中国と国連の介入
─リビアを例として─
李 大 中
(淡江大学国際問題・戦略研究所助教)【要約】
本 論は過 去の 記録か ら国 際連合 (以 下、国 連) がリビ アに 介入し た 事例を改め て検証した 。その結論 として、中 国が国連安 全保障 理 事 会(以下、 安保理)の 関連決議で 採った投票 行動は意外 なもの で は なく、基本 的には従前 のやり方に 合致するも のであった ことを 明 ら かにしてい る。つまり 、国連によ る介入に保 留と疑義を 残す場 合 には、「意見が異なることの表明」と「不一致という破局の回避」と の 間のバラン スを取るた め、中国は 否決権を行 使せず、棄 権する 傾 向 がある。こ れはなるべ く変更の余 地を残し、 最良の利益 を守る の が 主な目的で ある。成功 か失敗かの 結果論のみ で、これを もって 後 の 参考基準と し、中国の 政策とその 成果を判断 するのは公 平妥当 と は 言 え な い 。 な ぜ な ら 、 も し カ ダ フ ィ 政 権 が 最 終 的 に 勝 利 す れ ば 、 「 リビア国民 評議会」と 「自由人民 軍」は永遠 に反乱組織 ・反乱 軍 となり、北大西洋条約機構(NATO)の制裁措置と軍事行動は継続の 道 を絶たれ、 敗北という 結末を迎え るばかりか 、いわゆる 人民自 身 の力を主軸とする、国際社会の人道介入の正当性、大国の責任分担、 後 方支援に回 る米国、国 連と地域的 組織による 完全な役割 分担な どメ ディアが最 近高く賞賛 する西側の 新たな介入 モデルは言 わずも が な である。つ まり、今日 の勝者と敗 者の境界線 は塗り替え られる の で ある。一方 、我々は、 ここから明 らかに国連 のリビア介 入事例 に お ける、中国 当局の政策 上の欠陥や 不足を察知 することも できる 。 形 勢と利益に 対する誤っ た判断に加 え、硬直化 した原則の 縛りと 混 乱 が過度に自 己を束縛し 、過去にみ られた柔軟 性や実務志 向の考 え 方が過去 7 カ月において見られなかったことは、一考に価するであ ろう。 キ ーワ ード: 中国、国連安 全保障理事 会(安保理)、リビア、リビ ア国民評議会
一 前言
本論の趣旨は、2011 年に勃発したリビアの民主化革命を例にとり、 中 国が国連の 介入に対し て採る立場 と政策を検 討するもの である 。 国 連 の 介 入 に 対 す る 中 国 の 公 式 見 解 は 、「 国 際 連 合 憲 章 ( Charter of
the United Nations)」のいう、内政不干渉、主権・独立の尊重、領土
保 全、武力不 行使を堅持 すべきであ るというも のであるが 、冷戦 の 終 結以来、基 本的にはよ り実務的で 柔軟性を持 ち、安保理 の関連 投 票 において、 意見の相違 を表すため には、否決 権を行使せ ずに棄 権 す る傾向にあ った。しか し、リビア の事例では 、立場を硬 直化さ せ 受 身の反応を 示した中国 には、自身 の利益にお いて損害を 被るほ ど 多くの批判と疑問が投げかけられた。これには主に 2 つの大きな原 因 があると考 えられる。 まず、リビ ア内戦の過 程おいて、 その形 勢 と 利益に対し て誤った判 断を下した こと、次に 、抽象化さ れた原 則 に こだわり過 ぎたことが あり、両者 の相互作用 の結果、西 側の大 国 と 比較して、 中国は外交 政策でポイ ントを稼ぐ ことができ なくな っ てしまったのである。本稿は 6 つの章から成り、前言「はじめに」 か ら始まり、 次に中国と 国連介入の 歴史を振り 返る。第三 に安保 理 で のリビア関 連決議にお ける中国当 局の立場、 第四に中国 当局と リ ビアの「リビア国民評議会」(National Transitional Council、NTC)間 の つながりを 論じ、第五 に事例の分 析と検討を 行った上で 、最後 の 章にて結論を述べる。
二 中国と国連の介入
1950 年代を振り返ると、当時国連の蚊帳の外にあった中国政府は 国 連の正当性 に強い疑念 を示し、国 連の機能と 役割を厳し く批判 し たばかりか、「国連憲章」第七章第 42 条(軍事的措置)による平和の強制(peace enforcement)、同第 41 条(非軍事的措置)による制裁 措 施 ( sanctions)1、 同 「( い わ ゆ る ) 第 六 章 半 」 の 平 和 維 持 活 動 (peacekeeping operations、PKOs)2など、国連の介入行為に対し、「正 義 と公正を大 義名分とし ているが、 米国を筆頭 とする西側 グルー プ に よる他国へ の内政干渉 の道具であ り、集団覇 権主義と帝 国主義 と 干渉主義を一身に負うものである」との疑問を呈していた3。例えば 国 連が朝鮮戦 争の期間に 採った、北 朝鮮に対す る軍事行動 は「平 和 の破壊」を構成する行いであるとの認定(安保理第 82 号決議)、北 朝 鮮の侵略に 抵抗するた め加盟国の 連合武力を 米国の統一 司令部 に 提供するよう促す「勧告」(安保理第 84 号決議)、北朝鮮が侵略者で
1 「国連憲章」第七章の第 41 条と第 42 条は同章の核心的内容である。理論上は国連 の集団的安全保障メカニズムの牙または武器となるもので、第 41 条は安保理は軍事 行動以外の、部分的な経済関係や外交往来の断絶、鉄道、海運、航空、郵便通信、 無線、その他連絡手段の全部または一部の断絶という強制措置を採ることができる としている。第 42 条は強制的な軍事行為に及ぶもので、前提として上述の非軍事的 制裁が、その効果としてふさわしくない、または発揮できると証明できないとき、 安保理は国連加盟国の陸海空軍の展開や封鎖、その他軍事行動などの武力の行使を 考慮し、国際社会の平和と秩序を維持または回復するというものである。
2 冷戦期において、国連の平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations、
UNPKOs)はスウェーデン人の第二代国連事務総長、ダグ・ハマーショルド(Dag Hammarskjöld)氏に「国連憲章」の第六章半(Charter Six-and-a-half)と称された。そ の意味するところは、憲章に記載された手段ではなく、明確な法的根拠もないもの の、その活動の性質と趣旨は、憲章第六章(紛争の平和的解決について)と第七章 (集団軍事的・非軍事的強制措置について)の中間のグレーゾーンに位置するとみ なすことができる。実際の運営と展開は、時間の流れによって徐々に熟し、当時東 西陣営の対抗という国際的な環境の制約のもとで、集団的安全保障メカニズムが十 分にその機能を発揮できない中、国際社会の平和と秩序を維持する代替的な手段と なり、活動は通常通り中立と同意、非武力の原則に従うものである。 3 周琪「中國對聯合國維和行動態度的變化及其原因」『中國人權』第 2 期、2010 年 5 月、http://www.humanrights.cn/cn/zt/qita/rqzz/2010/02/t20100504_582864.htm;趙磊「中 國對國連維持和平行動的態度」『外交評論』総第 90 期(2006 年 8 月)、頁 81~82。
