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第五章 結論

第三節 今後の課題

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約束ごとや常識や価値や権威を転倒させてしまうものであって、その秩序破壊 の側面を見落としてはならない」と述べており、小峯氏が指摘した、価値観や 秩序を解体した機能だけでなく、社会の約束ごと、常識と権威を転倒させる機 能も持っているという。また、前田雅之氏は巻二十八には「笑い」を媒介にし た共同性或はある種の公共性的世界が現れると考えている。森氏と前田氏の考 えを併せて見れば、「笑う人」が作った「共同体」が、「笑い」によって、元々 社会にある価値観や秩序を解体し、社会の約束ごと、常識と権威を転倒させる ことができると考えられる。

しかし、『今昔』の編者は、「笑い」の持つ「批判・教訓」的な機能を通して、

社会秩序を乱す者を懲らしめようとするのだが、「賞賛」の機能を通して何を 語ろうとしているのであろうか。それは、小峯氏がいうように「共同体のより 積極的な期待」を、つまり社会秩序化への期待を、「賞賛」の機能を通して達 成しようとしているのではないか。即ち、何をしてほしいのか、またどのよう にすればそれが達成できるのか、などのことを読者に伝えようとするのであろ う。言い換えれば、社会秩序化を達成させるために人々がすべきことについて、

編者が「賞賛」の話を通して語っているのである。

以上に述べてきたものをまとめれば、巻二十八の笑いは主に(1)教訓(2)

賞賛、この二つの機能を持つが、編者はこうした笑いの両面的機能を通して社 会秩序回復という主題を説こうとすることが認められる。ここからも、巻二十 八は笑いの巻と見なされているが、笑いはただ素材にすぎず、悪いことなら戒 め、良いことなら褒め称え、社会秩序化を達成することが編者が強調しようと する主題であることがいえよう。

第三節 今後の課題

このように、本論文では、『今昔』巻二十八を中心とし、その主題と構成に ついて考察してきた。

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ところが、巻二十八は他の巻と如何なる関連を持つのか。そして、巻二十八 内部から見れば、かなり秩序性・系統性があるのだが、巻二十六~三十一にお けば、巻二十八の秩序性・系統性を如何に理解すればよいのであろうか。更に、

巻二十六~三十一は、巻二十八のような秩序性・系統性を持つのか。これらの 問題は『今昔』全書の構成、及び巻二十八の位置づけへの理解に繋がるので、

更に考察する必要があるが、今後の課題とする。

また、第三章の類聚語のところで、同時代の作品と比較分析したが、『今昔』

は「和漢混淆文」という文体で書かれたものなので、本論文では同時代の作品 の中で、同じく「嗚呼」という漢字を用いられて、更に変体漢文で書かれた『日 本霊異記』のみを比較対象とした。ところが、同じく「嗚呼」という用語とし ても、和文体か漢文体によって使用状況および意味合いが異なるかもしれない。

文体のことを考えつつ、「嗚呼」などの用語を更に深く考察すれば、『今昔』の 読みも違ってくるかもしれない。『今昔』巻二十八の出典資料・類話・関連資 料などと比較し、異なる部分を抽出して、なぜ巻二十八ではそう書かれている のかを探ってみると、編者の考えと意図がより一層明白になろう。これらの問 題は本論文では残念ながら、検討する余裕がなかったのだが、今後の課題とさ せてもらいたい。

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テキスト

1. 馬淵和夫・国東文麿・稲垣泰一校注・訳『新編日本古典文学全集 35~38 - 今昔物語集①~④〈全四冊〉』小学館、1999.4~2002.6。

2. 今野達校注『新日本古典文学大系 33~37 ―今昔物語集(一)~(五)』岩 波書店、1993.5~1999.7。(本論文のテキストは『新全集』であるが、『新全 集』には「天竺」「震旦」の巻一~巻十の内容がないため、巻一~巻十のテ キストは『新日本古典文学大系』による。)

参考文献(人名の五十音順)

1. 池田亀鑑「古典はどのように読まれるべきか」『古典学入門』所収、岩波書 店、1991.5。

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3. 小森陽一「構成―配列と順序で意味が変容する」『読むための理論―文学・

