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naru的多重語義結構

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Academic year: 2021

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(1)台大日本語文研究第 8 期 2005 年 6 月,頁 125-144 本文 2005. 4. 29 收稿,2005. 6. 21 通過刊登. 「ナル」的多重語義結構 蘇. 摘. 文郎. *. 要. 過去針對日語「ナル」的用法常被定位為表變化的動詞,且探討 的 重 點 大 都 偏 向「 ナ ル 」和 結 果 狀 態 間 的 句 法 結 構 特 徵 。 「 ナ ル 」除 了 表 變 化 的 概 念 外 ,還 有 其 他 多 種 用 法 ,這 一 點 在 過 去 的 研 究 常 被 忽 略 。 本論文依下列順序,分析「ナル」的多重語義結構。 ( 1 ) 依 「 ナ ル 」 所 要 求 的 結 果 補 語 及 語 彙 概 念 結 構 ( LCS) 進 行「 ナ ル 」的 語 義 分 析 ,確 認 了「 ナ ル 」具 有 基 本 語 義( 第 1 義 ) 外 , 另 具 有 3 種 衍 生 義 ( 第 2 義 ~ 第 4 義 ), 進 而 探 討衍生義的產生原理。 (2) 分析虛詞化,亦即轉換為表對人敘述態度的「Nニ/ト ナ ル 」及 具 有 子 句 接 續 功 能 的「 N ニ / ト. ナ ル ト 」的 句 法. 結構及語義特徵。 ( 3 ) 探 討「 ナ ル 」各 種 非 變 化 用 法 成 立 的 特 徵 及 相 互 之 間 的 連 續性。 另外針對「ナル」的慣用句嘗試從認知語言學的觀點詳加以分類及討 論。. 關鍵詞:ナル、多重語義結構、衍生義、語義擴張、虛詞化. *. 政治大學日本語文學系副教授。.

(2) 126. A Study of the Polysemic Structure of Naru Soo, Wen-lang. *. Abstract This paper aims to describe the semantic structure of “naru”. Naru is a kind of change-of-state verb, and its point of view lies at the goal (or result) of the change-of-state. In this paper I focus on the polysemic aspect of naru, and analyze how the meaning is extended from the basical meaning to metaphorical meaning. The main points discussed include: (1) Naru has one basic meaning and three extended meanings. (2) Besides lexical meaning, naru also has grammatical meanings for modality use. (3) The propeties of situations which allow the metaphorical extension of the meaning of naru. In addition, this paper attempts to clarify the unique characteristics of idioms which contain “(noun) ni / to naru” pattern from the viewpoints of cognitive semantics.. Key words: naru, polysemic structure, metaphorical extension, grammaticalization. *. Associate Professor, National Cheng-Chi University..

(3) 127. 「ナル」の多義構造 蘇. 要. 文郎. *. 旨. 「ナル」は「変化」を表し、常に変化の結果状態に視点がある動 詞とされている。 「 ナ ル 」は 多 様 な 意 味 用 法 が あ る が 、こ れ ま で そ の 意 味 は 充 分 に 分 析 さ れ て い る と は 言 え な い 。本 稿 で は 次 の 手 順 に「 ナ ル」の多義構造を分析した。 まず「ナル」がとる項構造と、語彙概念構造による意味分析を行 い、基本義(第1義)と派生義(第2義~第4義)を認定、さらに 各々即ち派生義が生じる仕組みについて考察した。次に文法化した も の 、即 ち 話 し 相 手 に 対 す る 丁 寧 さ を 表 す モ ダ リ テ ィ 用 法 へ の 転 換 、 及び二つの節を結ぶテキスト機能の「Nニ/ト. ナルト」について. も言及した。そして「ナル」は事態を「変化」と捉える場合に用い ら れ る が 、物 理 的 に 変 化 が な い に も か か わ ら ず 、 「 ナ ル 」を 用 い る こ と が 可 能 な 事 態 の 性 質 を 説 明 し た 。な お 、 「 ナ ル 」が 用 い ら れ る 慣 用 句の下位分類やそれぞれの類型の意味用法の特徴について認知言語 学的観点から考察した。. キーワード:ナル、多義構造、派生義、意味拡張、文法化. *. 政治大学日本語文学科助教授。.

(4) 128. 「ナル」の多義構造 一、はじめに 動詞「ナル」はさまざまな意味を担う多義語. 1. である。本稿では. 主 に 変 化 の 意 味 を 表 し 、そ し て「 N 1 ( 変 化 主 体 )ガ N 2 ニ /ト( 変 化 結 果 )」 の 格 支 配 を す る 「 ナ ル 」 の 句 や 文 を 扱 い 、「 ナ ル 」 の 多 義 構 造を明らかにしようとするものである。具体的にこの「ナル」動詞 の連続的に変化する意味の中で、節目をなすような例を取りあげて 意味成分の違いを指摘するとともに、それぞれがいかなる原理によ って派生したものであるかを分析する。 (一)変化動詞「ナル」の項構造と語彙概念構造 状態変化を表す「ナル」は次のような項構造と統語構造を持つ非 対 格 動 詞 ( unaccusative verb) で あ る 。 項構造:. 〈 Th、 Go〉. 統語構造:. ガ. ニ /ト. 主 と し て 状 態 や 位 置 が 変 化 す る も の に 、対 象 物( Theme)─ を 主 語 に 取る動詞で、これらの主語が自らの意志で動作するのではなく、自 然 に 何 ら か の 変 化 を 被 っ て 他 の も の や 状 態 、 位 置 ─ 着 点 ( Goal) に 変わるという意味特徴を持っている。 「 ナ ル 」の 持 つ 基 本 義 を 語 彙 概 念構造で表すと次のようになる。 〔 BECOME〔 y BE AT-z〕〕. 2. す な わ ち 状 態 変 化 動 詞「 ナ ル 」は 概 念 構 造 に お い て BECOME を 持 ち 、 こ れ が 「 変 化 」 を 表 す 。 そ し て 変 化 後 の 結 果 状 態 は AT-と し て 表 さ れ る 。こ の AT-z は BE と い う 述 語 を 介 し て 、内 項 y( Theme)の 有 様 を 叙 述 し て い る 。 そ し て AT-と い う 場 所 概 念 は 日 本 語 で は 「 ニ 」 や 「ト」という格助詞で表される。 例:. 1. 信号が赤になる。. 多 義 語( polyse mic word)と は 同 一 の 音 形 に 意 味 的 に 何 ら か の 関 連 を 持 つ 二 つ 以 上 の 意 味 が 結 び 付 い て い る 語 を 言 う 。( 國 廣 1982: 97 に よ る ) 2 影 山 ( 1996: 66) 参 照.

