第一章 序章 1.1 研究動機と目的
テレビドラマや漫画などの作品ではキャラクターの性格、年 齢及び社会地域などの差異によって使われている言葉も違って くる。特にそのキャラクターがある特定の言語形式を使うと受 け手に何かのステレオタイプを与えることが考えられる。それ は金水(2007)が提出している「役割語」の概念である。「役 割語」の概念は最近提出されているが、斬新な概念とは言えな い。日本語の言葉はもともと性別、地域などの区別による変化 がある。その中で多くの研究者が今まで没頭しているのは性差 の分野である。主には生理的な性差による男性語と女性語に分 けられているが、最近「オネエ言葉」1の出現が心理的な性差だ と見られる。
以上言及した概念を考えてみると文法研究における文末詞
(終助詞)2の「わ」のことが思い付く。その「わ」とは常に文 末詞及び女性語という側面を持っているが、文末詞は通常に主 観的な意見や気持ちを伝える機能である。そして「わ」はいつ も女性的特徴を持つ文末詞であり、女性語だと認識される。し かし、女性語としての使用が現在3ではあまりないという実態と 見られる。もう「死語」になっている状態で、あるいは女性語 の中性化という言語実態の傾向があると観察している。それに 対して、テレビドラマの場合では「自然会話」より比較的に多 く使われている。それは「わ」が女性のやわらげるイメージが 視聴者にきちんと伝えられるためであろう。
1泉子(2005;6)によれば、オネエ言葉は男性が使う女性っぽい言葉また話し 方を指す、使う人にもよるが、通常の女性言葉より丁寧でしかも毒舌、そし てウィットに富んでいることが多い。
2「わ」は文末詞あるいは終助詞に属しているが、本稿では主に文末詞を統 一にする。「よ」、「ね」ほかの終助詞と比較するときは文末の使用を主にす るため、文末詞として取り上げる。
3ここでいう“現在”を指す言葉の使用状況は今の自然会話ということであ る。
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それ以外に「わ」の使用はキャラクターの年齢や職業4などに 関わっていると推測される。本稿ではテレビドラマ「GOLD」の キャラクターによって「わ」の使用状況を検証していきたい。
一方、テレビドラマの内容やキャラクター設定などがいくら 日常生活に近くされても、自然に出てくる会話ではなく、作ら れた会話である。但し、作られた会話と言ってもそれは言語使 用実態の一つである。それにテレビドラマで使われている言語 表現と実際に使われている言語表現はお互いに影響しあってい る。例えば日本で毎年行われている流行語大賞の受賞語でテレ ビ番組・ドラマから出てくる文や単語も少なくない。それは自 然会話に影響を与える一例であろう。
「わ」は今まで使用者の性別や年齢そして職業を中心に研究 されてきたが、フォーマル場面とインフォーマル場面の場面別 における使用はまだ発達していないようである。本稿では
「GOLD」の談話場面を一つずつの場面に分けてまた各場面の言 語行動における「わ」の使用について考察していきたい。そし て「GOLD」でいろいろな場面における「わ」は全部、女性の柔 らかさだけを示すために使われたのか、検証していきたい。
「わ」の意味については前に置かれる文によって変化する。
そして今までの研究は「わ」の意味が整っていないと見られる。
それで「わ」の意味は数えきれないと思われるのだろう。また
「わ」の接続については日本語記述文法研究会(2003)と宮崎
(2002)よりの記述がすでに述べている。
なお、「わ」の使用について蔡(2000)によると女性だけに使わ れるとは限らなく、中高年齢層の男性も用いられる例が見られ る。上述した「わ」はただ発話者の気持ちによるだけの表現で はなく、発話者の特質を考慮して使用したのであろう。以上で 分かったように「わ」をただ文末詞の観点から見るだけではな く、役割語の概念も取り上げる必要があると思われる。
以上を踏まえ、本稿ではジェンダーと役割語の概念を取り上
4現代日本語研究会(1999)で働く女性を対象に考察を行った。
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げて、フォーマル場面とインフォーマル場面の別で「GOLD」に おける「わ」の使用状況を観察し、さらに「わ」の用法・意味 分析を行う。
1.2 考察対象と研究方法
