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現代日本語書き言葉均衡コーパスによる実態調査

2.2 先行研究と問題点

2.3.1 現代日本語書き言葉均衡コーパスによる実態調査

立 政 治 大 學

N a tio na

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余裕 0.0% 5 0.2%

まし 0.0% 16 0.6%

その他 27 0.9% 137 4.9%

合計 2989 100% 2777 100%

2.3「ぜんぜん(全然) 」と共起する肯定表現

この節では、まず、現代日本語書き言葉均衡コーパスにおける「ぜんぜん(全 然)」の用例を収集する。そして、「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現を取 り上げ、それぞれの用例数とともに示す。さらに、前節で言及した工藤(1999) と近藤(1997)による先行研究を踏まえながら、肯定形式で「ぜんぜん(全然)」

と共起する語をグループ分けしてみる。

2.3.1 現代日本語書き言葉均衡コーパスによる実態調査

副詞「ぜんぜん(全然)」が用いられた例を現代日本語書き言葉均衡コーパス を通して収集した。その結果、「ぜんぜん(全然)」の使用例は 5872 例であり、

そのうち、「ぜんぜん(全然)」が肯定形式と共起する用例は 1591 例もあった。

つまり、肯定形式と共起する「ぜんぜん(全然)」の例はすべての「ぜんぜん(全 然)」の用例の四分の一以上も占めている。「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定 表現を、表 312のように示す。なお、共起する肯定表現が多様であるため、表 3 は頻度の高い表現のみ示す。

[表 3] 「ぜんぜん(全然)」と共起する頻度の高い表現

1. 違う 853 例

2. だめ 109 例

12表 3 は 10 例以上の表現のみ示す。ほかの「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現は、付録 にご参照。

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3. 別 67 例

4. OK 64 例

5. 平気 63 例

6. いい 56 例

7. 大丈夫 51 例

8. 無O/無OO13 27 例

9. 変わる 21 例

10. 別O/別OO14 20 例

11. 普通 16 例

12. まし 10 例

表 3 のように、「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現を、用例数とともに 示した。次の 2.3.2 節では、「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現を、工藤 (1999)と近藤(1997)による指摘を踏みながら、グループ分けにしてみる。

2.3.2 「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現のグループ分け

近藤(1997)は、「ぜんぜん(全然)」は、「語彙としてなんらかの否定の意味を 含む」語とも、「異なる」という意味を含む語とも肯定形式で共起すると指摘 している。また、工藤(1999)も、「ぜんぜん(全然)」は、「語彙的に否定的意味 を持った肯定形式」(たとえば、「無学だ(没交渉だ、未知の人だ)」、「駄目だ」、

13無O/無OO:無視 5 例、無名 2 例、無償 1 例、無能 1 例、無用 1 例、無理 1 例。

無関係 5 例、無関心 3 例、無意味 3 例、無感覚 1 例、無宗教 1 例、無頓着 1 例、無防備 1 例、無反応 1 例。

14別O/別OO:別物 7 例、別人 3 例、別個 3 例、別種 2 例、別途 1 例。

別次元 2 例、別平面 1 例、別種類 1 例。

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「違う(異なる、誤謬だ)」、「別だ(別人だ、赤の他人だ)」、「からっぽだ」、

「素人だ」など)と共起しうると述べている。したがって、以下では、前節で 集めた「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現を、近藤(1997)と工藤(1999) の分類を参考に、グループ分けしてみる。

まず、近藤(1997)とも工藤(1999)とも言及された「語彙としてなんらかの 否定の意味を含む」語や「語彙的に否定的意味を持った肯定形式」を「マイナ ス評価を持つ語」に分類する。評価性について、先行研究にはさまざまな定義 があるが、本稿は以下のように村木(2012)の説明に従う。

「形容詞に所属する単語の中には、その語彙的意味として評価性がやどっているものがあ る。「よい」「おいしい」「すてきな」におけるプラスの評価、「みじめな」「下品な」「旧 態依然とした」におけるマイナスの評価などである。「近い」「新しい」「急な」「ぴかぴ かの」といった事物の客観的な特徴を意味するとおもわれる単語も、それが文の中で用 いられるとき、しばしば言語主体の判断や評価のニュアンスが出てくる。形容詞文にお ける評価的な側面は、言語主体が、どのようなものに関心をよせているか、なにを必要 としているか、どのようなものに価値を認めているのかといった、興味・目的・欲求に かかわり、そうしたものが事態への関係のあり方の反映としてあらわれる。」

このように、一つの単語がマイナス評価を持つかどうかを言葉自体の意味だ けではなく、文脈で使われる意味で判断する。たとえば、「終わる」という単 語は「試験が終わった」、「恋が終わった」のように、文脈によって「プラス評 価」と「マイナス評価」を両方とも表せるが、本稿で収集した例(4)で使わ れる意味により「ぜんぜん(全然)」の文で使われる場合「マイナス評価」を表 すことが分かる。

(4)その後メールのやり取りの中で発展する場合もあれば、終わる場合も あると思う、相性でビビビッって一気に進む場合もあるし、ぜんぜん 終わってしまう場合もあるでしょう。 (Yahoo!知恵袋)

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このように、「終わる」という単語を「マイナス評価を持つ語」に分類する ことにする。本稿の「マイナス評価を持つ語」は主に以下の①~④のタイプが 含まれる。

