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東アジア経済統合の展望とその課題 東亞經濟整合之展望與課題

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東アジア経済統合の展望とその課題

慶 瑞

1 (輔仁大学日文系所准教授)

銘 福

2 (僑光科技大学国際貿易運籌学科助教)

廳 宜

3 (僑光科技大学金融リスク管理学科助教)

【要約】

1990 年代から、地域経済統合は世界のひとつの流れとなっている。 過去40 年余りで東アジアの経済は急速に発展し、各国間の経済関係 もより緊密になった。東アジア各国は1999 年以降、経済発展をさら に進めべく、積極的に地域貿易協定の交渉や締結に取り組んでいる。 本稿ではまず主に、統計分析を用いて、実質 GDP(国内総生産)、 貿 易、投資の 観点から東 アジア地域 の経済成長 を描写する 。次に 、 最 新データか ら東アジア 地域におい て協定締結 が比較的多 い国が シ ンガポール、日本、中国、韓国であることを浮き彫りにする。また、 ASEAN(東南アジア諸国連合)プラス 3(日中韓)、ASEAN プラス 6(日中韓、インド、豪州・NZ)、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)、

1 台湾‧輔仁大学日文系所准教授。 2 台湾‧僑光科技大学国際貿易運籌学科助教、本稿の連絡先(e-mail: august@ ocu.edu.tw)。 3 台湾‧僑光科技大学金融リスク管理学科助教。

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TPP(環太平洋連携協定)の 4 つの構想から東アジアの経済統合の今 後を展望する。さらにASEAN を主軸とした東アジア経済統合、広範 で 踏み込んだ 交渉分野、 互恵的な経 済統合、東 アジア地域 の為替 協 力 など、東ア ジアの経済 統合におけ る今後の課 題を提示す る。最 後 に 、ともすれ ば周辺化の 危機にさら される台湾 が、東アジ アの経 済 統合において採るべき戦略を模索する。 キーワード:東アジア経済統合、地域貿易協定、FTAAP(アジア太 平洋自由貿易圏)、TPP(環太平洋連携協定)

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一 はじめに

冷戦の終結 に伴い、中 国、東欧な ど旧共産主 義諸国は市 場経済 化 を 進め、世界 経済は「大 競争時代」 と呼ばれる グローバル 化の時 代 を 迎えた。世 界的規模で 大競争時代 に突入する という厳し い環境 の 中 、持続的で かつ著しい 経済成長を 果たした唯 一の地域が 東アジ ア であった4。東アジアの経済は 1997 年に発生したアジア通貨危機で 多くの国がダメージを受け、2008 年の世界金融危機でも難を免れな かったものの、その後は軒並みV 字型の急速な回復をみせ、世界経 済の成長の中心となると同時に存在感を大いに高めた。 実際、1990 年代から、地域経済統合は世界のひとつの流れとなっ ている5。各国が積極的に地域経済統合に取り組むのは、主に地域の 自 由貿易協定 に伴う市場 開放による 効果をにら んでのこと であり 、 1948 年 に 発 足 し た関 税 お よ び 貿 易 に 関 す る 一 般 協 定(General Agreement on Tariffs and Trade、GATT)が標榜する、多国間で構成す る 経済貿易体 制の交渉に おける所要 期間の長さ や不確実性 の高さ と

は大きな違いがある。1986 年に始まった GATT のウルグアイ・ラウ

ンド(Uruguay Round)は、8 年の交渉ののち 1994 年に終結、1995

年には世界貿易機関(World Trade Organization、WTO)の設立に至

4 「東アジア」という用語について、一般にさまざまな表現があるが、本稿の統計・

分析においては、日本・アジア四小龍・東南アジア諸国連合4 カ国(ASEAN4)・中 国を指す。アジア四小龍とは韓国・台湾・香港・シンガポール。ASEAN4 カ国とは タイ・フィリピン・インドネシア・マレーシアを指す。

5 地域経済統合の形態は「自由貿易協定」(Free Trade Agreement、FTA)/経済連携協

定(Economic Partnership Agreement、EPA)、「関税同盟」、「共同市場」(Common Market)、「経済同盟」(Economic)、「完全統合」などの段階に大別される。地域統合 に関する説明は浦田秀次郎編『FTA ガイドブック』(日本貿易振興会、2002 年)、11~12 ページを参照のこと。

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っ た が 、WTO の 新 ラ ウ ン ド 交 渉 の 進 展 は 緩 慢 で 、 地 域 主 義 (Regionalism)の台頭を助長することとなった。 地域経済統 合はこれに 関わる国が 少ないため 、合意の達 成が容 易 で 、貿易自由 化のスケジ ュールを短 縮できるだ けでなく、 労働者 お よび競争政策、環境保護などの課題も地域貿易協定(Regional Trade Agreement、RTA)の内容に盛り込むことが可能である。このほか地 域 経済統合は 加盟国およ び非加盟国 に対する経 済効果も生 む。地 域 貿 易協定が貿 易に与える 効果は通常 、一般の関 税引き下げ が資源 配 分効率に与える影響などの静態的効果(static effects)と、生産力の 向 上 と 資 本 蓄 積 な ど が 経 済 成 長 に 与 え る 影 響 と い っ た 動 態 的 効 果 (dynamic effects)の 2 種類が主に挙げられる。前者は主に貿易創造

効果(trade creation effect)と貿易転換効果(trade diversion effect) で ある。貿易 創造効果と は加盟国間 における貿 易障壁の撤 廃によ り も たらされる 効果である 。貿易転換 効果とは、 地域内のゼ ロ関税 措 置 の実施で、 非加盟国か らの輸入品 が、より高 コストの加 盟国か ら の 輸入品に取 って代わら れることで ある。よっ て効率の観 点から す れ ば、経済厚 生は貿易創 造効果によ って拡大し 、貿易転換 効果に よ って縮小する。

Baldwin & Venables によると、地域経済統合は長期的には動態的効 果 をもたらす 。地域経済 統合が長期 に渡れば、 市場が拡大 し、生 産 と 流通の面で 規模の経済 性が実現し、展開に最適な地点を模索する ことができるからである6。また、市場の統合を通じ、加盟国の寡占 産 業が競争に さらされる ことで、生 産効率を高 める効果が ある。 さ ら に、海外の 企業経営者 や技術者に とっての自 由化が進む ことで 、

