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湛水位の監視

在文檔中 土木研究所資料 (頁 24-31)

「解説」

河道が閉塞すると上流部に湛水部が形成される。湛水部の水位上昇は閉塞部の越流による 決壊や上流での浸水被害をもたらす。従って湛水深、閉塞部の天端までの比高、上流の浸水 範囲を把握するために湛水位およびその変動を監視する。

水位は昼夜問わず上昇するため、24 時間監視が必要で、観測間隔は 1 時間間隔を基本と し、水位変動の状態により弾力的に対応する。危険なため湛水部に接近できない場合には、

ヘリコプターから目視で監視することも重要である。

なお、観測した湛水位をもとに、決壊や上流部の浸水被害発生までの時間を推定する方法 については巻末資料4に記した。

【湛水位観測方法の選定】

湛水位を監視する方法には、ヘリコプターから目視で観測する方法、投下型水位観測ブイ を設置して自動観測する方法、水位標を設置して地上から目視により観測する方法、測量機 器を用いて基準面と水面の比高を観測する方法、水圧式水位計による自動観測等がある。

地上から湛水部への接近が困難な場合や、二次災害の危険が高い場合には、初動的対応と してヘリコプターから目視によって湛水位を観測する。また、投下型水位観測ブイはヘリコ プターから投下するだけで安全・迅速に設置できるためこれを利用することも有効である。

地上から湛水部付近へ立ち入ることが可能な場合には、水位標を設置して目視により観測 する方法を用いるが、急崖などで湛水部付近まで立ち入ることができない場合は遠方から測 量機器を用いて水位変化を観測する方法もある。いずれの場合も、余震等に伴う斜面崩壊や、

閉塞部の決壊による土石流によって作業員が被災することの無いよう、十分に注意する必要 がある。

また、決壊までに猶予時間があり、かつ機材の準備・搬入が可能な場合には、水圧式水位 計や非接触式水位計を設置して、水位の自動観測を行う。なお、自動観測が開始された後も 機器の精度を確認するために水位標等による目視観測は継続して行う必要がある。

閉塞部からの越流による決壊に至るまでの時間(満水までの時間)の予測、湛水域

拡大に伴う上流部の浸水被害予測を目的に、湛水位を監視する。

図 4.3 水位観測選定フロー

①ヘリコプターからの目視による監視

天然ダム発生後、初動時の観測および決壊までの時間が極めて限られる場合で、地上から 湛水部への接近が困難な場合には、ヘリコプターから目視によって湛水位を観測する。水位 の監視にあたっては、なるべく、湛水域周辺の人工構造物等を参考にして、水位上昇を定量 的に判読するように努める。また、判読する度に同じ位置・構図の写真を撮影し、次回判読 する際に、水位を比較することができるようにする必要がある。

②水位標の目視判読

天然ダムの決壊が迫っている時などは、水位計や Ku-SAT の準備が間に合わない場合が多い。

その場合には、水位標(河川用量水板や測量用スタッフ)を必要な測定範囲分設置し、目視 により水位を定期的に観測する。また、水面付近に近寄れない場合は投げ込み式水位標(浮 いているフロートを目視で計数するもの)を投げ込んで設置して観測を行う。

緊急時では昼夜問わず観測を要するため、夜間連続観測が可能な人員体制を図ったり、照 明機器を配備するなどの対応が必要となる。

また、監視カメラが確保できる場合はそれによるものとし、二次災害を回避できる安全な 場所でモニター監視することもよい。その後、通信・測定機器が搬入され次第、水位計と Ku-SAT による自動連続観測に移行し、遠方監視体制を構築する。

但し、自動連続観測が開始された場合でも、水位標を目視やカメラで確認できる状態を継 続しておく必要がある(観測データ異常値が生じた場合の確認などのため)。

②水位標の目視判読

⑤投下型水位観測ブイによる計測

④水圧式水位計による計測

※水位標の目視判読も継続

③地上測量による計測 湛水位の監視

①ヘリコプターからの 目視による監視

湛水部に 近づけるか?

yes no

決壊まで数日あり 観測機器が設置可能な場合

人力による観測

自動観測

図 4.4 一般的に使用される水位標の種類

図 4.5 水位標の目視判読

湛水部 水位標

閉塞部、渓岸など

想定される最大水深まで 読み取れるように

目視

河川用量水板、測量用スタッフ

(水位標を閉塞部などに打ち込める場合)

