンネル
・排水トンネル内部の亀裂や歪みの状況
・排水路の破損、変形、土砂等の堆積状況
・集水管孔口の腐食、閉塞状況 3) 排土、押え盛土斜面の状況
・河川構造物の変状の有無 5)アンカー工の状況
・アンカー頭部の状況(破断、腐食、頭部キャップの脱落)
・アンカー工受圧板の変状(亀裂、変形)
7.3 観測
保全対象の多い地すべりなどにおける地すべり防止施設については、点検の他に地すべ り防止施設の機能低下を監視するために、必要に応じて地すべり防止施設に計器を設置し て観測する。
解説
表7-1には、地すべり防止施設の観測に用いる計器を示した。点検の結果、地すべり による斜面の変状が認められた場合には、地表面の移動量や傾斜量の観測を実施し、地す べりの移動状態を把握する(6章の6.3 観測を参照)。
集水井、横ボーリング等の地下水排除施設の機能低下判定は、地下水排除施設による地 下水位低下量と低下範囲、地下水排除施設からの排水量の各変化をもとに行う。そのため、
間隙水圧や地下水位と排水量のデータを取得する必要がある。
表7-1 地すべり防止施設の計器観測の対象と手法 観測対象 計測機器及び手法 計測値 地表排水路 排水量計 排水量 横ボーリング 〃 〃 集水井 〃 〃 杭 孔内傾斜計 杭の変形量 防
止 施 設
アンカー センターホール型荷重計 受圧板の荷重
7.4 付帯施設
地すべり防止施設には、必要に応じ点検及び安全のために、集水井における昇降階段や 天蓋や立ち入り防護柵、排水トンネルの坑口における扉等の付帯施設を設置する。
解説
1) 集水井内部に昇降階段(または梯子)を設置し、底部まで降りられるようにする。
なお、直高約5m毎に踊り場を設ける。
2) 集水井頂部には、転落防止のためと木の葉等が集水井内部に入らないように、出 入り口を設けた鉄筋コンクリート製等の天蓋を設置する。
3) 周囲には、部外者の立ち入りを防止するために、施錠できる出入り口を設けた立 ち入り防護柵を設置する。なお、積雪地帯では、積雪の荷重に耐えられる構造と する。
(2) 排水トンネルの付帯施設
トンネル内への部外者の立ち入りを防止するために、坑口に施錠できる扉を設ける。
また、長大なトンネルでは、換気方法も検討する。
7.5 資料・記録の保管
地すべり防止施設の点検・観測は、地すべり斜面における施設配置図や施設設置年次、
施設の構造等を明記した施設台帳等をもとに実施する。また点検・観測結果に関する資料
・記録は、利用しやすいように整理し保管する。
7.6 地すべり防止施設の機能低下判定
地下水排除施設の機能低下判定は、地下水排除施設効果範囲内(集水管設置範囲)の地 下水位と地下水排除施設排水量の対応関係を年毎に比較する等により行う。
解説
地下水排除施設の機能低下判定のためには、図7-1に示すようなh-Q曲線を年毎に 作成し、同じ地下水位時における年毎の排水量を比較するとよい。その結果、排水量が減 少している場合は、集水管の目詰まりにより施設の機能低下が生じていると考えられる。
また、観測計器が設置されていない地すべりでは、目視点検により地すべり防止施設の機 能低下が生じていないかを調査する。
機能低下判定の結果、機能低下が生じていると判定された場合は、地すべり防止施設の 維持修繕工事を実施することが望ましい。
また、移動観測の結果、地すべり移動が認められた場合は早急に対策を講じる必要があ
図7-1 地下水位h-排水量Qの関係による機能低下判定
7.7 修繕等
点検・観測の結果により、必要に応じて、地すべり防止施設の修繕や、新たな地すべり 防止施設の追加を検討する。
解説
地すべり防止施設に対しては、必要に応じて修繕や施設の追加を行う。点検・観測の結 果、修繕のみでは地すべりの再移動を阻止できないと判断される場合には、再調査を行い 新たな地すべり防止施設の追加を検討する。
1) 抑制施設の維持修繕 (1)水路
水路の機能低下を防ぐために定期的に点検し、以下の維持修繕を実施する。
1) 水路の閉塞を防止するために、水路内に堆積した土砂、雑草の除去を行う。
1) 水路の閉塞を防止するために、水路内に堆積した土砂、雑草の除去を行う。