あるとの認定(国連総会による 1951 年 2 月の第 498 号決議)、総会 で承認された北朝鮮への経済制裁(国連総会第 500 号決議)など各 対 応策に対し 、中国当局 は強烈な抗 議を行った だけでなく 、国連 に よ る 朝 鮮 戦 争 へ の 介 入 を 赤 裸 々 な 軍 事 侵 略 で あ る と 位 置 付 け た4。 1960 年代から中ソ同盟関係に変化が起こってからは、国連を米ソ両 陣 営の支配の 下にある「 絡まり合っ た利益」と みなし、こ の時期 に は 国連主導で 行われた国 際介入を「 表面的には 当該国家の 秩序や 統 一 、平和を守 るためとし ているが、 国連介入の 行為は本質 的に主 権 国 家への内政 干渉、また は世界各地 の反帝政、 反覇権主義 、民族 解 放闘争運動に対する血なまぐさい圧制に他ならない5」として、何度 も強く非難した。中国当局は 1971 年に国連に加盟した当初も、国連 の 介入行動に 対して模様 眺め、また は懐疑的な 態度を示し 、人員 の 提 供を拒むだ けでなく、 安保理の関 連投票への 参加を放棄 、財務 の 分担の意志も全くなかった6。この状況には 1980 年代初期に入って 初めて微妙な変化が起こった。中国は公式には、「国連憲章」の精神 に 合致する各 種の行動を 原則的に支 持するとう たっていた ものの 、 そ の前提とし て世界の平 和と安全を 維持し、内 政不干渉、 主権・ 独 立 の尊重、領 土保全、武 力不行使な どの原則を 遵守しなけ ればな ら な いとしてい た。しかし 冷戦の終結 以降、国連 介入に対す る中国 の 見解は、過去に比べ実務的で柔軟なものとなった7。この転換の原因
4 LeRoy Bennett and James Oliver, International Organizations: Principles and Issues,
Pearson Education, 7th ed., (NJ:, Upper Saddle River, 2002), pp. 163~167 を参照。
5 周琪、前掲資料;趙磊、前掲論文及び『建構和平:中国対国連外交之演進』(北京: 九州出版社、2007 年)、頁 21-37;華宏勛等譯『中國與世界』Elizabeth Economy、Michael Oksenberg 編(原著)、(北京:新華出版社、2000 年)、頁 48~53。 6 同上。 7 唐永勝「中國對聯合國維和機制之參與」王逸舟編『磨合中的建構:中國與國際組織 關係的多視角透視』(北京:中國發展出版社、2003 年)、頁 69~101。
は 、総合的な 国力の向上 に伴い、世 界における 中国の利益 ネット ワ ー クがより複 雑で綿密な ものとなり 、柔軟性と 実務面を重 視する こ とは、中国が責任を負う大国であるとの印象を形成するのに有利で、 あ る意味では 中国脅威論 の見方を和 らげる道す じでもあり 、大国 の 地 位を強固な ものとする と同時に地 域への影響 力を拡大す ること が できたからかもしれない。 安 保理で の投 票行動 から みると 、国 連の人 道的 な緊急 介入 、また は 主権国家に 対する人権 保護を理由 としたいか なる形態の 介入に も 中 国は不支持 の態度を採 り、これが 矛盾と衝突 の激化を招 くとの 見 方 を示してい た。ただ、 最近の安保 理における 中国の投票 行動を み る と、例え国 連の特定の 介入や制裁 行為に疑義 や反対の意 見を持 っ て いても、賛 成票を投じ る、または 棄権する傾 向にある一 方、否 決 権を行使することは少なく、「意見が異なることの表明」と「不一致 と いう破局の 回避」の双 方を考慮し ていること が分かる。 つまり 、 中国は主権国家への内政干渉反対や、政治の独立と領土保全の尊重、 国 際関係にお ける武力行 使反対など 数多くの原 則の旗を高 く振り か ざ しながらも 、実際の行 動において は、一定の 曖昧な空間 を残し て い る。立場上 、同意か反 対かはある けれども、 表面上は特 に一致 し た 基準はなく 、いくらか たどること のできる筋 道とは実務 面と柔 軟 性 の重視であ り、個々の 状況を見た 上での決定 を強調する もので あ る 。これは、 変更の余地 をなるべく 残し、硬直 化した先例 の樹立 を 避け、自身にとって最大の利益を守るのが主な目的である8。例えば、 国 連によるカ ンボジアや ソマリア、 東ティモー ルなどへの 介入行 為 に ついては、 主権の独立 および領土 保全の侵犯 や武力行使 の疑義 が
8 M. Taylor Fravel, “China’s Attitude toward UN Peacekeeping since the 1989,” Asian Survey,
存 在していた が、中国は 安保理で「 支持(賛成 票)」とい う一票 を 投じた9。旧ユーゴスラビアやコソボでの国連の介入行動については、 安保理の初志に反する、国連の伝統的な平和維持活動の原則に背く、 武力行使は国連憲章の趣旨と精神に違反する、内政の干渉に当たる、 主 権を侵す、 などさまざ まな理由で 、否決権を 行使せずに 投票を 棄 権し、意見が異なることを示した10。さらに、近年の対北朝鮮の決議
9 国連は 1992 年 2 月に国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)を設立、同国の平和と 紛争後の再建を趣旨とした。同機構の活動は基本的に現地 4 大政治勢力の同意を得 たが、中国は国連の介入に関して明らかに同国の主権侵害のリスクがあるとみなし た。ただ中国当局はこれを理由に阻止することなく、安保理での投票ではこれを支 持した。国連のソマリアでの平和維持による介入についての中国当局の処理の方法 もこれに類似していた。1992 年 12 月、安保理は第 794 号決議を採決、つまり多国籍 軍・統合任務部隊(UNITAF)という武力を派遣し一切の必要な措置を採り、ソマリ アの人道活動に有利な環境を形成するよう権利を委譲した。しかし武力行使に及ぶ にあたり、単純な平和維持介入という性質ではないため、中国当局はソマリアの政 治的独立を阻害する恐れがあるとみなしたが、最終的には決議を支持した。理由と しては人道の面からみて切迫した必要性があるというものであった。続いて 1993 年 3 月に安保理は第 814 号決議を採択、第二次国連ソマリア活動(UNOSOM II)の展 開により、これまでの多国籍軍の活動に代えると決定した。この任務は憲章第七章 の平和の強制にのっとり、武力の行使権を委譲したが、中国は賛成票を投じた。た だ、この任務が中国の国連介入の立場に変化を見せたという重要な先例を作るもの であってはならないと協調した。多国籍の東ティモール国際軍(INTERFET)、国連 東ティモール暫定行政機構(UNTAET)、国連東ティモール支援団(UNMISET)及び 東ティモール統合ミッション(UNMIT)など、安保理による東ティモールへの介入 に関し、多くが憲章第七章の平和の強制の要素により武力行使に及ぶ可能性があっ たが、中国は依然賛成票を投じた。Alan Carlson, “Helping to Keep the Peace (Albeit Reluctantly): China’s Recent Stance on Sovereignty and Multilateral Intervention,” Pacific
Affairs, Vol. 77, No. 1 (Spring 2004), pp. 20~21; M. Taylor Fravel, “China’s Attitude toward
UN Peacekeeping since the 1989,” Asian Survey, Vol. 36, No. 11 (November 1996), pp. 1113~1114 を参照。
10
旧ユーゴスラビアの事例では、中国は当初国連保護軍(UNPROFOR)の設置に賛成 していたが、現地の形勢に変化が起こると同時に、国連がこの武力に調整を行い、 安保理はその後相次いで採決された決議の中で、憲章第七章の平和の強制に及ぶた
