有關日語變化他動詞句「XgaYwoZ(連用語)SURU」之探討
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(2) 東 吳 外 語 學 報. A study of Transitive Verb Sentence with Change-of-State Constructions (X ga Y o Z (adj / NV) ku/ni suru) in Japanese. Soo, Wen-Lang Department of Japanese, National Cheng-Chi University. Abstract The aim of this paper is to provide a descriptive analysis of transitive verb change-of-state sentence (X ga Y o Z (adj / NV) ku/ni suru), from the viewpoints of syntax, semantics and pragmatics. The main discussion contains the 1) intransitive aspect 2) transitive aspect 3) formal-verb aspect of the main verb “suru” in these sentences. Furthermore, this paper presents an analysis of verbal noun “NV” internal structures and semantic features which had not been sufficiently analyzed in my previous paper in 2004.. Key Words: suru, intransitive aspect, transitive aspect, formal-verb aspect, verbal noun, lexical conceptual structure. - 134 -.
(3) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. 変化他動詞文 「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」の諸相についての研究. 蘇 文 郎 政治大学日本語文学科. 要 旨 本研究は日本語の変化他動詞文「X ガ Y ヲ Z(形容詞/NV)ク/ニ. スル」. の諸相について、統語論、意味論と語用論の観点から、考察することを目的と する。具体的にこの構文における主動詞「スル」が持つ 1). 自動詞に対応する側面. 2). 他動詞一般に対応する用法. 3). 形式動詞としての用法. を取りあげ、これらの構文形式と意味用法の特徴を検討する。なお拙著蘇(2004) で詳述できなかった結果状態を表す複合語「NV」の内部構造と意味特徴につい て詳しく触れる。. キーワード: スル、自動詞的用法、他動詞用法、形式動詞的用法、動名詞、 語彙概念構造. - 135 -.
(4) 東 吳 外 語 學 報. 変化他動詞文 1. 「X ガ Y ヲ Z (連用語) スル」の諸相についての研究. 1. はじめに 1.1 本稿の目的と考察範囲 拙著蘇(2004)では変化他動詞文「X ガ Y ヲ Z(名詞)ニ V」における ① 格支配と格体制 立. ②必須補語の結び付きの順序. ③対象と結果の意味役割の対. などの問題を中心に詳しく考察を行った。しかし、そこでは結果が連用語. で表されるこの「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」形式の構文について詳述するに 至らず、また述語動詞「スル」の自動詞との連続性や使役性について新たに加 えるべきことも発見された故、ここに改めて取りあげることにする次第である。 本稿で取りあげるのは(1)に示されているような統語的な型と意味役割の型 を持つ構造の文である。 1.. 統語上:ガ格. +. 意味上:〈仕手〉. ヲ格. +. 〈対象〉. 連用語 〈結果〉. +. スル 変化作用. 例文: 2. 被控訴人席にいる財前も表情を硬くした(「白い巨塔」) 3.. 病室へ入ると佐々木庸平は顔面を蒼白にし、体をもがいて苦しんでいる (「白い巨塔」). 4.. 1. 選挙の時は身辺をきれいにしておかないと…(「白い巨塔」). 連用語とは必須成分となる形容詞、形容動詞の連用形及び副詞、「名詞+動詞(連用形)」 (NV)を含む。以下同じ。. - 136 -.
