アジアインフラ投資銀行(
AIIB)への
参加要因について
小
山 直 則
(台湾‧淡江大学日本政経研究所助理教授)【要約】
本稿では、AIIB への参加の意思決定について、経済的な要因を中 心 にプロビッ ト分析を用 いて議論し た。本稿で は、以下の ことが 明 らかにされた。第1 に、実質 GDP が高い国ほど、AIIB への参加確率 が高まるということである。第2 に、対中輸出依存度が高い国ほど、 AIIB への参加確率が高まるということである。第 3 に、中国との距 離は、AIIB への参加確率に対して統計的に有意ではないということ が明らかになった。第4 に、中国とのガバナンスの格差は、AIIB へ の 参加確率に 対して統計 的に有意で はないとい うことであ る。 第 5 に、中国の ODA は、AIIB への参加確率に対して統計的に有意では なかった。第 6 に、地域的には、東アジア‧太平洋地域、欧州‧中 央 アジア地域 、中東‧北アフリカ地域の参加確率が、南北アメリカ 大陸に比べて高くなっているということがわかった。 キーワード:アジアインフラ投資銀行(AIIB)、参加要因、クロスセ クション分析、プロビット分析一 序
2014 年 10 月 24 日にアジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、AIIB)が中国主導で設立された。AIIB に先立って、 2014 年 7 月 15 日に新開発銀行(New Development Bank、BRICS 銀
行)がBRICS の 5 ヵ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフ
リ カ)によっ て設立され ている。こ れらの国際 金融機関は 、世界 銀 行(World Bank)、IMF(International Monetary Fund、国際通貨基金)、 ADB(Asian Development Bank、アジア開発銀行)を補完または代替
するものと理解されている。TPP(Trans-Pacific Partnership、環太平 洋 戦略的経済 連携協定) 参加国のう ち、米国、 日本、カナ ダは不 参 加 を表明した が、欧州の 主要国(イ ギリス、ド イツ、フラ ンス、 イ タリア等)が参加を表明した。 中国主導のAIIB 設立について、様々な背景が議論されている。第 1 に、中国国内における貯蓄超過が挙げられている(Reisen, H. (2015a, 2015b))1。第2 に、アジアの新興国‧開発途上国におけるインフラ ニ ー ズ に よ る も の が あ る と さ れ て い る ( 河 合 正 弘(2015)、宗 永健 作 (2015))2。第 3 に、中国は、対外援助によるインフラ整備とそれに よ って誘発さ れる民間企 業の海外進 出(直接投 資)を並行 して行 う 戦 略 を と っ て い る こ と が 挙 げ ら れ て い る ( 日 本 国 際 問 題 研 究 所
1 Reisen, H., “Alternative Multilateral Development Banks and Global Financial Governance,” International Organisations Research Journal, 10(2), pp. 1-10, (2015a).
Reisen, H., “Will the AIIB and the NDB Help Reform Multilateral Development Banking?”
Global Policy, 6(3), pp. 297-304, (2015b).
2 河合正弘「中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」 ビジョンもガバナンスもな
き実態」、WEDGE REPORT、(2015 年 1 月 6 日)、(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4566? page=3、2016 年 3 月 20 日閲覧)。宗永健作「AIIB:アジアインフラ投資銀行設立を めぐる動き」『戦略研レポート』、(2015)。
(2012))3。 中国 の対 外援助 によ るイン フラ 融資で は限 度があ るが 、 AIIB の形にすれば、中国の出資分以上の投融資が可能となり(宗永 健 作(2015))4、 中国 企業の さら なる海 外進 出を可 能と すると 考え ら れている。第4 に、2013 年に発表された中国の一帯一路構想が背景 に あるとされ ている。こ れは、中国 とアジア、 ユーラシア 各国を 結 ぶ 陸上ルート や、対中貿 易のための 港湾設備な どの海上ル ートを 建 設 する構想で ある。これ は、中国の 対外援助に よるインフ ラ整備 と
関連するものと考えられている(Nataraj, G. and Sekhani, R. (2105),
Johnson, P. (2015), Hali, S. M., Shukui, T. and Iqbal, S. (2015), Simeon, D. and Miner, D., eds. (2016))5。
AIIB 設立を問題視する議論が多く出されている。河合正弘(2015) は、AIIB のビジョン‧理念、ガバナンス、融資政策‧条件、ドナー 間の協調の4 つの問題点を指摘している。河合正弘(2015)は、AIIB のビジョン‧理念について、ADB は、開発途上国の経済発展の成果 が す べ て の 国 や 人 々 に 波 及 す る よ う な 包 括 的 な 成 長 (inclusive growth )、 環 境 と 調 和 の と れ た 持 続 可 能 な 成 長 ( environmentally sustainable growth)、さらに、地域経済統合(regional integration)を
3 日本国際問題研究所「中国の対外援助」(2012)、(http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/H23_
China/H23_China_AllReports.pdf、2016 年 4 月 30 日閲覧)。
4 宗永健作(2015)、前掲書。
5 Nataraj, G. and Sekhani, R., “China’s One Belt One Road.” Economic & Political Weekly, No.
49, pp. 67-71, (2015).
Johnson, P., “The “One Belt, One Road” Policy–History, Trends and Possibilities,” Confucius
Institute Symposium, (2015).
Hali, S. M., Shukui, T. and Iqbal, S., “One Belt and One Road: Impact on China-Pakistan Economic Corridor,” Strategic Studies, (2015).
Simeon, D. and Miner, D., eds., China's Belt and Road Initiative: Motives, Scope, and
ビジョンとして掲げているが(ADB, 2008)、AIIB は「インフラを通 し てどのよう なアジアを 実現させよ うとしてい るのか、明 らかで な い」と述べている6。河合正弘(2015)は、ガバナンスの問題につい て、「中国が最大の出資国になり、その議決権シェアは最大 50%と突 出」しており、「中国は援助予算総額を増やさずに援助効果を倍増さ せ、かつAIIB を対アジア外交強化のために用いることができる」こ と に関し て懸 念を述 べて いる。 河合 正弘(2015)は、融資政策‧条 件 について、 インフラ事 業における 環境保全、 住民の立ち 退きな ど を めぐる人的 ‧社会的保全の基準、腐敗‧汚職のない調達の方式が 実現できるかどうかについて疑念を表明している。河合正弘(2015) は、ドナー間の協調について、「国際金融機関や二国間援助機関など ド ナー間の協 調は、受け 手である新 興国‧途上国にとって、取引コ ス トを削減し 、重複を避 け、相乗効 果(シナジ ー)を生み 出すと い うメリット」があると主張している。しかし、AIIB が世界銀行や ADB と 協調が失わ れると、環 境や住民へ の影響を無 視した「非 生産的 な 基 準引き下げ 競争」につ ながる可能 性があると 述べている 。湊直 信 (2015 ) は 、 世 界 銀 行 の ガ バ ナ ン ス 指 標 ( Worldwide Governance Indicators)を用いて、中国の言論の自由、政治的安定や法の支配に 関する指標の低さを指摘し、中国がAIIB を運営する上でのガバナン ス上の問題を提起している7。上久保誠人(2015)は、「AIIB の経営 を内部から監督する」という意味と、「資源開発、インフラ整備に日 本企業が貢献できることは少なくない」という観点から、日本がAIIB
6 Asian Developing Bank, “Strategy 2020: Long-Term Strategic Framework of the Asian
Development Bank, 2008-2020,” (http://www.adb.org/sites/default/files/institutional- document/32121/strategy2020-print.pdf, Accessed 30 April 2016), (2008).