(5) 「ナル」の多義構造 129. 項 構 造 :〈 Th、 Go〉 意 味 構 造 :〈 変 化 主 体 〉 ガ 〈 結 果 状 態 〉 ニ /ト と こ ろ が 以 下 の 実 例 を 通 し て「 ナ ル 」が 変 化 の 意 味 を 表 す 以 外 に 、 「変化」の基本義を逸脱した用法も数多く存在していることに気が つく。 ( 二 )「 ナ ル 」 の 意 味 の 本 質 1.信 号 が 青 に な っ た 。 2.2000 年 1~ 3 月 期 の 実 質 成 長 は 前 期 比 年 率 10% と な り 、9 9 年 度平均でも 3 年ぶりにプラス成長と なった 。 3.会 議 室 は 階 段 を 上 が っ た 二 階 に な り ま す 。 4.こ の 車 両 は 女 性 専 用 と な り ま す 。 5.シ ー ズ ン の 折 り 返 し と な る 68 試 合 目 は 打 線 に 自 信 を 付 け さ せ る大事な節目となったはずだ。 6.春 希 が 撮 影 場 を 首 に な っ た 。 7.こ れ じ ゃ 、 仕 事 に な ら な い と い う こ と が お わ か り で し ょ う か 。 8.最 終 報 告 書 は 現 場 教 師 に は 大 い に 参 考 に な る の で は な い か 。 ( 1~ 8 は ( 蘇 2001) か ら 例 文 再 録 ) 以 上 の 例 文 か ら 「 ナ ル 」 は 変 化 の 意 味 を ( 例 1、2) 表 す ほ か 、 実 際には変化の意味を失い、もっぱら発話時における話者の心的態度 (モダリティ) ( 例 3、4)や 認 識( 例 5)な ど を 表 し て い る と 思 わ れ る用法が数多くあることが分かった。なお構文的には能動文である が 受 動 的 意 味 が 含 意 さ れ て い る 用 法 ( 例 6) も ず い ぶ ん 見 う け ら れ る 。そ し て 例 7、8 の よ う に 項 構 造 が 変 わ っ て い な い が 文 字 通 り に 意 味解釈できない、変化から可能へと意味拡張する用法も少なからず あった。. 二、 従来の「ナル」の扱い方と本稿の目的 従来の国語辞典類. 3. 3. はこの語が持つ多くの意味を掲げているが、. た と え ば『 日 本 語 国 語 大 辞 典 』 ( 小 学 館 )で は 変 化 動 詞 と し て の「 ナ ル 」の.

(6) 130 台 大 日 本 語 文 研 究 8. その意味記述が諸意味を列記してそれらの間の関係は問わないのが 実状である。また日本語教育の観点から書かれたものとして小泉他 ( 1989)が あ る が 、「ナ ル 」に つ い て は 、多 義 派 生 の 原 理 か ら で な く 、 単に見る対象を示す補語という文脈に依存した分類をして、別義と し て 19 の 項 目 に も 細 分 化 し て い る 。「 ナ ル 」 自 体 の 多 義 性 に は 焦 点 があてられていないし、意味相互の関連性も無視されている。これ は一つの多義語を全体的に理解しようとするときはあまり助けには ならない。. 4. 近年盛んになった認知意味論の研究. 5. では諸意味を出来る限り相. 互連関的に結びつけ、多義を支配する統一的な原理を見出そうとす るアプローチのしかたがとられている。それによって多義語のより 本質的な理解が出来ることを出している。 本稿の目的は認知言語学の観点をもとりいれ、 「 ナ ル 」の 多 義 の 相 互連関的、統合的解釈を試みることにある。この観点からの分析は 「ナル」の全体像を捉える上で有意義だと思われるからである。. 三、 「ナル」の多義構造 (一)基本義 あるものや状態から他のものや状態に変わる。 --基 本 義 〈 第 1 義 〉. 意 味 に つ い て 次 の 通 り に 記 述 さ れ て い る 。 <二 >( 成 : 為 ) あ る も の や 、 状 態 か ら 他 の も の や 、状 態 に 変 わ る 。① あ る も の か ら 他 の も の に 変 化 す る 。② あ る 状 態 か ら 他 の 状 態 に 移 り 変 わ る 、ま た 、あ る 状 態 に 達 す る 。③ そ の 時 刻 や 時 期 に 達 す る 。そ の 時 に 至 る 、ま た 、時 が 経 過 す る 。④ あ る 場 所 や あ る 高 さ に 達 す る 。 ⑤ 官 職 に 任 ぜ ら れ る 。 任 命 さ れ る 。 ⑥ み じ め な 状 態 に な る 、 お ち ぶ れ る 。 →な れ る 果 て ⑦ 将 棋 で 王 将 、金 将 以 外 の 駒 が 敵 陣 の 三 段 目 以 内 に は い っ た り 、そ こ で 動 い た り し て そ の 性 能 が 変 わ る 。飛 車 は 龍 王 に 、角 行 は 龍 王 に 、小 駒 は 金 将 と同等の性能になり、駒を裏返すことによって表す。 4 多 義 語 の あ る べ き 記 述 の し か た に つ い て は 國 廣 ( 1999) は 多 義 は 一 つ の 基 本 義 か ら 派 生 す る と い う 形 で 生 じ る も の で あ る か ら 、基 本 義 か 現 象 素 を ま ず 設 定 し そ こ か ら 意 味 的 あ る い は 認 知 的 な 関 連 性 を 確 か め な が ら 、多 義 を 配 列 し て ゆくべきであると主張している。 5 認 知 意 味 論 の 研 究 に は 中 右 実 ( 1994)、 國 廣 哲 彌 ( 1999)、 松 本 曜 ( 2003)、 籾 山 洋 介 ( 2003) な ど が あ る 。.