(5) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. 5.. あなたの負担を軽くするために言っているのよ(「日蝕」). 6.. 恵子さん、すみませんが、二十分ばかりぼくをこのままにして下さい。 (「美しき」上). 7.. …為にならんよ、それとも君からの患者だと、受持医任せにせず、何事も 教授じきじきでなければならんとでも云うのかね(「白い巨塔」). 上掲した例文で分かるように、「X ガ Y ヲ Z(名詞)ニスル」の変化他動文 と違って、この構文において、結果語 Z に形容詞・形容動詞の連用形(2.3.4.5)、 副詞(6)、「名詞+動詞(連用形)」(7)(以下 NV と呼ぶ)が用いられ、 形態的にも、意味的にも多岐に渡り、大変複雑な様相を呈している。例文 7 に 示されている複合語形式「名詞+動詞」の結果語 NV は全体で一つの項をなし ている。ここに項構造の融合や、「スル」の形式動詞としての用法を強くする 一側面も見られる。これらは別々に独立した現象と思われるかもしれないが、 すべて「スル」が持つ他動性、使役性及び形式動詞としての特徴と関連づけら れると考え、本稿の考察対象に入れる2。. 2.変化他動詞文に関する基本事項と本稿の立場 2.1「スル」の本質 変化動詞文における「スル」と「ナル」間にはいろいろな対応関係が見られ るとしばしば指摘されているが、下例から両者に次のような対応関係が存在す ることは明らかである。. 2. 8.. 息子は医者になった。3。. 9.. 父親は息子を医者にした。. ほかに「輪切りする、白塗りする、二つ割りする…」のような「ニ格」を伴わない「結果語 +動詞(連用形)+スル」形式の複合動詞もあるが、これらの語構成及び構文、意味的特徴 について、また別稿を設けて論ずるので、本稿では触 れないことにする。. 3. 例文出典が示されていないものは作例である。以下同じ。. - 137 -.
(6) 東 吳 外 語 學 報. (8)では〈主体〉「息子」の身分(あるいは社会的地位)が医者に変化する ことを表し、(9)では〈動作主〉「父親」の働きかけによって、対象「息子」 が医者になることを表している。つまり(9)の「スル」は対象変化他動詞とし て使われているわけである。しかし、これは「スル」の一面でしかないことは 下の例を照らし合わせても明らかである。 10. 君子ははっと表情を硬くした。(「白い巨塔」) 11. 花子は夫の前では話し方を静かにする。 12. 《千枚漬け》:京都地方名産のかぶのつけもの。薄く輪切りにしたかぶ を塩づけにしたあと、こんぶ、みりん、とうがらし、塩を加えて付けな おしてつくる。(「学研国語」) (10)のような例で「スル」は主語名詞「君子」の働きかけによって目的語 の「表情」に変化をもたらしたことを含意しない。つまり他動性のない自動詞 的用法として使われている。(11)の文では「スル」は対象の変化を含意しな い一般の動作動詞として、また対象の変化を含意する対象変化の使役他動詞と して、共に使われている。そして(12)では「スル」は語彙的意味を持たず、 もっぱら統語的機能を表す形式動詞として使われていることがはっきりしてい る。したがって「スル」の本質を探るには自動詞に対応する側面、他動詞一般 に対応する側面、使役動詞に対応する側面、および形式動詞に対応する側面か らアプローチする必要があると考える。. 2.2 必須成分としての連用語 「スル」は変化他動詞の中でも特殊な性格を持つ動詞である。それは同じく 変化他動詞の「強める」「深める」「広げる」などと比べても分かるように「ス ル」は概念があいまいで意義素の抽出が難しい。一方、「強める」「深める」 「広げる」などは変化「結果」(下線部)がすでに動詞の中に編入されている (incorporated)ので、その外部に「結果」を明示する必要はない。動作主や「仕 手」を表す「ガ格」とその対象「ヲ格」があれば、十分に対象変化の事態を表. - 138 -.
(7) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. すことができる。しかし、それに対して「スル」の場合は「変化」の性質を示 唆してくれるような形態素は何一つ持っていないので、動詞そのものはただ「働 きかけ」や「作用」を起こすことを示すのみであり、それがどのような性質の 変化かについてはまったく問われていない。それが故に「スル」の場合は変化 を引き起こす〈主体〉のガ格と対象のヲ格があるだけではまだ完全な表現にな らず、同時に形容詞、形容動詞の連用形(「~く」「~しく」「~に」の形) や NV(名詞+動詞の連用形)を前提に用いることが必要である。. 2.3 主格との共起制限がゆるい「スル」 「スル」の主語は有生名詞でもいいし、意志的動作の主体であってもいい。 つまり「スル」は意志動詞でもあるし、非意志動詞でもある。「太郎はテレビ の音を大きくした」と言えば、意志を表し、「花子に話しかけられた太郎は思 わず顔を赤くした」と言えば、非意志的な動きを表す。こうして主語の意味役 割は〈動作主〉であったり、〈経験主〉であったり、〈理由、原因〉であった りする。本稿ではこれらをまとめて〈主体〉と呼ぶ。このように「スル」は変 化動詞文において主体に関する共起制限の極めてゆるい中立的な動詞である。 13. 太郎はテレビの音を大きくした。〈動作主〉 14. 花子に話しかけられた太郎は思わず顔を赤くした。〈経験主〉 15. 審議が明日に延期されたことも財前の心を軽くした。(「白い巨塔」)〈原 因、理由〉 16. …夕方とは言え、人が少なく、暗い照明がいっそう空港内を陰気にしてい るように思える。(bbs6.cgiboy.com) 〈原因、理由〉. - 139 -.
