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3.5 本章のまとめ

4.1.2 分析

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の動きの振幅が大きく、度を過ぎてはなはだしいと解釈されると考えられる。

湯(2008)によれば、反復形容詞の語幹反復は一般に、反復による強調の意を 表す。以下では、湯(2008)の研究を取り上げる。

(5)「荒々しい」は「いかにも荒っぽい」を表し、名詞の場合を例として「人々」、

「日々」のように「どの/どんな~でも」と普遍量化の意味に解釈され たり、「粉々」のように状態や程度の激烈さを表す。形容詞や形容名詞 も「軽々(と荷物を持ち上げる)」、「遅々として進まず」などのように 軽い強調の意味を表すので、さらに程度副詞の修飾を受けることが少な い。反復形容詞はすべてに強調の意味が見受けられ、この結果、反復形 容詞は一般的に程度副詞の修飾を受けることが少ない。

(湯 2008:64-65)

また、3.2 節で見たように、「荒々しい」は視覚感覚と聴覚感覚に用いられ ることができる。両者の関連は「共感覚」の一種と見され、より低い感覚概念 がより高い概念に転用される。つまり、「荒々しい」は視覚の<行為や動作な どの振幅が激しい>という程度の大きさから聴覚の<空気などの振動(音波)

を引き起す>を連想しやすいため、「荒々しい」の強調を表す特徴は共感覚の メカニズムに関連すると考えられる。

次に、「荒々しい」が不快感がこもる用例を取り上げる。例えば、次の例を 見る。

(6)a.荒々しい風が吹きまくり始めた時も、帽子が風に飛ばされないよう押 さえずにはいられなかったし、さらに本物そっくりの雷が突然鳴りだ した時には、早く避難しなくてはと思った。 (BCCWJ) b.猛烈な風が吹きまくり始めた時も、帽子が風に飛ばされないよう押さ

えずにはいられなかったし、さらに本物そっくりの雷が突然鳴りだし た時には、早く避難しなくてはと思った。

(6a)の「荒々しい」は「風」と共起するため、自然環境を描写する用例であ る。そして、(6b)の「荒々しい」は一般的に好ましくない意味を表す「猛烈な」

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に置き換えられるため、自然環境の際立った特徴を非常にすさまじいという意 味を表す。また、自然の原因よりもむしろ力または怪我に影響される危険があ るとも解釈される。このようなマイナス評価性は 3.2.3 節の先行研究は、「荒々 しい」の「ややマイナスイメージ・好ましくない意味」と一致している。本節 は、「荒々しい」のマイナス評価性は元派生語「荒い」から好ましくない意味 を受け継ぐ意味であると考える。「荒い」の意味を調べた結果は以下のようで ある。例えば、『現代形容詞用法辞典』(1991:36)によいれば、「荒々しい」は 乱暴に何かを表す様子を表し、ややマイナスイメージの語。そして、『学研国 語大辞典』(2000:36)によれば、節度がなく乱暴である。従って、「荒々しい」

は元派生語「荒い」の好ましくない意味を受け継ぎ、「ややマイナスイメージ・

好ましくない意味」というマイナス評価性を表す意に用いられると考えられる。

最後に、「話者の情意、心の動き」と解釈される「荒々しい」の用例を見る。

(7)a.それは彼がこれまでに覚えたことのない凶暴なものだった。なにかに 対して、力いっぱい体を叩きつけて行きたいような、そんな荒々しい 気分だった。 (BCCWJ) b.それは彼がこれまでに覚えたことのない凶暴なものだった。なにかに

対して、力いっぱい体を叩きつけて行きたいような、そんな乱暴な気 分だった。

(7a)の「荒々しい」は「気分」と共起するため、人間の行為や言動ではなく、

具体性を持たない思い、感情を描写する用例である考える。そして、(7a)の

「荒々しい」は一般的に極端な情緒や感覚を表出する「乱暴な」に置き換える ことができる。(7a)の「荒々しい」は「乱暴な」に言い換えられるため、対象 の性格・性質などがいかにも乱暴であると感じる意味を表すと考えられる。認 知言語学では、表現全体の意味はそれを構成する部分の意味を規則に従って組 み合せれば得られるとされている。先行研究では、シク活用形容詞は語尾「-しい」に付け加え、表出の機能が表すと指摘されている。そして、類像性にお いては、意味と形がの一対一対応と考えられ、表出を表す「嬉しい」は「荒々 しい」と同じような形式「-しい」を持つため、同じような表出の機能を表す と考えられる。

