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日本の対北朝鮮政策とその限界―北朝鮮による 2017 年の核・ ミサイル実験を例として―

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日本の対北朝鮮政策とその限界

―北朝鮮による

2017 年の核・

ミサイル実験を例として―

鈞 池

(台湾・国立高雄大学政治法律学科教授)

【要約】

安倍晋三首相は2017 年 9 月 25 日、突如として臨時国会開会後(同 28 日)に衆議院を解散し、翌月 22 日に総選挙を行うと発表した。安 倍 首相は一貫 して、これ は急激に悪 化している 少子高齢化 問題を 克 服し国の未来を拓くため、また「北朝鮮の脅威に向き合い」、全力で 国 民の生命の 安全と平和 な生活を保 障するため の「国難突 破解散 」 であり、全身全霊を傾け、全国民と共に国難を突破すると強調した。 こ の間の北朝 鮮による核 ・弾道ミサ イル発射実 験に対して 日本が と った対応は、非常に具合の悪いものだった。安倍首相は「国難突破」 の もと衆議院 の解散・総 選挙を行っ たが、この ような外交 上の危 機 を 国 内 政 治 に 利 用 す る や り 方 は 、 政 権 を 継 続 さ せ る こ と は で き て も 、北朝鮮と の間の外交 ・安全保障 上の危機を 解決するこ とはで き ない。本論文では、2017 年から 2018 年にかけての北東アジア情勢の 展 開 を 背 景 に し た 日 本 の 対 北 朝 鮮 政 策 と そ の あ り 得 る 限 界 を 観 察 し 、その分析 を踏まえて 日本に将来 起こりうる 安保政策の 転換を 分 析する。 キ ーワ ード: 日本の政治と 外交、安倍 晋三、北朝 鮮、平和主 義、 日 米同盟

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一 はじめに

安倍晋三首相は2017 年 9 月 25 日、突如として臨時国会開会後(同 28 日)に衆議院を解散し、翌月 22 日に総選挙を行うと発表した。安 倍 首相はこれ を、急激に 悪化してい る少子高齢 化問題を克 服し国 の 未来を拓くため、また「北朝鮮の脅威に向き合い」、全力で国民の生 命 の安全と平 和な生活を 保障するた めの「国難 突破解散」 と位置 づ け、全身全霊を傾け、全国民と共に国難を突破すると強調した1 2017 年から 2018 年前半にかけて、北東アジア情勢には非常に大き な 変化が起き た。その中 で最も明ら かだったの は、北朝鮮 の金正 恩 政権が2017 年中は「瀬戸際外交(brinkmanship)」を行い、核実験と 弾道ミサイルの発射を繰り返しながら、2018 年に入ると「微笑み外 交」路線に転じ、韓国・平昌での冬季オリンピックに選手団を派遣、 4 月 27 日には韓国・文在寅大統領と南北首脳会談を行った。 し かし、「瀬戸 際」「微笑み 」のどちら にせよ、日 本がそれら に 対 し てとった対 応は非常に 具合の悪い ものだった 。なぜなら 、安倍 政 権 としては外 交手段を通 じて「北朝 鮮包囲網」 を構築し、 アメリ カ や 国連などの 国際機関に 北朝鮮政府 を非難・制 裁するよう 積極的 に 働 きかける以 外、特にオ プションが なく、憲法 第九条の制 約上先 制 攻 撃を行うわ けにもいか なかったか らである。 安倍首相は 「国難 突 破 」のもと衆 議院の解散 ・総選挙を 行ったが、 このような 外交上 の 危 機を国内政 治に利用す るやり方は 、政権を継 続させるこ とはで き て も、北朝鮮 との間の外 交・安全保 障上の危機 を解決する ことは で き ない。それ どころか、 金正恩が微 笑み外交路 線をとると 、朝鮮 半

1 「『国難突破解散だ』安倍首相が解散を表明。会見で何を語った?」ハフポスト、2017 年9 月 25 日、https://www.huffingtonpost.jp/2017/09/25/pm-abe_a_23221745/。

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島への日本の影響力は「周辺化」の様相さえ帯びている。 本論文では、2017 年から 2018 年にかけての北東アジア情勢の展開 を 背景にした 日本の対北 朝鮮政策と そのあり得 る限界を観 察し、 そ の 分 析 を 踏 ま え て 日 本 に 将 来 起 こ り う る 安 保 政 策 の 転 換 を 分 析 す る。

二 北朝鮮による核開発の歴史的経過と要因

1 北朝鮮による 2017 年の核実験とアメリカとの対峙 2017 年 9 月 3 日、北朝鮮は咸鏡北道吉州郡豊渓里の実験場におい て核実験を行い、第四回実験(2016 年 1 月)に続いて水素爆弾の起 爆に成功したと宣言した2。その際、第五回実験(2016 年 9 月)の 10 倍近くのエネルギーを放出することに成功した。その後北朝鮮の 公 式メディア は、水素爆 弾に見られ るヒョウタ ン型をした 造形物 の 写真を公開した3。これは北朝鮮による六回目の核実験であり、それ までで最も威力の強いものであった。 さらに注目 に値するの は、北朝鮮 がこの後ア メリカのド ナルド ・ トランプ(Donald Trump)大統領と舌戦を演じ、双方が絶え間なく 凶 暴な発言の 応酬を行い 、武力行使 を提起する など互いを 脅迫し 合 ったことである。例えば2017 年 8 月 11 日には、トランプは金正恩 を 名指しして 「グアムほ かのアメリ カおよび同 盟国の領土 に対す る 脅迫を行ったり何か手を出したりすれば、(金正恩は)真に後悔する

2 「北韓:今早氫彈試驗 完全成功」『聯合新聞網』2017 年 9 月 3 日、https://udn.com/ news/story/6809/2680014。 3 「焦點:朝鮮核試驗動搖美國『核保護傘』威攝力」『共同網』2017 年 9 月 4 日、 https://web.archive.org/web/20170905195231/https://china.kyodonews.net/news/2017/09/11 6d71726173.html。

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ことになる…彼はすぐにそんなことをしたのを後悔するだろう」49 月19 日の国連総会演説においては「金正恩は自殺行為をするロケッ トマンだ」と発言した5。金正恩もこれに応えてトランプを「精神錯 乱に陥った老いぼれ(dotard)」と呼び、侮辱には重大な対価が伴う と 警告した。 これは金正 恩自らがト ランプを攻 撃した最初 のケー ス であった6 2018 年 1 月 1 日、金正恩は国内向けの演説の中でアメリカへ強い メ ッセージを 発し、北朝 鮮はすでに アメリカ全 土を核攻撃 できる 能 力を開発しており、「核のボタンはいつも私の机の上にある」のだか ら、アメリカは永遠に北朝鮮と戦争をすることはできないとした7 トランプも負けじと「核のボタンは私も持って」おり、彼(金正恩) のものよりも強大で、本当に使うことができると発言した8 北 朝 鮮 に よ る ア メ リ カ と の 対 峙 と 絶 え 間 な い 核 ・ ミ サ イ ル 実 験 を、学者は「瀬戸際外交」とみなしていた9。つまり、一連の実験や、 南 北境界線付 近での衝突 や事件は、 各国に金正 恩に対して 賭や対 抗 手段をとる意欲をなくさせるためのものとみなされていた。 ところが、北朝鮮は2018 年に入って大きな転換を遂げた。金正恩

4 「川普警告金正恩『很快就會後悔』」『自由時報』2017 年 8 月 13 日、http://news.ltn. com.tw/news/focus/paper/1126592。 5 「川普聯合國首秀轟『金正恩』火箭人進行自殺任務」『自由時報』2017 年 9 月 20 日、 http://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/2198579。 6 「金正恩:『美國瘋老頭』川普將為妄言付出代價。北韓外長:可能在太平洋進行『空 前的氫彈試爆』」『風傳媒』2017 年 9 月 22 日、http://www.storm.mg/article/334629。 7 「金正恩:核按鈕一直在我桌上」『聯合新聞網』2018 年 1 月 1 日、https://udn.com/ news/story/11314/2906880。 8 「川普回嗆北韓『我的核按鈕』更大」『經濟日報』2018 年 1 月 3 日、https://money.udn. com/money/story/10511/2909199。 9 楊永明「第二次韓戰?楊永明》戰爭邊緣恐成新常態」『中時電子報』2017 年 4 月 16 日、http://opinion.chinatimes.com/20170416003402-262105。