(7) 「ナル」の多義構造 131. 9.青 に な る / は だ か に な る / 敵 に な る / 夜 に な る / ひ と り に な る /大人になる/いい天気になる。 変化の意味を表す「ナル」の基本義は「あるものや状態からそれ と は 違 う も の や 状 態 に 変 わ る 」と い う こ と に な る 。そ し て「 N 1 ガ N 2. ニ /ト. ナ ル 」形 式 の 変 化 構 文 は 変 化 の 主 体「 N 1 」が あ る 過 程 を 経. て、 「 N 2 ニ /ト 」で 表 さ れ る 変 化 後 の 状 態 に 至 る と い う 基 本 的 意 味 を 表す。 変化結果を表す補語は「ナル」の意味を判断する上で最も決定的 な情報を提供する言語的文脈である。 また前接の結果補語に来る語に意味的制約の有無という観点から 9 に掲げた例の場合は制約がないのに対して、 10.失 敗 が い い 薬 に な る 。 11.こ の 話 は 金 に な る よ 。 10、 11 の 「 薬 に な る 」「 金 に な る 」 の 場 合 は 制 約 が あ る と い う こ と が 分 か る 。 10 と 11 の 「 薬 に な る 」「 金 に な る 」 は 着 点 ( Goal) が あ っ て 起 点 ( Source) が な い の が 、 9 の 諸 例 文 と 対 照 的 で あ る 。 以 上 から「ナル」は状態変化を表す 9 の意味のほうがプロトタイプ的意 味的(基本的な意味). 6. で あ る こ と に な る 。 10、 11 は そ れ ぞ れ 「 損. な わ れ た 体 や 心 が 回 復 す る 効 果 の あ る 物 事 」、す な わ ち「 あ る も の の 、 用 を 果 す 」、 「 そ れ に よ っ て 金 銭 が( た く さ ん )手 に 入 る 、も う か る 」 と い う 意 味 縮 小 に よ る 意 味 の 特 殊 化( semantic specialization)が 生じる比喩的な用法になる。比喩的用法は非プロトタイプ的意味と 認 定 す る 。 こ れ に つ い て は 3 -7 で 一 節 を 設 け て 論 ず る 。. 6. プ ロ ト タ イ プ ( 典 型 、 原 型 ; prototype) は 認 知 意 味 論 に お け る 基 本 概 念 の 一 つ で あ る 。こ の 概 念 を 中 心 に 語 の 意 味 を 規 定 し よ う と す る の が プ ロ ト タ イ プ 意 味 論( 典 型 意 味 論 ; prototype semantics)で あ る 。プ ロ ト タ イ プ 意 味 論 で は あ る 意 味 が カ テ ゴ リ ー に 属 す る 成 員 は 均 等 で は な く 、そ の な か に 典 型 的 ケ ー ス と 周 辺 的 な ケ ー ス が あ る こ と を 認 め 、そ の 典 型 的 な ケ ー ス に 注 目 し て 記 述 を 行 う 。.

(8) 132 台 大 日 本 語 文 研 究 8. ( 二 )思 考 過 程 の 結 果 と し て の 結 論 ---〈 認 識 、判 断 〉を 表 す 派 生 義 〈第 2 義〉 12.し か し 、 日 本 が 1% 成 長 で は 小 さ い 。 3% 成 長 を 目 指 せ と い う サマーズ長官のメッセージは実は市場が円買いを準備する布 石 に な る 。( 毎 日 2000) 13.さ し ず め 、田 上 先 生 は 三 浦 環 の 弟 子 、そ し て 光 栄 に も こ の 私 は 曽 孫 弟 子 に な る 。( 筑 波 山 ) このタイプの変化動詞「ナル」は思考過程の結果としての結論が 典型的な変化の過程における変化後の状態になぞえられるものと 考えてもいい。 14.当 時 は ま だ 閉 山 な ど は 考 え ら れ な い ほ ど 活 況 を 呈 し て い て 、棟 割長屋のいわゆる〝炭住〞の一部がわれわれ教員の宿舎にあ てられていたのである。思い返せば、私は現在の山に入るま での二十数年を長屋住まいでとおしてきた ことになる 。 (筑波 山) 15.こ れ は 普 通 の 折 れ 方 じ ゃ な い ぞ 。や は り こ こ を 泡 の 暴 風 が 通 っ た の じ ゃ な い だ ろ う か 。も し そ う だ と す る と 、こ の 松 と 宿 舎 の あった地点を結ぶ北東方向の線上に宿舎はとばされていると い う こ と に な る 。( 高 熱 ) 12、 13 の 「 名 詞 ニ /ト ナ ル 」 と 14、 15 の 「( 補 文 ) コ ト ニ ナ ル 」 の 二 つ の 表 現 を 比 べ て み る と 、「 ~ コ ト ニ ナ ル 」 の 方 は 具 体 的 な 判 断材料の存在を前提にして、推論部分を取り込んだ〈判断‧認識〉 を 表 す の に 対 し て 、「 名 詞 ニ /ト ナ ル 」 は 推 論 部 分 を 取 り 込 ま れ て い ないが、やはり話し手が推論に基づいた上でその結論を得たという 意味にとらえられる。したがって、いずれも推論される行為が語の 意味に転化したもので、第 1 義からこの第 2 義を派生するプロセス の延長線と言えよう。. 7. 7. 『ことになる』と「ことになっている」の意味用法の違いについて、蘇 ( 2002: 446~ 451) で 論 述 が あ る の で 、 詳 し く は そ れ を ご 参 照 さ れ た い 。.