7 湊直信「G20 新興国のガバナンスと金融~アジインフラ投資銀行(AIIB)を例に~」
に参加し、イギリスと協力することの意義を述べている8。既存研究 は、以上のように、AIIB の国際金融機関としての問題点、既存の国 際 金融機関と の関係、さ らに、日本 の参加問題 などを中心 に議論 し ている。AIIB への参加の意思決定に関する議論は、まだ、存在しな いように思われる。本稿では、AIIB への参加の意思決定に関する分 析 に つ い て 、 重 力 モ デ ル を 基 礎 に し た プ ロ ビ ッ ト 分 析 (Probit Analysis)を用いて分析する。 本稿の目的は、AIIB への参加が参加国のどのような経済的な要因 に よ っ て 決 定 さ れ る の か を 重 力 モ デ ル を 用 い て 分 析 す る こ と で あ る。本稿では、182 カ国のクロスセクション‧データを用いて、AIIB へ の 参 加 要 因 を 分 析 す る 。 推 計 に 用 い る デ ー タ は 、1996-2013 年の 18 年間の平均値を用いた。中国の顕著な経済発展は、1990 年代半ば 以降であるから、この期間に分析の焦点を当てた。推計方法は、AIIB へ の参加の有 無を被説明 変数とする プロビット 分析を用い て分析 す る。
二 参加要因の分析
1 プロビット分析 本項では、AIIB への参加要因を分析する推計方法について説明す る。本稿では、AIIB への参加の意思決定に関する分析について、重 力 モデルを用 いる。重力 モデルは、 所得や距離 などを説明 変数と し て 、国際貿易 や直接投資 などの決定 要因の分析 においてよ く用い ら れ ている。重 力モデルを 基礎にして 、当該国の 相手国との 貿易や 直 接 投資の有無 を被説明変 数とするプ ロビット分 析の議論は 多数存 在8 上久保誠人「英国はなぜ西側で一番に AIIB 参加を決めたのか」東洋経済 ONLINE、 (2015)、(http://diamond.jp/articles/-/69480、2016 年 4 月 30 日閲覧)。
す る。重力モ デルは、国 際経済学に おいて直接 投資の決定 要因や 企 業 の輸出や海 外現地生産 の決定要因 として用い られている 。本稿 の 推計方法は、第
i
国がAIIB への参加と不参加を意思決定するプロビ ット‧モデルを考察する。プロビット‧モデルでは、被説明変数Y
iと し、 第i
国がAIIB への参加Y
i
1
第i
国がAIIB への不参加Y
i
0
となるようなダミー変数を考える。説明変数としては、第 i 国の実 質 GDP(GDP
i) 、 対 中 輸 出 依 存 度 (ExportGDP
i) 、 中 国 と の 距 離 (Dist
ij) 、 第 i 国 と 中 国 (j
国 ) と の ガ バ ナ ン ス 指 数 の 差 ( ijGovernance
)さらに、第 i 国が中国(j
国)からのODA(OfficialDevelopment Assistance)の受取国なら 1、非受取国なら 0 の ODA ダ
ミ ー (
ODA
ij) 、 地 域 ダ ミ ー (dummy
i、 東 ア ジ ア ‧太平洋地域、欧 州‧中央アジア地域、南アジア地域、中東‧北アフリカ地域、サブ‧ サ ハラ‧アフリカ地域)を用いる。本稿では、以下のような重力モ デル 1 2 3 4 i i i ij ijY
GDP
ExportGDP
Dist
Governance
5
ODA
ij 6dummy
i i
(1) を想定する。重力モデルを用いる理由は、AIIB の融資は、直接投資 と同様に国際資本移動に関連するため、この分析手法が有用である と考えられるからである。通常の重力モデルと類似して、説明変数 の中に、実質GDP が入っている。実質 GDP を用いる理由は、AIIB への出資比率が参加国のGDP を基準に算出されると考えられているからである9。このことから、実質 GDP は、AIIB への出資比率の代 理変数と考えることができる。出資比率が高い国ほど、議決権シェ アが高まるため、AIIB への参加確率が高まると考えられる10。標準 的な重力モデルと同様に、説明変数の中に距離が含まれる。中国と の距離は、経済学的には輸送費などの貿易費用を表す。国際関係論 では、地理的位置関係は政治的‧軍事的‧社会的な緊張という形で、 地政学的リスクを生み出す要因の1 つと考えられている。中国との 距離の近接性は、当該国と中国との間の貿易や資本移動を加速させ ると考えられる。したがって、中国との距離の近接性は、AIIB への 参加確率を高めると考えられる。 説明変数の中に、対中貿易依存度が入っている理由は、貿易によ って中国との情報の流れが加速し、AIIB の融資効率が高まると考え られるからである。ここで、対中貿易依存度は、当該国の対中輸出 額をGDP で割ったものである。さらに、中国との生産ネットワーク も強まり、AIIB への参加確率を高めると考えられるからである。 ガ バナン ス変 数は、 当該 国から 中国 のガバ ナン ス指数 を指 し引い
たものを表す。この指数は、Worldwide Governance Indicators 2015 に
おいて推計された 6 つの指標の合計値を 1996 年から 2013 年までの 期間で平均したものである。この 6 指標には、経済的規制の負担、 言 論の自由、 法の支配、 汚職などの 度合いが含 まれ、それ ぞれの 指 標は、-2.5 から 2.5 までの数値で表され、数値が大きいほどガバナン ス が良好であ ることを表 す。したが って、当該 国と中国と の間の ガ バ ナンス指数 の差が正の 値で大きい ほど、中国 は当該国よ りも相 対
9 河合正弘(2015)、前掲書。 10 宗永健作(2015)、前掲書によると、出資比率は、アジア地域内‧外のメンバー国の 比率が75:25 の範囲内において、当該国 GDP を基準に算出されると言われているが、 詳細な定義は不明である。
的 にガバナン スが悪いこ とを意味す る。中国の ガバナンス の相対 的 に良好ではないのであれば、AIIB の経営効率が悪くなり、貸出資産 の 運用効率も 低下すると 想定できる かもしれな い。当該国 と中国 と
の間のガバナンス指数の差が、AIIB への参加確率にどのような影響
を及ぼすかを以下で考察する。
中国の対外ODA(Official Development Assistance)を説明変数に加
える理由について議論する。中国の対外ODA の推計値は、Tracking