6 Baldwin, R., & A. Venables, “Regional Economic Integration,” In G. Grossman & K. Rogoff

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国 内において は優れたマ ネジメント の手法や技 術の普及が 進むこ と に なる。また 地域貿易協 定の締結に 関する研究 や交渉、締 結後の 協 議 を通じ、加 盟国間にお いて政策と 規定に関す る高効率の 方策を 共 同 で制定、あ るいはこの 移転が進む ことにより 、加盟国に おいて 制 度 におけるイ ノベーショ ンといった プラスの効 果がもたら される と 木村は指摘する7。このほか、地域貿易協定の締結は、加盟国と非加 盟 国に貿易上 の効果をも たらす以外 にも、双方 における直 接投資 に よ り投資面で の動態的効 果が生み出 される。上 記の効果に ついて は ある程度の大小の偏りはあるものの、全体的には多くの研究結果は、 地域統合が加盟国の経済成長の促進や、域内貿易と直接投資の拡大、 域内競争の促進といったプラスの効果があることを示している8。し か し一方で、 非加盟国に 対しては貿 易転換効果 と投資転換 効果を 生 み 、 マ イ ナ ス 効 果 を も た ら す 可 能 性 も 高 い と み る 分 析 結 果 も あ る9 例えば、北美自由貿易協定(NAFTA)の締結は、繊維や電子機械産 業 において、 当初東南ア ジア各国で 計画してい た直接投資 が、メ キ

7 木村福成「自由化を加速させる『新たな地域主義』の息吹」『経済セミナー』第 549 号(2000 年 10 月)、33~37 ページ。 8 FTA の効果を分析した文献のまとめは、経済産業省『通商白書 2001』(ぎょうせい、 2001 年)の第 4 章第 3 節で詳細を参照できる。このほか、堤・清田は 9 種類の仮定 モデルを設定し、詳細な実証分析を行っている。林祖嘉らは欧州連合(EU)や北美 自由貿易協定(NAFTA)、ASEAN-中国の枠組み協定の発効前後の 3 年における直 接投資の流入の変化について、顕著な増加がみられたことを実証的に分析した。堤 雅彦・清田耕造「日本のFTA による経済効果 九つのシナリオ」浦田秀次郎ほか編 『日本のFTA 戦略』(日本経済新聞社、2002 年);林祖嘉‧譚瑾瑜「第八章 ECFA 與兩岸投資」『ECFA:開創兩岸互利雙贏新局面』(台北:遠景基金會、2009 年)。 9 堤・清田、顧瑩華などの実証分析では、すべて自由貿易協定の締結が非加盟国の経 済にマイナスの影響をもたらしたことを示している。堤雅彦・清田耕造、前掲書; 顧瑩華「第三章ECFA 對台灣的重要性」『ECFA:開創兩岸互利雙贏新局面』(台北: 遠景基金會、2009 年)、頁 35~51。

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シ コ に 流 れ る 結 果 と な っ た 。 ま た 、 堤 ・ 清 田 は 自 由 貿 易 協 定 (Free Trade Agreement 、 FTA ) と 経 済 連 携 協 定 ( Economic Partnership Agreement、EPA)が加盟国にもたらす利益と非加盟国にもたらす損 失をそれぞれ比較し、FTA が全世界の経済に与える影響を推計、加 盟国が獲得する利益が非加盟国の損失を上回ることを示した10。つま り 、地域貿易 協定の締結 は世界経済 にとって全 体的にはプ ラスの 効 果をもたらすとみることができる。 過去の歴史 をさかのぼ ると、地域 貿易協定は そもそもベ ネルク ス ( ベルギー・ オランダ・ ルクセンブ ルク)のよ うに地理的 なつな が り により、人 材や財貨の 移動を国内 のように扱 う協定に限 られて い た。しかしその後、欧州共同体(European Community、EC。後に欧 州連合=EU に発展)や NAFTA の形成と拡大・発展など、大型の地 域貿易協定が相次いで登場した。一方で、開発途上国はWTO の枠組 み の下での最 恵国待遇に よる自由化 からは切り 離され、経 済発展 に 出遅れたり、また経済が比較的小規模な国は、選択的にFTA や EPA な どの特恵の 形式で自由 化政策を進 めた。この ようにして 欧州や 北 米 、中南米、 アフリカな どの地域で は、各国に よる二国間 または 多 国間 FTA/EPA の締結が急速に進んだが、これに対して FTA/EPA の空白地帯とも呼ばれた東アジアは、1999 年になってようやくこの 交渉と締結に取り組むようになった。 過去40 年余りの間、東アジアは世界で最も経済成長の早い地域で あ ったと言え る。地域経 済統合の流 れの中、東 アジア各国 はこれ に 向 けた協定な どの締結の 足取りを早 めている。 本稿ではま ず、統 計 分析を用いて過去30~40 年の東アジア地域の経済成長や貿易、投資 の 変遷を描写 する。次に 、最新デー タを用いて 東アジア経 済統合 の

10 堤雅彦・清田耕造、前掲書。

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現状とその特徴を整理、検討する。続いて、ASEAN プラス 3 の枠組 みによる東アジア自由貿易協定(East Asia Free Trade Area、EAFTA)、 ASEAN プラス 6 による東アジア包括的経済連携協定(Comprehensive Economic Partnership in East Asia、CEPEA)、APEC(アジア太平洋経

済協力会議)によるFTA:アジア太平洋自由貿易圏(Free Trade Area

of Asia-Pacific、FTAAP)、環太平洋連携協定(Trans-Pacific Partnership、 TPP)の 4 つの可能性から東アジアの経済統合を展望する。最後に、 東 アジアの経 済統合にお ける課題を 提示し、と もすれば周 辺化の 危 機 にさらされ る台湾が、 東アジアの 経済統合に おいて採る べき戦 略 を模索し結びとする。