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の 「微笑み外 交」路線は 南北間の和 解を進行さ せた。年頭 の辞と 平 昌 オリンピッ クへの選手 団派遣に始 まり、金正 恩は韓国の 特使団 を 接 見 、 ア メ リ カ と の 間 に 核 武 装 計 画 中 止 の 交 渉 を 始 め る 準 備 が あ り 、交渉の間 は一切の核 ・ミサイル 実験を停止 すると語っ たので あ る10。 北朝鮮の行 動は「戦争 の瀬戸際」 から「微笑 み外交」ま で大き く ふ れた。しか しその核開 発の歴史と 外交的やり とりの来歴 を観察 ・ 分 析すれば、 北朝鮮の変 転極まりな い行動と態 度の足取り をたど る ことができる。 表1 北朝鮮による六回の核実験の概要 時間 内容 2006 年 10 月 9 日 北朝鮮による初の核実験。マグニチュード(以下 M)4.3、 爆発力は約1000t で、広島原爆の 10 分の 1。 2009 年 5 月 25 日 M4.7、爆発力は約 2000t。アメリカのオバマ大統領は「重 大な脅威」とした。国連は北朝鮮への武器輸入凍結と監視 強化からなる制裁措置を宣言。 2013 年 2 月 12 日 M5.1、爆発力は 6000〜7000t。金正恩就任後初の核実験、 小型軽量原爆を試験したと表明。アメリカは韓国にミサイ ル防衛システムとステルス爆撃機を配備することで対応。 国連は金正恩の個人・団体資産を凍結。 2016 年 1 月 6 日 M5.1、爆発力は 4000〜6000t と見積もられる。初の水爆実 験を成功させたと表明。アメリカ議会は北朝鮮と貿易を行 う企業に制裁を加える法律を可決。国連はミサイル発射を 禁ずる決議を可決。 2016 年 9 月 9 日 M5.3、爆発力は 10000t で、広島・長崎原爆に相当、また 10 年前の 10 倍となった。アメリカのオバマ大統領は、北

10 「『友善和大膽』:金正恩外交首秀震驚韓國」『紐約時報中文網』2018 年 3 月 8 日、 https://cn.nytimes.com/asia-pacific/20180308/kim-jong-un-north-korea/zh-hant/。

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朝鮮が核保有国になることは絶対に認めないと述べる。国 連は北朝鮮からの石炭輸入禁止に原則的に同意。 2017 年 9 月 3 日 M6.3、爆発力は前回の 10〜15 倍と見積もられ、過去最大。 水爆実験に成功と表明。国際メディアは水爆の小型化・長 距離弾頭への搭載能力があると認識を示す。 出 典 : 筆者 によ る 整 理 表2 北朝鮮による 2017 年中のミサイル発射実験の概要 月日 内容 2 月 12 日 中距離弾道ミサイル「北極星 2 号」発射。トランプ米大統領就任 後初の実験。 3 月 6 日 「火星7 号」4 発発射。3 発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落 下。 3 月 22 日 空中爆発のため失敗。 4 月 4 日 中距離弾道ミサイル「火星12 号」1 発発射。日本海に落下。米政 府は失敗と認識。「トランプ・習近平会談」の前だったため、国際 メディアは北朝鮮による祝砲とみる。 4 月 16 日 中距離弾道ミサイル「火星 12 号」1 発発射。失敗。 4 月 29 日 上昇後間もなく失敗。 5 月 14 日 「火星 12 号」発射。飛行時間 30 分、水平飛行距離 700 km、最高 飛行高度2000 km。文在寅韓国大統領就任後初の実験。 5 月 21 日 「北極星 2 号」発射。飛行時間 30 分、水平飛行距離 700 km、最 高飛行高度2000 km。 5 月 29 日 1 発発射。日本の EEZ に落下。 6 月 8 日 4 発発射の地対艦ミサイル。 7 月 4 日 大陸間弾道ミサイル「火星14 号」1 発発射。約 40 分間飛行後、 930 km 離れた日本海海域に落下。実験での最高飛行高度は 2802 km だが、長い軌道をとった場合の最大射程は 6700 km と見積も られる。米本土には到達しないものの、アラスカ州を攻撃するこ とは可能であることになる。 7 月 28 日 「火星 14 号」発射、最高飛行高度は 3000 km、約 45 分間飛行。

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射程は10000 km と見積もられ、米主要都市の一部を攻撃すること が可能。 8 月 26 日 短距離弾道ミサイル 3 発発射。うち 1 発は早くに爆発、残り 2 発 は250 km 離れた日本海海域に落下。 8 月 29 日 長距離弾道ミサイル「火星 12 号」発射。日本領土上空を通過した 初の実験。北海道南部上空を通過後、襟裳岬の東約1180 km の太 平洋海域に落下。 9 月 15 日 「火星 12 号」1 発発射。日本北部を通過、襟裳岬東約 2200 km の 太平洋海域に落下。総射程約3700 km、最高飛行高度は 770 km に 達する。 11 月 29 日 「火星 15 号」1 発発射。最大高度 4475 km、950 km 離れた日本海 に落下。米ハワイでは冷戦後初の核攻撃警報サイレンシステム試 験を実施。 出 典 : 筆者 によ る 整 理 表 3 トランプ大統領と金正恩委員長による舌戦(2017 年 5 月〜9 月)の概要 月日 内容 5 月 15 日 トランプは、ロイター社のインタビューにて、北朝鮮と「重大な 衝突」の可能性を示唆、同国に対する「戦略的忍耐の時代」は終 わったと述べる。 7 月 5 日 北朝鮮公式メディアが金正恩の談話を引用する形で、前日に発射 した大陸間弾道ミサイル(火星14 号)は「アメリカの畜生」への 独立記念日のプレゼントだと声明。 8 月 8 日 トランプが、北朝鮮の脅威についての質問に、アメリカをこれ以 上脅さないほうがいい、さもなければ「炎と怒り」をもって核開 発への野心に応えると述べる。 8 月 11 日 トランプは「北朝鮮の無知な行動に対応するため、軍事的解決の 道はすでに全面的に整い、砲弾の装填も終わっている。金正恩が もう一つの道を見つけてくれるといいのだが」と投稿。 8 月 23 日 北朝鮮は、トランプがいつもSNS を通じて声明を出したがること に「奇妙」で「独善的」な言論と批判、米韓合同軍事演習を強烈 に非難。

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8 月 30 日 金正恩は、前日の弾道ミサイル発射実験について、日本上空を通 過するミサイルはこれからも発射し続ける、それまでの発射は「幕 開け」に過ぎないと断言。国連の非難とアメリカの「重大な結果」 に関する警告を無視。 9 月 3 日 トランプは、北朝鮮による水爆[実験]成功後、同国を「ならず 者国家」でアメリカに「強い敵意があり非常に危険」、甘やかす態 度ではうまくいかないと批判。アメリカによる攻撃の可能性につ いて、「今に分かる」と答える。 9 月 7 日 トランプは、北朝鮮問題を解決するにあたって、軍事行動は「避 けられない」オプションの一つだと述べる。また、同国は邪悪極 まりなく、[挑発行動を]やめなければならない、もしアメリカを 武力行使に追い込むのなら、それは同国にとって悲惨な一日にな るだろうと語る。 9 月 11 日 北朝鮮外務省が、声明を発表し、アメリカ主導の国連安保理にお ける同国への制裁議事を強烈に非難。また、最後の手段をとる準 備はすでにできており、次の一波はアメリカにとってかつてない もので、耐え難いものだろうとも述べる。 9 月 12 日 北朝鮮は、国連がさらに強硬な制裁を打ち出したのを非難、アメ リカはほどなく前代未聞の「最大の苦痛」に直面するだろうと罵 る。 9 月 15 日 トランプは、B2 爆撃機と巨大な米国旗の前に立ち北朝鮮に向けて、 アメリカの軍備は敵を「たまげさせる」だろうと述べる。 9 月 16 日 北朝鮮は、自分たちの目標はアメリカとの軍事力均衡を達成する ことであり、アメリカの統治者に軍事オプションを口走らせない ためだと述べる。 9 月 19 日 トランプは、国連総会での演説中、北朝鮮がこのにらみ合いから 退かなければ、アメリカは同国を「徹底的に破壊せざるを得ない」 と警告、また金正恩を自殺作戦を実行している「ロケットマン」 と嘲笑。 9 月 21 日 北朝鮮外相は、トランプの国連総会演説に対し、「平壌は脅しには 屈しない」と回答。 出 典 : 筆者 によ る 整 理