(8) 東 吳 外 語 學 報. 3. 考 察 3.1. 自動詞に対応する側面. 17. 良江は病み上りの顔を蒼白にした。(「白い巨塔」) 18. 柳原は体を硬くして答えた。(「白い巨塔」) 19. 女はにっこりと笑った。右の頬に笑うくぼが刻まれ、表情を愛くるしくし ている。(「月蝕」) 20. 前川は顔を真っ赤にしている(「美しき」下) 上掲した例文の中で、下線を引いたところは形態的にはいずれも「ヲ格」を 伴う、れっきとした他動詞である。これらの文中における他動詞「スル」の使 われ方に共通しているのは、主語が動作主や使役主ではなく、変化の主体であ ること、そして目的語が主語の部分または性質であることである。すなわち、 文中の「スル」は目的語があってもいずれも意図的な動作を表すものではなく、 単なる生理的現象の一時的変化、または身体部分の様態を表している。これは みな、連用語の形容詞や形容動詞は時間軸上で生起し得る様態を表す。これら の「スル」は潜在的な動詞的要素を持つ補足成分に動詞の形態を与えるための 存在である。そのため形式動詞、機能動詞4などと呼ばれる。これらの「スル」 は他動性が失われ、17’18’19’20’に示されるように 17’ 良江は病み上りの顔が蒼白になった。 4. 機能動詞についていろいろな定義のしかたがある。村木 (1991:203) の機能動詞の定義は「実 質的な意味を名詞にあずけて、みずからはもっぱら文法的な機能を果す動詞」というもので ある。村木は「する」を「本来 のはたらきが機能動詞的」で、いずれの場合も語彙的な意味 を持たない動詞」であると考えているが、機能動詞のほかに形式動詞という用語もみられ、 両 者は区 別されている。本稿で扱う「連用語+する」や「NV ニスル」の「スル」は、村木. があげる「動名詞 を する」結合形式の「する」とは性質をかなり異にするものであるか ら、ここでは機能動詞と呼ばず、形式動詞と呼ぶことにした。. - 140 -.
(9) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. 18’ 柳原は体が硬くなって答えた。 19’ 女はにっこりと笑った。右の頬に笑うくぼが刻まれ、表情が愛くるしくな っている。 20’ 前川は顔が真っ赤になっている。 多くの場合、他動詞を自動詞に変えても基本的な意味はほぼ変化しない。い わば変化自動詞の「ナル」による表現と、少なくとも知的同義性が保たれてい ると言ってもよかろう。こういった意味的特徴は下の例文に示されているよう に、同じ小説で後接の文に自動詞表現が交替で使われているということからも 裏付けられよう。 21. 婦長は蒼白になって、後退りした。(「白い巨塔」) 22. 第一介助者の金井は顔面蒼白になり…(「白い巨塔」) 他動詞「スル」による表現と自動詞「ナル」による表現とは表現意識に多少 の差はあるものの、他動詞、自動詞が持つそれぞれの意味特徴(すなわち、他 への働きかけと、そのもの自体の行いや現象)は稀薄となり、両者は意味的に 歩み寄っていると言えよう。17~20 の他動詞文は対応する自動詞文と同様、自 然に起こる変化を表していると言える5。その変化をあたかも変化の対象が主体 であるかのように他動詞で表現しているのである。 このように他動性ということを考えると、今度は対格を目的語とする動詞の 中でもその意味からして、果たしてこれが他動詞であるかどうかと疑われるも のが少なくない。たとえば同じく表情の変化を表す「赤らめる」「紅らめる」 である。知的意味が「顔を赤くする」と同義の「顔を赤らめる」は例文 23.24 のようにシンタクス的にも他動詞の振る舞いをする。 23. 柳原より七つ齢下の二十六歳の華子は齢より若い顔を赤らめ、頷くように 俯いた。(「白い巨塔」) 5. 杉岡 (2002:109) は主語 X は変 化の使役主ではなく、変 化の主体を表すこのような構文を「自 発 変 化他動詞構文」と呼び、一般の変 化他動詞文と区 別する。そして自発 変 化他動詞構文は. 使役主や動作主が主語の場合とは異なり、受身化することができないとしている。. - 141 -.
