第二章 先行研究
2.3 テレビドラマにおける場面分析と言語行動
まずは場面分析の部分から述べていきたい。場面分析につい ては談話が行われている「場所」だけではなく、談話で参与者 の相互関係も考えなければならない。なお、話の内容は色々な 要素が要求されている。その中で、場面の分類すること(フォー マル場面とインフォーマル場面)は言語行動を構成する要素に かかわっていると見られる。
その中で文体の使用も大切である。高野(2005)は「言語運用 とそのコンテクストとのダイナミックな相互作用を通して権力 を交渉し、効率的に発話意図を実現させている様が明らかにな った。また日常的でインフォーマルなスタイルから、語形態へ の注意の度合いが増やすフォーマルなスタイルへと場面・状況 が変化するにつれ、言語運用は威信志向の変異を示すようにな る」と述べている。それで文体の交代も女性管理層の発話意図 を実現させると判断できる。そしてその調査結果は女性管理層 が丁寧体と普通体の交代によって相手との心理的な距離が調整 できるという結果になった。一方、佐久間(1997)(表2.5を参 照する。)は話し手が相手との親疎、上下関係によって文体の使 用も違っていると述べている。本稿ではフォーマル場面とイン フォーマル場面の分析を行うので、佐久間(1997)の文体が話し 手によって変化してくる概念と高野(2005)の女性管理層の文体 の使用概念を取り上げ、各場面における文体の使用状況も考察 範囲に入れる。
次は言語行動の部分である。まずは言語行動の構成要素から 述べていきたい。荻野(2005)は言語行動を言語外的なものと 発話に大きく分けられる。それぞれの項目が細かく分類される と参加者、状況、メディア、ジャンルあるいは言語形式、非言 語行動という項目になる。本稿では主に参加者、状況、ジャン ル、スタイル(言語形式)の部分から分析を行う。
また言語行動は三つの部門に分けられる。それは相互的言語行 動、一方的言語行動と単独行為だと加藤(2001)は述べている。
相互的言語行動は実際に目の前にある話し相手との取り合い、
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または相手が反応してくれるのが特徴である。本稿で取り上げ たデータベースは相互的言語行動が多数である。相互的言語行 動は仁田(2009)によれば談話の種類より対話に属して同じく
「聞き手・読み手が次の話し手・書き手になる可能性がある」
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動のうち、相手の心に触れ、そこから人間としての交流、反応 を期待する」、一方的言語行動は相互的言語行動と同じくその場 で目の前に相手がいるが、その相手には応答する必要がない。
仁田(2009)の分類ではモノローグであり、同じく「聞き手・読 み手が次の話し手・書き手になる可能性がない」という性質で ある。
一方的言語行動はまた叱り、励ましに分けられて「相手の今 後の行動を期待しながらも、その場での言語反応が不要なもの である。もっとも、叱責の場合は、その場でのとりあえずの反 応としては恭順の表情とか、「済みません」のように謝罪のこと ばか、「ハイ」のような多義的肯定語が使われる。相手のことを 思って声をかけるもう一種は「励まし」である。心情としては 愛情である「叱り」に通じるが、言語形式としてはプラス表現 となる」 と述べている。また言い聞かせ、説明は「相手が存在 するが、応答が前提となっていないものである。一方的なので 発話も連続して長くなる。」という叙述である。
説明と言い聞かせの違いは聞き手は通常に複数であり、公平 性を保っていると加藤(2001)が述べている。三つの部門の中 で単独行為はもっとも違っている部門である。相手がないとは 言えないが、それは自分、あるいはどこかにいる「想像された 相手」への言語行動である。その状況での言語行動は最も話者 の気持ちや考えを直接に伝えると思われる。でも、単独行為は 社会性がないから、必ず正しくない語形を使ってしまったこと とも言えない。
仁田(2009)の分類では独話に属して、話し手・書き手以外の 聞き手・読み手が想定されていない。特にテレビドラマの場合 では、脚本家は多数の視聴者のために作った会話だから、違和 感を感じさせるわけではない。以上の三つの部門の内容を簡単 にまとめたら、表 2.6 のようになる。
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表 2. 6、言語行動の種類
(出典:加藤(2001))
部門/特徴 (実際に)
相手の存在の 有無
相手の応答 想像され た相手・自 分
相互的言語行動 ○ ○ ×
一方的言語行動 ○ × ×
単独行為 × × ○
本稿で取り上げたデータはテレビドラマで相互的言語行動で あり、つまり対話の性質を持っている部分が多数である。(現代 日本語文法 7 (2009)の表によるとテレビドラマは相互的な言語 行動である。)以上の言語行動に関する論述を踏まえ、「GOLD」
をフォーマル場面とインフォーマル場面に分類をする。
しかし、フォーマル場面とインフォーマル場面は従来、決め られている定義がないため、本稿ではパブリック スピーキン グ、職場での談話、番組の出演・インタビューをフォーマル場 面、家族との談話、友達との談話、社長と秘書の私的会話をイ ンフォーマル場面にする。
荻野(2005)はテレビや映画の会話は会話データにならないと 述べている 。もちろん、テレビドラマのセリフは自然会話と違 いが多いが、談話の中でのやり取りや言葉の使用は会話データ になれると思われる。一方、テレビドラマにおける会話こそ発 話者の独白、心話が知られるという利点がある。それで会話デ ータにならないとも言えないと判断した。
2.4 しめくくり
本章の内容は次のようにまとめられる。
①辞書の部分は日本国語大辞典第二版(2002)と大辞林第三版 (2006)の共通している「わ」の記述を「GOLD」の談話資料によ って検証していきたい。論述によれば、日本語記述文法研究会 (2003)と宮崎(2002)の記述を纏めると「わ」は個人の感情を 持っている最も主張度があるものだと言える。しかし、今まで の研究では具体的に「わ」はどのように使われているのかまた
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判明されていないため、本稿では辞書の部分と論述の部分を参 照しながら、検証していきたい。
②ジェンダーと役割語の概念を組み合わせて「わ」の意味と機 能を考察していきたい。つまり「わ」が二つの側面を持ってい る前提として本研究を進める。この二つの側面が重なっている のは性別の部分で本稿では性別と各キャラクターの「わ」の使 用について観察していきたい。一方、データベースの「GOLD」
でヒロインの早乙女悠里は女性管理職であるため、女性管理層 の会話ストラテジーも観察できる。
③場面分析と言語行動はお互いに関わっている概念である。本 稿ではキャラクターのお互いの関係と話の内容に基づいて
「GOLD」の場面をフォーマル場面とインフォーマル場面に分類 して「わ」の使用状況を考察していきたい。また自然会話とド ラマの対話はお互いに影響し合っていると考えられる。
以上述べたように本稿では②と③の概念を参照しながらフォ ーマル場面とインフォーマル場面の基準を以下のように設定す る。
(1)フォーマル場面:(より正式の場面)
パブリック スピーキング、職場での談話、
番組の出演・インタビュー
(2)インフォーマル場面:(より非正式の場面))
家族との談話、友達との談話、社長と秘書の私的な談話 そしてフォーマル場面とインフォーマル場面の話の内容キャ ラクターの相互関係を①の論述に基づいて「わ」の用法・意味 を主張度の強い用法と主張度の弱い用法に分けて考察を行いた い。
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第三章 「わ」の場面分析