二 東アジア地域の急速な経済発展

1 急速かつ著しい経済成長 1970 年代以降、東アジア地域の経済は急速に成長した。1970~2000 年の世界の主要地域における 10 年ごとの実質 GDP の平均成長率を 比較すると、東アジア地域は全ての期間において 5.47%以上の成長 を みせ、全世 界において 経済成長が 最も速い地 域であるこ とがわ か る11 表 1 は 1971~2010 年の東アジア地域における実質 GDP の成長率 の推移を表したものである。この表からも日本が1990 年代初期にバ ブ ル経済崩壊 への対策の 遅れから長 期的な不景 気に陥った こと、 お よび1997 年のアジア通貨危機が ASEAN4 カ国の経済に短期的なダメ ージ与えたことを除けば、東アジア諸国の実質 GDP 成長率がほぼ、

11 東アジアの 1970 年代、1980 年代、1990 年代における年平均実質 GDP の成長率はそ れぞれ7.96%、6.53%、5.47%。これに対し、米国の同期間における年平均実質 GDP の成長率はそれぞれ2.89%、2.43%、3.06%で、EU15 カ国は 3.32%、2.22%、1.87%、 中南米は5.89%、1.84%、2.92%となっている。

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高水準の経済成長を維持していることを示している。うち、1980 年 代までの20 年では、実質 GDP の年平均成長率が 8%を超えたアジア 四 小龍(韓国 ・シンガポ ール・台湾 ・香港)が 、著しい高 度経済 成 長を遂げた。このほか、ASEAN4 カ国の経済成長が東アジア地域に 一定程度貢献しており、アジア通貨危機の影響を受けた1998 年にマ イナス 7.9%となったことを除けば、1971~2010 年の実質 GDP の年 平均成長率は 5.5%となる。また、注目すべきは 1980 年代以降の中 国の驚異的な経済発展で、1981~2010 年の実質 GDP の年平均成長率 は 10.1%にも達した。中国の高度経済成長の期間は、1950 年代半ば か ら第1次石 油危機まで の日本の成 長期を超え る長さであ り、特 に 世界経済に甚大な影響を与えた2008 年 9 月からの金融危機にあって 表 1 東アジア地域における実質GDP 成長率の推移(1971~2010 年) (単位:%) 期間 日本 アジア四小龍 ASEAN4 カ国 中国 1971-75 4.5 8.1 6.9 5.9 1976-80 4.5 9.5 7.6 6.6 1981-85 4.3 7.0 3.6 10.8 1986-90 5.0 9.0 7.1 7.9 1991-95 1.4 7.2 6.8 12.3 1996-00 1.0 4.8 2.7 8.6 2001-05 1.3 4.3 4.8 9.8 2006-10 0.2 4.6 4.7 11.2 (注)1. 数値は各期間の年平均値を示す。 2. アジア四小龍とは韓国・シンガポール、台湾、香港。ASEAN4 カ国とはタイ・ マレーシア・フィリピン・インドネシアを指す。すべて単純な平均値とした。 (出典)1980 年以前は劉大年等「亞洲區域整合的影響及我國因應之道」經濟部工業局 97 年度專案計畫研究成果報告(中華經濟研究院、2008 年)を参照、1981 年以 降はIMF, World Economic Outlook, http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2011/01/ index.htm を参照とし、計算したもの。

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も 、持続的な 成長は揺ら ぐことがな かった。世 界経済もま た、中 国 経 済の安定的 成長のもと で、金融危 機のダメー ジから立ち 直った の で あった。わ れわれは、 中国経済が 今後も世界 経済を左右 し、将 来 的 な東アジア 地域の経済 成長にとっ て要となる 経済体にな るとみ て いる。 2 貿易の激増 経済のグロ ーバル化は 、人材・財 貨・資金の 移動を加速 すると 同 時に、拡大し続けている。1980 年以降の 20 年間における世界の実質 GDP は、年平均成長率 2.8%、約 1.8 倍に成長した一方、同期間の貿 易の年平均成長率は4.8%に上昇、約 2.8 倍に拡大し、GDP の成長を 大幅に上回っている。この現象は、1980 年以降の世界経済が相互依 存 関係をより 緊密にした ことを説明 していると 同時に、各 国が関 税 を 主とする貿 易障壁の撤 廃に取り組 んだ成果と いうことが できる 。 特 に同期間に おいて東ア ジア地域は 、制度的な 経済統合が 進んで い な いにも関わ らず、地域 貿易の成長 が世界で最 も急速な地 域とな っ た。世界貿易は1985~2003 年において 3.6 倍に成長したが、東アジ アの地域内貿易は同期間7.8 倍にも増大した。また同時期、北米自由 貿易協定(NAFTA)域内の貿易は 4.4 倍、欧州連合(EU)域内は 4.2 倍の増加にとどまった12 表 2 は1981~2010 年の世界と東アジアにおける商品貿易の推移を 示したもので、1981 年以降の 30 年間において、世界と東アジア地域 の貿易がともに急速に増大している傾向がわかる。1981~1985 年の 世界貿易の年平均額は3.85 兆米ドルであったのが、2006~2010 年に

12 北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement、NAFTA)とはカナダ、米国、

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は 27.96 兆米ドルと、7.26 倍に拡大した。これに対し、1981~1985 年の東アジア地域の貿易額の年平均値は 6,329 億米ドルであったの が、2006~2010 年には 7.17 兆米ドル、11.33 倍へと大幅に増加して い る。同期間 の東アジア 地域の貿易 額の増大幅 は、世界の それを 大 きく上回り、世界でも増大幅が最大の地域となっている。そのうち、 中国の1981 年の貿易額はわずか 440.2 億米ドルであったが、2010 年 には2 兆 9,729.7 億米ドルへと激増、67.54 倍にも拡大し、中国の対 外貿易は過去20 年あまりにおいて東アジア地域で最も急速な成長を 遂げている13。また、東アジア地域の貿易額が世界の貿易額に占める 割合は、1981~85 年平均の 15.43%から 2006~10 年平均の 25.62%に 拡大、同地域の世界貿易における役割がより重要となっているこ 表 2 世界と東アジアの貿易額の推移(1981~2010 年) (単位:億米ドル、%) 世 界 東 ア ジ ア 年 輸出 輸入 貿易額(1) 輸出 輸入 貿易額(2) (2)/(1) 1981-85 18,913 19,591 38,504 3,270 3,059 6,329 16.44 1986-90 27,776 28,762 56,538 5,714 4,924 10,638 18.66 1991-95 40,130 40,815 80,945 10,121 9,296 19,417 23.84 1996-00 54,491 55,397 109,889 14,130 12,609 26,739 24.30 2001-05 76,243 78,515 154,758 20,232 17,976 38,208 24.70 2006-10 138,564 141,045 279,609 37,776 32,317 71,694 25.62 (注)1. 商品貿易による貿易額。輸出は F.O.B.(本船甲板渡し条件)、輸入は C.I.F.(運 賃・保険料込み条件)。 2. 各期間の数値は年平均值を示す。 3. 東アジアとは日本・アジア四小龍・ASEAN4 カ国・中国を指す。 (出典)日本貿易振興機構、http://www.jetro.go.jp/のデータに基づき、筆者作成。

