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第四章 巻二十八の構成

第二節 登場人物

立 政 治 大 學

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第二節 登場人物

巻二十八の登場人物は社会の各階層に亙っている。編者はなぜこれらの人物 を選んで、巻二十八に取り入れたのであろうか、それは主題と如何に関わって いるのか、本節ではこれらの問題を検討することとする。

但し、巻二十八には様々な人物が登場しているが、その中には実際な働きを 持たない人物もいる4。例えば、名前だけが記されており、説話の内容と関連 がない人物、或は時代を示す人物、更に登場人物の会話に出て名前だけが記さ れている人物などである。本節では、これらの人物を排除し、話の中で実際な 働きを持つ人物を検討対象とする。

さて、まず、第 1 話は宮中の警護、天皇・皇族・大臣らの近侍などを務めた 近衛舎人の話であるが、第 2、10、34、42、43 話も侍・武士に関する話である。

次にこれらの話を見ていこう。

まず、第 1 話は近衛舎人茨田重方の色欲に関する話であり、第 2 話は平貞道・

平季武・坂田公時三人の武士が車酔いの話で、第 10 話は近衛舎人秦武員が禅 林寺の僧正の前に屁鳴らし、機知でうまく気まずい状況から逃れた話である。

また、第 34 話は藤原章家の家にいた侍が主君の章家のお下がりを自分の食器 に移さずに食べ、咎められた後、食べた飯をもとの器に吐き戻した話である。

続いて第 42 話は自分の影を盗人だと勘違いして怯えた臆病の兵の話であり、

第 43 話は傅大納言の古烏帽子を得て自慢した侍内藤の話である。このように、

4 例えば、第 6 話では、「 ノ大臣ハ大嘗会ノ御禊ノ日落シ給フ、亦 ノ中納言ハ其ノ年 ノ野ノ行幸ニ落シ給フ、 ノ中将ハ祭ノ返サノ日、紫野ニテ落シ給フ」と、主人公元輔が 賀茂祭の奉幣使として一条大路を通り過ぎていた時落馬し、その状況から言い逃れようと、大 臣、中納言、中将の名を挙げ、かつて数え切れないほど落馬の例があると説明した。実際には これらの人物が相連物語がなく、先例として挙げられただけであり、本章の登場人物に入れな いこととする。また、第 14 話には、「今昔、朱雀院ノ天皇ノ御代ニ仁浄ト云フ御導師有ケリ」

と、朱雀院の名が記されているが、実際に朱雀院が登場せず、物語の時間を示すだけ提起され ているので、同じく討論から除外する。

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侍・武士に関する話では、ほぼ欲望・失態という否定的な面から描かれている。

その中に、第 2 話の平貞道・平季武・坂田公時三人の武士は摂津守源頼光の 郎等であることが注目される。源頼光は平安時代中期の武将で、受領歴任で得 た財力で摂関家への奉仕に努めており、四天王や酒呑童子の話では頼光を猛き 武士として描いている。この「頼光四天王」の三人は第 2 話では、車酔いによ って失態して笑われた人物として描かれている。頼光四天王と車酔いの主人公 の間にイメージのギャップが激しいことが面白い点である。なぜこれら武勇で 有名な武士は車酔いの主役として描かれたのであろうか。

その原因は、三人の武士が賀茂祭を見物する話の内容を見れば窺えよう。「不 乗知ヌ車ニ乗テ、殿原ニ値ヒ奉テ、引落シテ被蹴ヤ、由無キ死ニヲヤセムズラ ム」と、もし車に乗って、殿方に出会ってしまったら、引落され、蹴られて死 んでしまうかもしれないという。これは、武士の身分では牛車に乗るのは非常 識で、身分に相応しくない行動なのである。

また、源頼光の父源満仲は、安和の変で源高明の謀反を密告し、摂津国に武 士団を結成して、摂関家に仕えた。そして頼光は受領歴任で得た財力で摂関家 への奉仕に努めた。当時地方の反乱(平将門の乱・藤原純友の乱・安和の変な ど)が多く、内乱を鎮圧することを通して武士が成長し、武士団を結成して、

権力と財力を得ることができた。そして、桓武平氏と清和源氏との争いで社会 が不安定になった。このような歴史的背景からも、この話には、身分に相応し くない行動を取って失敗した内容を記して、武士として身分を弁えず、権力と 財力のために反乱を起すことを戒め、社会秩序化を図ろうとする意図が編者に はあったのであろうかと考えられる。