(10) 東 吳 外 語 學 報. 24. 嫁が顔を明らめるように言った。(「白い巨塔」) しかし他動詞でありながらその目的への働きかけの弱さのゆえに、他動詞の とりうる振る舞いが許されないものがある。それはすなわち受動形を造りえな いということである。例えば. *. 顔が赤らめられた。 (* は非文であることを表す). この点は、「連用語+スル」による表現パターンについても杉岡(2002)が 指摘した通り、使役主や動作主が主語の場合とは異なり、受身化することはで きない。. *. 顔が赤くされた。. このように自他の区別はこの変化表現にかぎっては一義的にはシンタクスの 区別であって意味に関する区別だてではないということが明白であるだろう。. 3.2. 他動詞一般に対応する用法. 25. あなたの負担を軽くするために言っているのよ。(例文 5 再録) 26. 空気を入れて、風船を大きくする。 27. それだけに何としても、この裁判には勝ち、勝つことによって財前教授の 正当性を明らかにし、本の名誉を維持したい。(「白い巨塔」) 28. 選挙の時は身辺をきれいにしておかないと…。(例文 4 再録) 29. 塩を足して味を濃くする。 30. その論功行賞として助教授になった苦しさが金井の姿勢を固くしていた。 (「白い巨塔」) 31. 心ここにあらずの診療が兄の命を奪い…十六歳と十四歳の子供の将来を 不幸にし、佐々木商店に勤めている四十三名の店員にも不安を与えたんだ わ。(「白い巨塔」) 上掲した例文には前節 2.1 で考察した諸例文と同じく、変化他動詞「スル」の ほかに結果の側面は形容詞、形容動詞の連用形によって表されている。ただし、. - 142 -.
(11) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. 両者には一つ大きな違いがある。それはこのタイプの文ではその様態を生起さ せる主体と、様態の持ち主が一致しないということである。そして、文が表し ている事象は人間や生き物の行為に関する領域であったり(25~29)、あるい は心的活動に関する領域にまで(30.31)、広範囲に拡張されているものである。 (25)に示されているように「形容(動)詞ク/ニスル」形は [負担が軽い]⇒[[負担が軽い]する]→[負担を軽くする] というように、ヴォイス性を持ち、意味的にも「負担が軽い」という事態が 実現されていることをその意味として含んでおり、使役性のある表現となって いる。25~29 の文は典型的、対象変化の使役他動詞文で、いずれも〈行為者〉 (自らの行為により、〈対象〉を意図的に変化させる人間)の関与する「使役」 のプロトタイプ的構造をなしている。そして 30.31 は、その主語は〈行為者〉の カテゴリーの「擬人化」による拡張の例である。この場合は人間の行為者を含 まない事態を、人間による行為に見立てることによって理解される。 このタイプの対象変化他動詞「スル」は Vendler6の動詞四分類中の「達成動 詞」(achivement verb)に当たり、次のような語彙概念構造(Lexical Conceptual Structure:LCS)で表すことができる。 [x. CAUSE [ BECOME [ y. BE AT-z ] ] ] ︱ AP〈state〉. 項 構 造:〈Ag(ent) 統語構造:. Xガ. Th(eme) Yヲ. 意味構造: 〈主体〉. Re(sult)〉 AP. 〈対象〉 〈結果〉. つまり LCS から得られる項構造は3項のもので、[Agent. Theme. Result. (state)]のようになる。ここで state は開放項でこの値については統語レベルの AP(形容詞、形容動詞の連用形)から供給される。そして〈主体〉や〈対象〉 6. 長谷川信子(1999:160~166)参 照。. - 143 -.