Chinese Development Finance(TCDF)によって推計されている11。推
計方法は、DAC(Development Assistance Committee:開発援助委員会)
の定義に基づいている。TCDF による推計値は、2000 年から 2012 年 までの 13 年分存在するため、本稿では、この期間に中国から ODA を受け取っている国を1、受け取っていない国を 0 とする ODA ダミ ーを用いて分析している。ODA の経済効果として、先兵効果、イン フラ効果などが指摘されている12。先兵効果は、中国が当該国に ODA を 供給した場 合、当該国 の経済環境 に関する情 報を得るこ とが可 能 なため、これがAIIB の運営‧融資に有利に作用すると考えられる。 インフラ効果は、中国からのODA の受取は、受入国のインフラを改 善すると考えられる。すると、資本の限界生産性が高まり、AIIB か らの融資効率が高まると考えられる。したがって、ODA の供給は受 取国の参加確率が高める要因と考えられる。 地 域ダミ ーと しては 、東 アジア ‧太平洋地域、欧州‧中央アジア 地 域、南アジ ア地域、中 東‧北アフリカ地域、サブ‧サハラ‧アフ リカ地域を用いる。これは、地理的な要因がAIIB への参加の意思決
11 Tracking Chinese Development Finance (http://china.aiddata.org/, Accessed 30 April 2016). 12 Kimura, H., Y. Todo, “Is Foreign Aid a Vanguard of Foreign Direct Investment? A Gravity-
定 にどのよう な影響を及 ぼすかを調 べるもので ある。推計 に用い た データの内容と出所は、表 1 に示されている。推計に用いた 182 カ 国のリストは、表 2.1-表 2.4 に示してある。182 カ国は、実質 GDP や対中輸出依存度の主要な経済変数の利用可能性から選定した13。 表1 変数の内容と出所 変数 内容 出所 AIIB 参加ダミー 参加国=1、非参加国=0 AIIB の HP 実質GDP (自然対数) PPP、2011 年基準 World Development Indicators 2015 対中輸出依存度 (自然対数) 対中輸出額/GDP UN Comtrade, World Development Indicators 2015 中国との距離 (自然対数) 当該国と中国との距離 CEPII Database ガバナンス変数 当該国と中国とのガバナ ンス指数の差 Worldwide Governance Indicators 2015 ODA ダミー 中国のODA 受入国=1、 非受入国=0 Tracking Chinese Development Finance East Asia & Pacific 該当地域=1、その他=0 World Development
Indicators 2015 Europe & Central
Asia
該当地域=1、その他=0 World Development Indicators 2015 Middle East &
North Africa 該当地域=1、その他=0 World Development Indicators 2015 South Asia 該当地域=1、その他=0 World Development
Indicators 2015 Sub-Saharan Africa 該当地域=1、その他=0 World Development Indicators 2015 (出典)筆者作成。 次に、(1)式のモデルのプロビット分析によって推計する理由に ついて議論する。(1)式のモデルを最小二乗法で推計すると、誤差
13 台湾は、AIIB への参加を断念したととらえるべきか、不参加ととらえるべきか、不 明なため、サンプルから除外している。
項
iは、1 2 3 4 5 6
1
GDP
i
ExportGDP
i
Dist
ij
Governance
ij
ODA
ij
Dummy
i1
GDP
i 2ExportGDP
i 3Dist
i 4Governance
ij 5ODA
ij 6Dummy
i
の 値しかとり えないので 、誤差項の 正規性と不 均一分散の 仮定は 満 たされない。したがって、(1)式を最小二乗法で推計することには 問題がある。 被説明変数Y
iが 0 と 1 の間に値をとるように、誤差項が正規分布 に 従うと仮定 するような 分析方法を プロビット 分析という 。本稿 で は、プロビット分析に基づいて、AIIB への参加と不参加の意思決定 の要因分析を行う。 本稿では、上のモデルのように、AIIB への参加の意思決定の要因 として、実質 GDP、対中輸出依存度、中国との距離、ガバナンス格 差、中国からのODA、地域ダミーを用いる。プロビット分析によっ て、これらの説明変数がAIIB への参加確率にどのような影響を与え るのかを分析することが可能となる。 表2.1 サンプル国(182 カ国)East Asia &Pacific South Asia
Australia Afghanistan Brunei Darussalam Bangladesh
Cambodia Bhutan China India Fiji Maldives Hong Kong SAR, China Nepal
Indonesia Pakistan
Japan Sri Lanka
Kiribati Middle East & North Africa Korea, Rep. Algeria
Lao PDR Bahrain Macao SAR, China Djibouti
Malaysia Egypt, Arab Rep. Marshall Islands Iran, Islamic Rep.
Micronesia, Fed. Sts. Iraq
Mongolia Israel New Zealand Jordan
Papua New Guinea Kuwait
Philippines Lebanon Samoa Libya Singapore Malta Solomon Islands Oman
Thailand Qatar
Tonga Saudi Arabia
Tuvalu Syrian Arab Republic Vanuatu Tunisia
Vietnam United Arab Emirates
Yemen, Rep.