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2 北朝鮮による核・弾道ミサイル開発の歴史

北朝鮮による核開発の歴史は長く、1950 年代には研究開発を開始 し、1962 年に平壌の北 90km の寧辺地区に核エネルギー研究所を設 立 し て 反 応 炉 を 建 設 し た 。1974 年に 国 際 原 子力 機 関 ( International Atomic Energy Agency; IAEA) 加 入 、 1985 年 に 核 不 拡 散 条 約 加 入 (Nuclear Non-Proliferation Treaty; NPT)、1986 年には黒鉛減速炉・再 処理施設等の各施設の建設を始めた。1992 年には IAEA と協定を調 印し、査察を受けている。 1993 年から 1994 年にかけて、北朝鮮側が提出した資料と IAEA の 査 察 結 果 の 間 に 重 大 な 不 一 致 が あ る こ と が 発 覚 し た こ と に 加 え 、 IAEA による特別査察を拒否したため、北朝鮮は秘密裡に核兵器開発 を 進 め て い る の で は な い か と い う 疑 念 が 持 た れ る よ う に な っ た 。 1994 年 5 月 30 日、国連安全保障理事会は北朝鮮に対し、核に関する 調査と制裁案を提出、6 月にはアメリカのジミー・カーター(Jimmy Carter)元大統領が平壌に赴き金日成主席との会談を経て、同年 10 月 に米朝枠組 み合意を締 結した結果 、核関連施 設の凍結と 引き替 え に 日米韓三ヶ 国が北朝鮮 に軽水炉と 毎年の重油 を供与する ことと な っ た 。1995 年 3 月 、 朝 鮮 半 島 エ ネ ル ギ ー 開 発 機 構 ( The Korean Peninsula Energy Development Organization; KEDO)が設立され、第一 次北朝鮮核開発疑惑危機はひとまず収束した。 2002 年 2 月、アメリカのブッシュ(George W. Bush)大統領は北 朝 鮮・イラク ・イランの 三ヶ国を、 テロリズム を支援し世 界平和 を 害する「悪の枢軸(Axis of Evil)」と認定した。同年 10 月、米政府 は 情報収集か ら北朝鮮が 今なお秘密 裡に核の研 究・開発を 行って い ると判断。12 月、北朝鮮は核関連施設の再稼働を宣言、IAEA のス タッフを追放したのに続き、翌2003 年 1 月 10 日には NPT 脱退を表 明、第二次北朝鮮核開発疑惑・危機が勃発した。2003 年 2 月、当時

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のアメリカ国務長官コリン・パウエル(Collin Powell)が訪中し、中 国 政府が前面 に立って北 朝鮮の核放 棄に向け働 きかけるよ う要請 、 外交折衝ののち、外交交渉を通じて危機を解決するべく、同年 8 月 27〜29 日に日・米・中・ロ・韓・朝による「六者会合」が北京で開 かれた。 北朝鮮は 2005 年 9 月 13 日第四回「六者会合」第二フェーズの席 上、一度は「一切の核兵器と現有の核開発計画の放棄」を約束した。 と ころが、ほ どなく米財 務省によっ て、海外で のマネー・ ロンダ リ ン グと偽米ド ル札流通に よるテロ支 援資金獲得 への関与を 理由に 、 アメリカはマカオにある北朝鮮の金融口座と関連資金2500 万米ドル を凍結することを宣言すると、北朝鮮も対抗措置をとった。2006 年 7 月 5 日、弾道ミサイル実験で 7 発全てを日本海に向け発射、同年 10 月 9 日初の核実験を行うと、国連安保理は 10 月 14 日に北朝鮮に 対し、第1718 号制裁案を採択した。2009 年 4 月 5 日、北朝鮮は人工 衛星打ち上げを宣言するも、失敗に終わる。同年5 月 25 日、二回目 の核実験の後、国連は 6 月 12 日に第 1874 号決議案を採択、北朝鮮 が 再び核実験 を行ったこ とを最も厳 しく譴責し 、核開発計 画と弾 道 ミ サイル実験 停止を要求 、経済制裁 を強化し、 各国は疑わ しい船 舶 と貨物に対して停船・検査を行う権利を付与した。 2003 年から始まった六者会合は 2011 年 12 月に金正日が死去する ま で、外交と 対話の努力 によって北 朝鮮の核開 発を停止あ るいは 終 結させることを企図していたが、ほぼ無力であった。 金正恩が労働党委員長の座を継承した後、北朝鮮は2012 年 4 月 13 日と12 月 12 日にそれぞれ人工衛星「光明星 3 号」の打ち上げに成 功 したと宣言 したが、実 際に打ち上 げられたの は弾道ミサ イル「 テ ポドン2 号」とみられていた。2013 年 2 月 12 日、北朝鮮は三回目の 核実験を行い、2016 年 1 月 6 日には水素爆弾の爆発実験に成功した

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と宣言した。国連安保理は3 月 2 日に第 2270 号決議案を採択したが、 同年9 月 9 日、再び核実験成功を宣言、翌 2017 年 9 月 3 日、二回目 の水素爆弾爆発実験を行った。 また北朝鮮 は核実験の ほか弾道ミ サイル技術 も発展させ ていた 。 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星 1 号」(2016 年 8 月)、中 距離弾道ミサイル(IRBM)「北極星 2 号」(2017 年 2 月)、大陸間弾 道ミサイル(ICBM)「火星 14 型」(2017 年 7 月 4 日)の発射実験を 行い、いずれも成功させている。 表4 北朝鮮が保有あるいは開発中の弾道ミサイル(種別) 名称 射程(km) タイプ KN-2(トーチカ) 120 短距離弾道ミサイル 火星5(スカッド B) 330 短距離弾道ミサイル 火星6(スカッド C) 500 短距離弾道ミサイル スカッドER1 1000 短距離弾道ミサイル(車載型) 火星7(ノドン) 1300〜1500 中距離弾道ミサイル 火星10(ムスダン) 2500〜4000 中距離弾道ミサイル(車載型) 北極星1(SLBM) 1000 潜水艦発射弾道ミサイル SLBM 改良型 1000 以上 火星12(IRBM) 5000 中距離弾道ミサイル 火星14(ICBM) 8000 大陸間弾道ミサイル 火星15(ICBM) 13000 大陸間弾道ミサイル テポドン2(ICBM) 10000 以上 大陸間弾道ミサイル 出 典 : 筆者 によ る 整 理

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3 北朝鮮による核・弾道ミサイル開発の理由 金日成・金 正日・金正 恩に至るま で、北朝鮮 はなぜ核開 発と各 種 の 弾道ミサイ ル発射実験 を強行する のだろうか 。ロシアの プーチ ン 大 統領はかつ て、北朝鮮 は自国の安 全のため、 核開発を放 棄する こ とはないと語った11。2018 年 4 月 20 日の朝鮮労働党第 7 期中央委員 会第3 回総会で金正恩は、5 年足らずという短期間で国家の核戦力建 設 を 完 全 無 欠 に 実 現 し た こ と は 、 歴 史 的 偉 業 の 奇 跡 的 な 勝 利 で あ り、党による核・経済の並進路線の偉大な勝利であるとした。また、 2013 年 3 月に提起された「経済建設と核武力建設を並行させる戦略 路線について」の任務が無事に完成し、人民は平和を守るための強大 な宝剣をしっかりと携え、艱難と奮闘は無事に終わったと語った12 北 朝 鮮 に よ る 核 開 発 を 説 明 す る に は 「 体 制 保 証 (security guarantee)」を理由として挙げることができる。北朝鮮は核保有が外 国 からの侵略 に対抗する 最善の体制 保証手段で あると信じ ている と い うことであ る。北朝鮮 は外からの 脅威を国内 の民衆を説 得する 手 段 としても使 っており、 核戦力保有 が彼らを保 護できる最 も有効 な 措置であるということになる。「体制保証」は以下の各種の論述で表 すことができる。 1. 1950 年に勃発した朝鮮戦争は未だ終戦にいたっておらず、核 戦力は米韓の侵攻を防止するのに有効である。 2. 核戦力保有により、外国勢力が武力で北朝鮮政府を転覆または 内政干渉を行うことを予防できる。

11 「強硬制裁北韓?普亭:沒用啦」『聯合新聞網』2017 年 9 月 6 日、https://udn.com/news/ story/11267/2684965。 12 「北韓關鍵決策 朝鮮勞動黨三中全會 金正恩報告全文」『風傳媒』2018 年 4 月 22 日、http://www.storm.mg/article/427933。