思想・批評』所収、世織書房、1991.6。

4. 井上英明「竹取物語 主題考」『明星大学研究紀要日本文化学部・言語文化 学科』2 号所収、明星大学、1994.3。

5. 片桐洋一校注・訳『新編日本古典文学全集 12 竹取物語 伊勢物語 大和 物語 平中物語』小学館、1994.12。

6. 樹下文隆「『今昔物語集』巻二十八における笑いの意味―誰が笑い、誰が笑 われ、何が可笑しいのか」『今昔物語集(説話論集)』清文堂、2003.6。

7. 葛綿正一「絵をめぐって―源氏物語の主題論的分析」『沖縄国際大学日本語 日本文学研究』4 号所収、沖縄国際大学日本語日本文学会、2000.1。

8. 神田奈保子「雨月物語『吉備津の釜』構成論」『日本文学誌要』60 号所収、

法政大学国文学会、1999.7。

9. 黒田佳世「『今昔物語集』における知性の表現に関する一考察-チエ(智恵)

とザイ(才)を中心にして-」『椙山国文学』7 号所収、椙山女学園大学国 文学会、1983.3。

10. 黒田俊雄「王法と仏法―権門体制の宗教的特質―」『日本中世の国家と宗 教』岩波書店、1975.7。

11. 国東文麿「今昔物語集の撰述意図と撰者」『今昔物語集成立考[増補版]』

早稲田大学出版部、1978.5。

12. 国東文麿「今昔物語集の構成」『今昔物語集成立考[増補版]』早稲田大学

収、ぺりかん社、1993.11。

25. 佐々木みよ子・森岡ハインツ「庶民話芸におけるグロテスク(3)-『今

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短期大学紀要 32 号所収、東洋女子短期大学、2000.3。

29. 中田祝夫・和田利政・北原保雄編『古語大辞典』小学館、1983.12。

30. 舩城梓「『今昔物語集』本朝世俗部の仏教的背景―巻二十八をめぐって」『日 本語と日本文学』39 号所収、笠間書院、2004.8。

31. 古川成門「今昔物語(巻 28)管見」『私学研修』8 号所収、財団法人私学 研修福祉会、1960.6。

32. 前田雅之「今昔物語集天竺部巻五の構成―排列意識と連想意識」『国文学 研究』92 号所収、早稲田大学国文学会編、1987.6。

33. 前田雅之「仏法と王法―別種の仏法王法相依論」『今昔物語集の世界構想』

笠間書院、1999.10。(初出は「今昔物語集の〈仏法〉と〈王法〉―その固 有性をめぐって」『日本文学』35 巻 4 号所収、御茶の水書房、1986.4。)

34. 前田雅之『〈公〉・〈私〉・「世俗」新たな公への対処』『今昔物語集の世界構 想』笠間書院、1999.10。(初出は「説話集における中世の濫觴―〈公〉・〈私〉・

〈世俗〉をめぐって」『日本文学史を読む(中世)』有精堂、1992.3。)

35. 松本真奈美「曾禰好忠説話小考―『今昔物語集』巻二十八第三話をめぐっ て」『説話の界域』笠間書院、2006.7、P373-388。

36. 馬淵和夫・国東文麿・稲垣泰一校注・訳『新編日本古典文学全集 35 今昔 物語集1〈全四冊〉』小学館、1999.4。

37. 馬淵和夫・国東文麿・稲垣泰一校注・訳『新編日本古典文学全集 38 -今 昔物語集4〈全四冊〉』小学館、2002.6。

38. 宮田尚「『今昔物語集』の受領たち」『文学における風俗』所収、笠間書院、

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39. 村戸弥生「『今昔物語集』巻二八について―本朝王法部編纂過程考」『金沢 大学国語国文』28 号所収、金沢大学国語国文学会、2003.3。

40. 森正人「作品の生成」『今昔物語集の生成』所収、和泉書院、1986.2。

41. 森正人「今昔物語集の編纂と本朝編世俗部」『新日本古典文学大系 37 今 昔物語集五』岩波書店、1996.1。

42. 森正人「説話の世界文学構想―今昔物語集」『岩波講座日本文学史 第 3 巻』岩波書店、1996.9。

43. 山口康子「ヱミとワラヒ―『今昔物語集』の表現を中心に」『国語と教育』

19 号所収、長崎大学国語国文学会、1995.2。

相關文件