次は第 10 話についてだが、秦武員が禅林寺の僧正の前で屁鳴らしてしまい、

手で顔を覆って「哀レ、死バヤ」と言い、機知でうまく気まずい状況から逃れ たというように記されている。秦武員は最初には失態しまったが、最後に自身 の機知によって、かろうじ窮状脱出した。このような記述からも、無常識で、

身分に相応しくない行動を取ったり、無教養な振る舞いをしたりする武士でも、

機知によって不快な雰囲気を打ち解けることができたことが褒め称えられて

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いることが読み取れよう。

そして、第 34 話もまた、主君の章家のお下がりを自分の食器に移さずに食 べ、他の者たちに咎められた後、食べた飯をもとの器に吐き戻したという間違 いを犯した侍の話である。

このように、当時地方の反乱と武士の争いによって社会秩序が乱れになった ことから、巻二十八では、侍・武士が欲望と失態の話の主役として登場し、武 士が身分を弁えるべきであることを強調して、欲望と野心のために反乱を起す ことを訓戒し、社会秩序化を図ろうとする意図があると考えられよう。更に、

機知で危機から回避し、問題を解決するという期待も窺えよう。

次に、巻二十八に多く登場している国守の話を見てみよう。国守の話は第 4、

5、26、27、38、39 話がある。第 4 話は殿上人たちに脅威されて隠れ震えて、

脅威計画の参加者である殿上人の企みを気付かず、褒め称えた愚かな尾張守の 話であり、第 5 話は機知で押しかけてきた六衛府の役人を退散させた越前守の 話である。同じ国守の話であるが、第 4 話では国守の愚かさが強調され、第 5 話では国守が機知で危機から回避し、問題を解決する話が記されている。ここ では、編者が機知の重要性を読者に伝えようとすることが窺えよう。

また、第 26 話は、安房守文室清忠と出羽守大江時棟がまだ外記であった時、

除目の折、清忠と時棟が並んで箱文を受け取り、時棟が笏で清忠の冠を打ち落 としたという話である。第 27 話では、伊豆守小野五友が重用した目代は傀儡 子の歌を聞いて踊り始めた話が記されている。二話とも公事の場で失態した話 である。

次は第 38、39 話であるが、第 38 話は強欲な信濃守陳忠の話であり、第 39 話は寸白の信濃守を退治する話である。編者が第 38 話に強欲な信濃守藤原陳 忠の話を取り入れて、第 39 話に寸白信濃守退治の話を記したことは、強欲な 信濃守を機知で退治することを読者に連想させようとするためではないか。

更に、各話の配列から見れば、国守に関するものは二話ずつ配列されている 傾向がある。この二話一式の形式は第 4、5、26、27、38、39 話によく示され

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ていよう。

①第 4、5 話:国守が機知で問題を解決することができる。

②第 26、27 話:公事の場での国守の失態を戒める。

③第 38、39 話:強欲な国守を機知で排除する。

この二話一式の形式を通して、国守の強欲と失態を戒め、機知で問題を解決 することを褒め称え、その上、もし国守が適任しない場合、地方官人が機知で 排除すべきだと説いているのである。こういう国守に対する教訓・賞賛は社会 秩序化を企図しようとする編者の意図に繋がっていよう。

また、宮田氏「『今昔物語集』の受領たち5」では、編者が巻二十八第 38 話 の強欲な信濃守藤原陳忠を周りに嘲笑された人物として描いたことを通して、

信濃守の強欲を批判していると指摘している。そして、第 39 話には寸白信濃 守退治の話が記されているが、それは在地官人が天下りの受領を排除しようと する願望を示唆しているという。氏の考察からも、『今昔』に登場した受領た ちの話には、当時の受領たちの欲望を批判し、更に欲の深い受領を知恵で追い 払おうとする編者の意図が含まれていると考えられる。

10 世紀には、国守が中央政府に対して任国での一定額の税納入を請負い、

代わりに任国の運営に専権を持つという支配体制が成立する。国守は赴任した 場合と、遙任した場合がある。赴任した国守の最上席者が受領と呼ばれており、

田堵から徴収した税のうち、上納分を除いたものを収入としたから、増税すれ ば自分の収入も増えるといえる。このような制度の下で、自分の利益のために 増税し、民を苦しめ、国力も衰え、社会秩序を乱れる国守が存在していたのも

田堵から徴収した税のうち、上納分を除いたものを収入としたから、増税すれ ば自分の収入も増えるといえる。このような制度の下で、自分の利益のために 増税し、民を苦しめ、国力も衰え、社会秩序を乱れる国守が存在していたのも

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