(第 1685 号、第 1718 号、第 1874 号など)、核問題での対イラン制 裁措置に関する決議(第 1696 号、第 1737 号、第 1747 号、第 1803 号、第 1835 号など)について、中国当局はすべて支持する立場を採 っている。さらに、安保理の 2004 年~2008 年にかけてのスーダンの ダルフール情勢に関する 26 項目の決議(スーダン政府に平和維持を 要求する)に対し、中国の投じた結果はこれまで賛成 20 回、棄権 6 回となっている11。
三 安保理のリビア関連決議に対する中国当局の立場
2011 年初め、リビア国内では大規模な反政府闘争が勃発し、カダ フィ(Muammar Al-Qadhafi)政権は武力での鎮圧を試みた。2 月以降 の 国連による リビア情勢 への介入行 動は、中国 の政策に大 きな試 練 を突きつけた。ここでは安保理の関連決議 3 項目(第 1970 号決議、 第 1973 号決議、第 2009 号決議)に対する中国の立場と見解についめ、飛行禁止区域の設定や、運輸禁止区域の範囲拡大、人道救援活動のため必要な 安全保護の提供とに関わらず、中国当局は初志から乖離し国連の伝統的な平和維持 工作の原則に違反し、武力行使と国家主権の侵害の恐れがあるとみなし、最終的に 棄権(否決ではない)の形で、見解の相違を表明した。また、中国当局は 1990 年代 後半に国連に対し、コソボ問題における立場について、安保理が 1998 年 3 月に同地 情勢について初めて行った決議(第 1160 号決議)において、安保理の介入行為に疑 念を呈した。ただ、否決権は行使せず、安保理が当事国の要求と同意がない中で介 入を決定したことは、ユーゴスラビア連邦の領土保全と主権の独立を墓石、明らか に憲章の基本趣旨と精神に背くものだと声高に主張した。また中国は一般市民の安 全保障と人道主義の保護の名義による、いかなる他国への内政干渉にも反対すると あらためて述べたが、最終的には棄権し、安保理の決議に破局を招くことはなかっ た。Alan Carlson, “Helping to Keep the Peace (Albeit Reluctantly),” pp.19~20; M. Taylor Fravel, “China’s Attitude toward UN Peacekeeping since the 1989,” Asian Survey, Vol. 36, No. 11 (November 1996), pp. 1105~1106 参照。
11 Wuthnow Joel, “China and the Processes of Cooperation in UN Security Council
て、概要の紹介と分析を行うこととする。
1 第 1970 号決議(2011 年 2 月 26 日)
国連のほか、アラブ連盟(The League of Arab States)、アフリカ 連合(The African Union)、イスラム諸国会議機構(The Organization of the Islamic Conference)の総長、議長、事務局長は相次いで、リビ ア 政府による 深刻な人権 侵害行為を 非難した。 一般市民の 保護と い う第一の目的に基づき、国連総会(General Assembly)の補助機関で ある人権理事会(Human Rights Council)は 2011 年 2 月 25 日、独立 し た国際調査 委員会を緊 急に設立し 、リビア国 内で発生し た市民 の 迫害と国際人権法の違反の状況を調査すると決議した。2 月 26 日の 安保理第 1970 号決議により、国連は国連憲章第 7 章第 41 条に基き、 リ ビア政府に 人々の合法 的な要求を 直視し、暴 力の即刻停 止と人 権 お よび国際人 権法の尊重 と、国際人 権オンブズ マンや外国 人、人 道 支 援を目的と した関連物 資と人員の リビアへの 出入国にお ける安 全 の 確保を要求 した。この ほか、安保 理は決議を 受けて、安 保理メ ン バー国から成る制裁委員会(Sanctions Committee)を新たに設置し、 国 連のリビア に対する制 裁措置の監 督と取りま とめを主に 行うこ と とした。 安保理第 1970 号決議の具体的な制裁内容とは以下の 4 つに分けら れ る。第一に 、国連はリ ビア情勢が 波及する問 題を、ハー グの国 際 刑 事 裁 判 所 ( ICC Referral ) に 移 管 し 、 国 際 刑 事 裁 判 所 の 検 察 官 (Prosecutor of the International Criminal Court)に処理を委ね、検察 官は本決議の 2 カ月後およびその後 6 カ月ごとに、安保理に同決議 に則って行った活動を報告する12 。第二は資産の凍結(Asset Freeze)
12 国際刑事裁判所は 2011 年 6 月末に人道に対する罪の容疑で、ムアンマル・カダフィ
である。安保理の制裁委員会と第 1970 号決議の付帯条項二(Annex II)が認めるリビ アの個人( individuals)あるい は実体 ( entities)に つ いて、国連 加盟国は直 ちにその国 内の直接あ るいは間接 的に保 有 ま たは管理下 にある資金 やその他金 融・経済資 産を凍結し 、カダ フ ィ ファミリー の主要メン バーと仲間 の資産を凍 結しなけれ ばなら な い。第三は渡航禁止令(Travel Ban)で、すべての国連加盟国は必要 な措置を採り、同決議の付帯条項一(Annex I)が認める個人の出入 国を防止しなければならない。最後は武器輸出禁止(Arms Embargo) で 、リビアへ の武器また は弾薬、軍 用車両、軍 事・準軍事 装備、 関 連 部品など軍 備に関連す る物資の提 供、および 武装や傭兵 関連の 技 術 援助や訓練 、財務、そ の他の援助 の提供など すべての軍 事活動 や 軍 備に関連す る軍用物資 の提供、補 修、使用を 禁ずるもの とした 。 同 決議はすべ ての国連加 盟国、特に リビアの隣 国は、本国 の法律 と 国 際法の関連 規定の授権 のもと、信 頼に足る情 報があり、 その積 載 物 に国連が供 給や販売、 移転、輸出 を禁止する 軍備や関連 物資が あ る との合理的 な疑義があ った場合、 港湾や空港 、公海とい った自 国 の 領域におい て、リビア に出入りす る船舶と飛 行機を検査 し、禁 止 物 品を発見し たときには 、没収なら びに処理( 廃棄、使用 不可能 と す る、保管ま たは原産国 へ移管、ま たは目的国 以外の他国 で処理 ) す ることがで きる。また 、加盟国は 関連検査の 際と事後に おいて 、 直 ちに国連制 裁委員会に 検査の理由 の説明と実 際の執行状 況、そ の 後の処理の詳細などを書面で報告しなければならないことと し た13。
(Muammar Gaddafi)、と息子サイフ・アル・イスラム(Saif al-Islam)、リビア軍事 情報機関トップのアブダラ・アル・サヌーシ(Abdullah al-Senussi)を指名手配し、 国際刑事警察機構(Interpol)は国際逮捕手配書を発行した。
13 “Resolution 1970: Adopted by the Security Council at its 6491st Meeting”, United Nations