(12) 東 吳 外 語 學 報. が x.y の値を決定するように、連用語は state の値を完全に決定しているので、 統語項とみなすことになる 述語動詞「スル」は本来、対象変化他動詞7的意味を持たないため、使役動詞 の意味をもつには AP による連用語の出没が必要であることから、本稿はこの結 果句の連用語を意味的には「スル」の項、統語的には補部と考えることにする。. 3.2.1 この構文の持つ両義性 31. 彼らは表示を曖昧にしていた。(「日蝕」) 32. 夫の前では花子は話し方を静かにする。 上掲した二文の「曖昧に」と「しずかに」はモノの状態とも、動きの状態と も解釈できるので、非変化他動詞「スル」との組み合わせでは、動きの様態の 副詞的修飾関係となり、対象変化他動詞「スル」との組み合わせでは、変化し た状態を表す結果の修飾関係となる。したがって、(31)と(32)は意味的に は、修飾対象が動詞の変化の側面とも動きの側面とも解釈できる次のような両 義文となる 31’ 彼らの表示のしかたは曖昧であった。〈動作の様態〉 31” 彼らは表示の内容を曖昧なかたちにした。〈結果状態〉 32’ 花子は夫の前での話しの様態は静かである。〈動作の様態〉 32” 花子は本来静かでない話し方を静かにする。〈結果状態〉 上の現象は構文的多義性として理解することができる。これはちょうど語彙 項目が多義性を示すように、構文も互いによく似た複数の意味が同一の形式に 収まっている。自動詞相当のもの、他動詞相当のもの、あるいは意志動詞(使 役)相当のもの、無意志動詞相当のものなどが同一の統語スキーマ「連用語+ スル」に現れることができるにもかかわらず、その意味を「対象変化の使役他 動」という単一の意味に収めることができない。少しずつ意味が違うが相互に 7. ここでいう対 象変 化他動詞とは「X が Y に働 きかけたり、作用を起こしたりした結果、Y が 変 化して Z の状 態に変 化する」という意味を表す動詞である。. - 144 -.
(13) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. 関連しあう一連の意味が一つの形式に結びついている。こうして「スル」につ いては動詞の意味を文脈から独立して、記述しえない。必ず文の意味や統語レ ベルの情報と連絡させる形で動的に捉える手法をとるべきであろう。. 3.3 形式動詞としての用法 33. 泣かんばかりの声で、体を二つ折れにして礼を述べると、四人の社員たち もそのうしろに一列に並んで、財前にぺこぺこお辞儀をした(「白い巨塔」 五) 34. 剣に雷が落ち、相手を黒焦げにする。(senkisenki.hp.infoseek.co.jp) 35. RC 造の基壇の上に木造の箱を乗せ、屋根を格子組みにすることで、無柱 空間を生み出したというこの家は、スキップ…の中にいるようです。 (kw.allabout.co.jk) 36. きゅうりとメンマの炒め物:…から縦に六つ割りにする。ねぎは 5cmの 筒切りにしてさらに四つ割りする。(www.geocities.co.jp) 3.3.1. NV の内部構造. 基本的に理解しておきたいことは上掲した 33~36 の例に示されたようにこの 「Yヲ. NV ニ. スル」構文において複合語NVの中に結果状態がNの形で語彙. 的に編入され (incorporated)、そして V(すべて連用形で終わっている)が変化 動詞に当たり、変化作用を表し、「結果と変化」が一語に融合されていること である。統語的には述語動詞「スル」はほとんど固有の意味を持たない形式動 詞となり、構文の主な意味は NV によって規定される。また動詞的意味を保つ 複合語 NV に様々な内部関係がみられ、種々の項構造を持つことに注目すべき である。 では NV が持っている項関係8に焦点を当ててみよう。 37 8. ①〈目的語、他動詞〉釘付け、皮切り、タイル張りなど. 項関 係というのは名詞が述語(動詞、形容詞、形容動詞)に対 して、主語や目的語の文法関 係を結ぶ場合を指す。. - 145 -.