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4.2 「痛々しい」と「痛い」との違い

4.2.1 先行研究

本節では、田(1998)と湯(2012)の「痛い」と比較した「痛々しい」につ いての記述を年代順で見ていく。

田(1998)によれば、「痛い」は肉体的・生理的な苦痛を表すに対し、「痛々 しい」は直接目にした、自分と対等か目下・弱い立場にある者の様子が、心が 痛むほど哀れで同情に堪えないと感じる。湯(2012)は「痛い」は感覚形容詞 に属し、痛みを感じる身体部位を表す内項に取るとしている。しかし、「痛々 しい」は感覚形容詞ではなく、評価形容詞に属すため、「心に苦痛を覚えて正 視できない様子」を表すと湯(2012)が指摘している。

(8)a.山と海にかこまれているだけあってそんな柏崎を朝ドライブしたら、

随分と気分もリフレッシュできました。でも、震災で地すべりした山 並みに地すべり対策で緑をアスファルトで固めている姿はちょっと 痛々しい感じがしますね。 (BCCWJ) b.#山と海にかこまれているだけあってそんな柏崎を朝ドライブしたら、

随分と気分もリフレッシュできました。でも、震災で地すべりした山 並みに地すべり対策で緑をアスファルトで固めている姿はちょっと 痛い感じがしますね。

田(1998)と湯(2012)の指摘によれば、(8)の例文においては、「痛々しい」

は「痛い」に置き換えることができない。それは、(8)の「痛々しい」は痛み を感じる身体部位を描写する表現ではないからである。また、「荒い」は心が 痛む意味を表さないため、「痛々しい」に置き換えることができない。しかし、

先行研究では、このような意味を表す「痛々しい」のメカニズムについて特に 言及されていないので、以下では詳しく見ていく。

4.2.2 分析

以下では、「痛々しい」が持つ「心が痛む、同情に堪えないと感じる」とい う意味特徴の用例を見ていく。

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(9)a.山と海にかこまれているだけあってそんな柏崎を朝ドライブしたら、

随分と気分もリフレッシュできました。でも、震災で地すべりした山 並みに地すべり対策で緑をアスファルトで固めている姿はちょっと 痛々しい感じがしますね。 (BCCWJ) b.#山と海にかこまれているだけあってそんな柏崎を朝ドライブしたら、

随分と気分もリフレッシュできました。でも、震災で地すべりした山 並みに地すべり対策で緑をアスファルトで固めている姿はちょっと 気の毒な感じがしますね。

(9a)の「痛々しい」は「感じ」と共起するため、人間の行為や言動ではなく、

具体性を持たない思い、感情を描写する用例である考えられる。そして、(9a) の「痛々しい」は一般的に同情の意を表出する「気の毒な」に置き換えること ができる。(9a)の「痛々しい」は「気の毒な」に言い換えられるため、認知主 体が相手の苦痛に同情して心を痛めると感じる意味を表す。認知言語学の類像 性に基づく考え方では、意味と形は一対一の対応間関係を持つ。つまり、表出 を表す「嬉しい」は「痛々しい」と同じような形式「-しい」を持つため、同 じような表出の機能を表すと考えられる。

4.3 「弱々しい」と「弱い」との違い

4.3.1 先行研究

本節では、荒川(2006)と飛田・浅田(1991) と田(1998)の「弱々しい」と

「弱い」に対する説明を年代順で見ていく。

まず、荒川(2006)は「弱々しい」は派生元の語である「弱い」の中心義・

転義の双方の意が話者に感じられるとしている。例えば、「弱々しい」は「弱 い」を持つ「力や勢いがない」意であり、「いかにも弱そうな感じである」の 意で用いられている。また、「弱々しい」は「気持ちに勢いがない、困ってい る」という転義にも用いられる。田(1998)も以下のように同じな考えを示し ている。

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(10)「弱々しい」は「人・男・女・子供・小さなペット類・気分・気持ち・

態度・様子・感じ・動き・声・話し方」などに使い、はたから見て弱そ うに感じられる・いかにも力や元気のない状態を表す。一方、「弱い」

は「外からの力に作用・抵抗する力が小さくて、変形・変質しやすい状 態」という意を表す。

(田 1998:717)

荒川(2006)と田(1998)は、「弱々しい」の意味が「いかにも弱そうに感 じる」と指摘している。そして、荒川(2006)は「弱々しい」の転義が「気持 ちに勢いがない、困っている」と指摘している。

(11)a.それと前後して、敏生が咳をするたび、その口から、少量の血液と共 に、さっき呑み込んだ小さな蛇たちが、次々に吐き出されてきた。 「こ

…琴平さん…」八穂は思わず、両手で口元を覆う。目前のおぞましい 光景に、吐き気がこみ上げる。「いや…イヤアッ!」弱々しい悲鳴を 上げたのは、桐枝である。 (BCCWJ)

…琴平さん…」八穂は思わず、両手で口元を覆う。目前のおぞましい 光景に、吐き気がこみ上げる。「いや…イヤアッ!」弱々しい悲鳴を 上げたのは、桐枝である。 (BCCWJ)

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