安保理の第 1970 号決議は理事国の全会一致で決議された。中国が こ のリビアへ の制裁行動 になぜ同意 したかにつ いては、李 保東国 連 常駐代表の安保理第 6491 回会合の発言で知ることができる。 中国は激動するリビア情勢を注意深く見守っており、即刻暴 力を停止し、これ以上の一般市民の流血と死傷を避け、社会の 安定と正常な秩序を回復し、対話など平和的な手段を通じ目の 前にある危機を解決することが当面の急務とみている。この過 程において、リビアに在住する各国民の安全と利益を確保しな け れ ば な ら な い 。 リ ビ ア の 極 め て 特 殊 な 現 在 の 状 況 と 、 ア ラ ブ・アフリカ諸国の関心と主張を鑑み、中国代表団は安保理で 先ごろ承認された第 1970(2011)号决議では賛成票を投じた14。 2 第 1973 号決議(2011 年 3 月 17 日) リ ビア政 府が 国連と 国際 社会の 強い 呼びか けに 応じず 、安 保理第 1970 号決議の要求を軽視していることから、体制による人権の侵害 と 武力による 鎮圧を止め させるため 、国連はさ らに多くの 措置で 対 応した。まず国連総会(General Assembly)は 2011 年 3 月 1 日、リ ビアの国連人権委員会(Human Rights Council)のメンバー資格を取 消すと決議した。また、国連のパン・ギムン(潘基文、Ban, Ki-moon) 事 務 総 長 は ヨ ル ダ ン の ア ブ ド ゥ ラ ・ モ ハ メ ド ・ ア ル ・ ハ テ ィ ブ (Abdel-Elah Mohamed Al-Khatib)元外相を国連事務総長リビア特使 (Secretary-General’s Special Envoy to Libya)に任命し、リビア問題 の処理と交渉での協力を求めた。
GEN/N11/245/58/PDF/N1124558.pdf?OpenElement を参照。
14
2011 年 3 月 17 日、リビア情勢の最新状況に応じ、安保理は第 1973 号 決議で、リ ビアにさら なる制裁を 行うことを 決定した。 同決議 は 安 保理の投票 で、英国、 フランス、 米国、レバ ノン、ボス ニア・ ヘ ル ツェゴビナ 、ガボン、 レバノン、 ナイジェリ ア、ポルト ガル、 南 アフリカによる賛成票 10 票を獲得した。3 月に議長国となっていた 中国にいたっては、ロシア、ドイツ、ブラジル、インドの 4 カ国と ともに棄権票を投じた。 上記のように、安保理による 1970 号決議により、制裁委員会を設 置 し、国連の リビアに対 する制裁関 連措置の監 督と取りま とめを 行 うと決めたが、新たに決議された第 1973 号決議では、パン事務総長 と安保理制裁委員会の間の交渉で、最大 8 名から成る専門家委員会 (Panel of Experts)を立ち上げ、当初の任期を 1 年とし、安保理制裁 委 員会の指導 の下で、関 連情報の収 集と分析、 評価、およ び提言 を 行い、制裁措置が円滑に行われるよう協力することとした15。 しかし第 1973 号の決議で最も重要なのは、リビア一般市民の保護 と いう第一の 目標の実現 に基き、国 連は先ごろ の制裁委員 会が執 行 し た武器輸出 禁止、渡航 禁止、資産 凍結など既 にある措置 内容に つ いて、国連憲章第 7 章の平和の強制に関連する条文に基き、必要な 調 整を行うか 、そもそも の制裁範囲 を拡大すべ きであると 多数の 安 保理事国が認めたことである16。例えば、新決議では渡航禁止(付帯 条 項一)と資 産凍結(付 帯条項二) のリストを 更新した。 また、 決 議されたばかりの 1973 号決議により、1970 号決議における武器輸出 禁止の執行(enforcement of the arms embargo)について、記述上の修
15 “Resolution 1973: Adopted by the Security Council at its 6498th Meeting”, United Nations
Documents (S/RES/1973), March 17, 2011, http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/ N11/268/39/PDF/N1126839.pdf?OpenElement を参照。
16
正を行った。すなわち「すべての自国名義または地域的組織による、 またはこれを通じた行動を採るすべての加盟国、特に同地域の国家」 は、信頼に値する情報に基き、積載物の中に国連第 1970 号決議で供 給 、販売、移 転、輸出が 禁止されて いる軍備に 関連する物 品があ る と 合理的に疑 われるとき 、検査をし なければな らず、また 国連加 盟 国 が具体的な 状況が合致 した場合の 一切の措置 を採れるよ う権限 を 委 譲し、上述 した任務の 執行を確保 しなければ ならないと した。 こ のほか、第 1973 号決議はすべての公海上で行動を採った加盟国と国 連 事務総長の 間で、緊密 な連携と協 力を維持す ること、加 盟国は 安 保 理の授権に 基き行う検 査について 、事務総長 と安保理制 裁委員 会 に直ちに通報しなければならないと求めている17 。 これまでの措置内容を更新したほか、第 1973 号決議は新たな制裁 内容も加えている。主に関連措置 2 項目で、一つは飛行禁止令(Ban on Flights)である。つまりすべての国家はリビア国内で登録された 航 空機、また はリビア国 民か企業が 保有または 運営する航 空機の 、 自 国領土内の 離着陸、領 土上の航行 について、 その飛行行 為が安 保 理 制裁委員会 の許可を得 る、または 緊急着陸の 性質を持た ない限 り は、すべて禁止しなければならないというものである18。二つ目は最 も論争を呼んだ、リビア上空に飛行禁止区域(no-fly zone)を設置す る というもの である。つ まり、人道 に基く目的 (医療用品 、食糧 、 人 道的事務に 関連する援 助行為)以 外の飛行に ついて、こ の空域 の い かなる航空 機の飛行も 禁じ、人々 の安全を保 護する。ま た、い か な る国連加盟 国も国連と アラブ連盟 の事務総長 に通報(行 動の要 求 と 行動の構想 を含む内容 )すること で、国連の 権限委譲を 受け、 自
17 同上。 18 同上。
身 でまたは地 域組織を通 じ、実際の 状況の必要 に応じて、 一切の 必 要な手段(all necessary means)を採り、飛行禁止区域で任務を執行 できる。また、上述の行動においては必ず国連およびアラブ連盟(The League of Arab States)と密接な連絡や提携、協力関係を保持し、国 連 もまた自国 名義または 地域組織に より行動を 採る加盟国 に対し 、 必 要な領空で の航行許可 を含め相互 を支援する ことを呼び かけた 。 つまり、安保理の第 1973 号決議における飛行禁止区域での任務に関 連 する授権内 容と精神は 、国連加盟 国または地 域組織の授 権と同 様 と みなし、武 力行使の方 式をもって 、一般市民 を守るとい う安保 理 の 第一の目標 を実現する というもの である。し かし、これ こそが 中 国 を含む数カ 国の安保理 メンバーが 態度を留保 する原因で あった 。 こ の授権内容 は平和的手 段の範疇を 超え、リビ アの主権の 独立と 領 土保全を破壊する恐れがあったのである19。 よって、先の 1970 号決議が安保理のメンバーにより全会一致で承 認されたのとは違い、第 1973 号決議は草案討議の過程においても、 明らかな意見の相違が生まれた。中国は最後まで 1973 号決議を支持 せず、ロシア当局と同じやり方で、つまり 1973 号決議の一部に強い 疑 義を示しな がらも常任 理事国の否 決権を行使 せず、同決 議が闇 に 葬られることのないようにした。中国は最終的に棄権票を投じたが、 その公式見解は李保東国連常駐代表の安保理第 6498 回会合での発言 で、一部糸口を見ることができる。内容は以下の 6 点にまとめられ る。まず、リビア政局の悪化の持続に対し、中国は高い関心を寄せ、 情 勢を速やか に緩和し、 一般市民に 対する暴力 的行為を制 止する よ う 安保理が必 要で適切な 行動を採る ことを支持 する。次に 、中国 は 安 保理が採る いかなる措 置も、必ず 「国連憲章 」と国際法 の関連 規