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3. 弾道ミサイルにいたる核戦力保有は、南北朝鮮または米朝間の 競争あるいは対抗能力を押し上げることができる。 4. 核戦力保有は北朝鮮による朝鮮半島統一の助けとなる。北朝鮮 の指導者は、核戦力保有により、アメリカが朝鮮半島統一の過 程で干渉してくるのを予防することができると信じている。 5. ア メ リ カ 本土 を 攻 撃 でき る 大 陸 間弾 道 ミ サ イル に 至 る 核戦 力 保有は、アメリカに対する抑止力、あるいはアメリカと同盟諸 国の離間をもたらす能力を押し上げることができる。 6. 核戦力保有は強国の象徴である。北朝鮮は核戦力保有を通して 国際的な地位を押し上げることができ、国際的に強い国家とな ることができる。 7. 核戦力保有は交渉能力を押し上げることができる。他国との正 常な外交関係の追求、朝鮮半島の非核化、あるいは核の平和利 用において、北朝鮮は核戦力を保有しているべきである。 言 い 換 え れ ば 、 北 朝 鮮 の 長 期 的 な 基 本 的 国 家 政 策 の 最 重 要 目 的 は 、充分な抑 止力で敵国 の侵攻を防 ぐことにあ る。この目 標は金 日 成 に始まり、 金正日を経 た現在の金 正恩まで、 ずっと変わ ってい な い。 核戦力開発 は外交カー ドとして使 われ、金正 日時代には 核戦力 開 発を外交的・経済的利益のため利用した。上述の1994 年の核疑惑の 際 は北朝鮮は 日米韓から エネルギー 供給と経済 ・食料援助 を引き 出 し ていたし、 六者会合で も核開発と ミサイル実 験を利用し て経済 的 利益を獲得していたのである。 第三に、外 国の事例を 観察した結 果がある。 北朝鮮は、 リビア と イ ラクの経験 から、両国 は核戦力を 放棄したこ とで最終的 に政権 崩 壊 が起こった とみている 。そのため 、核開発と 核戦力保有 は必須 で

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あり、さもなければ敵から叩かれるのである。 北朝鮮による 6 回目の核実験が世界を震撼させ、アメリカが国連 安 保理に「最 も厳格な制 裁」を行う よう呼びか けた時、プ ーチン は 制 裁は役に立 たないと指 摘した。彼 は中国アモ イで開かれ た新 興 5 カ国首脳会議(BRICS サミット)で、平壌は核開発計画は自国の安 全 保証にかか わる問題と 認識してお り、北朝鮮 が制裁圧力 の中で 核 開 発を放棄す ることはあ り得ず、自 らの安全を 感じられな ければ 、 草 の根を食べ ることにな っても核戦 力放棄をす ることはな いと語 っ た 。プーチン はまた、対 話と外交的 手段によっ て危機につ いて討 論 し、問題を解決することを望むとした13 「体制保証 」のほか、 国際関係の 構造という 要素も、北 朝鮮が 核 開発を行う理由である。 1953 年、米韓は「米韓共同防衛条約」に調印、軍事同盟を結んだ。 同 条約は、両 国のうちど ちらか一方 の政治的独 立と安全が 外部か ら 武 力攻撃の脅 威にさらさ れれば、い ついかなる 時でも「両 国が協 力 す る」こと、 また「韓国 はアメリカ に自国領土 またはその 周辺に 陸 ・ 海・空軍を 配備する権 力を付与す る」ことを 規定してい る。在 韓 米軍の現在の戦力は約29,000 人で、主力部隊は陸軍第 8 軍 19,755 人 前後である。その他空軍第7 航空軍 8,815 人前後、海軍 274 人前後、 海兵隊 242 人がいる。また海軍第 7 艦隊も朝鮮半島付近の海域を巡 回している。 しかしアメ リカは、駐 韓米軍の存 在理由は、 韓国の自己 防衛、 特 に 北朝鮮によ る侵攻から の防衛に向 けたアメリ カの約束で あると 強 調している。アメリカはまた、「拡大抑止力(extended deterrence)」 と称する「核の傘(nuclear umbrella)」を提供している。注意に値す

13 脚注 11、前掲資料。

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る のは、過去 の駐韓米軍 は陸軍と従 来型兵器の 配備を主と してき た のに対し、2004 年以後空軍の配備が増えてきていることである。ま たB-52、B-1、B-2 などの戦略爆撃機を韓国との合同巡航・軍事演習 に 定期的に派 遣、朝鮮半 島上空を飛 行させ抑止 力を産み出 した。 し か し、米軍は これらのこ とは永久的 な駐韓を意 味するもの ではな い と強調した。 米韓軍事同 盟は順調に 推移してい る。例えば 、米韓は毎 年合同 軍 事演習を行っている。2017 年 12 月 4 日には「ビジラントエース 18 (Vigilant Ace 18)」と称する演習を行ったが14、これは恒例の空中合 同軍事演習で最大規模のものとなり、5 日間で米軍 12,000 名を動員、 最新鋭戦闘機F-22 と F-35A や日本駐留の爆撃機と偵察機、さらにグ アム島を基地にするB-1B 長距離戦略爆撃機を含む 230 機以上の軍用 機 を出動させ た。これら は朝鮮半島 上空を飛行 して空襲の 迎撃・ 北 朝 鮮の核開発 基幹施設へ の攻撃・ソ ウルに照準 を合わせた 長距離 砲 の 破壊に関す る演習を行 い、弾道ミ サイル実験 を行って間 もなか っ た 北朝鮮に実 力を誇示し た。朝鮮労 働党機関誌 「労働新聞 」は、 米 韓 によるこの たびの演習 は、北朝鮮 への危険な 軍事的挑発 であり 、 緊 張する半島 情勢を「核 戦争の瀬戸 際」へ追い やるもので あり、 核 戦争はいつでも起こりうると述べた15 2017 年 11 月、トランプ大統領が初の東アジア歴訪を行っていたそ の 時、アメリ カはレーガ ン・ルーズ ヴェルト・ ニミッツの 空母三 隻 と 付随する打 撃群を日本 海に集結さ せた。これ はトランプ 大統領 の 保 護が目的か 、北朝鮮に シグナルを 送るためだ ったのかも しれな い

14 「韓美警戒王牌聯合空中演習 規模空前」『聯合新聞網』2017 年 12 月 4 日、 https://udn.com/news/story/11267/2854625。 15 「美韓聯合軍演 北韓嗆掀核戰」『中時電子報』2017 年 12 月 5 日、http://www. chinatimes.com/newspapers/20171205000365-260119。

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が 、西太平洋 地域に三隻 の空母が終 結し、日米 韓がその機 会を利 用 して合同演習を行うというのは、非常に異例なことであった16。 一方、米国家安全顧問マクマスター(Herbert R. McMaster)は、北 朝 鮮との開戦 の可能性は 日増しに高 まっている と警告、グ ローバ ル 安全保障に対する最大の脅威であると同国を名指しした17。連邦上院 軍 事 委 員 会 委 員 で 共 和 党 所 属 の リ ン ゼ ー ・ グ ラ ム (Lindsey O. Graham)上院議員はさらに、米朝間の応酬がヒートアップし続けて い るこの状況 では、国防 総省は在韓 米軍軍人の 家族を撤収 させる こ とを考慮した方がよいと呼びかけた18 ちょうどこの時期、米ハーバード大学のジョセフ・ナイ(Joseph S. Nye)教授は寄稿文の中で次のように指摘した。北朝鮮の核戦力保有 はすでに10 年以上になる、またアメリカはすでに 1994 年の段階か ら 気づいてい ることがあ る。それは 、アメリカ が先制攻撃 を行お う と すれば、日 韓にとって は北朝鮮に よる通常兵 器での報復 で甚大 な 死 傷者が出る 事態に直面 することに なり、かえ ってアメリ カの足 手 まといになるということである。

ここに至って中国は「二重凍結(a freeze for a freeze)」を提案した。 つ まり北朝鮮 は核・弾道 ミサイル実 験を停止し 、アメリカ は毎年 恒 例 となってい る韓国との 合同軍事演 習を停止す る。もし北 朝鮮が こ の 合意に違反 してミサイ ル実験か核 物質輸出を 行えば、ア メリカ は 立 場を変え合 同軍事演習 を再開して もよい、と いうもので ある。 た

16 「美軍三艘航母罕見齊聚西太平洋並舉行聯合軍演」『美國之音』2017 年 11 月 9 日、 https://www.voacantonese.com/a/us-military-trump-asia-trip-20171109/4107757.html。 17 「白宮國家安全顧問麥馬斯特:美對北韓開戰可能性『與日俱增』」『中時電子報』2017 年12 月 3 日、http://www.chinatimes.com/realtimenews/20171203002866-260408。 18 「美議員籲撤在韓美軍家屬 日本政府暫不考慮撤僑」『聯合新聞網』2017 年 12 月 4 日、https://udn.com/news/story/6809/2855528。

