1.4 現代日本語形容詞の分類と意味
1.4.1 形容詞の分類
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表で示す「知覚推論」と「主観性」と「評価性」についての具体的な議論は 次節で詳しく論じるが、上記の反復形容詞は鍋島(2011)の身体性メタファー 理論に基づくと、同じ意味拡張の動機づけを持つものだと考えられる。
1.3 研究方法及び使用データ
本論文は認知意味論や意味分析の理論に基づき、実際の反復形容詞の使用例 を観察することを通し、3つの反復形容詞の意味のメカニズムを抽出する。
本 論文 のデ ータ の集 め方に つい ては 、 主 に頼( 2001:106-107 )と荒川
(2006:75-76)の用例及び『現代形容詞用法辞典』と国立国語研究所の中納言 アプリケーション(以下 BCCWJ と呼ぶ)から抽出したものを使用することにす る。例文ごとに出典を明示する。特に明示していない例文は日本語ネイティブ のチェックを受けた作例である。
本論文の表記については、以下のように説明する。まず、本論文では、「X Xしい」は「Xい」に言い換えられ、両語もある意味が似ている文を「?」で 示す。両語は置き換えると意味が全く異なる文を「#」で示す。そして、本論 文の考察対象とする形式の表記について、(9)のように、書籍などの出版物や コーパスなどから収集した例文の場合は、本来の表記に下線を引く。
(9)S子のひたむきな看護もむなしく、夫は終戦を待たずに世を去った。S 子の悲しみようは、はた目にも痛々しいほどだった。 (BCCWJ)
1.4 現代日本語形容詞の分類と意味
本節は日本語の形容詞の種類や意味などに関する研究視点を中心に概観す る。本節の構成は以下の通りである。1.4.1 節では形容詞の形態上や意味上な どの分析を中心に考察を行う。続いて、1.4.2 節では反復形容詞の定義を述べ る。
1.4.1 形容詞の分類
日本語には形容詞の分類が多く存在し、まず形態上の区別が何らかの意味機 能によって動機付けられる研究を見ていく。
まず、上原(2007)は、国語学では、終止形が「い」で終わる現代日本語の
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形容詞には、古来ク活用形容詞とシク活用形容詞という下位範疇があったと述 べている。以下では、古語の終止形の形で例を挙げてみる。
(10) ク活用 :重し、白し、高し、長し、深し シク活用:嬉し、恨めし、悲し、楽し、恋し
(上原 2007:129)
上原(2007)は終止形では同じ語尾「し」であるが、連用形でそれが「く」
になるもの(例:「重し」→「重く」)がク活用、「しく」になるもの(例:
「嬉し」→「嬉しく」)がシク活用と述べている。一方、現代語では、後述す るようにこの区別が形態的に意味をなさなくなってきているため、文法の記述 においては、この形容詞の下位分類は古語の文法書には必ず記される重要な形 態的区別であると上原(2007)が指摘している。
また、形態上では、西尾(1972)は「客観性形容詞と主観性形容詞」の使用 に人称の制限があることがよく知られていると指摘している。益岡(2000)も 同じように指摘している。また、益岡(2000)も「日本語の感情形容詞の感情 主(感情の持ち主)に人称制限がある」と述べている。例えば、日本語話者は
「あ、嬉しい!」というように自分の感情を表現することができるが、第三者 について、「*彼女は嬉しい」とは言えず、そのいわゆる主観性形容詞である
「嬉しい」を「彼女は嬉しそうだ/彼女は嬉しがっている」などのように変形 してはじめて文が成立するのである。
形容詞の形態的区別を踏まえ上で、以下は意味的区別を見ていく。橋本
(1949:65)7では、「用言」を命令形があるかないかによって動詞と形容詞に 分類している。古語の形容詞の活用型はク活用とシク活用の2種類に大別され ている。しかし、現代語の形容詞は、言い切りの形が「-い」であり、活用は ク活用とシク活用を区別する必要がなくなり、活用は1種類になる。ク活用と シク活用の形態上の差に、「属性」と「情意」の意味の差が対応していると見 なされている。このように形態的区別プラス意味的区別の対応関係から、現代 日本語の形容詞は、客観的な性質・状態の表現あるいは主観的な感覚・情意を 表す語であり、「属性形容詞」、「感覚形容詞」と「情意(感情)形容詞」に
7 橋本進吉(1948)「国語法要説」『国語法研究』。
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