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天然ダム監視体制整備の留意点

在文檔中 土木研究所資料 (頁 16-0)

「解説」

(1)監視体制の整備

監視体制整備には一定の時間を要する。長い時間をかければより高精度な監視を行う体制 を組むことができるが、監視体制整備可能期間、機材の準備状況、現地の電力・通信インフ ラ破損状況、他機関の対策・監視体制、そして、現地への道路交通事情に応じて実施可能な 監視体制を組む必要がある。個々の監視項目における監視手法、機器選定については、第 4 章を参照のこと。

本マニュアルで定める監視体制は、あくまで応急的なものであることから、個々の監視手 段による監視データの信頼性は平常時に比べて低くならざるを得ない。そこで、監視対象で ある天然ダムの重要度を考慮しつつ、なるべく単一の監視手法、単一の通信手段に頼らない 多重的な監視体制を整備することが望ましい。

たとえば、重要な監視項目である流入流量は、流入河川の流量を直接計測することによる ばかりでなく、湛水部の水位計測結果から単位時間内の水位増分を求めることによっても求 めることができるので、二通りの手法で求めることが重要である。また、水位計測にあたっ て、連続的に自動観測可能な水位計が設置できたとしても、水位標による目視監視も並行し て実施する方が良い。

(2)監視体制の見直し

天然ダムの状況や保全対象の状況の推移、そして気象条件の変化に応じて、監視体制を随 時見直す。なお、監視期間が長期化する場合のより持続的な監視体制構築に関する留意点に ついては、第 6 章を参照のこと。

※監視体制整備可能期間の決定

監視体制整備は、少なくとも、対象とする天然ダムが決壊してしまったり、上流の家屋が浸水して しまう前までに済ませなければならない。監視体制の整備の迅速さが最優先されるが、満水または浸 水までの猶予時間を推定することで、監視手法の改善等、監視体制の随時の見直しが可能な期間が求 められる。

まず、概況調査結果等から求めた天然ダムの諸元や周辺の保全対象の位置等を踏まえ、天然ダム箇 所周辺の大縮尺図面から、満水位および天然ダム上流域の浸水被害が生じる恐れのある湛水位を求め、

低い方の水位に対応する容量(V)を求める。

上流からの流入流量が水位上昇速度などの現地調査により推定できる場合には、それを流入流量

(Qin)として、V/Qin より満水または浸水までの時間を推定し(巻末資料4参照)、それをもとに 監視体制の整備にかけることが可能な期間を決定する。

なお、現地調査によって推定できない場合には、近隣に存在する観測所の流量観測データ(至近 10 年間程度)を用いて単位面積当りの月別平均日流量等を整理し、天然ダム上流の流域面積に乗ず ることで、天然ダム形成時期に応じた湛水部への流入流量(Qin)を概略推定する。

基礎資料収集、概況調査結果をもとに、機材の準備状況、現地の電力・通信・交通イン

フラの破損状況を考慮して、実施可能な天然ダム監視体制を整備する。監視にあたって

は、可能な限り複数の手法を用いることにより、データの信頼性の確保に努める。

3.天然ダム概況把握

3.1 基礎資料の確認・収集

「解説」

地震や豪雨等により天然ダムの発生が報告された場合、緊急的に二次災害防止のための 広域の概略調査、危険度概略判定がなされる。これらの調査、判定により監視すべき天然 ダム箇所が選定された場合、その後の監視体制整備のために、天然ダム形成位置、保全対 象の分布状況を確認するとともに、流域状況(流域規模、流路平面・縦断状況、砂防施設 設置状況等)および湛水予想範囲を早急に把握する必要がある。

また、崩壊斜面の拡大や湛水位の上昇・決壊に伴い被害の拡大するおそれがあるため流 域の雨量状況とともに湛水部への流入流量を把握する必要がある。さらに被害の拡大の誘 因となる余震等の地震情報も把握する必要がある。

したがって、次の資料や情報を確認し収集する必要がある。

○ 大縮尺地形図(1/1,000~1/5,000)

○ 広域地形図(1/10,000~1/25,000)

○ 縦断図(湛水域の上流端~保全対象まで)

○ 横断図(湛水域、閉塞部、保全対象周辺、その他流下区間におけるトラブルス ポット(橋梁など))

○ 流域空中写真または衛星画像(天然ダム形成後)

○ 流域の雨量、河川の水位(流量)情報

○ 震度、震源に関する情報

○ 道路、電気、通信インフラ被害状況

なお、これらの基礎資料については、概略調査時にある程度、確認・収集されているも のと考えられる。例えば、国土地理院は大きな災害が発生した場合には、緊急的に空中写 真や図面を提供しているので、それを入手し活用する。ここでは、天然ダムの監視に必要 な資料を再度確認し、不足資料を収集するものとする。

監視体制整備の基礎資料とするために、地形図や流域空中写真・衛星画像、雨量・

水位(流量)観測所等の情報を収集し確認する。

3.2 天然ダム全般の状況把握(概況調査)