19 同上。
定 を遵守する と認識する 。特にリビ アの主権・ 独立と領土 保全を 尊 重 し、平和的 な方法で同 国の切迫し た危機を解 消しなけれ ばなら な い 。第三に、 中国は国際 社会による 武力の行使 と武力行使 に対す る 脅威に一貫して反対の立場を採り、安保理第 1973 号決議の討議の過 程 において、 中国代表は 一部の安保 理理事国に 具体的な問 題を提 示 し た。ただ遺 憾なのは、 これら疑義 に対して他 の安保理メ ンバー か ら は明確な回 答を得られ ず、このた め同決議の 一部の内容 に同意 す る に当たって の困難は深 刻なものと なった。第 四に、リビ アに飛 行 禁止区域を設けることについては、中国は 22 カ国から成るアラブ連 盟の決定と、アフリカ諸国およびアフリカ連合(The African Union) の 立場を重視 するもので ある。第五 に、中国は 国連事務総 長のリ ビ ア 特使とアフ リカ連合、 アラブ連盟 による外交 努力を支持 し、平 和 的 な道すじで リビア情勢 が安定化す ることを期 待する。最 後に、 上 述 の理由とリ ビアの現時 点での特殊 な情勢を総 合し、棄権 票を投 じ ると決定した20 。 安保理第 1973 号決議の承認後、米・英・仏など 13 カ国は直ちに 国 連のパン事 務総長に対 し、必要な 軍事措置を 採り、決議 にある リ ビア の一般市民 を保護する という第一 の目標を実 現するよう 訴えた 。 そして 1973 号決議が承認されてから二日目(3 月 19 日)、フランス が まず武力行 使を決定、 英・米両国 軍がこれに 続き、米作 戦名「 オ デッセイの夜明け作戦(Operation Odyssey Dawn)」とする合同作戦 を 展開、飛行 禁止区域を 確保し、当 時リビアの 最高指導者 であっ た カ ダフィ氏の 地上と空中 の軍事力を 抑えるため 、リビアに 対し空 中 と 巡航ミサイ ルの精確な 攻撃を行っ た。武力行 使が既成事 実とな っ
20 中華人民共和國常駐聯合國代表團「李保東大使在安理會通過利比亞局勢決議後解釋 性發言」2011 年 3 月 16 日、http://www.china-un.org/chn/hyyfy/t807542.htm。
たことを受け、2011 年 3 月の国連安保理の議長国である中国は、こ れ ら国家によ る軍事攻撃 に遺憾の意 を表明し、 中国は国際 問題に お け る武力の行 使に一貫し て反対し、 主権国家へ の明らかな 介入で あ ると指摘した。 米国は 3 月 31 日、軍事行動の指揮権を NATO に移管し、自身は後 方支援の役割に退くとともに、NATO の「ユニファイド・プロテク ター作戦(Operation Unified Protection)」が、英・米・仏三国が演 じた軍事的な役割を受け継いた。しかし 5 月以降、リビアの戦局は 徐 々に硬直化 した。戦闘 が始まった 当初は破竹 の勢いであ った反 乱 軍は、西部の重要都市でリビア第二の都市、ベンガジを本拠地とし、 カ ダフィ氏に 依然忠誠を 誓う地域や 都市を徐々 に攻略する 計画で あ ったが、国連の制裁と NATO の軍事行動という支援がありながら、 カ ダフィ氏に 忠誠を尽く す政府部隊 と外国人傭 兵の全面的 な反撃 の も と、反乱軍 の攻勢は当 初予期され たほど順調 ではなく、 リビア の 内戦は混沌とした段階に突入した。 この段階で、中国当局は安保理が第 1973 号決議により、加盟国へ の権限委譲による自国または地域的な国際組織(NATO)を通じ、飛 行 禁止区域の 設置の名の もとで、軍 事介入を事 実上行って いるこ と を暗に批判していた21。安保理が関連決議を承認した数カ月来、リビ ア の一般市民 を保護する という目標 を達成でき ないばかり か、現 地 の 内戦と人道 上の危機が より激化す るという形 勢に対して 強い憂 慮 を示しながら、安保理の第 1973 号決議において中国が提示した原則 をあらためて述べ、以下の 4 つの重点をさらに強調した。まず、安
21 中華人民共和國常駐聯合國代表團「常駐聯合國代表李保東在安理會聽取國際刑事法 院通報利比亞問題時的發言」2011 年 5 月 4 日、http://www.china-un.org/chn/hyyfy/ t820074.htm;同代表団「中國外交部副部長翟秀在關於利比亞問題上的發言」2011 年 6 月 16 日、http://www.china-un.org/chn/hyyfy/t831410.htm。
保 理の決議を 確実に実行 するために 、厳しい基 準を採択、 いかな る 加 盟国も自身 の行為を合 理化し、安 保理が授権 する内容以 外の行 動 を 執行するた めにみだり に決議条文 を拡大解釈 してはなら ない。 第 二 に、国際関 係の歴史か らみて、武 力行使は紛 争の有効な 解決と 平 和 の到来には つながらず 、却って衝 突と矛盾を 増幅させる もので あ る 。第三に、 各国が安保 理の先ごろ の決議の精 神を軽視す べきで は な く、最優先 する目標と は安保理の 主導と監督 のもと、無 条件の 全 面 的な停戦を 達成するこ とである。 ゆえに中国 はこれまで 通りア フ リ カ連合の関 連決議、つ まりできる 限り政治的 解決の可能 性を模 索 し 、平和的な 交渉の方法 で紛争を解 決するとい う方針を支 持する も の である。第 四に、リビ ア問題の処 理において は、国連安 保理は こ れ をけん引す る役割を演 じなければ ならず、特 に事務総長 の特使 が ポイントとなるのである22。 3 安保理第 2009 号決議(2011 年 9 月 16 日) 2011 年 8 月下旬、これまで数カ月にわたって膠着状態が続いてい た リビアでの 地上戦闘は 急転直下し 、重大な変 化の局面を 迎えた 。 NATO による空中攻撃や情報通信、特殊部隊の協力に加え、首都内 部 の反カダフ ィ勢力の合 流を得て、 反乱軍は大 きな抵抗に 遭うこ と な く 短 期 間 で ト リ ポ リ ( Tripoli)の制圧に成功した。また、カダフ ィ 氏に忠誠を 尽くす部隊 と外国人傭 兵部隊が次 々に敗退し 、反乱 軍 は 各主要都市 を制圧、つ まり国民評 議会の実質 支配下にあ る領土 が 拡 張を続け、 反乱軍の勝 報が伝わる につれ、リ ビア情勢は 大局が 固
22
“Security Council, Provisional Record of the 6528TH Meeting,” United Nations Official Website, May 4, 2011, http://www.securitycouncilreport.org/atf/cf/%7B65BFCF9B-6D27- 4E9C-8CD3-CF6E4FF96FF9%7D/Libya%20S%20PV%206528.pdf を参照。