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だここで論争の的になるのは、北朝鮮が19核・ミサイル実験を停止し た としてもす でに核保有 国であると いう立場に は変わりが なく、 核 戦 力配備のス ケジュール を遅らせる ことにしか ならないと いうこ と で ある。また 、この提案 に効果があ るかどうか は、金正恩 にとっ て の目標をいかに評価するか次第だということが問題である。 アメリカに とって、朝 鮮半島情勢 がどう推移 するかはす でに「 戦 略的忍耐」から「戦略的不確定性」に転換し20、北朝鮮に対する態度 と 行為に変化 をもたらし ている。特 にトランプ 大統領は「 アメリ カ ・ファースト」「アメリカを再び偉大にする」といった用語から、「ア メ リ カ の 決 心 を 過 小 評 価 す る な 」「 す べ て の オ プ シ ョ ン が テ ー ブ ル の 上にある」 とも発言し たことがあ り、北朝鮮 をテロ支援 国家に 指 定 した上、制 裁を強化す るところに まできた。 アメリカが 北朝鮮 の 脅威に対応して結局どのような策をとるかは、「トランプ・金正恩会 談」の後も21観察が待たれる。 韓国につい て言うと、 文在寅政権 の対北朝鮮 政策は、ど ちらか と 言 えば概ね外 交と経済か らのアプロ ーチを試み 、一方で国 連を通 じ た 制裁を行う 、圧力をか けるよう中 国を抱き込 むといった 外交的 手 段 で北朝鮮を 牽制しなが ら、往事の 「太陽政策 」復活の願 望も持 っ て いて、自国 企業に北朝 鮮での工場 建設に向け て投資をさ せるこ と で 最近の経済 改革政策を 経済的に支 援し、軍事 的威嚇を放 棄させ よ うとしている。2018 年 1 月に冬季オリンピックへの南北合同チーム

19 Joseph S. Nye, “Understanding the North Korea Threat,” project syndicate, December 6

2017, https://www.project-syndicate.org/commentary/understanding-north-korea-threat-by- joseph-s--nye-2017-12?barrier=accesspaylog.

20 Leif-Eric Easley, “From Strategic Patience to Strategic Uncertainty: Trump, North Korea,

and South Korea’s New President,” World Affairs, Vol. 180, No. 2 (2017), pp. 7-31.

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結成を決定したことから、4 月 27 日に板門店の韓国側施設「平和の 家 」で初の「 文在寅・金 正恩会談」 が挙行され たことで、 南北の 緊 張 状態は大幅 に改善した 。ただ、上 で指摘した 「体制保証 」と「 国 際 関係の構造 」の問題か ら見ると、 これからど うなるかは まだ観 察 が待たれる。

三 日本における対北朝鮮政策の議論

1990 年代から日本のとってきた対北朝鮮政策に関する議論は、概 ね次の二種類に帰着できる。一つは、小泉純一郎元首相が2002 年に 訪朝したように、「接触と対話」を通じて日朝間の問題を解決しよう と するもので ある。しか し、この方 式はあまり 長く続くこ とがな か っ た。特に、 当時の最高 指導者・金 正日が自ら 北朝鮮によ る日本 人 拉 致を認めて 以降、日本 政府はこの 「拉致問題 」を国民主 権と国 民 の 生命の安全 にかかわる 重要な問題 ととらえ、 これが解決 しない 限 り は日朝の「 関係正常化 」を進める ことはでき ないという 認識に 至 った22。それに加えて北朝鮮が 2006 年 10 月に初の核実験を行ったこ と で、日本の 対北朝鮮政 策はもう一 つの「圧力 強化」モデ ルに傾 い ていった。 「圧力強化 」は日本政 府が現在北 朝鮮に対し てとってい る政策 で ある。2006 年 10 月の初の核実験に際し、当時の安倍晋三首相は「容 認 できない」 と厳しい声 明を行い、 対北朝鮮政 策は制裁と 接触の 制 限へ切り換えられた。2009 年 5 月に二回目の核実験が行われると、 当 時の麻生政 権は国連決 議で解決す ることを求 め、六者会 合の再 開 を強調した。三回目の核実験が行われた2013 年 2 月、安倍首相は「こ

22 「北朝鮮による拉致問題とは」内閣官房 拉致問題対策本部事務局、https://www. rachi.go.jp/jp/ratimondai/index.html。

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れまでとは違う新しい対策」をとると明言し、「圧力」と「行動」を 強調した。6 回目の核実験が行われると、安倍は「今後はあらゆる手 段 を用いて圧 力を最高ま で引き上げ るしかない 」とし、政 府は外 交 ・ 安保・経済 などの手段 で、厳しい メッセージ と強硬な行 動を通 じ て北朝鮮への「圧力強化」を行った。 安倍晋三首 相は北朝鮮 による核実 験について 「容認でき ない」 と し、2012 年に再び首相に就任した後もこのような「圧力強化」モデ ルをとり続けた。特に2016 年の一連の核実験にあたって「圧力」を 強 調し、その レベルを最 高に引き上 げた。外交 上は、日本 は米韓 と 協 力を進め、 中国とロシ アにも協力 を呼びかけ 、共同で北 朝鮮に 圧 力 をかけた。 いわゆる「 北朝鮮包囲 網」には、 日米韓・日 米韓と 中 露・国際社会とアメリカの支持の三層がある。 安全保障の 問題では、 安倍は日本 の安保政策 の変更を追 求して お り 、特にいわ ゆる「北朝 鮮脅威論」 を利用して 戦後日本の 平和憲 法 と専守防衛の立場を一歩一歩調整しようとしている。

四 日本による「北朝鮮脅威論」の解読

1 日本による北朝鮮脅威論 北朝鮮が積 極的に核開 発・弾道ミ サイルの発 射実験を行 うこと で 生 まれた、い わゆる「北 朝鮮脅威論 」によれば 、日本にと っての 脅 威は、主に次の四点である23 一、北朝鮮・金正恩政権の「予測不可能性」。例えば、北朝鮮がミ

23 Kazuto Suzuki, “Japan’s View of North Korea Threat,” IAI Commentaries, No. 18/22, March

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サイル実験を行った際、一部は日本領空を通過した。万一こ れが日本の本土に落下するようなことがあれば、日本人の生 命・財産に重大な損害がもたらされる。問題は、日本の関係 各機関は、それが誤射なのか、故意の攻撃なのかをどう判断 し、どのように対応すればいいのかということである。また、 国連安保理による経済制裁を受けていながら、北朝鮮はなぜ 関連物資や部品を取得し、核・ミサイル技術を進展させるこ とができているのか。さらに、金正恩就任後の政敵への処置 からは、張成沢(自分の叔父)の処刑や異母兄・金正男の暗 殺など、彼個人の性格上の問題が見てとれる。このような事 件・現象が起きていることで、日本は金正恩政権を理性的立 場から観察・評価することが難しくなっている。 二、日米同盟の解体(de-coupling)。日米安保条約により、北朝鮮 が日本領土あるいは日本本土にある米軍基地に軍事攻撃を発 動したとき、アメリカは日本を防衛する義務を負う。しかし、 北朝鮮がアメリカ本土を攻撃したり、核戦力による報復行為 が可能な能力を有しているとしたらどうだろう。万が一日本 と北朝鮮(あるいは南北朝鮮)の間で軍事衝突が起こった時、 アメリカにはそれでも日本(あるいは韓国)を保護する意志 があるだろうか。アメリカが北朝鮮の報復を恐れて日本を保 護する意志を捨てたとき、日米同盟は崩壊する。トランプ大 統領は現在「アメリカ・ファースト」を掲げており、かつて 選挙期間には(日本との)同盟関係解消を提唱したこともあ る。日本政府は、北朝鮮の予測不可能性と自国本土への攻撃 能 力 を 理 由 に ア メ リ カ が 同 盟 を 破 棄 す る こ と を 懸 念 し て い る。 三、大量の(北朝鮮からの)難民の発生。米朝あるいは日朝間で

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軍事衝突が発生した際には、北朝鮮国内で大量の難民が発生 し、中韓さらには日本へ避難してくる可能性がある。日本政 府は、これら大量の北朝鮮難民が危険を冒して小型木造船な どで日本海を経て日本へ向かい、海上防衛上・治安上の困難 をもたらすのみならず、受け入れの可否をめぐって判断を迫 られるジレンマに陥ることを懸念している。 四、北東アジアでの紛争による、中国の影響力の増大。日本政府 は、朝鮮半島で衝突が発生した際、中国が朝鮮半島あるいは 北東アジアの秩序に対するさらに大きな影響力を持つとみて いる。特に中国は一貫して朝鮮半島を緩衝地域とみなしてお り、必ず手を尽くしてこの地域での影響力を維持しようとす るであろう。中国は東シナ海と南シナ海にはすでに一定の影 響力を持っている。もし中国がさらに朝鮮半島での影響力を 強めた場合、アメリカはますます中国との衝突を望まなくな る可能性がある。このとき、日本はまた別の国家間パワーバ ランスで苦境に陥ることとなる。自国の軍事力を増強し中国 に対抗していくのだろうか、あるいは中国とのパワーバラン スを保つ他の方法を探っていくのだろうか。 2 日本による北朝鮮の脅威への対応策 (1) 日米防衛協力ガイドライン改定 北 朝 鮮 脅 威 論 が 日 本 に 与 え る 挑 戦 に 対 応 す る た め 、 日 本 政 府 は 1990 年代から徐々に関連政策を整えてきた。例えば 1993 年 3 月、北 朝鮮がNPT を脱退したことは、北朝鮮の第一次核危機と言える。同 年 5 月、日本海に向けて中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射、そ の 射 程 は ほ ぼ 日 本 全 域 を 射 程 内 に 収 め る も の で あ っ た 。1998 年 8 月、再度日本海に向けて弾道ミサイル「テポドン 1 号」を発射、日