(9) 「ナル」の多義構造 133. この「ナル」による意味拡張は話者の認知の仕組みを反映する主 観 的 な も の で あ る 。 認 知 文 法 で は こ の 現 象 を 主 体 化 ( subjectification)と い う 。い わ ば 、こ こ で い う 主 体 化 は「 変 化 」 の 意 味 内 容 を 持 つ 語 彙「 ナ ル 」が 徐 々 に そ の 意 味 内 容 を 希 薄 化 さ せ 、 表さなくなり、そこに反映している認知のプロセスのみと対応する ようになる過程である。. 8. な お 、 こ の タ イ プ の 構 文 形 式 の 特 徴 の 一 つ と し て 、〈 認 識 、 判 断 〉 の結果を表す「N 2 」は形式名詞「コト」と同格の関係にある「命 題 」( Proposition)で あ る こ と が 多 い 上 に 、「 N 1 」は 文 中 に 現 れ る ことが少ないことが分かる。 ( 三 )受 身 要 素 が 背 景 化 し 、つ い に は 捨 象 化 さ れ た 派 生 義 … 受 身〈 第 3 義〉 16. 公 務 員 な ど ほ か の 公 職 の 場 合 、 有 罪 と な っ た 人 は 懲 戒 免 職 に な る な ど し て 仕 事 を 追 わ れ る の に 、彼 ら が 立 候 補 す る こ と は 庶 民 感 情 と し て は 受 け 入 れ ら れ な い 。( 毎 日 2000) 17.年 齢 を 重 ね 、練 習 を 積 ん で 、い つ か 巧 者 に な り 、他 人 や 世 間 か ら 評 判 に な る と 慢 心 が 生 じ る 。( 毎 日 2000) 18.面 接 さ え 受 け ら れ な か っ た り 、 面 接 は 受 け て も 不 採 用 に な る の が ほ と ん ど で す 。( 毎 日 2000) こ れ ら の「 ナ ル 」は 他 動 詞 系 の 動 名 詞( verbal noun)と 結 ん で い て 、全 体 で 他 動 詞 の 受 動 系 相 当 の「 サ レ ル 」と い う 意 味 に 変 質 す る 。 「ナル」にいいかえられることによって受身の要素が締め出され、 捨象されたものとして「結果状態」の意味が派生されたと考えるこ と が で き る 。そ の プ ロ セ ス は 受 身 要 素 の 痕 跡 を 示 す 次 の 19、20 の よ うな例に見てとれる。 19.2001 年 4 月 か ら 財 政 投 融 改 革 が 動 き 出 す 。 財 投 機 関 の 多 く を 占める特殊法人が原則 全廃されれば 、財投そのもの抜本的な 見直しを迫られることになる。‧‧‧第三に特殊人全廃と な. 8. 中 村 芳 久 ( 2004: 21~ 23) 参 照 。.

(10) 134 台 大 日 本 語 文 研 究 8. れば 官僚の天下がり先が大幅に減り、公務員改革を促進する こ と に も な る 。( 毎 日 2000) 20.事 件 と な っ た 2 件 は 後 者 で あ る 。 一 方 は 殺 人 罪 で 起 訴 さ れ 、 も う 一 方 は 不 起 訴 と な っ た 。( 毎 日 2000) 19、 20 に は 一 つ の 文 の 中 で そ の 両 文 が 対 立 す る 形 ( 受 身 と 能 動 ) で現れている。むろん後者の能動形の「ナル」は受身の意味に解釈 できる。言い換えれば、意味の上から「サレル」による本質受動文 も「 ニ /ト ナ ル 」に よ る 意 味 受 動 文 も そ れ ぞ れ 表 し て い る 意 味 は 同 じ であることになる。違いは話し手の事柄に対する認知のしかた、す な わ ち 認 知 主 導 の 構 文 構 築 か 動 詞 主 導 の 構 文 構 築 か で あ る 。「 サ レ ル」構文は「人が外部から働きかけた結果」というニュアンスを強 く 表 現 し て い る の に 対 し て 、「 ニ /ト ナ ル 」 構 文 は 「 自 分 の 意 思 と は 関係なしに行われた結果」や「人が働きかけた結果というより自然 そ う な っ た 」と い う ニ ュ ア ン ス を 示 し て い る 。因 み に 、 「 サ レ ル 」構 文において下例のように必要なときに動作主を文脈中に明示できる の に 対 し て 、「 ニ /ト ナ ル 」 構 文 で は 殆 ど の 場 合 そ れ が で き な い 。 明 示すると非文となる。. 9. 21.植 民 地 時 代 、 被 統 治 者 は 統 治 者 に 母 語 の 使 用 を 禁 止 さ れ た 。 ×21 植 民 地 時 代 、 被 統 治 者 は 統 治 者 に 母 語 の 使 用 を 禁 止 に な っ た 。 またこの場合、文の項構造は述語動詞「ナル」によって決まるの ではなく、動名詞の項構造がそのまま受け継がれ、動名詞の項構造 の 中 で 受 身 の 動 詞 に 関 す る 「 ヴ ォ イ ス 」( voice) の 変 化 が 起 こ っ て いることも観察できる。これらの意味で使われている「ナル」は軽 動 詞 ( light verb) と し て 使 わ れ て い る と 思 わ れ る 。 ( 四 ) 自 発 的 意 味 原 型 か ら の 派 生 義 ---〈 可 能 〉〈 第 4 義 〉 受身の意味と並んで、 「 ナ ル 」の 能 動 表 現 に 生 じ や す い も う 一 つ の 意味要素は可能の意味である。可能の意味は次の例からも分かるよ. 9. この本質受動文と意味受動文の言い換えが成立する動詞の語用条件や意味 的 制 約 に つ い て 、 蘇 ( 2001: 19~ 21) で 詳 し い 考 察 が あ る の で 、 そ れ を ご 参 照 されたい。.