13 同数字は香港の貿易額を含まない。

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と がわかる。 さらに、東 アジアにお ける域内貿 易はより拡 大する 流 れにある。1980 年の同地域における東アジア 10 カ国からの輸入額は 602.9 億米ドルで、世界全体からの輸入額に占める割合は 23.65%で あったが、2007 年には 1.42 兆米ドルに達し、同割合は 46.77%に拡 大した。また注目すべきは、1981~2010 年の世界全体の貿易収支で は 赤字(輸入 額>輸出額 )が際立っ ていたが、 東アジア地 域では 同 期 間、軒並み 貿易黒字( 輸出額>輸 入額)とな った。この 現象は 東 ア ジア地域が 商品技術の 進歩と輸出 志向型工業 化に成功し たこと を 意味する。 3 投資地域としての注目の高まり 1985 年 9 月のプラザ合意(Plaza Accord)以降、世界主要通貨の為 替 相場は大幅 に変動し、 世界経済を 取り巻く環 境に大きな 変化を も たらした。中でも海外直接投資(FDI)を行う企業による世界展開の 拡 大 が 貿 易 に 与 え た 影 響 は 極 め て 大 き い 。 う ち 、 ア ジ ア 四 小 龍 、 ASEAN4 カ国、中国は外資を通じて国内の資金不足を補い、国内経 済 を発展させ る手段の一 つとして利 用し、投資 障壁の低減 や優遇 措 置を次々に打ち出し、積極的に外資を誘致した。 表 3 は1971~2009 年の世界と東アジア域内の FDI(Foreign Direct Investment、海外直接投資。国際收支を基礎としたフロー)の推移を 示したものである。同表から世界の FDI 年平均額は 1981~85 年の 598.0 億米ドルから、1986~90 年には 1,587.1 億米ドルと、2.65 倍に 増加、世界では1986 年以降に FDI が積極的に展開されるようになっ たことがわかる。一方で、世界の FDI は先進国間の投資が多数を占 め ているもの の、東アジ ア地域の投 資受け入れ 国としての 重要性 が より高まっている。うち、世界各国による中国へのFDI は 1981~85 年には年平均10.0 億米ドルにとどまっていたのが、2006~09 年には

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1,106.3 億米ドルと、110.6 倍に激増し、この増大傾向は今後も続く ものとみられる。 表 3 1971~2009 年における世界と東アジア域内の FDI の推移(フロー) (単位:億米ドル、%) 地域 1971-75 1976-80 1981-85 1986-90 1991-95 1996-00 2001-05 2006-09 世界 204.5 361.9 598.0 1,587.1 2,294.2 8,084.9 7,607.0 16846.7 世界に占める 割合 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 東アジア10 カ国 13.3 23.8 57.6 154.2 479.3 1,054.9 1,138.5 2,268.0 世界に占める 割合 6.5 6.6 9.6 9.7 20.9 13.0 15.0 13.4 日本 1.5 1.3 3.4 3.2 10.4 55.4 65.7 129.5 世界に占める 割合 0.7 0.4 0.6 0.2 0.5 0.7 0.9 0.8 アジア四小龍 6.0 12.6 27.6 86.8 136.1 453.4 435.1 808.5 世界に占める 割合 3.0 3.5 4.6 5.5 5.9 5.6 5.7 4.8 ASEAN4 カ国 5.8 9.8 16.6 34.9 104.4 119.1 63.4 226.3 世界に占める 割合 2.8 2.7 2.8 2.2 4.6 1.5 0.8 1.3 中国 0.0 0.1 10.0 29.3 228.4 427.0 574.4 1,106.3 世界に占める 割合 0.0 0.0 1.7 1.8 10.0 5.3 7.6 6.6 (注)1. 国際收支を基礎とする。 2. 各期間の年平均値による。 (出典)UNCTAD(国連貿易開発会議)http://www.unctad.org/のデータに基づき、筆者作 成。

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三 東アジア経済統合の現状

近年ではWTO の貿易自由化交渉が遅れていることにより、地域貿 易協定の締結が際立って増加している。表 4 は世界における地域貿 易協定の数の推移を示している。同表から2011 年 8 月 1 日現在で貿 易協定が最も多いのは欧州・アフリカにおける95 件で、続いてアジ ア太平洋洲の43 件となっている。また、1950~89 年の地域貿易協定 は世界で16 件であったのが、1990~99 年には新たに 50 件、2000~ 10 年にはさらに 114 件加わった。また注目すべきは、アジア太平洋 表 4 世界の地域貿易協定数の推移 地域 期間 欧州・アフリカ 米州 アジア太平洋 地域横断 合計 1950-59 1 1 1960-69 1 1 2 1970-79 2 1 2 2 7 1980-89 2 2 2 6 1990-99 40 6 3 1 50 2000-09 45 14 27 28 114 2010-11 6 9 4 19 合計 95 24 43 37 199 (注)1. 欧州・アフリカは、欧州・アフリカ・中東・旧ソ連邦を含む。 2. 2009 年以前は JETRO のデータを参照、2010 年以降は WTO 発表の資料を参照。 3. 本表はタイ-インドが締結した枠組み協定(framework agreement)、および 2011 年に正式発効した(台湾海峡両岸の)海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA) を含む。 4. 本表は 2011 年 8 月 1 日現在、正式発効しているものを基準とした。 (出典)「WTO/FTA Column」日本貿易振興機構、http://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/ column/pdf/055.pdf;世界貿易機関(WHO)、http://rtais.wto.org/UI/PublicAllRTAList. aspx を参照し、筆者作成。