(出典)筆者作成。
表2.2 サンプル国(続き)
Europe & Central Asia Europe & Central Asia
Albania Macedonia, FYR
Andorra Moldova Armenia Netherlands Austria Norway Azerbaijan Poland Belarus Portugal
Belgium Russian Federation
Bosnia and Herzegovina Slovak Republic
Bulgaria Slovenia Croatia Spain Cyprus Sweden Czech Republic Switzerland
Denmark Tajikistan Estonia Turkey Finland Turkmenistan France Ukraine
Georgia United Kingdom
Germany Uzbekistan Greece Hungary Iceland Ireland Italy
Kazakhstan Kyrgyz Republic Latvia Lithuania Luxembourg (出典)筆者作成。 表2.3 サンプル国(続き)
North America Latin America & Caribbean
Berumuda Guyana Canada Haiti United States Honduras
Latin America & Caribbean Jamaica Antigua and Barbuda Mexico
Argentina Nicaragua Aruba Panama Bahamas, The Paraguay
Barbados Peru
Belize Puerto Rico
Bolivia St. Kitts and Nevis
Brazil St. Lucia
Chile St. Vincent and the Grenadines
Colombia Suriname Costa Rica Trinidad and Tobago
Cuba Uruguay Dominica Venezuela, RB Dominican Republic Ecuador El Salvador Grenada Guatemala (出典)筆者作成。 表2.4 サンプル国(続き)
Sub-Saharan Africa Sub-Saharan Africa
Benin Madagascar Botswana Malawi Burkina Faso Mali
Burundi Mauritania Cabo Verde Mauritius
Central African Republic Namibia
Chad Niger Comoros Nigeria Congo, Rep. Rwanda
Cote d’Ivoire Sao Tome and Principe Equatorial Guinea Senegal
Eritrea Seychelles
Ethiopia Sierra Leone
Gabon Soute Africa
Gambia, The Sudan
Ghana Swaziland Guinea Tanzania Guinea-Bissau Togo Kenya Uganda Lesotho Zambia Liberia Zimbabwe (出典)筆者作成。 2 仮説 以 下では、(1)式の推計によって得られる説明変数の符号条件に ついて仮説を立ててみよう。実質GDP が高い国ほど、出資比率が高 くなり、AIIB への発言力が増すと考えられるため、実質 GDP が高い 国ほど参加確率が高まると考えられる。したがって、実質GDP の係 数の推計値の符号は正となると予想される。AIIB への参加は、中国 と の経済関係 が強く影響 されている とする議論 が見受けら れる。 こ の仮説が正しければ、対中輸出依存度が高い国ほど、AIIB への参加 確 率が高まる はずである 。したがっ て、対中輸 出依存度の 係数の 推 計 値の符号は 、正となる と考えられ る。中国と の距離は、 経済学 的 に は輸送費な どの貿易費 用を表す。 国際関係論 では、地理 的位置 関 係 は政治的‧軍事的‧社会的な緊張という形で、地政学的リスクを 生み出す要因の1 つと考えられている。中国との距離が近い国ほど、 AIIB への参加確率が高まるのであれば、中国との距離の係数の推計 値 の符号は負 となると考 えられる。 逆に、中国 との距離が 遠い国 ほ
ど、AIIB への参加確率が高まるのであれば、中国との距離の係数の 推 計値の符号 は正となる と考えられ る。ガバナ ンス変数( 当該国 と 中 国との間の ガバナンス 指数の差) が正で、か つ、大きい ほど、 当 該 国の参加確 率は低くな ると考えら れる。なぜ なら、中国 のガバ ナ ンスが相対的に良好ではないのであれば、AIIB の経営や融資などの 効 率が低下す ると考えら れるからで ある。その ように予想 するの で あれば、当該国のAIIB への参加確率は低下するはずである。したが って、ガバナンス変数の係数の符号は、負となると予想される。ODA ダミーの係数の符号について、中国からの ODA の受入は、AIIB へ の 参加確率を 高めると考 えられる。 したがって 、予想され る係数 の 符号は正である。地域ダミーは、北米大陸や南米大陸を除いてある。 し たがって、 地域ダミー の係数の符 号は、南北 アメリカ大 陸の開 発 途 上 国 を 基 準 と し た 場 合 、AIIB へ の 参 加 確 率 が 高 い か ど う か を 表 す 。例えば、 もし、東ア ジア‧太平洋地域の開発途上国が南北アメ リ カ大陸のそ れよりも参 加確率が高 いのであれ ば、東アジ ア‧太平 洋 地域の地域 ダミーの係 数の推計値 は正となる と考えられ る。南 北 ア メリカ大陸 のそれより も参加確率 が低いので あれば、東 アジア ‧ 太平洋地域の地域ダミーの係数の推計値は負となる予想される。 3 推計結果 本項では、AIIB への参加意思決定に関するプロビット分析の結果 を説明する。表3.1-表 3.2 には、5 つのモデルの推計結果が示されて いる。実質GDP は、いずれのモデルでも正で有意となっており、市 場規模が大きな国ほど、AIIB への参加確率が高まることを示す。対 中 輸出依存度 も正で有意 となってお り、中国と の貿易関係 が強い 国 ほどAIIB への参加確率が高まることがわかる。自由貿易協定の進展 や 大量輸送な どによる輸 送費の低下 が、広い意 味での中国 との経 済
的 近接性を高 めていると 考えられる 。対中輸出 依存度は、 経済的 近 接 性という意 味での地政 学的リスク を表すと考 えられる。 中国と の 距離は、負であるが有意ではない。中国に近いことがAIIB への参加 確率が高めるとは言えないことがわかる。このことから、イギリス、 ドイツ、フランス、イタリアなどの欧州の主要国の参加は、実質GDP の 規模や対中 貿易関係に よって説明 できること になり、中 国との 地 理 的な近接性 という意味 での地政学 的リスクは 重要ではな いこと が わ かる。ガバ ナンス変数 の係数の符 号は、想定 とは異なり 、正と な っ ている。し かし、統計 的に有意で はない。中 国と当該国 のガバ ナ ンスの状態は、AIIB への参加要因としては重要ではないことがわか る。河合正弘(2015)、湊直信(2015)、上久保誠人(2015)などは、 AIIB の運営や融資に関するガバナンスの問題を議論しているが14、 AIIB の参加要因としては重要ではないと考えられる。ODA ダミーの 符 号は予想通 り正である が、統計的 に有意では ない。した がって 、 中国の ODA は、AIIB への参加確率を高める要因と考えられない。 地 域ダミーの 係数の符号 について、 東アジア‧太平洋地域、欧州 ‧ 中 央アジア地 域、中東‧北アフリカ地域、南アジア地域は、それぞ れ 、いずれの モデルでも 正で有意と なっており 、南北アメ リカ大 陸 よ りも参加確 率が高いこ とがわかる 。サブ‧サハラ‧アフリカ地域 の地域ダミーの係数の符号は正であるが、有意ではない。 次に、表3.1-表 3.2 の下段の統計量について説明する。プロビット‧ モ デル全体の 回帰係数の 包括的な検 定は、カイ 二乗検定に よって 行 われる。対数尤度比カイ二乗統計量(LR chi2 statistics)は、「モデル に 含まれる係 数はすべて ゼロである 」であると いう帰無仮 説を検 定 するための統計量である。対数尤度比カイ二乗検定の p 値(p-value