「解説」

広域の概略調査時に天然ダム箇所の規模、形態、範囲等全般の状況はある程度把握され ているものと考えられるが、監視にあたって必要となる次の項目を確認し、必要に応じて 再度調査を実施する。調査方法としては、現地踏査、ヘリコプターによる手法があげられ る。

○ 崩壊部:崩壊地の拡大可能性、地質、幅、長さ、発生源面積、比高 推定最大崩壊深、推定移動土塊量、崩壊地の勾配

○ 閉塞部:天然ダムの高さ・長さ・幅・上下流法勾配

構成材料の透水係数・粒度分布、越流川幅、越流流量 堤体の侵食箇所と形状、堤体土砂の侵食状況

天然ダム形成前の元河床勾配

○ 湛水部:天然ダム湛水池への流入流量、

天然ダム湛水池の水位、天然ダム湛水池状況 満水までの比高・容量、天然ダム上流の流域面積

○ 周辺部:天然ダム湛水池周辺の斜面の崩落等

これらの調査項目には定性的なものも含まれるが、今後の監視を実施していく上で、基 礎的な情報となるため重要である。また、監視機器設置の制約条件となりうる事項を確認 しておく必要がある。

表 3.2 に天然ダム全般の調査結果を記入する様式例を示す。

(1) 現地踏査

概況調査は二次災害の危険がないと判断される箇所から、目視、写真撮影、ビデオ撮影、

簡易レーザ、GPS などにより、天然ダム全般(主に閉塞部・湛水部・崩壊部)の状況を把 握し記録する。可能であれば、仮の水位標を設置しておく。また、観測機器の設置箇所お よび設置可能な人工構造物の有無(護岸、橋梁など)、電源の確保方法、現地へのアクセ ス方法などを確認しておく。

調査には、携帯電話(複数社が望ましい)・K-COSMOS・衛星携帯電話等の通信機器を持 参し、通信状況を確認する。また、通信可能な場合、必要に応じて情報・画像をリアルタ イムで事務所等に伝送する。

天然ダムの規模、形態、湛水部範囲等、天然ダム全般の状況を把握することを目的

に、現地踏査、ヘリコプター、監視カメラによる調査を実施する。また、調査結果は、監

視体制整備の基礎資料とする。

(2) ヘリコプター調査

(Unmanned Aerial Vehicle)と総称される無人航空機の活用も検討すべきである。

表 3.2 天然ダム調査様式(例)

4.監視・把握

4.1 天然ダム全体状況の監視・把握

「解説」

天然ダムの規模、形状、湛水部範囲等、天然ダム全般の状況を連続的に監視するために、

監視員の配置または監視カメラを設置する。監視員の配置にあたっては、その安全管理に万 全の注意を払う必要がある。また、監視が長期に及ぶ場合には、監視カメラを設置して監視 することが望ましい。その他、天然ダムが大規模で、監視所、監視カメラ設置地点から全体 が見渡せない場合、又は監視カメラを設置できない場合には、3.2 節で述べたような現地踏 査、ヘリコプターによる調査を実施して、全体状況の連続的な監視・把握に努める。

なお、監視カメラ等による監視成果は、例えば水位計が異常値を示した場合に、現場状況

(「水面に波が立っている」等)や観測機器の設置状況(「水位センサーがなんらかの理由で 破損している」等)を確認できる等、観測機器データと現地状況との対応を把握する補完的 な役割も有する。

監視カメラは次の事項の監視を目的として、該当箇所にそれぞれ設置することが望ましい

(P7 表 2.2)。

① 湛水部の水位

② 湛水部への流入流量

③ 閉塞部の変状

④ 閉塞部からの流出流量

⑤ 崩壊部および周辺部の変状

⑥ 土石流等の発生

監視カメラは、中越地震の天然ダム形成時も災害発生から約 1 週間後に設置され、閉塞部 やその周辺を連続的に監視することが可能となった。

【ヘリコプターによる監視の留意点】

天然ダムが大規模であり、監視カメラ等で全体が見渡せない場合には、ヘリコプターによ る監視が有効である。調査実施時期は晴天継続時の定期的な監視と降雨後あるいは地震(余 震)後等において地形変化が懸念される場合とに分けられる。以下に、ヘリコプターによる 主な確認のポイントを挙げる。監視調査により閉塞部等の変化が確認された場合には、その

天然ダムの規模、形状、湛水部範囲等、天然ダム全般の状況を監視することを目的

として、監視員または監視カメラにより連続監視する。また、現地踏査、ヘリコプターに

より全体状況を定期的に監視・把握する。

様子を図示し、写真撮影を実施する。なお、監視の詳細は巻末資料2を参照されたい。

<晴天継続時>

„ 閉塞部下流側の水の色

„ 閉塞部下流側の水の色

在文檔中 土木研究所資料 (頁 16-0)