ま ってきた。 しかし、反 乱軍はトリ ポリの奪取 に成功した ものの 、 カダフィ氏とその側近の残党は、トリポリから約 200 キロメートル 東 の シ ル テ( Sirte)に逃亡し、基盤である故郷で最後の悪あがきを 続けた。国際社会と世論は、42 年間政権の座にあったカダフィ政権 の統治も残り少なく、失脚も時間の問題と判断した。 8 月 30 日、安保理はパン国連総長からリビア情勢に関する最新報 告 を受けた。 中国の李保 東国連常駐 代表はこの 後の談話で 、中国 当 局のリビア問題処理に関する原則 4 点を発表した。第一に、リビア 情 勢の安定化 と秩序の回 復を速やか に行うこと であり、こ れは国 際 社 会とリビア の共通の利 益である。 第二に、各 国がリビア 市民の 自 主 性と意志を 尊重しなけ ればならず 、リビアの 前途は同国 民に決 定 権 があり、国 際社会はリ ビアの主権 ・独立・統 一・領土保 全を尊 重 し なければな らない。第 三に、リビ アは速やか に寛容で代 表性を 持 つ 政治和解の プロセスを 開始し、復 興と発展に 向かうべき である 。 第 四に、国際 社会はリビ アの各項目 の復興に支 援を提供す る上で 、 国 連憲章の趣 旨と原則に 合致し、安 保理がこの 過程で演じ る主導 的 で 決定的な役 割を尊重し 、国連の重 要な地位を 確認しなけ ればな ら ない23 。 9 月 16 日午後、国連総会は「リビア国民評議会」の地位と代表性 を 承認し、同 評議会の求 めに応じ、 安保理が全 会一致(中 国代表 を 含む)で第 2009 号決議を採決した。これは先ごろのリビア制裁措置 に 調 整 を 加 え た ほ か 、 任 期 3 カ 月 の 「 国 連 リ ビ ア 支 援 団 ( United
Nations Support Mission in Libya、UNSMIL)」の設立が主な内容とな
っている。9 月 19 日、パン国連事務総長は英外交官のイアン・マー
23 中華人民共和國常駐聯合國代表團「李保東大使在安理會審議報利比亞問題後對媒體
ティン氏を事務総長特別代表(Special Representative of the Secretary- General) として 任命し、同 支援団の主 導と取りま とめを要請 した。 また、フィンランド人のシャルパンティエ(Georg Charpentier)氏を 副 代表および 現地駐在交 渉担当官と して任命、 支援団のリ ビアに お ける第一線の指揮と交渉作業を要請した24。注目に値するのは、国連 リ ビア支援団 は、その性 質と位置付 けにおいて 、国連平和 維持活 動 局(Department of Peacekeeping Operations、DPKO)が執行する平和 維持活動(PKO)ではなく、政務局(Department of political Affairs、 DPA) の 管 轄 下 に あ る 政 治 的 団 体 で あ り 、 広 義 の 上 で は 国 連 平 和 活 動 ( peace operations)に属し、国連と国際社会が提供する人的・物 的 リソースを 統合し、戦 後のリビア の平和と( 政治的な) 転換作 業 を 指示・支援 するもので あったとい うことであ る。詳細な 業務範 囲 は以下の 6 項目となっている。第一に、リビア現地の公共安全と法 治を回復させる。第二に包容的な政治における和解と対話を進める。 第 三に国家の 機能を向上 させ、政府 関連部門を 強化する。 第四に 、 人 権の保護を 促進し、正 義の意義の 転換を図る 。第五に、 一切の 有 効 な行為を通 じて国家の 経済を再建 する。第六 に、国際社 会がリ ビ ア に提供する 各項目の援 助を調整し 、最大の効 率を発揮す ること で ある25。中国当局の立場と態度については、国連常駐代表が安保理第
24
“Secretary-General Appoints Ian Martin of United Kingdom Special Representative, Georg Charpentier of Finland Deputy Special Representative for Libya (Department of Public Information),” United Nations Official Website, September 19, 2011, http://www.un.org/ News/Press/docs//2011/sga1307.doc.htm を参照。
25
“Security Council, Provisional Record of the 6620th Meeting (Department of Public Information),” United Nations Official Website, September 16, 2011, http://www.security councilreport.org/atf/cf/%7B65BFCF9B-6D27-4E9C-8CD3-CF6E4FF96FF9%7D/Libya%20 S%20PV%206620.pdf.; “Department of Political Affairs: UNSMIL,” United Nations Official Website, http://www.un.org/wcm/content/site/undpa/main/activities_by_region/africa/libya.
2009 号決議草案の討議における発言で指摘している。つまり、リビ ア問題処理の 4 つの原則に合致するという前提のもと、中国は国連 によるリビア支援団の設立を支持するというものである。
四 中国当局と「国民評議会」
1978 年 8 月に中国とリビア代表が北京で国交樹立の共同声明に署 名して以来、両国の正式外交関係は 30 年以上に達した。今回のリビ ア 危機におい て、中国が 国連安保理 の決議で示 した立場の ほか、 中 国 当局と「リ ビア国民評 議会」の関 係、特に「 リビア国民 評議会 」 承 認に関する 問題は、中 国とリビア の政策を検 証する上で ポイン ト となる。「リビア国民評議会」は 2011 年 2 月 27 日に成立した、リビ ア の民主化革 命運動での 主要な政治 メカニズム である。自 由リビ ア 人民軍(The Free Libya Armed Forces)はその軍事組織であり、3 月 5 日、「リビア国民評議会」はリビア人民を代表する唯一の合法的な政 府であると宣言、3 月 23 日には執行委員会(Executive Board)を組 織し、マフムード・ジブリール(Mahmoud Jibril)氏が暫定総理に就 任した。 しかし 8 月下旬、首都トリポリが解放されてから、リビア情勢は 新 局面に入る 。このとき 周囲の多く は、中国に とって最も 難しい 問 題はこれまでの「是非」の認定ではなく、「いつ」勝利を目前とした 「リビア国民評議会」を承認するかであると見ていた。2011 年 9 月 5 日、中国外交部の姜瑜・報道官は、記者の質問が、中国と「リビア 国 民評議会」 の関係をど う見るかに 及んだとき 、それまで と同じ 型 通 りに、中国 は同評議会 の「地位と 作用の重要 性」を重視 すると 強 調した。しかし、「リビア国民評議会」を承認するかについては、公を参照。
式 見解を示さ ず、依然と して「水到 渠成(時期 が熟せば自 然に成 就 する)」と強調した26 。周囲が高い関心を寄せる 2 つの問題も、中国 当局のリビア国民評議会に対する態度と関係があった。その一つは、 カダフィ政権がリビアの内戦が激しさを増していた 7 月に、代表を 中 国へ派遣し 、軍需契約 の交渉を行 い内戦に必 要な軍備を 調達し よ う としたとメ ディアが報 道したもの である。し かし中国外 交部の 公 式 回答は、調 査によると カダフィ側 は確かに中 国当局の与 り知ら ぬ と ころで、関 連企業の各 個人に接触 したが、合 意の形成は されず 、 中 国当局も第 三国を通じ たカダフィ 陣営への武 器提供は行 ってい な いというものであった。また中国は国連の第 1970 号決議と第 1973 号 決議の関連 制裁内容を 遵守し、責 任ある大国 として、国 際社会 に 対 する義務を 尽くすこと を一貫して 重視してお り、厳格な 国内法 規 に より軍備輸 出を管理し 、間接か直 接かを問わ ず、中国の 関連企 業 と カダフィ陣 営の間には いかなる武 器取引の事 実もないと あらた め て述べた27。もう一つは最新のリビア情勢の進展に伴い、一部の国連 加盟国は安保理の制裁委員会に、リビア政府の海外における資産(少 なくとも 1,100 億米ドルを超えるとみられる)の凍結を解除し、「リ ビ ア国民評議 会」の自由 な運用に供 し、リビア の復興作業 に速や か に 取り組める よう希望し ているが、 安保理の討 議で評議会 のジブ リ ー ル暫定総理 が中国がこ れを阻止し ていると漏 らしたこと である 。 こ れに関し姜 瑜報道官は 、中国はこ れに反対し ておらず、 中国と 安 保 理の他のメ ンバーは、 リビア人民 の利益の保 護を起点と し、よ っ て 国連加盟国 が資産凍結 の解除を求 めると同時 に、より明 確な資 金