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洲における地域貿易協定は1999 年までわずか 7 件であったが、2000 ~11 年 8 月 1 日までに 36 件の貿易協定が正式に発効、目立った増加 を みせている 。同時に、 これまでの 貿易協定の 締結は近隣 諸国が 対 象となっていたが、2000 年以降は地域横断的なものが 30 件以上と、 しだいに主流になりつつある。 東アジア地域における貿易協定は、1992 年に発効した ASEAN 自 由貿易地域(AFTA)が比較的古いのを除けば、地域経済統合の進展 は やや緩慢で あった。し かし、東ア ジア経済が 急速に発展 、域内 の 貿 易や投資、 人材の移動 が盛んにな るにつれ、 近年では東 アジア 各 国が 地域統合の 交渉や協定 の締結に積 極的に取り 組むように なった 。 表 5 は2011 年 6 月までの東アジアの主要国家・地域の地域貿易協定 の 状況を示し たものであ る。この表 から、東ア ジア地域で はシン ガ ポールが協定締結に最も積極的で15 件を締結、また日本はシンガポ ールとの間で締結した日・シンガポール新時代経済連携協定(JSEPA) が 2002 年 11 月に発効して以来、主に東アジア地域の国家を対象と した地域貿易協定の交渉と締結を積極的に進め、これまで13 件を締 結した。中国初の貿易協定は ASEAN との間で締結され、2003 年に 正式発効した。韓国は2004 年に、チリとの間で締結した貿易協定が 正式に発効、これまで計9 件を締結しているほか、さらに交渉中が 9 件、検討中は12 件を抱え、貿易協定の締結に対し極めて積極的な取 り 組みをみせ ている。一 方、政治的 な要素が障 害となり、 正式に 国 交 を樹立して いない国と の貿易協定 締結が難し い台湾は近 年、台 湾 海 峡両岸関係 の改善を受 け、中国と の海峡両岸 経済協力枠 組み協 議 (Economic Cooperation Framework Agreement、ECFA)が 2011 年 1 月 に正式発効 、現在では 緊密な貿易 関係のある 国との貿易 協定の 交 渉 または検討 に積極的に 取り組んで おり、われ われは両岸 関係の 改 善 がさらに進 むとの前提 のもと、今 後の台湾と 他国との貿 易協定 の

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締結を期待することができるであろう14 表 5 東アジア主要国‧地域の地域貿易協定 締結済み 交渉中 検討中 合計 シンガポール 15 7 0 22 日本 13 3 9 25 中国 11 5 3 19 韓国 9 9 12 30 マレーシア 8 5 3 16 タイ 7 7 3 17 東南アジア諸国連合(ASEAN) 6 2 7 15 台湾 6 2 5 13 インドネシア 4 2 4 10 ブルネイ 3 1 0 4 ベトナム 2 2 4 8 フィリピン 2 2 1 5 カンボジア 2 0 0 2 ミャンマー 1 1 0 2 ラオス 1 0 0 1 合計 90 48 51 189 (注)2011 年 6 月 8 日現在。 (出典)台湾国際貿易局、http://cweb.trade.gov.tw/kmi.asp?xdurl=kmif.asp&cat=CAT517の 資料を参照、筆者作成。

四 東アジア経済統合の展望

地域貿易協 定が経済発 展を促す可 能性および 、東アジア 各国の 多 く がこれ が地 域の繁 栄に さらに 寄与 すると みて いるこ とか ら、2000

14 過去数年にわたり、筆者が東アジア地域統合の関連研究を行う日本の専門家と意見 交換を行った結果、ほとんどの識者が両岸関係の改善後、台湾とFTA 交渉を進める 国、特に密接な経済・貿易関係を結んでいる東アジア各国との交渉における障害が 大幅に低減したとの認識を示している。

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年以降の東アジア地域の FTA 締結は 30 件近くに達し、最近では貿 易 協定の締結 に最も積極 的な地域と 言えるであ ろう。近年 の東ア ジ アの域内貿易の多くはFTA 締結国間によるものであり、日本貿易振 興機構(JETRO)の資料によると、2010 年の ASEAN および日本・ 中国・韓国・インド・オーストラリア・ニュージーランド(ASEAN プラス 6)の域内における貿易額のうち、FTA の締結国間によるも のが全体の約 55%を占めた。FTA の交渉中である国家間を含めると 7 割を超えることからも、東アジアの経済関係の緊密さが表れており、 今後も同地域の経済統合をより促進すると予想される。 東アジアの経済統合の今後を展望すると、ASEAN は 2015 年に経 済 共同体の実 現を目指し 詳細な計画 を制定、一 歩ずつ経済 統合の 措 置 を着実に進 めており、 同地域の貿 易協定の完 成に向かっ て歩ん で い ると言 える 。また 、中 国と韓 国も 、ASEAN プラス中国、ASEAN プラス韓国の枠組みで、2010 年 1 月にそれぞれ ASEAN6 カ国との間 で関税を撤廃した。この他、日本とASEAN の間でも、日 ASEAN 包

括的経済連携(ASEAN-Japan Comprehensive Economic Partnership、

AJCEP)により EPA が発効した15。さらに、ASEAN とオーストラリ

ア・ニュージーランド、ASEAN とインドの FTA も 2010 年 1 月に発 効し、まさに東アジア地域におけるASEAN を中心とした FTA はほ ぼ完成したと言える。 また、二国 ・地域間の 貿易協定の 締結が急速 に進む中で 、アジ ア 全体の地域統合に関する 4 つの構想が示されている。この 4 つの構 想 は国家全体 の経済発展 を視野に入 れているほ か、グロー バル化 の

15 AJCEP は 2008 年 12 月に発効、また前後して日本がシンガポール、マレーシア、タ イ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、ベトナムなどASEAN 諸国と締結した二 国間EPA は 2002~2009 年にかけ発効した。