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本 の防空体制 が不安定で あることが 暴露された 。このよう な動向 は 1997 年 9 月の日米防衛協力ガイドライン改定と 1999 年 5 月の「周辺 事態法」につながった。旧ガイドライン(1978 年 11 月策定)では、 日 本で緊急状 況が発生し た場合に米 軍と自衛隊 が日本の主 権の範 囲 内で合同して行動することを許しているだけなのに対し、1997 年の ガ イ ド ラ イ ン 改 定 の 主 な 目 的 は 、 日 本 の 周 辺 で 紛 争 が 発 生 し た と き 、米軍の平 和維持と安 全保障活動 に「後方支 援」を提供 できる よ う にすること であった。 これは日本 がその主権 の範囲外の 地域で 米 軍 を支援する ことを可能 にするもの であり、日 米同盟の重 要なタ ー ニングポイントであった。「周辺事態法」では「周辺の地理的範囲」 ではなく「事態」という概念を採用し、具体的な事態にあたって「日 本 の平和と安 全に重大な 影響を与え るか」を判 断してから 対応策 を 練 ることがで きるように なっている 。しかし、 日本はすで に戦後 の 「 本土防衛」 の束縛を脱 し、範囲を 周辺の平和 と安全に拡 大させ て いる。 (2) 有事三法案の成立 日本政府は2003 年 6 月に「武力攻撃事態法」「改定自衛隊法」「安 全保障会議設置法の一部を改正する法」からなる「有事関連三法案」 を可決・成立させた。「有事関連三法案」に盛り込まれているのは、 外 部から日本 を狙った武 力攻撃事態 が発生した 場合に日本 政府の と る 関連対策の 基本理念と 態勢、また 自衛隊によ る行動の円 滑さを 確 保するために必要な措置であり、「有事法制(contingency laws)」は 日 本が緊急事 態に対応す る危機管理 メカニズム と関連する 支援活 動 の法源となる。「武力攻撃事態法」は日本の「有事法制」の基本法で あり、現実に「外部からの武力攻撃」を受けているときはもちろん、 「 武力攻撃を 受ける可能 性がある」 ときや「事 態が緊迫し 、武力 攻

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撃 を受けるこ とが予想さ れる」とき にも自衛隊 が出動し、 防衛作 戦 を 行うことが できるとい うものであ る。つまり 、日本政府 はすで に 発 生している 客観的事実 だけでなく 、まだ起こ っていない 「事態 」 に対する「可能性がある」「予想される」という主観的な判断によっ ても、「先制」的に自衛権行使と軍事行動を発動することができる。 ま た、同法で は首相の軍 事決定権と 最高指揮権 を増強して いる。 特 に 緊急事態に あたって、 首相は国会 の事前同意 を得ること なく、 直 接「防衛出動」命令を発することができる。 (3) 日米によるミサイル防衛システム共同開発 2004 年 3 月 24 日、防衛研究所は 2004 年版「東アジア戦略概観」 を発表、「先制」的手段による敵国ミサイル基地の攻撃を提起した。 「 概観」の主 張は、事実 上はアメリ カとのミサ イル防衛シ ステム 共 同 開発への決 定や、日本 政府による 自衛隊のイ ラク派兵遣 の決断 な ど 、日本の外 交・防衛政 策に早くか ら反映され ている。日 本政府 は 従 来の「専守 防衛」の立 場をすでに 変えており 、自衛隊と 軍事開 発 への法的制限を徐々に解除しているといえる。 2003 年 12 月、日本政府はアメリカと共同で「ミサイル防衛(MD) シ ステムに使 用する迎撃 ミサイル」 の研究開発 を決定、一 部部品 の 研 究開発・組 み立て・米 国への輸出 並びに関連 する武器設 備の配 備 を行い、武器輸出三原則の制約を打ち破った。「安保・防衛懇談会報 告 書」で小泉 首相は、国 際的にはす でに軍事用 武器の共同 開発と 生 産 協力が主流 に向かって おり、日本 政府による 関連する参 与政策 は 検 討の必要が ある、また アメリカと の間の同盟 関係に鑑み 、武器 禁 輸 三原則は適 度に緩和で きるように するべきで あると指摘 した。 た だ 懇 談 会 は 最 終 判 断 は 政 府 が 自 分 で 下 す べ き で あ る と 提 案 し て い る 。これにつ いては、賛 成派と「慎 重派」が分 かれた。防 衛庁( 当

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時 )と防衛産 業に関係し ている経済 産業省の担 当部局は武 器禁輸 三 原 則の大幅な 緩和を主張 し、自民党 内部からも 強烈な主張 があが っ た 。しかし、 外務省は日 本とアジア 諸国の関係 から「慎重 」であ る ことを主張した。 (4) 日本の防衛力の増強 日本の防衛 力に関して 、冷戦時代 は自衛隊は ソ連の脅威 に対し 、 「 限定的かつ 小規模な」 攻撃を排除 する目的に 足る「基本 的」な 部 隊 と装備しか 保有できず 、攻撃がそ の基準を超 えれば米軍 の防衛 能 力に頼らなければならなかった。1976 年に発表された最初の「防衛 計画の大綱」は基本的にこの基準が核心に置かれている。1995 年の 「 大綱」では 、ポスト冷 戦時代の国 際情勢にお ける不確定 状態に 対 応 するため、 防衛力を引 き上げなけ ればならな い箇所があ ること を 基 本に置いて いる。現在 では「多機 能かつ弾力 的な防衛力 」をか か げ 、 国連 平和 維 持活 動(PKO)に参加して自衛隊の海外派遣の機会 を 増加させる 一方、日本 本土の防衛 のために負 う責任が従 来より 増 し ており、関 連する部隊 と装備を調 整する必要 があると強 調して い る 。日本国憲 法の改正こ そされてい ないものの 、専守防衛 の範囲 を 過 去の領土・ 領空・領海 から周辺の 「有事」発 生地域にま で、ま た ア メリカの世 界規模の対 テロ軍事行 動への協力 に至るまで 、日本 の 防衛政策は何回にもわたって調整されている。 (5) 集団的自衛権の容認 2014 年 7 月、安倍政権は憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使を 容 認する閣議 決定をした 。いわゆる 集団的自衛 権とは、日 本が直 接 攻 撃を受けて いなくても 、友好国が 攻撃を受け ている時に は武力 行 使をして共同で反撃を行う権利である。歴代政権は憲法第 9 条のも

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と 専守防衛の 立場を崩さ ず、一貫し て集団的自 衛権の行使 を禁じ て きた。2015 年 4 月改定の「日米防衛協力ガイドライン」でも集団的 自衛権容認が表明された。 日本政府が 2015 年 5 月 14 日に閣議決定した新安保法制は主に二 つの部分からなる。一つは新しく制定された「国際平和支援法」、も う一つは「自衛隊法」など10 の国内法の改正事項で構成される「平 和 安全法制整 備法」であ る。新安保 法制関連法 案の主な目 標は、 自 衛 隊の海外派 遣を恒久的 に許可し、 米軍とその 他の友好・ 同盟国 に よ る国際平和 維持活動を 支援するこ とである。 また日本が 集団的 自 衛 権を行使す るにあたっ ての法律的 基盤を敷く ための安全 保障法 案 で もある。安 倍首相は「 日本国民の 生命・財産 ・幸福を守 るため に は 、北朝鮮の 弾道ミサイ ルが国土の 大部分に到 達すること ができ る というとき、万が一の危機にあたって、防備を怠ることはできない」 と 強調、また 「日本の現 今までの専 守防衛政策 のもと、も し米軍 が 日 本周辺で攻 撃に遭って も、日本は 手をこまね いて傍観し 続けて い ていいのだろうか」と述べた。安倍首相は記者会見の際、「日本は米 軍 が 攻 撃 さ れ て い る の を 手 を こ ま ね い て 見 て い る わ け に は い か な い」「現代の軍事情勢では一国だけで平和を守るのは難しく、他国と の協力が必要だ」「日米による一致した行動は、高度な抑止力のメッ セ ージを発す る機能があ る」と表明 したが、こ のことは当 該法改 定 の 背景に日米 協力の拡大 があること 、特に北朝 鮮からもた らされ 得 る脅威または攻撃を想定していることを示している。 今回の法改 正では、集 団的自衛権 解禁にあた って必要な 三条件 も 明確 に規定して いる。(1)日本の存亡を脅かす明確な危険(存亡危 機事 態)が存在 すること(2)ほかに適当な手段がないこと(3)必 要最小限度の実力行使にとどめることである。 以上のまとめから、日本が実際には1990 年以来、国際情勢の各種