(11) 「ナル」の多義構造 135. うに特に「ナル」の否定表現になることが多い。 22.こ の よ う に 電 話 の 応 対 ば か り さ せ ら れ て は と て も 仕 事 に な ら ない よ。 23.「 朝 練 」言 っ て み れ ば 、早 期 に 近 所 の 散 歩 を し て い る よ う な も の 。 は っ き り 言 っ て 、 彼 に は 何 の 練 習 に も な ら な い 。( 五 体 不満足) 22、23 は 形 の 上 で は 単 独 の 自 動 詞 に 否 定 形 態 素「 な い 」が 付 い た も の で あ る に す ぎ な い が 、そ れ ぞ れ「 仕 事 が で き な い 」 「練習できな い」などと置き換えてもいいということからも、やはり可能の意味 が絡んでいることがわかる。 24.最 終 報 告 書 は 現 場 教 師 に は 大 い に 参 考 に な る の で は な い か 。 25.犯 罪 少 年 を 強 制 的 に 排 除 す る な ど の 方 法 だ け で は 再 発 防 止 に な る と は 思 わ な い 。 (毎 日 2000) 自発的状態変化と可能のこうした意味的関連性は「ナル」の肯定 表 現 ( 24、 25) に も よ く 示 さ れ て い る 。 26.手 伝 う こ と が 増 え 、い つ か そ れ が 私 の 主 な 仕 事 に な る だ ろ う 。 〈自発的変化〉 27.こ れ か ら は も っ と ハ ー ド な 練 習 に な る 。〈 自 発 的 変 化 〉 26、27 と 22~ 25 の 例 を 照 ら し 合 わ せ る と 26、27 の よ う な 自 発 的 ( 状 態 変 化 ) 意 味 か ら 22~ 25 の よ う な 可 能 な 意 味 へ の 発 達 が 見 ら れる。 「 ニ /ト ナ ル 」形 式 の 構 文 が な ぜ 可 能 の 意 味 を 表 す こ と が で き る か を考えるにはもう一度「ナル」の持つ本質的な語義の検討に立ち返 ら な け れ ば な ら な い 。「 ナ ル 」 は 先 述 し た よ う に 「 あ る 状 態 か ら そ れ と は 違 う 状 態 に 移 行 す る 」 と い う 基 本 義 を 持 っ て い る ほ か 、「 可 能」の意味もある。 ( 五 ) 話 し 相 手 に 対 す る 丁 寧 さ を 表 す モ ダ リ テ ィ 用 法 へ の 転 換 --〈文法化〉 「ナル」の意味用法転換の問題について、もう一つ注目すべき現 象 の 一 つ に 、 内 容 語 ( content word) で あ る 動 詞 「 ナ ル 」 の 語 彙 の.

(12) 136 台 大 日 本 語 文 研 究 8. 要 素 が 機 能 語 ( function word ) の 文 法 的 要 素 に 変 化 す る と い う 現 象 が あ る 。 こ の 言 語 現 象 は 文 法 化 ( grammaticalization). 10. と呼ば. れている。 28. こ の 車 両 は 女 性 専 用 と な り ま す 。( J R の 車 両 案 内 ) 29. 対 象 車 両 は キ ャ ン ペ ー ン 期 間 中 の ジ ャ ガ ー ジ ャ パ ン な ら び 正 規 販 売 店 に お け る ス ト ッ ク 車 両 ( 新 車 ) と な り ま す 。( ジ ャ ガ ー セ ン ク ー シ ョ ン 21 キ ャ ン ペ ー ン ) 30. お 一 人 様 で 第 1 回 、第 2 回 の 両 方 に 応 募 す る こ と が で き ま す 。 た だ し 、2 回 の 応 募 期 間 を 通 し て 当 選 は 一 回 の み と な り ま す 。 (読売. 2000). 31. ツ ア ー は 成 田 空 港 発 着 と な り ま す 。 国 内 で の 交 通 費 や 宿 泊 費、またパスポート取得の渡航手続き費用、任意海外旅行保 険料並びに旅行中の個人的諸費用はご当選者のご負担 とな り ま す 。(. 〃. ). 三 の ( 二 ) で 考 察 し た 第 2 義 「 認 識 ‧ 判 断 」 を 表 す 「 ニ /ト ナ ル 」 と 違 っ て 、 上 に 挙 げ た 28,29,30,31 の 「 ニ /ト ナ ル 」 は 発 話 時 に お ける話し手の心的態度、または対人態度のモダリティが含意されて いることが認められる。 この文型の「ナル」は「変化」という基本的意味から大きく逸脱 し て い る 。上 掲 し た 28~ 31 の 各 例 文 に は 状 態 変 化 の 意 味 は 認 め ら れ な い 。こ の タ イ プ の 文 は コ ピ ュ ラ「 N 1 は N 2 で す 」の 文 に 置 き 換 え て も意味が大きく変わらないが、コピュラ文と比較してみれば、発話 時における話し手の心的態度の表現、つまり丁寧さを示す対人態度 のモダリティが含意されているということがうかがえる。以上の各 例文に共通して見られる特徴は、次のようにまとめられる。 1)形態的に常に丁寧体の「ます形」が使われている。 2)雰囲気的に話者の側に責任があることがら、あるいは聞 き手に言いづらさがあることを述べている文脈である。 10. 松 本 ( 2003) で は 文 法 化 と は 自 立 語 で あ っ た も の に 文 法 的 特 性 が 付 与 さ れ るようになることであると定義している。.