26 中華人民共和國外交部「2011 年 9 月 5 日外交部發言人姜瑜舉行例行記者會」 http://www.mfa.gov.cn/chn/gxh/tyb/fyrbt/jzhsl/t855515.htm.を参照。 27 同上。
用 と管理監督 メカニズム の情報を提 供し、資金 がカダフィ 陣営に 利 用 されないよ うにし、十 分な協議を 経て安保理 制裁委員会 は資産 凍 結 の解除に関 して既に合 意を形成し ており、論 争そのもの が存在 し ないと強調した28 。 9 月 13 日になって中国当局はついに、「リビア国民評議会」を承認 すると宣言した。周囲はこの転換の背後、特に「リビア国民評議会」 が 中国当局が 設けた前提 と条件を受 け入れたか どうかに高 い関心 を 寄 せたが、中 国の公式回 答は、リビ アは既に復 興の重要な 段階に 入 り 、人民の自 主選択の原 則を尊重し 、中国は同 評議会をリ ビアの 政 権当局およびリビア人民の代表と承認したというものであった29。外 交 部の姜瑜報 道官は、リ ビアの政権 当局は「一 つの中国」 という 原 則 を採択し、 これまで中 国とリビア の両国で署 名した各項 目の条 約 と 協定を確実 に履行して いくと保証 しており、 中国はこれ を対し 高 く賞賛するとした30。 9 月 16 日午前、アフリカ連合ではまだ多くの反対意見があったも のの、第 66 回国連総会の第二次全体会合において、賛成票 114 票、 反対票 17 票、棄権票 15 票という結果で、数日前に総会で承認され た信任状委員会(Credentials Committee)が提示した加盟国の信任状 決議草案を決議し、「リビア国民評議会」が国連でリビア人民と政府 を合法的に代表することに同意する結果となった31。9 月 13 日に「リ
28 同上。 29 中華人民共和國外交部「2011 年 9 月 13 日外交部發言人姜瑜舉行例行記者會」 http://www.mfa.gov.cn/chn/gxh/tyb/fyrbt/jzhsl/t858432.htmを参照。 30 同上。 31
“General Assembly, GA/11137: After Much Wrangling, General Assembly Seats National Transitional Council (Department of Public Information),” United Nations Official Website, http://www.un.org/News/Press/docs/2011/ga11137.doc.htmを参照。
ビ ア国民評議 会」の地位 と代表性が 承認され、 中国代表団 は全体 会 合の投票において、当然のように賛成票を投じた32 。 安保理第 2009 号決議が採択された 4 日ののち、国連は 9 月 20 日 に リビア問題 に関する幹 部会議を招 集し、リビ アの戦後復 興事務 と 和 平スケジュ ールについ て討議した 。これは「 リビア国民 評議会 」 が 初めてリビ ア人民と政 府の合法的 な代表とし て出席した 国連の 重 要 会議であり 、リーダー であるジブ リール暫定 総理は挨拶 で、出 席 し た各国と各 国際組織の 代表に対し 、リビアの 将来的な民 主と和 平 の ビジョンを 簡潔に説明 するととも に、国連と 国際社会が この期 間 に おいて差し 伸べた協力 と支持に大 きな謝意を 示した。ま た、中 国 の 楊潔篪外相が同会議に出席し、談話の中で最も注目されたのは 、 リ ビアの政治 情勢に対す る中国の最 新の立場を 確認、つま り「リ ビ ア 国民評議会 」をリビア の政権当局 およびリビ ア人民の代 表とし て 承 認し、同評 議会が国連 においてリ ビアの代表 権を行使す ること に つ いて祝辞を 述べたこと であった。 楊外相はま た、この機 会にこ れ まで 中国が何度 も言及した リビア問題 への政策的 な立場を説 明した 。 ま ず「平等の 尊重」とし て、リビア 当局と人民 が、国家の 利益と 国 の 情勢に関し 、自身によ る選択を下 したことを 尊重し、中 国当局 は 相 互の尊重と 平等互恵の 基礎のもと 、リビアと の二国間関 係を展 開
32 反対票を投じたのは、アンゴラ、ボリビア、コンゴ民主共和国、エクアドル、赤道 ギニア、ケニア、レソト、マラウイ、ナミビア、ニカラグア、南アフリカ、セント ビンセント・グレナディーン、スワジランド、タンザニア、ベネズエラ、ザンビア、 ジンバブエの 15 カ国で、多くがアフリカ連合のメンバー国。アフリカ連合は 9 月 20 日(国連がリビア問題の幹部会議を開催した際)に正式に声明を出し、「リビア国民 評議会」の合法的な地位を承認した。実際には、この投票の前、第 66 回国連総会の 第二次全体会合の中で、まず反対 102 票、賛成 22 票、棄権 12 票という結果で、否 決という項目が信任状委員会が提出した加盟国代表が信任状決議草案を受け入れる という臨時動議を妨害した。
するということである。次に、「包容団結」として、リビアの各勢力 が 「リビア国 民評議会」 の取りまと めとリーダ ーシップの もと、 包 容 的政治的和 解を進める ことを期待 すると強調 した。いわ ゆる包 容 と は利己心と 差別を禁じ 、国内の異 なる派閥や 地域、部族 間の多 元 的なニーズを包容することである。第三には、「心を合わせた協力」 の 重視であり 、中国はあ らゆる荒廃 から復興し ようとする リビア に お いて、国際 社会が、社 会と経済、 インフラな ど各分野で 再建を 進 め ることを支 持し、中国 もさらに多 くの人道的 援助に取り 組むこ と を約束するものである。第四には、「全体的な協調」を重視し、国連 が 再建の上で けん引役を 務めること を支持し、 国際社会は 安保理 第 2009 号決議に基き、国連の枠組みのもとで広く協力と協調をすすめ るべきであると表明した33。 10 月 21 日、カダフィ氏はシルテの戦闘で殺害され、「リビア国民 評 議会」が同 人の死亡を 認めた。カ ダフィ氏に 忠誠を尽く す残存 勢 力は反乱軍に粛清され、ジブリールは 2011 年 10 月に反体制運動の 拠 点、ベンガ ジで、リビ ア全土を解 放するとい う目標が完 全に実 現 し 、暫定政府 の総理を退 くと宣言し た。今後公 職には就か ないと 表 明 したジ ブリ ールは 、リ ビア は 30 日以内に暫定政権を組織し、90 日 以内に選挙 監督および 管理メカニ ズムを設立 し、関連の 選挙法 規 を制定、240 日以内に憲法制定と全国選挙を行うとしている。 そして「リビア国民評議会」が解散を宣言したのち、安保理は 2011 年 10 月 27 日に最新の決議を採択、10 月 31 日 11 時 59 分までに、リ ビ アに対し展 開されてい るすべての 軍事行動を 終結させ、 一般市 民