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変 化を利用し てきたこと 、特にいわ ゆる北朝鮮 脅威論を利 用し、 そ れ に対応する という形で 徐々に新し い安保体制 を構築して きたと 説 明できる。

五 日本による「対北政策」のあり得る限界

以上述べた 、いわゆる 「北朝鮮脅 威論」への 対応に至る までの 日 本 による北朝 鮮政策によ り、日本政 府が北朝鮮 政策につい て論述 と 準 備をすっか り整え、い わゆる北朝 鮮脅威論を 充分に利用 し、一 歩 一 歩法改正を 行うことで 日本の安保 法制を充実 させてきた ことが 説 明 できたと思 われる。し かし、日本 の「北朝鮮 政策」には まだ限 界 があるかもしれない。 1 防御性反応:いかにして有効な警告措置を行うか まず、過去 に北朝鮮が 各タイプの ミサイル実 験を行った とき、 ミ サ イルは日本 海に落下す るのが常で 、日本本土 上空を通過 するこ と さえある。2017 年 8 月 29 日午前 5 時 58 分、北朝鮮は日本上空に向 け ミ サ イ ル を 発 射 、 午 前 6 時 2 分 に は 全 国 瞬 時 警 報 シ ス テ ム 「J-ALERT」が北海道・東北地域など 12 の道県に緊急避難通知を出 し、NHK も国民保護に関する情報と避難情報を放送した。ミサイル 発射からJ-ALERT による緊急通知まで 4 分。しかしミサイルが北海 道上空を通過することが確認できるまで10 分足らずという非常に短 い 時間であり 、どうにも 対応のしよ うがないと いう感覚を 与えた 。 そ こで、北朝 鮮が日本に 向けて発射 したミサイ ルに対して いかに 有 効 な対応をと るか、また 日本が突然 空襲にさら されたとき の警告 措 置をどのように行うか、日本の各界で積極的な議論が行われた。 日本政府は2018 年 1 月、北朝鮮のミサイルに対する有効な防御手 段 と す る べ く 、 二 つ の 「 イ ー ジ ス ・ ア シ ョ ア ・ シ ス テ ム (Aegis

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Ashore)」を導入することを閣議決定した。イージス・アショア・シ ス テムは海上 自衛隊のイ ージス護衛 艦に配備さ れている標 準型迎 撃 システム「SM-3」と合わせ、北朝鮮からのミサイルに対する防御範 囲 を漏れなく 構築できる ほか、迎撃 高度を高く することで 命中の 正 確 性を引き上 げ、ミサイ ルの脅威に 対する全体 的な防御力 を向上 さ せることができる。 今 の と こ ろ 、 日 本 は 二 段 階 の ミ サ イ ル 防 衛 シ ス テ ム を 有 し て い る 。そのうち 主要なもの は航空自衛 隊に配備さ れている「 ペトリ オ ット(PAC-3)」防空ミサイルシステムと海上自衛隊のイージス護衛 艦6 隻であり、イージス艦には「SM-3」反ミサイル防衛システムが 搭載されている。迎撃ミサイル「SM-3」の射程は 2000 キロ、高度は 1000 キ ロ に 達 し 、 中 間 段 階 迎 撃 シ ス テ ム に 属 す る 。 防 空 ミ サ イ ル 「PAC-3」の射程は 20 キロ以上、迎撃高度は 15 キロで、終末段階反 ミ サイルシス テムに属す る。さらに イージス・ アショア・ システ ム の導入により、日本における15〜1000 キロの範囲の防衛需要を補う こ とができる 。より注目 に値するの は、イージ ス・アショ ア・シ ス テ ムの導入は 日米の軍事 協力の範囲 を強化する ことにもな るとい う ことである。 しかし、日 本が北朝鮮 に対するミ サイル防衛 のシステム と能力 を 増 強すること で、中国と ロシアの反 対を引き起 こしている 。ロシ ア は 、アメリカ が日本のイ ージス・ア ショア・シ ステムを用 いてト マ ホ ークミサイ ルを発射可 能にするか もしれず、 日米がこれ を通じ て 「 対ロシア包 囲網」を形 成するので はないかと 認識してい る。ロ シ ア はまた、日 本の挙動は 日ロ関係に マイナスの 影響を与え るし、 日 本 周辺地域の 平和への趨 勢を進展さ せることも なく、両国 の軍事 的 信 頼関係にも 影響すると 批判してい る。中国も 日本の(イ ージス ・ ア ショア・シ ステム導入 という)行 動は新たな 軍拡である と非難 し

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ている。 日本側は、 イージス・ アショア・ システムは 日本の自主 管理に な る ものであり 、主目的は 北朝鮮によ るミサイル の脅威から の防御 で あ り、日本の (北朝鮮か らの)ミサ イル防衛能 力の強化で あると し て いる。小野 寺五典防衛 相も、イー ジス・アシ ョア・シス テムは 日 本 の安全保障 の需要から くるもので あり、中ロ が懸念する にはあ た らないと述べている。 2 防御性反応:先制攻撃の可能性 次に、北朝 鮮によるミ サイルの脅 威を有効に 防衛するた め、日 本 は 対地攻撃能 力を兼ね備 えた空対艦 誘導弾の導 入を考えて いる。 こ れは長距離(射程900 km 以上)ミサイルで、航空自衛隊の戦闘機に 搭 載される可 能性がある 。これにイ ージス・ア ショア・シ ステム を 加 えたことで 、日本が「 専守防衛」 の立場を放 棄し、違憲 の疑い が あ る「先制攻 撃」行動を とるのでは ないかとい う、周辺国 家から の 疑念が引き起こされた。 小野寺防衛 相はこれに 対し次のよ うに述べて いる。世界 各国の ミ サ イルは現在 のところ射 程を長距離 化する趨勢 になってお り、各 種 レ ーダー設備 の探索能力 も上がって いる。日本 が自己防衛 、特に 敵 国 の 侵 入 を 予 防 す る に あ た っ て 、 防 衛 ミ サ イ ル の 射 程 が 短 す ぎ れ ば 、我が国の 自衛隊を危 険に陥らせ ることにな る。このた め、戦 闘 機には長距離ミサイルを搭載する必要がある。 3 戦略調整の議論:非核三原則の問題 第三に、日 本は現在す でに北朝鮮 が核保有国 であると認 識して い る ので、その 核戦力によ る脅威への 対応手段と していわゆ る「非 核 三 原則」改定 を行う必要 があるかど うかも、議 論に値する 問題で あ

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る。日本の「非核三原則」は1967 年に佐藤栄作首相が国会答弁とい う 公 開 状 況 の も と 打 ち 出 し た も の で あ り 、「 核 兵 器 を 作 ら ず 、 持 た ず、持ち込ませず」という声明・約束である(ただしアメリカの「核 の傘」が日本の安全保障の重要な支えとなる)。しかし北朝鮮が核戦 力 を保有し、 各種弾道ミ サイルも配 備している 現段階では 、従来 と は違った主張をする人々も出てきている。 防衛相経験者の石破茂は「中央公論」2017 年 11 月号に寄稿し、「非 核 三原則」は 「議論」の 必要があり 、特に在韓 米軍基地に 核を配 備 し 「共同保有 」を行うこ となど、関 連する全て の問題につ いて討 論 す ることが必 要だと述べ た。また、 日本には一 方に「非核 三原則 」 と いう国是、 もう一方に 核について 「討論しな い」という 基本原 則 が あり、長い 間このよう な基本原則 と認識を持 ってきた。 しかし 、 朝 鮮半島情勢 の推移など の問題があ る中、日米 同盟に基礎 を置く ア メ リカの「核 の傘」が日 本を保護す る能力を発 揮できるの か、こ の よ う な 問 題 を 改 め て 研 究 ・ 議 論 す る 必 要 が あ る と し た 。 具 体 的 に は 、非核三原 則の「持ち 込ませず」 については 、在日米軍 基地へ の 核 ミサイル導 入・配備、 あるいは( 日米による )核兵器の 共同保 有 を 目指すなど 、可能性を 広げ、議論 を行う必要 があるとい うのが 石 破の主張である。 石破の主張 はその実、 日本は東ア ジア地域で の核武装レ ースに 乗 り 出すのか? というもう 一つの議題 を引き出す ことになる 。この よ う な議論にも 核に対する 日本の矛盾 した心理が 如実に現れ ている 。 日本は唯一、核攻撃を受けた国家であるし、2011 年の東日本大震災 も「核(原子力)」に対してさらに複雑な心理を抱かせることとなっ た。日本国民は基本的に自国の核保有にも外部から「持ち込ませる」 こ とにも強く 反対してお り、在日米 軍が提供す る核の傘に も非常 に 曖 昧な心理的 反応をする ほどである 。しかし、 北朝鮮によ る核の 脅