(13) 「ナル」の多義構造 137 11. 1)と2)が互いに関連しあっていることは自明である。つまり こうしたお客さんなどの部外者である相手に何か言いづらさがあ ることを納得してもらおうとする状況では丁寧体を使うことによ って、普通体を使うときよりいっそう丁寧な表現になる。では、コ ピュラ文の「N1 はN2 です」ないし「N1 はN2 でございます」だけ で十分ではないかと言いたくなるが、上述した文脈ではやはりこの ような言い方になってしまうのである。このような「ナル」を好む 傾向は日本語の中に非常に強く根ざしているようである。 次 の 32~ 34 の よ う な 例 文 に 示 さ れ る も う 一 つ の モ ダ リ テ ィ 用 法 がある。 32.私 た ち は こ の 度 結 婚 す る こ と に な り ま し た 。 33.こ こ は 禁 煙 と な っ て い ま す 。 34.後 へ お 下 が り く だ さ い 、 電 車 が 到 着 に な り ま す 。( 池 上 1982 からの借例) 32 の〈 結 婚 す る 〉と い う こ と に 関 し て は 当 然 二 人 の 主 体 的 な 意 志 決定が存在したはずであるが、この表現ではそのようなものは表出 されずに、自分たちの意志などといったものを越えた何かによって そ の よ う な 事 態 に 立 ち 至 っ た と い う 感 じ で あ る 。「 私 た ち は こ の た び結婚することにしました」のような言い方に変えてしまうと自己 の判断や意志を断定的に述べる表現形式になる。それには発言内容 に対する発言者の関与(保証)を暗示する。それに伴って生じるか もしれない責任の可能性を前もって排除しておく心理で“周囲の状 況または自然のなりゆきによってそうなる”という意味特徴を持つ 「 な る 」 を 使 っ て し ま う の で あ る 。 33 と 34 の 文 を そ れ ぞ れ 非 変 化 構 文 「 こ こ は 禁 煙 で す 」「 後 へ お 下 が り く だ さ い 、 電 車 が 到 着 し ま す」に置き換えてみるとその違いがよく分かる。 言いかえれば「なる」構文を使うことによって話者が自己の判断. 11. 佐 藤 琢 三 ( 1997) 参 照.

(14) 138 台 大 日 本 語 文 研 究 8. を断定的に述べることを避ける、いわば事態に対する責任をあいま いなものにする。そして発話の効力が直接性を軽減し、聞き手との 摩擦を緩和するという対人機能をも果たす、婉曲的な表現として働 くことになる。 「ここは禁煙です」の言い方はきっぱりと言い切っている感じを 与 え る し 、「 電 車 が 到 着 し ま す 」 に は 「 電 車 が 到 着 す る と 私 は 宣 言 する」という意味構造を有し、アナウンスした人間として電車の到 着についての責任を負うという意味合いを伴う。. 12. 要 す る に 、状 態 を 表 す「 ダ 、デ ス 」や 行 為 を 表 す「 ス ル 、シ マ ス 」 よりも、変化を表す「ナル、ナリマス」のほうが既存状態の事実性 や動作主の意欲性を含まず、単なる自体の変化として命題を陳述す るという機能があるということである。この二つの側面が重なり合 い、 「 こ う こ う で す 」と 状 態 助 動 詞「 デ ス 」で 状 態 を 判 断 し た り 、 「こ う こ う し た 」と 行 動 動 詞「 シ マ ス 」で 行 動 を 宣 告 し た り す る よ り も 、 「こうこうなります」と変化動詞「ナリマス」のなりゆきを伝達す るほうが丁寧さが増すものと思われる。 「ナル」が語彙的要素から文法的要素へと至る途中には両方の用 法が共存する段階があることが上の諸例文から見てとれる。 ( 六 )「 ナ ル 」 が 用 い ら れ る 慣 用 句. 13. に見られる意味拡張. 前 節 の 三 の ( 一 ) ~ ( 五 ) で 、「 ナ ル 」 の 基 本 義 及 び そ こ か ら な んらかの仕方で派生された、あるいは転用された色々な派生義を見 てきた。以上の考察で分かったことは派生ないし転用のすがたはさ ま ざ ま で あ る が 、そ の 多 く は「 比 喩 」と 結 び つ け ら れ る こ と で あ る 。 以下比喩にどのような種類があり、また具体的にどの表現形式をど のタイプと認めるかについて、考えてみることにする。. 12. 池 上 ( 1982: 103) 参 照 。 本 論 文 は 町 田( 1995: 116)の 定 義 に し た が い 、個 々 の 語 が 単 独 で 使 わ れ る と き の 意 味 が 分 か っ て い て も 、句 全 体 の 意 味 が 分 か ら な い も の 、あ る い は 文 字 通 り 以 外 の 意 味 を 持 つ も の を 慣 用 句 と す る 。そ し て 、以 下 に あ げ る「 Nに な る 」 形 式 の も の は 比 喩( 隠 喩 、換 喩 、提 喩 )に 基 づ き 、慣 用 的 意 味 が 成 立 し て い る と考える。. 13.