14 前掲書、河合正弘(2015)、湊直信(2015)、上久保誠人(2015)。
from the LR chi2 test)を見ると、表 3.1-表 3.2 のいずれのモデルの p 値もゼロであるから、「モデルに含まれる係数はすべてゼロである」 で あるという 帰無仮説が 棄却される 。すなわち 、すべての 説明変 数 はAIIB への参加確率に統計的に影響すると考えることができる。疑 似決定係数(Pseudo R2)は、1 に近いほどモデルの当てはまりが良 い とされる。 しかし、疑 似決定係数 はモデルの 説明力の比 較には 使 うことができない。したがって、表3.1-表 3.2 の 5 つのモデルのうち、 どのモデルが説明力が高いかは、対数尤度(Log Likelihood)の大き さによって判断する。対数尤度が最も高いモデル 3 が最も説明力が 高いと判断できる。 表3.1 プロビット分析の結果(1) 被説明変数
AIIB への参加ダミー model.1 model.2 model.3 実質GDP (自然対数) 0.374*** (0.0740) 0.367*** (0.0758) 0.318*** (0.0791) 対中貿易依存度 (自然対数、対中輸出額/GDP) 0.291** (0.116) 中国との距離 (自然対数) -0.271 (0.393) (0.412) -0.153 ガバナンス (当該国と中国の差) ODA ダミー (中国からの ODA) East Asia & Pacific (発展途上国のみ) 2.680*** (0.660) 2.290*** (0.861) 1.959** (0.910) Europe & Central Asia
(発展途上国のみ) 2.264*** (0.605) 2.046*** (0.676) 2.140*** (0.704) Middle East & North Africa
(発展途上国のみ) 2.331*** (0.649) 2.130*** (0.707) 2.067*** (0.731) South Asia (発展途上国のみ) 3.284*** (0.823) 2.916*** (0.973) 3.988*** (1.140) Sub-Saharan Africa (発展途上国のみ) 0.608 (0.772) 0.522 (0.776) 0.312 (0.815) 定数 -11.75*** -8.961** -7.167
(2.108) (4.520) (4.772) Observations 179 179 178 Pseudo R2 0.4754 0.4775 0.5059 Log likelihood -58.350362 -58.10909 -54.773033 LR chi2 statistics 105.750 106.230 112.150 P-value from
The LR chi2 test 0.000 0.000 0.000
(出典)筆者推計。
(注)括弧内は、標準偏差を表す。**は、5%の棄却域で、***は、10%の棄却域で、そ れぞれ有意であることを表す。
表3.2 プロビット分析の結果(2)
被説明変数
AIIB への参加ダミー model.4 model.5 実質GDP (自然対数) 0.337*** (0.0780) 0.336*** (0.0785) 対中貿易依存度 (自然対数、対中輸出額/GDP) 中国との距離 (自然対数) -0.434 (0.418) -0.480 (0.427) ガバナンス (当該国と中国の差) 0.0379 (0.0272) 0.0441 (0.0289) ODA ダミー (中国からの ODA) 0.284 (0.435)
East Asia & Pacific (発展途上国のみ)
1.997**
(0.884) 1.860** (0.901) Europe & Central Asia
(発展途上国のみ)
1.834***
(0.689) 1.832*** (0.680) Middle East & North Africa
(発展途上国のみ) 2.092*** (0.707) 2.059*** (0.699) South Asia (発展途上国のみ) 2.826*** (0.971) 2.637*** (0.996) Sub-Saharan Africa (発展途上国のみ) 0.583 (0.779) (0.794) 0.431 定数 -6.768 (4.787) (4.792) -6.362 Observations 178 178 Pseudo R2 0.481 0.4829 Log likelihood -57.1222 -56.909421 LR chi2 statistics 105.870 106.290 P-value from 0.000 0.000
The LR chi2 test (出典)筆者推計。 (注)括弧内は、標準偏差を表す。**は、5%の棄却域で、***は、10%の棄却域で、そ れぞれ有意であることを表す。
三 分析の含意
前節では、出資比率の代理変数としての実質 GDP、経済的近接性 の 代理変数と しての対中 輸出依存度 、地理的近 接性の代理 変数と し ての中国との距離、AIIB の経営効率や融資の効率の代理変数と考え ら れるガバナ ンス変数、 ネットワー ク関係の緊 密さの代理 変数と 考 えられる中国の ODA などの経済的変数を用いて、AIIB への参加の 要因分析を行った。本節では、前節で分析された実質GDP、距離、 中国のODA について、政治経済学の分野で議論される内容と比較し ながら、前節の議論の含意について、若干補足してみたい。 1 距離と地政学的リスク まず、第 2 節で議論した重力モデルにおける距離の議論と国際関 係論で言われる地政学的リスクの問題との関係について、第 2 節の 議論の含意とともに詳細に議論したい。まず、地政学的リスクのAIIB へ の参加意思 決定に対す る影響につ いて考察し てみよう。 山口圭 介 (2015)では、以下のような議論が行っている。第 1 に、欧州の主 要国がAIIB に参加したことについて、「欧州勢のAIIB 参加を決定付 け たのが、欧 州と中国の 間に地政学 的なリスク がなかった 点だ。 つ まり、両者の間には領土問題など、「安全保障上の脅威」が存在しな いのだ」と述べている。この議論には、無理があると思われる。表4 に示されている AIIB に参加する 57 カ国を見てみよう。これを見る と、東アジア‧太平洋地域から中国を除いて14 カ国参加しているこ と がわかる。 さらに、中 国から地理 的距離が遠 いという意 味で地 政学 的なリスク の少ない北 アメリカ大 陸からは参 加国がなく 、南ア メ リ カ大陸から はブラジル のみしか参 加していな い。さらに 、地理 的 距 離の遠いサ ブ‧サハラ‧アフリカ地域からの参加国は、南アフリ カ だけである 。このこと は、本稿の プロビット ‧モデルの結果にも 表われている。本稿の分析では、中国との距離が有意ではなかった。 つまり、AIIB への参加確率に地理的な意味での地政学的リスクは影 響しないのである。 前 節では 、地 政学的 リス クの解 釈は 、単に 、物 理的な 距離 だけで は なく、グロ ーバル化、 情報などの 技術革新に よる経済的 近接性 の 概 念を考慮す る必要があ るという立 場から、対 中輸出依存 度を説 明 変 数に用いた 。本稿のプ ロビット分 析において 、対中輸出 依存度 が 統 計的に有意 となったの も、自由貿 易協定の進 展や大量輸 送など に よ る輸送費の 低下が、広 い意味での 中国との経 済的近接性 を高め た 結 果によるも のかもしれ ない。中国 における政 治的‧軍事的‧社会 的 緊張の高ま りが、物理 的な近隣諸 国のみなら ず、対中輸 出依存 度 を 強めている 経済や市場 をも不確実 性を高めて いると考え られる か ら である。し たがって、 対中輸出依 存度の低下 という形で の地政 学 的リスクの高まりは、AIIB への参加確率を低下させることになるの である。 表4 AIIB への参加国(57 カ国)
East Asia &Pacific South Asia
Australia Bangladesh Brunei Darussalam India
Cambodia Maldives China Nepal Indonesia Pakistan Korea, Rep. Sri Lanka
Lao PDR Europe & Central Asia