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思 考に基づき 海外事業の 展開を進め る企業にと ってより有 利な競 争 環 境の構築と いう狙いが 、経済統合 の主な推進 力となって いる。 こ の 構 想 と は ASEAN プ ラ ス 3( 日 中 韓 ) の 東 ア ジ ア 自 由 貿 易 協 定 (EAFTA)、ASEAN プラス 6 の東アジア包括的経済連携(CEPEA)、 アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)、環太平洋連携協定(TPP)など である。ASEAN プラス 3 は 2004 年 9 月に行われた ASEAN プラス 3 の 経済担当相 会議(ジャ カルタ開催 )で、中韓 が参加国か ら成る 東 ア ジア自由貿 易地域の実 現可能性の 研究を推進 し、民間の 専門家 で 組織する共同研究会合を結成すると決定した。続いて2007 年 1 月の ASEAN プラス 3 首脳会議(フィリピン・セブ島で開催)において、 参加国が第二段階の研究を開始することに同意した。また、ASEAN プラス3 とは別に、日本の経済産業省が 2006 年 4 月に ASEAN プラ ス 6 の構想を提出、日本は同年 8 月に東アジアの経済担当相が一同 に会した会議でも、ASEAN プラス 6 の民間の専門家による「東アジ ア EPA」の可能性の研究を提案、翌年 1 月の東アジア首脳会議(フ ィ リピン・セ ブ島で開催 )の議長声 明で、同研 究の開始が 正式に 宣 言された。 これら米国 を排除した 地域統合の 構想に対し 、米ブッシ ュ前大 統 領(G. W. Bush)は、2006 年 11 月に APEC がベトナム・ハノイで開 催した首脳会議で、APEC 参加国から成る FTAAP の構想を提唱した。 APEC 参加国は人口が世界全体の約 40.4%、国内総生産(GDP)合計 が同55.1%(2009 年)を占めることから、FTAAP の影響ははかり知 れないものになることが予想される。また TPP は、2006 年 5 月に APEC 参加国であるシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チ リの4 カ国で締結された経済連携協定であるが、2008 年には米国、 オーストラリア、ペルー、ベトナムが加盟の意向を表明し、2010 年 3 月に 8 カ国の交渉を開始、同年 10 月にはマレーシアがこれに加わ

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り、この9 カ国が 2011 年秋に予定されている APEC 首脳会議までに 合意し、2015 年までに関税を完全撤廃することを目標に取り組むと している。 このほか、カナダ、タイ、フィリピン、韓国もTPP 参加の可能性 を検討するという意向を表明しており、TPP は最終的に環太平洋の 主 要国家の自 由貿易圏に 発展する可 能性もある 。前述の構 想のう ち 前者 3 項目は現在、研究の段階にとどまっているが、TPP は実質的 な 交渉段階に 入っている ため、この 構想が実現 する可能性 は他 の 3 項目より高いとわれわれはみている。しかしながら、TPP に興味を 示 す国が多く 、各国の産 業構造に大 きな差異が ある上、広 範に渡 る 交渉分野および、例外なしの自由化原則を目標にするなど、TPP 締 結のハードルは上がることになるであろう16

五 東アジア経済統合における課題

第一節で述べたように、過去30~40 年余り東アジア地域の経済は 急 速に発展し 、各国の貿 易と投資は 軒並み大幅 成長をみせ ている 。 地 域貿易協定 が活発化す る中で、東 アジア各国 も貿易協定 の交渉 お よ び締結に積 極的に取り 組んでいる 。しかし、 規模の大き な東ア ジ ア 経済の統合 において、 さらに交渉 を進め突破 するべき壁 が存在 す る 。この東ア ジアの経済 統合におい ては、少な くとも以下 の数項 目 が重要課題として直面することになると考えられる。

16 TPPの概要に関しては「環太平洋戦略経済連携協定(TPP)の概要」(日本貿易振興 機構、2011年)、http://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/basic/tpp/pdf/tpp_201107.pdfを参照 のこと。また石川によるTPPの発展経緯により詳細な説明がある。石川幸一「新しい 協定となるTPP」『季刊 国際貿易と投資』No.84(2011 Summer)、19~37ページ。

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1 ASEAN を主軸とした東アジアの経済統合 東アジア地 域の経済体 は規模の大 きい順に、 中国、日本 、韓国 と なっており、この3 カ国の貿易額が相当額を占めている。2010 年の 中日韓の貿易額は総額5.33 兆米ドルと、同年の東アジア 10 カ国の貿 易総額の77.15%を占め、また中日韓の 3 カ国が ASEAN プラス 6 の 域内貿易額において占める貿易額は 5 割を超える。経済合理性から みて、中日韓の3 カ国による貿易協定の締結が可能になれば、ASEAN な ど東アジア 諸国は全体 的な経済利 益を考慮し これに加盟 するこ と が 予想され、 東アジア地 域の広域経 済圏は容易 に統合でき るであ ろ う 。しかし、 東アジアの 地域貿易協 定が近年、 急速に増加 してい る 一方で、この 3 カ国同士による 2 国間または 3 国間の貿易協定は未 だ締結されていない17。その原因は、主に中日韓3 カ国間に存在する 政 治的な問題 に加え、歴 史的および 文化的な摩 擦で、主導 権争い と いった問題が背後に隠れていることにある。このため、ASEAN を主 軸 とし東アジ アの地域経 済統合を進 めることが より容易で あると 言 えよう。 2 広く踏み込んだ交渉範囲 グローバル 化の急速な 進展により 、財貨と労 働力は一つ の地域 に とどまらず、資金や人材の移動も過去より極めて急速に進んでいる。 さ らに国際分 業の展開が 、地域統合 をより繁雑 なものとし 、単純 な

17 日韓は 2003 年から二国間 FTA の締結に向けた交渉を進めているが、2004 年末に中 断、2008 年に交渉を再開したが、その進展スピードは遅い。中韓は 2007 年から産官 学の共同研究を展開、2011 年から具体的な交渉を開始する予定となっている。また 中日貿易協定の動向は未だ不明である。一方で、中日韓の三国間貿易協定の民間研 究は2003 年に始まったが、2010 年にようやく産官学の共同研究が始まり、三カ国が 2011 年に研究報告を提出することに合意し、2012 年から交渉を開始する予定である。