(14) 東 吳 外 語 學 報. ②〈補語、他動詞〉. 棚上げ、横付け、箱詰め、瓶詰め、受持医任せ、. 塩づけ、たんざく切り、輪切り、格子組みなど ③〈主語、他動詞〉. 鷲掴み、受取人払い. など. ④〈副詞、他動詞〉. 四つ割り、あと回し、山積み、皆殺しなど. ⑤〈副詞、自動詞〉半煮え、二つ折れ、黒焦げなど 用例の前に括弧〈. 〉で示した但書きは複合語NV内部の文法的関係を示すも. のである。その意味構造は大きく次の四つに類別できる。 (A)〈対象(Theme)と他動詞の組み合わせ〉 釘付け、皮切り、タイル張り. など. (B)〈動作主と非変化他動詞の組み合わせ〉 鷲掴み、受取人払い. など. (C)〈着点(Goal)と状態、移動変化他動詞の組み合わせ〉 瓶詰め、格子組み、棚上げ、横付け、たんざく切り. など. (D)〈数量、状態副詞と変化動詞(他動詞も自動詞も見られる)の組み合わ せ〉四つ折り、あと回し、半煮え、二つ折れ. など. 用例が最も多いのは他動詞的な後項(基体動詞)に対して、前項がその補語(着 点や状態を表す成分)(C 類)、そして数量、状態副詞(D 類)に当たる場合 である。NVの内部構造を、用例を通していくつか見てみよう。 37. 大根を輪切りにする。 38. ワインを瓶詰めにする。 39. 卵を半煮えにする。 40. 体を二つ折れにする。 37 の「輪」は「スル」ではなく「切る」の項(結果∕Result)であり、38 の 「瓶」は「詰める」の項(着点∕Goal)である。そして 39 の「半」は「煮える」 の項ではなく副詞である。40 の「二つ」も副詞である。もともとNは項構造で いえば内項または間接内項に当たるが、注目すべきは(C)(D)のように、も ともと結果を表す副詞的要素「輪」、「瓶」「半」、「二つ」が複合語化によって、. - 146 -.
(15) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. すっかり必須成分に変身してしまうということである。 3.3.2 意味特徴 ではこの表現形式にどういう意味特徴が見られるだろうか。例えば(38)の 「ワインを瓶詰めにする」は、単にワインを瓶に入れる(つまり単なる移動変 化行為)のではない。瓶詰めワイン独特の状態変化が主眼であり、そして(37) の文は単に大根を「輪」の形に切るという動作のありかたが問題ではなく、切 ったあとの、「輪の形になった大根」特有の状態変化が主眼であるから、こう いう「NVニスル」の表現形式が用いられると変化行為(作用)と、結果状態 の連鎖が際立つことになる。すなわちこの「名詞+動詞(連用形)」の方には、 「に」との結合が強く、動作性より、結果状態性が強調されるという表現意図 が見られる。 しかしながら、すべての例がそのように分析できるわけではない。まず語彙 的な主要部(つまり基体動詞)が変化動詞である場合と、そうでない場合とで は、しばしば意味の違いが観察される。ここで異なる複合語の「NV」におけ る前接語Nの種類に注目してみると、様態や道具のNが複合すると、動作の意 味を持ち、結果状態を表すNがつくと状態の意味になるということが観察され る。それぞれ具体例を見てみよう。たとえば「鷲掴み」、「釘付け」、「棚あ げ」9、「受取人払い」、「受持医任せ」など 41. 里見の白衣の胸を鷲掴みにし、子供のように揺さぶった。(「白い巨塔」) 〈主語+非変化他動詞〉 42. しかし逆に言えば、これは日本政府にとって煩わしい歴史問題を棚あげに する絶好のチャンスである。(www.mainichi.co.jp) 〈着点+移動変化他動詞〉 43. 商品を受取人払いにする。 9. 影山(1997:50)では「テレビに釘付けになる」や「重要な問題を棚あげにする」のような ものについては、名詞だけの意味が転 義しているのではなく、複合語全体の意味が比喩化し ているものとされる。. - 147 -.