Malaysia Austria Mongolia Azerbaijan
Myanmar Denmark New Zealand Finland
Philippines France Singapore Georgia Thailand Germany Vietnam Iceland Middle East & North Africa Italy
Egypt, Arab Rep. Kazakhstan Iran, Islamic Rep. Kyrgyz Republic
Israel Luxembourg Jordan Netherlands Kuwait Norway Malta Poland Oman Portugal
Qatar Russian Federation
Saudi Arabia Spain United Arab Emirates Sweden Latin America & Caribbean Switzerland
Brazil Tajikistan Sub-Saharan Africa Turkey
South Africa United Kingdom
Uzbekistan
(出典)筆者作成15。
2 中国の対外援助とAIIB への参加
次に、第 2 節の重力モデルで議論された中国の ODA ダミーの議論
の含意について、以下で詳細に議論したい。中国の対外ODA(Official
Development Assistance)と AIIB への参加について議論してみよう。
中国の対外ODA の推計値が、Tracking Chinese Development Finance
(TCDF)によって推計されている16。推計方法は、DAC(Development Assistance Committee:開発援助委員会)の定義に基づいている。TCDF による推計値は、2000 年から 2012 年までの 13 年分存在する。TCDF によると、中国の 2012 年における対外名目 ODA は、約 116 億ドル
15 AIIB の HP(http://www.aiib.org/、2016 年 5 月 5 日閲覧)より作成。
となっている。この額は、アメリカの同年における対外名目ODA 額 254 億ドルに次ぐ世界第 2 位の規模である。中国の対外 ODA は、AIIB への参加の意思決定に影響するのであろうか17。 表 5.1-表 5.5 には、本稿で用いた 182 カ国のサンプルのうち、開発 途上国119 カ国の AIIB への参加状況と 13 年間の中国からの ODA 累 計額(名目額)を示してある。表5.1 を見ると、東アジア‧太平洋地 域の参加国8 カ国のうち、6 カ国は中国からの対外援助の受取国であ る。一方、欧州‧中央アジア地域の中国の対外ODA はゼロである。 こ のことは、 本稿の分析 で欧州‧中央アジア地域の地域ダミーは、 統 計的に有意 であり、参 加確率が高 くなってい ることと矛 盾する 。 表5.2 を見ると、南アジア地域の参加国 6 カ国のうち、4 カ国は中国 の対外ODA の受取国である。一方、中東‧北アフリカ地域やラテン‧ アメリカ‧カリブ地域は、中国の対外ODA の受取国は不参加の国が 目立つ。表5.4-表 5.5 には、サブ‧サハラ‧アフリカ地域について記 してある。TCDF によると、中国の対外 ODA を累計額で見ると、約 53%がサブ‧サハラ‧アフリカ地域に流れている。しかし、サブ‧ サハラ‧アフリカ地域でのAIIB への参加国は、南アフリカのみであ る。以上の考察から、中国の対外 ODA は、AIIB の参加の意思決定 に大きな影響を及ぼしていないことがわかる。 ある条件の下で、対外援助は、インフラ効果と先兵効果によって、 対外投資を促進させるという考え方が存在する18。したがって、中国 のODA は、受入国の AIIB への参加が促進されると予想される。し かし、第2 節の分析では、この仮説は否定された。
17 中国の ODA の受入国は限られているため、データには多くの欠損値が存在する(表 5.1-5.5)。この理由から、第 2 節のプロビット分析の説明変数から除外している。
18 Harms, P., Lutz M., “Aid, Governance and Private Foreign Investment: Some Puzzling
対外援助は、第 2 節で議論したガバナンスの議論にも関連する。
さらに、中国の対外援助がAIIB への参加に対して否定的となる議論
について考察してみよう。Easterly, W., R. Levine, and Roodman, D.
(2004)は、対外援助の経済発展への効果について否定的な見解を 示している19。インフラ援助の投融資の在り方によっては、汚職など の レントシー キング効果 を生み出し 、経済発展 を阻害する と考え ら れている。そのような角度からAIIB への参加に否定的となる国も存 在するかもしれない。河合正弘(2015)は、ガバナンスの観点から、 AIIB のインフラ事業における環境保全問題に対して疑念を表してい る20。このような立場から、ガバナンスの状態が相対的に中国を上回 る国は、AIIB への参加に否定的となるかもしれない。しかし、第 2 節で議論したようにガバナンス変数は、AIIB の参加確率には有意な 影響を及ぼさなかった。 表5.1 中国の対外 ODA と AIIB への参加(1)
East Asia & Pacific AIIB
中国からの 累積ODA 受入額 (百万ドル、2000~2012 年) Cambodia 参加 2,564.5 Indonesia 参加 1,582.8 Lao PDR 参加 6.3 Malaysia 参加 Mongolia 参加 Philippines 参加 2,551.1 Thailand 参加 424.6 Vietnam 参加 187.6 Fiji 不参加
19 Easterly, W., R. Levine, and Roodman, D., “Aid, Policies, and Growth: Comment.” American Economic Review, 94 (3), (2004).。
Kiribati 不参加 Marshall Islands 不参加 Micronesia, Fed. Sts. 不参加
Papua New Guinea 不参加 61.3
Samoa 不参加
Solomon Islands 不参加
Tonga 不参加
Tuvalu 不参加
Vanuatu 不参加
Europe & Central Asia AIIB
中国からの 累積ODA 受入額 (百万ドル、2000~2012 年) Azerbaijan 参加 Georgia 参加 Kazakhstan 参加 Kyrgyz Republic 参加 Tajikistan 参加 Turkey 参加 Uzbekistan 参加 Albania 不参加 Armenia 不参加 Belarus 不参加
Bosnia and Herzegovina 不参加
Bulgaria 不参加 Macedonia, FYR 不参加 Moldova 不参加 Turkmenistan 不参加 Ukraine 不参加 (出典)筆者作成。 表5.2 中国の対外 ODA と AIIB への参加(2)
Middle East & North Africa AIIB
中国からの 累積ODA 受入額 (百万ドル、2000~2012 年) Egypt, Arab Rep. 参加 756.7
Iran, Islamic Rep. 参加
Jordan 参加
Algeria 不参加 3.6
Iraq 不参加
Lebanon 不参加
Libya 不参加
Syrian Arab Republic 不参加
Tunisia 不参加 107.3
Yemen, Rep. 不参加
South Asia AIIB
中国からの 累積ODA 受入額 (百万ドル、2000~2012 年) Bangladesh 参加 831.7 India 参加 Maldives 参加 42.1 Nepal 参加 1,086.6 Pakistan 参加 Sri Lanka 参加 1,009.1 Afghanistan 不参加 412.9 Bhutan 不参加 (出典)筆者作成。 表5.3 中国の対外 ODA と AIIB への参加(3)
Latin America & Caribbean AIIB