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関 税撤廃など の貿易自由 化だけが最 終目標では なくなって いる。 東 アジア地域には日本やシンガポールなど1 人当たり名目 GDP が年間 3 万米ドルを超える高所得国から、ラオスやミャンマー、カンボジア など同1,000 米ドルを下回る低所得国が存在する。また各国の経済発 展 の段階や産 業構造、技 術水準にも 大きな落差 があり、原 産地証 明 や 投資、知的 財産権、環 境問題、貿 易救済措置 、競争など 踏み込 ん だ 交渉が必要 となり、し かも交渉国 が受け入れ られる内容 とする こ とは、実際には極めて大きな課題である。 3 互恵的な経済統合 東アジア地 域が追及す る経済統合 の目標の一 つは、先進 国がさ ら に 付加価値の 高い産業を 発展させ、 後発開発途 上国がまず は付加 価 値 の比較的低 い工業製品 に取り組み 、その後技 術を高めて 付加価 値 の 高い工業製 品の発展に 務めるよう にし、地域 全体の経済 統合を よ り 一歩進める ことである 。この目標 実現のため には、関税 引き下 げ や 撤廃、より 円滑な貿易 措置の実施 、サービス の自由化が 不可欠 で あり、相対的に所得水準の低い国家においては社会インフラの整備、 人 材の質の向 上なども重 要となる。 この意味で 、日本やシ ンガポ ー ル 、韓国など 経済の発達 した先進国 による支援 がますます 重要で と な るであろう 。経済発展 で遅れをと った国がこ こから利益 を得る こ と ができれば 、経済統合 への参加意 欲は高まり 、地域統合 におけ る 障害を低減することができる。 4 東アジア地域における為替協力 1997 年のアジア通貨危機と、2008 年の世界金融危機では、アジア の多くの貨幣の価値が大幅に目減りした。為替相場の大幅な変動は、 企 業利益に不 確実性をも たらし、地 域統合には 不利となる 。東ア ジ

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ア 地域の国家 が採る主な 為替政策は ドルペッグ 制とフロー ト制、 頻 繁に為替介入を行うといった 3 種類に大別される。今後、地域統合 を 推進するに は、域内の 安定した為 替相場が極 めて重要と なる。 こ のため、「アジア通貨単位(ACU)」によって東アジアの通貨を統一 す ることが、 最終的な目 標となるで あろう。し かし、これ は極め て 繁 雑な事項に まで波及す るため、目 標実現には まだ一定の 難しい 段 階 を踏まねば ならないで あろう。た だ、東アジ ア地域がま ず為替 政 策 で協力する ことができ れば、将来 的に起こる 可能性のあ る大規 模 な 金融危機が 地域経済に 与えるダメ ージを最小 限に抑える ことが で きるであろう。

六 おわりに-台湾の採るべき道

1990 年代は地域統合の空白地帯と呼ばれた東アジア地域であるが、 ここ10 年は積極的に地域経済統合に取り組み、相当な進展をみせて いる。現在まで、台湾が締結し発効した地域貿易協定は 6 件に上っ たが、2011 年 1 月に正式に発効した ECFA を除けば、すべてアジア 以 外の地域と のものであ り、経済関 係の結びつ きがやや弱 いため 、 台 湾経済への 貢献は限定 的である。 一方、台湾 の主な貿易 競争相 手 である韓国は、EU との FTA が 2011 年 7 月に発効した上、米韓 FTA

を既に締結、早ければ2012 年にも発効する見通しである。これは、

台湾製品が EU や米国において、韓国製品に取って代わられること

につながり、台湾の産業に深刻なダメージを与える可能性もある。 ま た 、 現 在 の ア ジ ア を 包 括 す る 経 済 統 合 に 関 す る 4 つ の 構 想 、 ASEAN プラス 3(EAFTA)、ASEAN プラス 6(CEPEA)、アジア太平

洋自由貿易圏(FTAAP)、環太平洋連携協定(TPP)においては、台

湾はAPEC の会員国であることを理由に FTAAP への加盟は比較的容

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台湾経済には周辺化の懸念が存在する。 以上をまと めると、地 域経済統合 が世界の流 れとなる中 で、台 湾 が より積極的 に各種の地 域経済統合 に参与しな ければ、関 税待遇 の 相 違や貿易障 壁となり得 る関連措置 により、台 湾商品の競 争力低 下 を招きかねない。台湾は両岸関係の大幅な改善とECFAの発効をきっ か けとし、経 済統合への 歩みを加速 させるべき である。以 下に台 湾 が取り組むべきいくつかの項目を挙げておく。 (1) 中国との良好な関係の維持 1980年代以降、中国は30年を超える高度経済成長を実現し、政治 や経済における影響力を大幅に高めた。加えてECFA発効という事実 を 踏まえ、中 国との良好 な関係を維 持できれば 、両岸の経 済貿易 の 発 展に貢献す ると同時に 、台湾と他 国が貿易協 定を締結す る上で の 障害を大幅に低減することができる。 (2) 経済関係の深い米・日・EUとの交渉展開 貿易協定の 交渉スケジ ュールは長 期にわたり 、交渉人材 にも限 界 が あることか ら、主な交 渉相手は自 国経済との 相互依存が 進み相 互 補完関係の深い国や地域とするべきである。米国や日本、EU はかね て より台湾の 重要な貿易 ・投資パー トナーであ り、これら の国・ 地 域 との貿易協 定締結が実 現すれば、 構造的な調 整が可能と なり、 よ り効率の高い経済の構築を目標とし、欧韓FTA や米韓 FTA が台湾の 産業に与える可能性のあるダメージを抑えることができる。 (3) 東アジアの周辺諸国との交渉展開 貿易協定の 主な目的は 、経済活性 化の効果と 貿易創造効 果を通 じ て経済を拡大することである。FTA は将来的な変化の可能性がある