(15) 「ナル」の多義構造 139. 意味の拡張を生じさせる比喩の重要な下位類として、メタファー、 シネクドキー、メトニミーという 3 種類が認められる。この 3 種類 の比喩は「ナル」の多義語の複数の意味を関連づける重要なメカニ ズムであると言えよう。 では①メタファー②シネクドキー③メトニミーの定義と具体例 を見てみよう。 ① メ タ フ ァ ー :( 隠 喩 ;metaphor) 二 つ の 事 物 、概 念 の 何 ら か の 類 似 性 に 基 づ い て 、一 方 の 事 物 、 概念を表す形式を用いて他方の事物、意味拡張/類義性概念 を表す比喩。 35. 強 い 風 に あ お ら れ て 、 傘 が 御 猪 口 に な っ て し ま っ た 。( 学 研国語) この例における「お猪口になってしまった」はもちろん傘が御猪 口というものに変化したことを表しているのではない。開いた傘が 強い風にあおられて裏返しになったという類似性に基づき、御猪口 という語を使っていることになる。 このタイプに属する実例は外にも、例えば、蛇足になる…などが ある。 ② シ ネ ク ド キ ー :( 提 喩 ; synechdoche) より一般的意味を持つ形を用いて、より特殊な意味を表す、 あるいは逆により特殊な意味を持つ形式を用いて、より一般 的な意味を表す比喩。 36. 彼 の 着 物 姿 は て ん で 様 に な ら な い 。( 学 研 国 語 ) 37. 謡 を 習 っ た り 、 又 あ る と き は ヴ ィ オ リ ン な ど を ブ ー ブ ー 鳴 ら し た り す る が 、気 の 毒 な こ と に は ど れ も こ れ も も の に な っ て 居 ら ん 。( 夏 目 漱 石. 我が輩). (学研国語). 例 36 の 「 様 に な る 」 は 、 か っ こ う が つ く 、 そ れ ら し く な る 、 あ る べ き よ う に な る の 意 味 、 そ し て 、 例 37 の 「 も の に な る 」 は [人 物 や 仕 事 な ど が ]ね ら い 、 目 的 に か な っ た も の と な る 、 そ れ に ふ さ わ しいものとして実現されるという意味を表すことである。すなわち、.

(16) 140 台 大 日 本 語 文 研 究 8. これら(肯定形)はいずれもより特殊な意味を表していることに加 えて、何らかの意味でプラス方向に限定された意味(相対的に優れ て い る 、あ る い は 好 ま し い な ど )を 表 し て い る と い う 共 通 点 が あ る 。 ③ メ ト ニ ミ ー : (換 喩 ; metonymy) 二つの事物の外界における隣接性、さらに広く二つの事物、 概念の思考的、概念上の関連性に基づいて一方の事物、概念 を表す形式を用いて、他方の事物、概念を表す比喩。. 14. 38.戦 争 で 持 ち 物 が 全 部 灰 に な っ た 。 39.お れ た ち が 一 緒 に な っ た 年 に 浦 上 を 歩 い た と き 、 お 前 は な ん と い う た 。( 学 研 国 語 ) 38 の「 灰 に な っ た 」は 字 義 通 り に は「 物 が 燃 え た あ と に 粉 状 の も の に な る 」と い う 意 味 に な る が 、38 で は「 焼 け て し ま う 、焼 失 し て し ま う 」と い う 意 味 を 表 す 。39 の「 一 緒 に な る 」は 字 義 通 り に は「 二 つ 以 上 の も の が 一 つ に な る 」と い う こ と で あ る が 、39 の よ う に 慣 用 的意味として「夫婦になる」という意味を表す。このタイプの比喩 の例には〝水になる/土になる…〞などがある。 (七)二つの節を結ぶテキスト機能の「ナル」 本稿の中心課題からすこしずれているかもしれないが、文法化( grammaticalization)と の 関 連 で「 ナ ル 」の 多 義 構 造 を 体 系 的 に 考 えるにはもう一つ見のがせない次の用法がある。 40. N( の こ と ) ト ナ ル ト 、 ...... 41. こ の 2 年 余 、 医 療 改 革 の 各 論 を ま と め る 段 階 に な る と 、 医 師 会など診療側と保険料を支払う側との意見が対立、そのたび に医師会は強い政治力にモノを言わせ、言い分を通してきた ケ ー ス が 目 立 つ 。( 毎 日 2000) 42.練 習 で は う ま く い っ た の に い ざ 本 番 に な る と 上 が っ て し ま っ い ま し た 。( 日 本 語 文 型 辞 典 ) 43. 青 木 長 官 は と く に 入 院 直 後 の 記 者 会 見 で 詳 し い 病 状 に な る 14. 以 上 の メ ア フ ァ ー 、 シ ネ ク ド キ ー 、 メ ト ニ ミ ー の 定 義 は 松 本 ( 2003) に よ るものである。.

(17) 「ナル」の多義構造 141. と 、 専 門 の 医 師 で は な い の で 分 か ら な い と 答 え た 。 (同 上 ) 44. 申 告 分 離 課 税 に な る と 、 損 益 を 確 定 す る た め の 、 株 式 取 得 価 格 が 分 か ら な い ケ ー ス も 多 い と い う 声 が あ る 。( 同 上 ) 45. 学 校 や 生 徒 の 判 断 で 別 の 形 の 卒 業 式 を 計 画 し て い る と こ ろ に 対 し て 、画 一 的 な 横 並 び を 強 制 す べ き で は な い 。特 に 高 校 生 と も な る と 、ど ん な 卒 業 式 に し た い か を 自 分 た ち で 考 え 、判 断 す る 過 程 体 験 は 重 要 だ 。( 毎 日 2000) 46. 主 婦 と も な れ ば 、 朝 寝 坊 し て い ら れ な い 。( 日 本 語 文 型 辞 典 ) 例 41~ 46 の よ う な 複 文 に お け る 「 ナ ル 」 は 文 と 文 を つ な ぐ 接 続 表 現 と し て 〝 名 詞 ト ナ ル ト 〞 の 形 で 用 い ら れ る 。「 ニ ナ ル ト 」 と い う 形 で も い い 。 名 詞 を 受 け 、「 あ る レ ベ ル 、 あ る 段 階 に 至 っ た と き に」 ( 41,42)、 「 そ の こ と が 話 題 /問 題 に な る と き は 」 ( 43,44)や「 状 況 が こ の よ う な も の に 至 っ た 場 合 は 」( 45,46) と い う 意 味 を 表 す 。 例 45、 46 の よ う に 時 間 や 年 齢 、 役 割 な ど の 名 詞 を 受 け て 、 状 況 が 「 こ の よ う な も の に 至 っ た 場 合 は 」と い う 意 味 を 表 す 場 合 に は 、 「ト モナルト」ともいう。 このような用法には「ナル」が一般的な語彙が文法要素へと拡張 しているのが見てとれる。やはり一つの文法化の現象と見てもさし つかえない。. 四、結論 以 上 の よ う に 、筆 者 は「 ナ ル 」の 多 義 構 造 の 実 態 を 明 ら か に し た 。 これらの考察結果をまとめると、図1のようになる。.