ウェイト

カラーフロート(10cm おき)

投げ込み式水位標

(急崖、土砂崩落などで水際に近寄れない場合)

河川用量水板

河川の水位測定に一般的に使用されており、

目視で読みとりやすい。

測量用アルミスタッフ 調達性に優れるが、測量用のため

数字や目盛りが小さい。

③地上測量による観測

湛水部に近づけないなど水位標等の設置が不可能な場合は、遠方から測量機器を用いて水 位変化を観測する。斜距離および高度角を計測できる測量機器(一般にはノンプリズム型、

測距距離2,000m)を用いて、基準地点と水面の比高を計測し、水位を算定する。この際、基 準地点の標高(または任意高さ)をあらかじめ設定しておく。夜間は標的とする水面を照明 機器で照射し観測する。

なお、この計測方法は、湛水面と渓岸の接する箇所が見通せることが条件となり、観測地 点の現場状況(二次災害の危険性など)には十分注意を払う必要がある。

X=sinθ・L

∴ 湛水位標高=h+T-X(m)

図 4.7 湛水位標高算定の概念図

④水圧式水位計による観測

人力による水位観測は非常に労力を要するため、決壊まで数日あり観測機器の準備が整っ た場合には、水圧式水位計などを設置して自動観測体制に移行することが望ましい。

機器の設置は、背後斜面からの土砂流入が少なく渓岸部が安定している地盤にアンカー等 で堅固に固定することが望ましいが、ルーズな地盤の場合には、仮杭やおもりを付けて暫定 的に設置する。なお、センサーの設置深度は、浅くすると水位低下時に水位センサーが干上 がって測定できなくなり、深くすると土砂に埋没して水圧を受けることができなくなるため、

深浅のバランスを考慮して安定した測定が確保できるようにする必要がある。

水位計とともに、Ku-SAT や災害テレメータも併設して自動伝送を行うものとする。

天然ダムが地震により発生している場合には、水位計設置後に余震でセンサー位置がずれ る可能性もあるため、余震発生前後での水位データの不連続などが生じた場合は補正する必 要がある。また水位標を併設しておきデータ精度を確認する手段を確保しておくことが望ま しい。

土砂の流入が多く水圧式水位計での設置・運用が困難な場所で、かつ湛水面上に橋梁等が ある場所では、非接触の水位計(超音波式・電波式・光波式)を用いることにより、土砂に よる埋没や流下物の衝突による破損を回避することができる。

X L θ h+T(m) 標高 h(m)

T : 機器高さ(m)

L : 斜距離(m)

θ: 俯角(°)

<水位自動観測を開始できるまでに要する日数>

水位計による自動観測の開始は早いことが望ましいが、機器の手配日数、現地へのアクセスを確保する までの日数などにより、災害発生後数日から数週間程度かかる場合が多い。また、観測機器と伝送機器の インターフェースなどの不整合も日数を増加させる要因となる。平成 20 年岩手・宮城内陸地震では 15 箇 所の天然ダムが発生したが、最短で 5 日間、最長で 3 週間程度を要している。

このため、少しでも早い水位自動監視を実現するためには、機器の事前準備による手配日数の軽減、

ヘリコプターによる運搬や設置による設置日数の軽減が必要となる。

図 4.8 水圧式水位計設置概念図

図 4.9 水圧式水位計設置事例

センサーにワイヤーと重錘を付けて上部から吊るし、

ケーブルは波付硬質ポリエチレン管で保護している。

(平成20 年岩手・宮城内陸地震で発生した磐井川・市野々原地区の天然ダムの湛水測定事例)

センサー取付高さについて

護岸等構造物に設置する場合 水位センサー

保護管 固定金具 センサーケーブル

護岸

湛水部 湛水部

水位センサー ワイヤー

木杭

波付硬質ポリエチレン管等

センサーケーブル

土砂

閉塞土砂・渓岸部に設置する場合 センサー下部が最低水位よりも

下回らない高さとなるように施工する

水圧受感部

⑤投下型水位観測ブイによる観測

天然ダム発生後、迅速かつ安全に湛水位を自動的・連続的に観測したい場合には、土木研 究所で開発された投下型水位観測ブイを設置する。

投下型水位観測ブイは、衛星通信装置を収容したブイ部と、水位センサーを収容したケー

投下型水位観測ブイは、衛星通信装置を収容したブイ部と、水位センサーを収容したケー

在文檔中 土木研究所資料 (頁 24-31)