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た めに、より 自由でより 規模の大き い経済環境 を生み出す ことも で き る。一定規 模以上の経 済が自由化 するならば 、周辺国家 がその プ ロセスでFTA 締結のメリットを見出すことができるため、その規模 は さらに拡大 し、規模の 経済がもた らす利益を 得ることが できる 。 台 湾と東南ア ジア諸国の 経済・貿易 、労働力の 往来は盛ん であり 、 FTA が締結できれば、台湾企業の国際分業の展開に有利となり、双 方の人材交流はより利便性を高めその速度を増すことであろう。 (4) 戦略的な交渉の展開 TPP の加盟交渉に意欲をみせる米国は台湾の重要な貿易パートナ ーであり、台湾は APEC の開催地を利用し、TPP の構成国や今後加 盟 する可能性 のある国に 対し、台湾 加盟の可能 性を打診し つつ、 米 国議会におけるロビー活動など戦略的な交渉を展開し、TPP 加盟の 可能性を広げるべきである。 (5) 交渉人材の育成およびリアルタイムのデータベース構築 中国を除き 、台湾は経 済大国との 協定締結な どの交渉経 験に乏 し い 。このため 、中国との 交渉のノウ ハウを活か して人材育 成を行 う べ きである。 また、地域 貿易協定の 状況をリア ルタイムで 反映す る データベースを構築し、交渉や自由化のスケジュール、実施の経過、 他 国が貿易協 定の締結で 採った交渉 戦略、貿易 協定の主な 内容、 交 渉 時の注意事 項などのデ ータを収集 すれば、他 国との締結 交渉お よ び自国利益の保護に有利となることが見込まれる。 翻訳:津村あおい(フリーランス翻訳者) (寄稿:2011 年 7 月 26 日、採用:2011 年 9 月 11 日)

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東亞經濟整合之展望與課題

劉 慶 瑞

(輔仁大學日文系所副教授)

許 銘 福

(僑光科技大學國際貿易運籌系助理教授)

鄭 廳 宜

(僑光科技大學金融與風險管理系助理教授)

【摘要】

1990 年代以後,區域經濟整合逐漸成為一股潮流。而近四十餘年來, 東 亞經濟的快 速發展,各 國間的經濟 關係更加緊 密。為進一 步促進 經 濟發展,東亞各國於1999 年以後積極展開區域貿易協定之談判與簽署。 本研究主要內容包括利用統計分析,從實質 GDP、貿易、投資之觀 點來描繪東亞地區之經濟成長情形。其次,透過最新資料發現新加坡、 日 本 、 中 國 大 陸 、 韓 國 為 東 亞 地 區 簽 署 較 多 之 國 家 。 另 外 , 就 ASEAN+3、ASEAN+6、FTAAP、TPP 等東亞經濟整合之四項構思來展 望東亞經濟整合。同時,提出未來東亞經濟整合之課題包括以ASEAN 為主軸的東亞經濟整合、交涉領域廣泛且深入、互蒙其利的經濟整合、 東 亞地區之匯 率合作。最 後,探討台 灣在東亞經 濟整合上應 採取之 策 略。 關鍵字:東亞經濟整合、區域貿易協定、FTAAP、TPP

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Prospects and Issues of the East Asia

Economic Integration

Ching-Jui Liu

Associate Professor, Dep. of Japanese Language, Fu-Jen University

Ming-Fu Hsu

Assistant Professor, Dep. of International Trade and logistics, Overseas Chinese University

Ting-Yi Cheng

Assistant Professor, Dep. of Banking and Risk Management, Overseas Chinese University

Abstract】

From the 1990s, regional economic integration has become one of the mainstream ideas in the world. Over the past 40 years, the East Asian economy has developed rapidly, and economic relations among the countries have become much closer. Since 1999, each country in the East Asia region has worked on the regional trade agreement actively in order to achieve further economic development.

The main topic of this study is a description of East Asia’s economic growth in terms of GDP, trade and investment through a statistical analysis. The latest data shows that Singapore, Japan, Mainland China and South Korea tend to make positive efforts toward the formation of economic agreements in East Asia. Additionally, this study will look into the future prospects of East Asian regional economic integration from the concept of ASEAN, ASEAN plus-3, ASEAN plus-6, FTAAP and TPP. At the same time, to the study will touch on future challenges in the East Asian economic integration, such as ASEAN-centered economic integration, economic negotiations in a wide field, mutually-beneficial economic integration and cooperation for exchange stabilization in the East Asia. Finally some strategies for Taiwan to keep up with a stream of East Asian economic integration are also suggested.

Keywords: East Asia Economic Integration, Regional trade agreement, FTAAP, TPP

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〈参考文献〉

「WTO/FTA Column 」 日 本 貿 易 振 興 機 構 、 http://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/column/ pdf/055.pdf。 「 環 太 平 洋 戦 略 経 済 連 携 協 定 (TPP ) の 概 要 」( 日 本 貿 易 振 興 機 構 、 2011 年 )、 http://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/basic/tpp/pdf/tpp_201107.pdf。 石川幸一「新しい協定となるTPP」『国際貿易と投資』No.84(2011 Summer)、19~37 ペ ージ。 浦田秀次郎編『FTA ガイドブック』(日本貿易振興会、2002 年)。 経済産業省『通商白書2001』(ぎょうせい、2001 年)。 堤雅彦・清田耕造「日本のFTA による経済効果 九つのシナリオ」浦田秀次郎ほか編『日 本のFTA 戦略』(日本経済新聞社、2002 年)。 日本貿易振興機構、http://www.jetro.go.jp/。 林祖嘉‧ 譚瑾瑜「第八章ECFA 與兩岸投資」『ECFA:開創兩岸互利雙贏新局面』(台北: 遠景基金會、2009 年)。 顧瑩華「第三章ECFA 對台灣的重要性」『ECFA:開創兩岸互利雙贏新局面』(台北:遠景 基金會、2009 年)。 劉大年等「亞洲區域整合的影響及我國因應之道」經濟部工業局97 年度專案計畫研究成 果報告(中華經濟研究院、2008 年)。 UNCTAD(国連貿易開発会議)、http://www.unctad.org/。 WTO(世界貿易機関)、http://rtais.wto. org/UI/PublicAllRTAList.aspx。

參考文獻

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