本稿ではテレビドラマの中で「GOLD」をデータベースとして 考察していきたい。主人公の悠里は優秀な女性経営者でご主人 と別居して子供三人を育てている。彼女が雑誌のインタビュー を受けたり、番組に出演したりすることで多様な場面による変 化が見られるので考察対象として選んだ。特に本稿ではフォー マル場面とインフォーマル場面を観察するのが重要なことであ るため、多様な場面が必要である。一方、場面分析はキャラク ターの性格やお互いの関係を考察の範囲を入れないと判断しに くいので、それを考慮に入れなければならない。また改めて話 の内容とキャラクターお互いの関係が「GOLD」におけるキャラ クター関係図 1.1 のように示す。
図 1. 1、「GOLD」におけるキャラクター関係図 (出典:http://soukanzu.net/10-3/gold.htm#cast)
研究方法に関しては場面分析と言語行動から見る「わ」の使
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用状況を中心として考察を行う。一方、文字化されたものだけ では場面分析と言語行動の分析ができないので、直接に「GOLD」
の映像を見てから、セリフの内容と比較しながら分析する。も ちろん、言語行動の含まれている範囲が大幅であるが、(表 1.2 言語行動の構成要素を参照する。)ここでは参加者、状況、ジャ ンル、スタイル(言語形式)を主にする。
図 1. 2、言語行動の構成要素
(出典:荻野(2005)を参考に筆者が作成)
そして、図 1.1 を参照しながら、表 1. 2 の構成要素:参加者、
状況、ジャンル、スタイル5(言語形式)によって各場面の話の 内容をフォーマル場面とインフォーマル場面に分類しつつ、各 場面の内容と「わ」の使用状況を観察する。フォーマル場面と インフォーマル場面の定義については本稿は以下の分類にする。
(1)フォーマル場面:(より正式の場面)
パブリック スピーキング、職場での談話、
番組の出演・インタビュー
(2)インフォーマル場面:(より非正式の場面))
5 本稿で取り上げた「スタイル」とは丁寧体と普通体の使用である。
言語行動の構 成要素
言語外的
参加者
状況
メディア
ジャンル
発話
言語形式
非言語行動
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家族との談話、友達との談話、社長と秘書の私的な談話 一方、「わ」と同じく文末形式に属している丁寧体と普通体の 使用も観察する範囲に入れる。それは「わ」との接続は観察で きる上に話し手が聞き手への対人関係の調整も明らかになった。
その調整は談話参与者の相互関係にかかわれている。例えば、
「GOLD」のヒロインの早乙女悠里は女性管理職であり、丁寧体 と普通体の交代によって相手との心理的な距離が調整できると いうことを本稿で検証したい。
1.3 本論文の構成
第一章では「わ」が役割語、女性語及び文末詞という三つの 側面を持っていることから、その使用はまた判明していきたい という動機を述べている。そして「わ」のフォーマル場面とイ ンフォーマル場面における使用と意味分析を行うことは目標と している。
第二章では「わ」が今まで実際にどのように研究されてきた かを幾つかの先行研究を列挙する。そこで自然会話による「わ」
の使用がほとんど見られない状況に対し、テレビドラマではま た使用頻度がそれ程少なくないという状況である。また「わ」
を文構造上での意味や機能だけでなく、ジェンダーと役割語の 概念を導入して分析する。ジェンダーと役割語が重なっている 部分は性別の差であるが、本稿では「GOLD」におけるキャラク ターを中心として「わ」の使用調査を行う。
第三章「GOLD」における場面分析は従来、言語行動を構成す る要素(参加者、状況、ジャンル、スタイル(言語形式))を参 照しながら、フォーマル場面とインフォーマル場面に分け、ま た各場面におけるキャラクターの相互関係と各場面における話 の内容が主な判断基準になる。言語行動ではすでに相互的言語 行動、一方的言語行動と単独行為6のように分類しているが、本
6加藤(2001)
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稿ではキャラクターの相互関係と話の内容によって、フォーマ ル場面とインフォーマル場面を分類する。
第四章では第三章の場面分類において各場面で出現した「わ」
の使用例の意味と用法を考察する。第五章では本研究から日本 語教育への提言をする。日本語教育がコミュニケーション能力
の使用例の意味と用法を考察する。第五章では本研究から日本 語教育への提言をする。日本語教育がコミュニケーション能力