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威 に直面して 、日本も対 応行為をと る必要があ る。少なく とも一 定 程 度の抑止力 は持つべき であるが、 日本のとり 得るオプシ ョンは 実 際 には非常に 限られてい る。日本自 身に北朝鮮 による核の 脅威に 対 応 する充分な 抑止力がな いのであれ ば、アメリ カまたはそ の他の 友 好 国にさらに 依存し、対 話方式の外 交活動を協 力して行う ことで 脅 威に対応することになるだろう。

六 結論:日本の対北朝鮮政策への展望

日朝の関係 正常化の過 程は拉致事 件と核開発 に振り回さ れ、長 い 間 突破口を開 けないでい た。金正恩 就任後の一 連の核・ミ サイル 実 験 は、 安倍首 相が 2017 年に前倒しで総選挙を行う理由—「国難突 破」—ともなった。 北朝鮮の核 の脅威に対 する日本の 外交手段に よる対応は 、近年 新 たな挑戦に直面している。2016〜2017 年に連続して核・ミサイル実 験 が実施され ていた時期 は、日米の みならず韓 国までもが 基本的 に 同 じ戦線に立 って北朝鮮 の行為に一 致して反対 したほか、 共同防 衛 行動をとり、相互支援と協力で威嚇行為に対応していた。 しかし2018 年、北朝鮮は突然微笑み外交の路線をとり、韓国及び アメリカとの首脳会談を積極的に求め、「和解」のきっかけを探り始 め た。例えば 北朝鮮は平 昌で行われ る冬季オリ ンピックに 南北合 同 チームとして参加し、金正恩と文在寅は4 月 27 日に首脳会談を行っ た 。この際金 正恩は韓国 を通じてア メリカのト ランプ大統 領と会 談 し たい旨を対 外的に述べ 、トランプ 大統領も自 分の口で直 接「ト ラ ン プ・金正恩 会談」を行 いたいと答 えた。日本 については 、この 朝 鮮半島情勢の推移の中で「周辺化」される可能性が出てきた。 い ずれに して も、日 本は 北朝鮮 の脅 威に対 して 現段階 では 、外交 手 段 を 通 じ て の 解 決 が 最 も 有 効 な 対 応 措 置 と い え る 。 し か し 一 方

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で 、様々な状 況の変化に 応じて柔軟 に対応でき るよう備え ること も 必要かもしれない。

(寄 稿 :2018 年 5 月 2 日、採用:2018 年 6 月 19 日) 翻 訳 : 田中 研也 ( 台 湾・ 東呉 大 学 日本 語文 学 科 非常 勤講 師 )

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日本的北韓政策及其侷限

―以

2017 年北韓核武與飛彈試射為例―

鈞 池

(國立高雄大學政治法律學系教授)

【摘要】

日本首相安倍晉三於2017 年 9 月 25 日突然對外表示,將在臨時 國會開議後(同年 9 月 28 日)宣布解散眾議院,並且訂於同年 10 月 22 日舉行大選。儘管安倍首相強調,這次解散國會是為了「克服國難」 ( 日 文 是 「 國 難 突 破 」, 安 倍 首 相 定 調 此 次 解 散 改 選 為 「 國 難 突 破 解 散 」),是 為了克 服日本急遽 惡化的少子 高齡化問題 ,開創國家 未來 , 並「面對北韓威脅」,全力保障國民生命安全及和平生活。安倍首相強 調 ,他會傾注 全心全意, 與全體國民 共同突破。 對於日本而 言,這 一 連 串的北韓核 武試驗或飛 彈試射事件 ,日本的因 應措施其實 是相當 尷 尬的。安倍晉三首相在2017 年 9 月以「克服國難」為由,解散眾議院 進 行改選,這 種以外交危 機轉換國內 政治利益的 手段,雖然 讓安倍 首 相 得以繼續執 政,可是, 外交上的危 機仍未化解 。本文的寫 作,是 以 2017 年到 2018 年東北亞局勢發展為背景,進而觀察日本的北韓政策及 其可能的侷限,並且藉此分析與預期日本未來可能的安保政策之演變。 關鍵字:日本政治外交、安倍晉三、北韓、和平主義、美日同盟

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Japan’s North Korea Policy and Its

Limitations: a Case Study of Pyongyang’s

2017 Nuclear and Missile Tests

Chun-Chih Yang

Professor, Department of Government and Law, National University of Kaohsiung

Abstract】

On September 25, 2017, Japanese Prime Minister Shinzo Abe announced that he would disband the House of Representatives after the opening of the interim Congress in 3 days on September 28 and that he would start holding general elections on October 22. Despite Prime Minister Shinzo Abe’s emphasis at the beginning on the latest disbandment was aimed at “overcoming the national crisis,” (or in Japanese, “a national disaster breakthrough), he later announced this change in government and re-election is a way to overcome Japan’s rapid decline in the minority population, leaving more seniors than young people, which Prime Minister has named this action as “National Crisis Disbandment.” In addition to providing a solution to the rise in seniors and decline in the later generations, this disbandment has a few other goals: to create a national future as a way to face the threats of North Korea, all the while to ensure the safety of citizens and to maintain a peaceful life. Prime Minister later emphasized that he will devote himself wholeheartedly with the people of Japan in solving these issues together. With North Korea’s recent developments in nuclear weaponry, Japan’s way of handling its relationship with North Korea is awkward at best due to the Prime Minister’s decision in choosing to disband

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the House of Representatives. This method of handling foreign affairs by restructuring the inner government only benefits the inside and the international crisis remains unsolved. This paper uses references from the Northeast Asia Development 2017-2018 as background material, observations on Japan and North Korea relations and other possible limitations that may arise, and uses this analysis to predict Japan’s future change and evolution in its security policy.

Keywords: Japanese Politics and Diplomacy, Shinzo Abe, North Korea,

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〈参考文献〉

「北朝鮮による拉致問題とは」内閣官房拉致問題対策本部事務局、https://www.rachi.go. jp/jp/ratimondai/index.html。

(“What’s the Abductions Issue?” Cabinet Secretariat [Secretariat of the Headquarters for the Abduction Issue], https://www.rachi.go.jp/jp/ratimondai/index.html.)

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state at conference?” HUFFPOST, September 25, 2017, https://www.huffingtonpost.jp/ 2017/09/25/pm-abe_a_23221745/.)

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「川普聯合國首秀轟『金正恩』火箭人進行自殺任務」『自由時報』2017 年 9 月 20 日、 http://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/2198579。

(“Trump calls ‘Kim Jong-un’ a rocket man on a suicide mission at his first UN address,” Liberty

Time Net, September 20, 2017, http://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/2198579.)

「川普回嗆北韓『我的核按鈕』更大」『經濟日報』、2018 年 1 月 3 日、https://money.udn. com/money/story/10511/2909199。

(“Trump hits back at North Korea: ‘my nuclear button’ is bigger,” Economic Daily News, January 3, 2018, https://money.udn.com/money/story/10511/2909199.)

「『友善和大膽』:今正恩外交首秀震驚韓國」『紐約時報中文網』2018 年 3 月 8 日、 https://cn.nytimes.com/asia-pacific/20180308/kim-jong-un-north-korea/zh-hant/。 (“Friendly and bold: Kim Jong-un’s diplomatic debut shocks South Korea,” cn. NY Times.com,

March 8, 2018, https://cn.nytimes.com/asia-pacific/20180308/kim-jong-un-north-korea/zh- hant/.)

「白宮國家安全顧問麥馬斯特:美對北韓開戰可能性『與日俱增』」『中時電子報』2017 年 12 月 3 日、http://www.chinatimes.com/realtimenews/20171203002866-260408。 (“White House National Security Advisor McMaster: possibility of war with North Korea

‘increasing every day’,” Chinatimes.com, December 3, 2017, http://www.chinatimes.com/ realtimenews/20171203002866-260408.)

「北韓:今早氫彈試驗 完全成功」『聯合新聞網』2017 年 9 月 3 日、https://udn.com/news/ story/6809/2680014。

(“North Korea completes successful hydrogen bomb test this morning” udn.com, September 3, 2017, https://udn.com/news/story/6809/2680014.)

參考文獻

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