①明示的な語彙的否定形式を持つ語:

たとえば、無O/無OO・不O/不OO・非OO・没OOなど。

②語彙的意味としてマイナス評価がやどっている語:

たとえば、素人・下手・ひどいなど。

③実現が困難であることを表わす語:

たとえば、~がたい・~かねるなど。

④欠如・消滅を表わす語:

たとえば、欠如する・欠乏する・忘却する・忘れる・空く・失うなど。

次に、近藤(1997)で指摘した「異なる」という意味を含む語を、ここでは便 宜に「異なる類」と呼ぶことにする。また、「マイナス評価を持つ語」と「異 なる類」のどちらにも属さないものを「その他」に分類する。以下のように、

2.3.1 節の表 3 による「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現を、表 4 のよう に、まず「マイナス評価を持つ語」、「異なる類」、「その他」という三つのグル ープに大別した。

[表 4] 「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現のグループ分け

無O/無OO、不O/不OO、非OO、没OO、

だめ、逆、反対、正反対、少ない、素人、下手、

つまらない、遅い、重い、ゆるい、ひどい、疎い、

いやらしい、嫌、アウト・オブ・眼中、低い、

スパルタ、チンプンカンプン、でたらめ、

ばらばら、まだまだ、ミスマッチ、ノーマーク、

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その他

かわいらしい、かっこいい、慣れる、~やすい、

~たい、~直す、一般的、優しい、楽しい、甘い、

暖かい、若い、高い、でかい、うまい、

ちっちゃい、派手、おしゃれ、びっくり、

けっこう、好印象、平和、幸せ、充分、可能、

公的、快適、初耳、赤ちゃん、当たり前、

すっきりする、ありえる、心得る、響く、行く、

言う、言える、いる、なる、従う、足りる、する、

できる、楽しめる、着られる、断れる、走れる、

使える、見(ら)れる、見える、長持ちする、

理解する、実現する、信用できる、間に合う、

似る

表 4 に示したように、「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現は、「マイナス 評価を持つ語」と「異なる類」のほかに、「その他」の語も多く、多様である と言えよう。そして、「その他」の部分を見ると、近藤(1997)が指摘した「異 なる類」とは逆に、「同じ」、「同O/同OO」、「一致する」などのような「同じ」

という意味を含む語が肯定形式で「ぜんぜん」と共起するということがわかる。

したがって、表 4 の「その他」の中に配属されている語について、より詳しく 考察する必要があると思われる。

次に、「マイナス評価を持つ語」、「異なる類」と「その他」という三つのグ ループは、それぞれどのぐらいの用例数があるか、そして、肯定形式で「ぜん ぜん(全然)」と共起する 1591 例の中に、それぞれどのぐらいの比率を占めて いるのかを、表 5 にまとめた。

[表 5] 「ぜんぜん(全然)」と共起する用例数と比率

用例数 比率

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マイナス評価 を持つ語

231 14.4%

異なる類 975 61.3%

その他 385 24.3%

総計 1591 100%

表 5 を見ると、「その他」の用例は、1591 例の中に 385 例も存在し、全体の おおよそ四分の一も占めていることがわかる。このような近藤(1997)と工藤 (1999)の両方とも指摘されていない「その他」に属する語は、数量が多く、さ らに考察する必要があると思われる。

以上で述べたように、2.3 節では、現代日本語書き言葉均衡コーパスから「ぜ んぜん(全然)」の使用例を 5872 例抽出し、そして、5872 例のうち、1591 例も ある「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現を取り上げ、使用回数が高いもの を表 3 にまとめた。また、工藤と近藤による指摘を踏まえながら、「ぜんぜん(全 然)」と共起する肯定表現を、表 4 のように、「マイナス評価を持つ語」、「異な る類」、「その他」という三つのグループに分けた。さらに、その三つのグルー プは、どのぐらいの用例数があるか、どのぐらいの比率を占めているかを、表 5 にまとめた。

次の 2.4 節では、まず、表 4 の「その他」による語を品詞で分類する。そし て、それぞれの品詞グループには、どのような特徴が見られるかを考察してみ る。また、2.2 節で述べたように、服部(2007)は「ぜんぜん(全然)」と共起す

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る頻度の高い語を分類し、その共起傾向を表 1 のようにまとめたが、そのよう な傾向は、いったいどのようなことを反映しているのかについて述べていない。

また、使った資料は新聞と知恵袋のみで、コーパスの種類が限られている。本 稿は、現代日本語書き言葉均衡コーパスを通して集めた資料に基づき、「ぜん ぜん(全然)」と共起する使用回数の高い表現を示す。さらに、その共起傾向を 通して、副詞における「ぜんぜん(全然)」の位置づけについても述べてみる。

2.4「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現の特徴及び傾向

「ぜんぜん(全然)」と共起する肯定表現の特徴は主として「程度性を持つ語 が多い」ということである。本稿はその語の「程度性の有無」を「程度副詞(相 当、かなり、ずいぶんなど)」と共起するかどうかということによって判断す る。たとえば、「足りる」という単語は、「相当/足りる」「かなり/足りる」「ず いぶん/足りる」などのように、程度を修飾する副詞と共起する。よって、「足 りる」という単語を「程度性を持つ語」と扱うことにする。