中国からの 累積ODA 受入額 (百万ドル、2000~2012 年) Brazil 参加 Belize 不参加 Bolivia 不参加 196.7 Colombia 不参加 Costa Rica 不参加 225.1 Cuba 不参加 6,720.5 Dominica 不参加 91.6 Dominican Republic 不参加 Ecuador 不参加 El Salvador 不参加 Grenada 不参加 Guatemala 不参加 Guyana 不参加 Haiti 不参加 Honduras 不参加 Jamaica 不参加 389.8
Mexico 不参加
Nicaragua 不参加
Panama 不参加
Peru 不参加 8.8
St. Lucia 不参加 St. Vincent and the Grenadines 不参加
Suriname 不参加 204.9
(出典)筆者作成。
表5.4 中国の対外 ODA と AIIB への参加(4)
Sub-Saharan Africa AIIB
中国からの 累積ODA 受入額 (百万ドル、2000~2012 年) South Africa 参加 Benin 不参加 Botswana 不参加 90.2 Burkina Faso 不参加 Burundi 不参加 161.8 Cabo Verde 不参加 85.7 Cameroon 不参加 102.0
Central African Republic 不参加 80.3
Chad 不参加 44.4 Comoros 不参加 22.9 Congo, Rep. 不参加 1,467.4 Cote d’Ivoire 不参加 969.3 Eritrea 不参加 Ethiopia 不参加 3,053.2 Gabon 不参加 Gambia, The 不参加 Ghana 不参加 2,045.5 Guinea 不参加 161.3 Guinea-Bissau 不参加 86.5 Kenya 不参加 1,033.4 (出典)筆者作成。
表5.5 中国の対外 ODA と AIIB への参加(5)
Sub-Saharan Africa AIIB
中国からの 累積ODA 受入額 (百万ドル、2000~2012 年) Lesotho 不参加 133.9 Liberia 不参加 236.3 Madagascar 不参加 87.3 Malawi 不参加 121.1 Mauritania 不参加 316.7 Mozambique 不参加 1,177.5 Namibia 不参加 336.5 Niger 不参加 71.9 Nigeria 不参加 2,158.6 Rwanda 不参加 448.8
Sao Tome and Principe 不参加
Senegal 不参加 Sierra Leone 不参加 254.6 Sudan 不参加 234.6 Swaziland 不参加 Tanzania 不参加 2,010.0 Togo 不参加 122.4 Uganda 不参加 653.4 Zambia 不参加 685.5 Zimbabwe 不参加 2,950.2 (出典)筆者作成。 3 市場規模と地域主義 第2 節の重力モデルの説明変数として用いられた実質 GDP の政治 経済学的含意について議論したい。実質GDP は、人口規模と同様に、 市 場規模を表 す代理変数 と考えられ ている。市 場規模の大 きな国 に は 、周辺地域 に経済的関 係や政治的 影響力を強 化しようと するイ ン セ ンティブが 働きやすい 傾向にある と考えられ ている。こ のよう な 立場は、地域主義(Regionalism)という言葉で表現されている。中 国 は東アジア 地域や東南 アジア地域 に、インド は南アジア 地域に 、
ブ ラジルは南 アメリカ地 域に、ロシ アは旧ソ連 の諸国に経 済的‧政 治 的影響力を 維持‧拡大しようとする動きがあると考えられる。自 由 貿易協定へ の動きにも 、地域主義 的な側面が あり、アメ リカを 中
心とする北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement、
NAFTA)、ブラジルを中心とする南米共同市場(Mercosur、メルコス ール)などが例として挙げられる。AIIB への非参加国の中には、中 国が地域主義の立場からAIIB を利用して、東アジア地域や東南アジ ア 地域に経済 的‧政治的影響力を強めようとしていることに対して 懸念しているのかもしれない。逆に、自国の実質GDP の規模を背景 に、AIIB への影響力を強めようとすることから、AIIB への参加確率 が高まると考えられる。
四 おわりに
本稿では、AIIB への参加の意思決定について、経済的な要因を中 心にプロビット分析を用いて議論した。本稿の第 3 節の分析では、 以下のことが明らかにされた。第1 に、実質 GDP が高い国ほど、AIIB への参加確率が高まるということである。実質GDP は、AIIB への出 資 比率の代理 変数と考え られ、高い 出資比率を 望む国ほど 参加態 度 を高めると解釈できる。第2 に、対中輸出依存度が高い国ほど、AIIB へ の参加確率 が高まると いうことで ある。この ことは、関 税引き 下 げ や関税障壁 の撤廃の方 向に動く国 際経済にお ける経済的 近接性 と いう意味での地政学的リスクが AIIB の参加意思決定には重要な影 響を及ぼすと理解することができる。第3 に、中国との距離は、AIIB へ の参加確率 に対して統 計的に有意 ではないと いうことが 明らか に な った。すな わち、地理 的距離とい う意味での 地政学的リ スクは 、 AIIB の 参 加 意 思 決 定 に は 重 要 な 影 響 を 及 ぼ さ な い と い う こ と で あ る。第4 に、当該国と中国のガバナンスの差は、AIIB への参加確率に 対して統計 的に有意で はないとい うことが明 らかになっ た。ガ バ ナンスは、AIIB の経営や融資効率の代理変数と考えられるが、これ ら が 改 善 し て も AIIB へ の 参 加 確 率 が 高 ま ら な い と い う こ と で あ る。第5 に、中国からの ODA の有無を表す ODA ダミーの効果を議 論したが、中国からの ODA は、AIIB の参加意思決定には重要な影 響を及ぼさないということがわかった。ODA は、先兵効果やインフ ラ 効果を通じ て、受入国 への融資効 率を高める 。しかし、 これら の 効 果が受入国 の参加確率 を高めると の仮説は統 計的に支持 されな か った。第 6 に、地域的には、東アジア‧太平洋地域、欧州‧中央ア ジ ア地域、中 東‧北アフリカ地域の参加確率が、南北アメリカ大陸 に比べて高くなっているということがわかった。 第 3 節では、第 2 節で AIIB への参加要因として議論した、実質 GDP(市場規模)、距離、および、中国の ODA の分析の含意を政治 経済学の議論と関連付けて整理した。第 1 に、重力モデルの距離の 議 論と地政学 的リスクの 議論を関連 付けて議論 を行った。 地政学 的 リスクがないから欧州の主要国がAIIB に参加したという議論は、本 稿の第 2 節の議論からすると、支持されない。第 2 に、中国の対外 援助は、AIIB の参加意思決定に影響しないことを統計資料を用いて 明らかにした。また、AIIB は、経済学的には中国の貯蓄超過を反映 し たものであ ることを示 した。さら に、中国の 対外援助は 、レン ト シ ーキング効 果を生み出 し受入国の 経済発展を 阻害する可 能性に つ いて言及し、これがAIIB への参加を阻害する可能性について議論し た。第3 に、実質 GDP(市場規模)と地域主義の関連について議論 した。中国は、地域主義の立場からAIIB を利用して、東アジア地域 や 東南アジア 地域に経済 的‧政治的影響力を強めようとしていると 考えられている。これと同様の論理で、実質GDP(市場規模)が大 きい国は、AIIB に参加して、その運営や融資の決定に影響力を持と
うとしていると考えると、第 2 節の議論とつじつまが合うことを示 した。 今後の課題は、第 3 節で取り上げたような国際関係論の立場から の 議論を、よ り緻密な経 済理論とデ ータを用い た実証的分 析によ り 明 確にするこ とである。 紙面の都合 により、こ れらの分析 につい て は今後の課題としたい。 (寄 稿 :2016 年 5 月 9 日、再審:2016 年 6 月 30 日、採用:2016 年 7 月 6 日)
影響亞洲基礎建設投資銀行(
AIIB)
參與因素之探討
小
山 直 則
(淡江大學日本政經研究所助理教授)【摘要】