(16) 東 吳 外 語 學 報. 〈主語+非変化他動詞〉 44. 自分が手術した患者を受持医任せにした財前教授…(「白い巨塔」). 〈補. 語+非変化他動詞〉 いずれも「名詞+非変化他動詞」で構成されているが、「XがYに力を加え て、Y をある状態に変化させる」という意味がなく、むしろNV全体が動作の 様態(41)や、ことがらの決定づけ(42、43)、処置のしかた(44)などのよ うに多様な意味を表している。3.2 にあげた状態変化を表す類型の構文と区別さ れるべきである10。 なお「鷲掴み」「棚あげ」「釘付け」などの「非結果語+非変化他動詞」は 下例のように直接「スル」を付けて動作述語として使うことができる。 45. …クゲ-のくせに、僕の心を鷲掴みするとは侮れんな…(www.cyberoz.net) 46. …竹島領有問題などを外交カードとして切り、韓国側に歴史問題を棚あげ するよう求めるべきだと思う。(www.mainichi.co.jp) 47. …塩漬では、野菜を塩付けすることによってその野菜の水分を吸収し、腐 敗を遅らせることができるのである。(jp/tukemono.htm/) 逆に「結果+変化動詞」は「*大根を輪切りする」「*卵を半煮えする」「* 体を二つ折れする」「*相手を黒焦げする」「*屋根を格子組みする」が不可能 なように、直接「スル」をつけて動作を表すことはできない。(半煮えに/二 つ折れに/黒焦げに/格子組みにするなら良い) 3.3.3. 語彙概念構造による分析. このような特徴は日本語の付加詞を含む動詞由来複合語が派生されるもとと なる意味構造から説明できる。3.3.2 で触れたように、付加詞はそれが表す意味 によって、異なる意味述語を修飾すると考えられる。下の 48(ⅰ)と(ⅱ)を. 10. なお「次の鑑定所見を皮切りにして、財前被控訴人側の誤診を追及するために…」の文に見 られる「X が Y を NV にして」という定型的な表現もあるが、これも他動変 化の意味をもた ず、むしろ「Y が NV で」と言い換える方がこの句の意義に近い。. - 148 -.
(17) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. 見ればその対立関係が分かる。 48. i). 意味述語. 複合される付加詞. ACT(動作). 様態. 道具. 着点. (鷲のように掴む/塩でつけこむ/棚に上げる) ⅱ). BE(状態). 結果 (輪の形に切る/二つに折れる∕半分煮える /格子状に組む/黒く焦げる). 様態、道具、着点を表す名詞は動作(ACT)という意味述語を意味構造に 持つ動詞とともに現れると、複合語全体が動作の意味を持つ。その結果「鷲掴 みする」「塩付けする」「棚あげする」のように「-する」を伴って動作述語 として使われることになる。 これに対して結果語は状態(BE)によって選択されるので「結果語+動詞」 の複合語は状態を表し、「半煮えの卵」「相手が黒焦げになった」「屋根が格 子状だ」のように、「-の」や「-だ」の形で用いられる。 このように複合語が「動作」「状態」のどちらを表すかは、付加語の種類か ら予測される動詞の意味述語(ACT. または BE)が決めているのである。. なお「切る」「組む」などのような、ある動作(ACT)がある変化(BEC OME)を引き起こす(CAUSE)という使役変化を表す動詞では、49 のよ うにその意味構造に動作と状態の両方が含まれている11。 49. [ x ACT-ON y ] CAUSE [ BECOME [ y. BE [結果状態]]]. 結果語の NV は構文中において「に格」をとっているが、一般の動名詞とも 違う。名詞としての面と動詞としての面を合わせ持った特殊な組み合わせなの である。動詞「スル」も「NV に」を必須項として要求するから変化他動詞と解 釈するのが自然であろう。ただし、この場合は他の変化他動詞文と違う振舞い 方をしている。というのは文中の NV の意味構造(様態か、それども結果状態 か)を決定する力がなく、NV の中の V がその肩代わりをするのである。 11. 影山(2001:258 参 照)。. - 149 -.