(18) 142 台 大 日 本 語 文 研 究 8. 認 知 言 語 学 的 観 点 を 通 し て 、述 語 動 詞「 ナ ル 」に よ る 構 文 に は 、変 化の基本義に固定した意味構造に忠実に従って動詞主導の構文構築 が行われる場合と、動詞の意味構造から離れて認知主導で構文構築 が行われる場合があることが明らかになった。そして動詞主導と認 知主導の構築原理の相互作用による用法も存在することが分かった。 な お「 ナ ル 」に は 本 来「 変 化 」を 表 し て い た の が 、 「そのことが話 題 /問 題 に な る と き は 」 と い う 二 つ の 節 を 結 ぶ テ キ ス ト 機 能 を 帯 び 、 最後は主体化、文法化による話し手の心的態度を意味として表すと いう具合に、 「命題的意味」 「テキスト機能的意味」 「 心 的 態 度 」を 合 わせ持っていることも解明できた。 もっとも「ナル」の多義性の問題がこれですべて究明できたわけ ではない。慣用句にみられる三つのタイプの意味拡張や派生義の成 立過程や多義解釈可能の原理など不明なところはまだたくさんある。 これらの問題も含めて、今回触れられなっかた問題を今後の研究課 題としていきたい。.

(19) 「ナル」の多義構造 143. 参考文献 安 達 太 郎( 1997) 「「 な る 」に よ る 変 化 構 文 の 意 味 と 用 法 」 『広島女子 大学国際文化部紀要』. 第 4号. 池 上 嘉 彦 ( 1981)『 す る と 「 な る 」 の 言 語 学 』 大 修 館 書 店 池 上 嘉 彦( 1982) 「 表 現 構 造 の 比 較 -〈 ス ル 〉的 な 言 語 と〈 ナ ル 〉的 な言語-」 『日英語比較講座発想と表現. 第 4 巻 』大 修 館 書 店. ウ エ ス リ ー ‧ M ‧ ヤ コ ブ セ ン ( 1989 )「 他 動 性 と プ ロ ト タ イ プ 論 」 『日本語学の新展開』. 柴谷方良他編. くろしお出版. 影 山 太 郎 ( 1996)『 動 詞 意 味 論 』 く ろ し お 出 版 國 廣 哲 彌 ( 1982)『 意 味 論 の 方 法 』 大 修 館 書 店 國 廣 哲 彌 ( 1999)「 認 知 的 多 義 論 - 現 象 素 の 提 唱 」『 言 語 研 究 』 106 号 佐 藤 琢 三 ( 1997)「 ナ ル の 表 現 と 丁 寧 さ 」『 文 教 大 学 国 文 』 26 蘇 文 郎 ( 2001)「 変 化 表 現 に つ い て 一 考 察 」『 東 呉 日 本 語 教 育 学 報 』 24 号 ― ― ― ( 2002)「 変 化 表 現 Ⅱ ― 「 ~ こ と に な る 」「 ~ よ う に な る 」 及 び モ ダ リ テ ィ 形 式 化 し た「 な る 」を 中 心 に ― 」 『蔡茂豊教授 古希記念論文集』 ― ― ―( 2004) 「 日 本 語 の 変 化 表 現 に 関 す る 一 考 察 ― ― テ ン ス 、ア ス ペ ク ト 、モ ダ リ テ ィ を 中 心 に ― ― 」 『 台 湾 日 本 語 文 学 報 』第 19 号 ― ― ― ( 2005)「 N ニ /ト ナ ル の 非 変 化 的 用 法 及 び 他 の 表 現 と の 連 続 性 」『 政 大 日 本 研 究 』 第 二 号 辻 幸 夫 ( 2003)『 認 知 言 語 学 へ の 招 待 』 大 修 館 書 店 中 右 実 ( 1994)『 認 知 意 味 論 の 原 理 』 大 修 館 書 店 中 村 芳 久 ( 2004)『 認 知 文 法 論 』 大 修 館 書 店 町 田 健 他 著 ( 1995)『 よ く わ か る 言 語 学 入 門 』 バ ベ ル ・ プ レ ス 松 本 曜 ( 2003)『 認 知 意 味 論 』 大 修 館 書 店 籾 山 洋 山 他 ( 2003)「 多 義 性 」『 認 知 意 味 論 』 松 本 曜 編. 大修館書店. 山 田 進 ( 1995)「 多 義 語 の 意 味 記 述 に つ い て の 覚 書 」『 聖 心 女 子 大 学.

(20) 144 台 大 日 本 語 文 研 究 8. 論 叢 』 92 号 山 梨 正 明 ( 1995)『 認 知 文 法 論 』 ひ つ じ 書 房. 辞典 広辞宛. 第五版. 学研国語大辞典. 岩波書店. 1998. 金田一春彦他編. 1978. 日本語基本動詞用法辞典. 小泉保他編. 日本国語大辞典. 小学館. 1973. 日本語文型辞典. 砂川有利子他編. 大修館書店. くろしお出版. 1989. 1998.

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參考文獻

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