本 研 究 針 對 尋 求 加 入 國 在 決 定 是 否 參 加 亞 洲 基 礎 建 設 投 資 銀 行 (AIIB)時的影響因素,以經濟因素為中心用常態機率分析法(Probit Analysis)進行了探討,並歸納出了以下結論:第一、實質 GDP 越高 的國家,參加亞洲基礎建設投資銀行(AIIB)的機率也越高。第二、 對中國出口依存度越高的國家,參加亞洲基礎建設投資銀行(AIIB) 的 機率也越高 。第三、尋 求加入國與 中國之間的 地理距離, 對參加 率 的 影響並未達 到統計學上 認定的顯著 水準。第四 、尋求加入 國與中 國 間 的管治格差 ,對參加率 的影響並未 達到統計學 上顯著水準 。第五 、 中國的政府開發補助(ODA)對亞洲基礎建設投資銀行(AIIB)的參 加 機率的影響 並未達到統 計學上顯著 水準。第六 、就地區上 來檢視 , 可 得知東南亞 及太平洋地 區、歐洲及 中亞地區、 中東及北非 地區的 參 加機率,較南北美洲大陸為高。 關 鍵 字 : 亞 洲 基 礎 建 設 投 資 銀 行 (AIIB )、 參 與 因 素 ( Participation Factor)、橫斷面資料分析(Classical White-Noise Regression Models)、常態機率分析(Probit Analysis)Asian Infrastructure Investment Bank (AIIB):
Which Countries Participate?
Naonori Koyama
Assistant Professor of Graduate Institute of Japanese Political and Economic Studies, Tamkang University
【
Abstract】
In this paper, we discuss the decision making of participation in the Asian Infrastructure Investment Bank (AIIB) by focusing on economic factors using probit analysis. The following six factors were identified. First, countries with higher real GDP have a higher probability of participation in the AIIB. Second, countries with a higher degree of dependence on exports to China have a higher probability of participation in the AIIB. Third, there is no statistical correlation between the distance of a country from China and its probability of participation in the AIIB. Fourth, differences between the governance of a country and China have no statistical significance in the participation of that country in the AIIB. Fifth, there is no statistical significance in China’s ODA with respect to the probability of participation in the AIIB. Sixth, the probability of AIIB participation is higher for countries in the East Asia/Pacific, Europe/Central Asia, and the Middle East/North Africa regions compared to those in the Americas..
Keywords: AIIB (Asian Infrastructure Investment Bank), Participation
〈参考文献〉
上久保誠人「英国はなぜ西側で一番に AIIB 参加を決めたのか」東洋経済 ONLINE、 (2015)、(http://diamond.jp/articles/-/69480、2016 年 4 月 30 日閲覧)。
河合正弘「中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」 ビジョンもガバナンスもなき 実態」、WEDGE REPORT、(2015 年 1 月 6 日)、(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4566? page=3、2016 年 3 月 20 日閲覧)。
日 本 国 際 問 題 研 究 所 「 中 国 の 対 外 援 助 」(2012 )、( http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/ H23_China/H23_China_AllReports.pdf、2016 年 4 月 30 日閲覧)。
湊直信「G20 新興国のガバナンスと金融~アジインフラ投資銀行(AIIB)を例に~」 『News Letter 国際通貨研究所』No. 15、(2015)。
宗永健作「AIIB:アジアインフラ投資銀行設立をめぐる動き」『戦略研レポート』、 (2015)。
山口圭介「日米完敗!地政学で読み解く 新たなる中華覇権の衝撃」『週刊ダイヤモン ド』15/4/11 号、(2015)。
Asian Developing Bank, “Strategy 2020: Long-Term Strategic Framework of the Asian Development Bank, 2008-2020,” (http://www.adb.org/sites/default/files/institutional- document/32121/strategy2020-print.pdf, Accessed 30 April 2016), (2008).
Easterly, W., R. Levine, and Roodman, D., “Aid, Policies, and Growth: Comment.” American
Economic Review, 94 (3), (2004).
Hali, S. M., Shukui, T. and Iqbal, S., “One Belt and One Road: Impact on China-Pakistan Economic Corridor,” Strategic Studies, (2015).
Harms, P., Lutz M., “Aid, Governance and Private foreign Investment: Some Puzzling Finding for the 1990s,” Economic Journal, 116, (2006).
Johnson, P., “The “One Belt, One Road” Policy–History, Trends and Possibilities,” Confucius
Institute Symposium, (2015).
Kimura, H., Y. Todo, “Is Foreign Aid a Vanguard of Foreign Direct Investment? A Gravity- Equation Approach,” World Development, 38(4), (2010).
Nataraj, G. and Sekhani, R., “China’s One Belt One Road.” Economic & Political Weekly, No. 49, pp. 67-71, (2015).
Reisen, H., “Alternative Multilateral Development Banks and Global Financial Governance,”
International Organisations Research Journal, 10(2), pp.1-10, (2015a).
Reisen, H., “Will the AIIB and the NDB Help Reform Multilateral Development Banking?”
Global Policy, 6(3), pp. 297-304, (2015b).
Simeon, D. and Miner, D., eds., China’s Belt and Road Initiative: Motives, Scope, and