(18) 東 吳 外 語 學 報. これで「スル」は単なる統語的機能を果たす純然たる形式動詞であることが 検証できたと思われる。. 4. 結 語 上の考察で「Xガ. Yヲ. Z(連用語)スル」形式の変化他動詞文は文中の. 他の要素とのかかわりからいろいろな類型に分けられることが分かった。そし てそれぞれの文の特徴を詳しく見ることによってお互いに連続的であることも 明らかになった。 この形式の構文にはまず、「スル」に使役性を持たせる典型的な変化他動詞 文がある。それから遠ざかる他動詞文(非変化他動詞文)がその中間に存在し て、それと連続的なつながりを持つ。そしてその端は対象への働きかけが見ら れない自動詞的表現となる。さらに、形式動詞としての用法も備わっている。 というように非常に広がりを見せていながら、統語的な基準と意味的な基準が 必ずしも整合しない構文形式であることがわかる。また、構文的には表層で一 事態のみが表現されるが、引き起こされる事態の解釈は文脈などの認知のしか たによって解釈が異なりうるのである。. - 150 -.
(19) 有關日語變化他動詞句「X ガ Y ヲ Z(連用語)スル」之探討. 参考文献 天野みどり. 「状況変化主体の他動詞文」『動詞の自他』ひつじ書房、1995。. 安達太郎. 「「する」の文型と構文」、『広島女子大学国際文化学部紀要』 第 7 号、2000。. 奥津敬一郎 「連体即連用?」連載第 12 回~16 回. 変化動詞文その一~その五. 『日本語学』、1995。 影山太郎. 『文法と語形成』ひつじ書房、1993。. 影山太郎. 「名詞から動詞を作る」『語形成と概念構造』影山太郎他著、研 究社出版、1997。. 影山太郎. 「結果構文」『日英対照. 動詞の意味と構文』大修館、2001。. 影山太郎. 『ケジメのない日本語』岩波書店、2002。. 加藤重広. 『日本語修飾構造の語用論的研究』ひつじ書房、2003。. 杉岡洋子. 「形容詞から派生する動詞の自他交替をめぐって」『文法理論: レキシコンと統語』伊藤たかね編. 東京大学出版会、2002。. 蘇文郎. 「変化他動詞文についての研究」『政大日本研究』創刊号、2004。. 都築雅子. 「行為連鎖と構文 II:結果構文」『認知文法論 II』大修舘、2004。. 中北美千子 「形容詞、形容動詞と形式動詞「する」の結合について」、1992。 西村義雄. 「対照研究への認知言語学的アプローチ」『認知言語学の発展』 ひつじ書房、2000。. 長谷川信子. 『生成日本語入門』大修舘、1999。. 丸田忠雄. 「場所格交替動詞の LCS と使役交替」『日英語の自他の交替』ひ つじ書房、2000。. - 151 -.
(20) 東 吳 外 語 學 報. 村木新次郎. 『日本語動詞の諸相』ひつじ書房、1991。. 森田良行. 『日本語の表現』創林社、1983。. 吉村公宏. 「認知語彙論」『認知音韻、形態論』大修館、2003。. 用例出典 「白い巨塔」. 「白い巨塔」上、下. 山崎豊子. 新潮社文庫. 「白い巨塔」. 「白い巨塔」四、五. 山崎豊子. 新潮社文庫. 「日蝕」. 「日蝕の断層」. 森村誠一. 角川文庫. 「美しき」. 「美しき闘争」上、下. 「学研国語」. 学研国語大辞典. 松本清張. 金田一春彦他編. - 152 -. 角川文庫 学習研究社. 1978.
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