33 中華人民共和國常駐聯合國代表團「楊潔箎部長在利比亞高級別會議上的發言全文」 2011 年 9 月 20 日、http://www.china-un.org/chn/zgylhg/jjalh/alhrd/fz/lbly/t860700.htmを参 照。
の保護に関連する任務のため飛行禁止区域を設置(安保理第 1973 号 決議による委譲)すると決定した。つまり、2011 年 3 月から展開さ れていた NATO 主導による「ユニファイド・プロテクター作戦」は 期限内に一段落することになった34 。また、7 カ月近い任務期間にお いて、NATO と安保理決議によりこれに協力した国家は、リビア国 境内の重要な政治・軍事目標に対し、2 万 6,000 回近くの空爆を行っ た 旧リビア軍 の反攻が鎮 圧されたの ち、国連事 務総長リビ ア特使 は 安保理で行った報告で、リビアにおける国連の 2 つの重要な優先任 務 を強調した 。一つは国 政選挙(関 連メカニズ ム、法規、 選挙事 務 の 確立と準備 )であり、 もう一つは 公共の安全 (国家安全 部門の 強 化 、内戦時に 使われた武 器装備の回 収と管理) である。ま た中国 外 交部は、王旺生・駐リビア大使が 10 月 28 日にトリポリに戻り、中 国とリビアの二国間関係が新たな軌跡を描くと宣言した。
五 事例の検討
原 則と立 場な どを公 式に 表明す る以 外に、 実質 的な議 題の 上で、 中 国はどのよ うに国連の リビア介入 に関する問 題を取り扱 い、処 理 し ているので あろうか。 より重要と なってくる と考えられ る「一 般 的な制裁と和平工作」、「飛行禁止区域と武力行使」、「承認」の 3 つ の部分に分けそれぞれ説明を加える。 1 一般的な制裁と和平工作 第 四節で 述べ たよう に、 リビア 問題 におけ る中 国の政 策的 立場と34
“Libya: Security Council Ends Mandate for International Military Operations (Department of
Public Information),” United Nations Official Website, October 23, 2011, http://www.un.org/ apps/news/story.asp?NewsID=40221&Cr=libya&Cr1 を参照。
実際の行為を総体的に見てみる。安保理が 2 月 26 日に国連憲章第 41 条に基き下した決議、つまり第 1970 号決議において、中国の国連常 駐 代表団は、 草案の討議 過程と最終 投票とに関 わらず、す べての 決 議を支持している。3 月の 1973 号決議は、安保理によるリビア懲罰 の各制裁措置(主に第 1970 号決議内容の調整と拡大)であり、飛行 禁 止区域の設 置と関連規 定、軍事介 入に伴う懸 念以外につ いては 、 中国当局は基本的に協力的な態度と行為を示している。例えば、2011 年 6 月、中国の国連常駐代表団は安保理制裁委員会の議長に対し、 中 国当局が渡 航禁止令や 武器輸出禁 止、疑いの ある船舶と 航空機 の 積 載貨物に対 する検査と 資産凍結に 関する詳細 と進展など 、安保 理 第 1970 号決議の制裁措置の執行状況を明確に列挙した報告を提出し て いる。ただ 文書の末尾 ではあるが 、すべての 制裁措置は 手段に 過 ぎ ず、最終目 的ではない ことを各国 がしっかり 念頭に置き 、国連 の 急 務は依然と して、無条 件の停戦と 人権保護、 殺戮の防止 、一般 市 民 の被害の回 避を迅速に 実現するこ とであり、 各方面が積 極的に 和 平 を 実 現 す る 解 決 法 を 模 索 し な け れ ば な ら な い と 強 調 し た35。 2011 年 9 月 に 安 保 理 の 権 利 委 譲 に よ り 成 立 し た 「 国 連 リ ビ ア 支 援 団 (UNSMIL)」については、任務の性質と位置付けが明確で単純(平 和 的な復興を 主軸とした 政治的組織 )であり、 武力の行使 は行わ な い ことから、 中国は留保 することな くこの設立 と業務遂行 を支持 し た。
35 “Note Verbale Dated 29 June 2011 from the Permanent Mission of China to the United
Nations Addressed to the Chair of the Committee” United Nations Documents (S/AC.52/2011/27), July 7, 2011, http://www.un.org/zh/documents/view_doc.asp?symbol= S/AC.52/2011/27&referer=http://www.google.com.tw/url?sa=t&Lang=Eを参照。
2 飛行禁止区域と武力行使 2011 年 3 月の第 1973 号決議草案の討議と採決のプロセスにおいて、 事 実上、中国 当局は孤立 してはいな かった。盟 友として常 任理事 国 のロシアのほか、ブラジルとインドという非常任理事国 2 カ国が棄 権票を投じた。また 4 月 14 日に中国が海南省三亜市で開いた第 3 回 BRICs 首脳 会議では、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフ リ カの 5 カ国のリーダーが共同声明を発表、国連が加盟国に自身ある いは地域組織(NATO)への権限委譲を通じ、飛行禁止区域の確立の 名 のもとに、 リビアに空 爆を行うこ とに反対で あるとあら ためて 表 明し、平和的手段でリビア危機を解決するよう要求した36。上述の国 連 のリビアに 対する制裁 措置と和平 工作を比較 し、飛行禁 止区域 と こ れに関連す る決議は、 明らかに軍 事行動に及 ぶため、国 家の主 権 に 対する侵害 と、武力行 使の懸念の もと、中国 は棄権票の 投票を 選 択した。 3 承認 上述したように、中国は 2011 年 9 月 13 日に「リビア国民評議会」 を承認すると宣言し、国連常駐代表団は同月 16 日に国連総会の全体 会合における歴史的な投票において、賛成票を投じ、「リビア国民評 議 会」がリビ アの政府と 人民を代表 するという 合法性と妥 当性を 持 す ることを支 持した。こ の決定はア フリカ連合 が公式に同 評議会 の 承認を宣言した時期(9 月 20 日)より早かった。しかし、中国は安 保理常任理事国 5 カ国では最後に同評議会を承認したメンバーであ
36
“Leaders at BRICS Summit Speak Out Against Airstrikes in Libya,” CNN World, April 14, 2011, http://articles.cnn.com/2011-04-14/world/china.brics.summit_1_libya-india-and-china- chinese-president-hu-jintao?_s=PM:WORLD.
ることは争えない事実である。1973 号決議案では中国当局と似た理 由で同じように棄権票を投じたロシアですら、9 月 1 日に同評議会の 合法性を承認している。BRICs の他国の承認状況は、インドが同 17 日、南アフリカが 20 日となっている(ブラジルは正式には承認して いないが、同 16 日の国連総会における投票で、同評議会の合法的な 地位を承認)。 しかしながら、世界で最初に同評議会を承認したフランス(3 月 1 日)、米国(7 月 15 日)、英国(7 月 27 日)などその他の大国と地域 の 覇権国と比 べ、中国の 同評議会へ の承認に関 する態度は 明らか に 消 極的であっ た。これに 比較し、仏 ・英などの 各国がリビ ア紛争 の 勃 発以来、政 治的・経済 的な局面で 主導する姿 勢を見せ、 特に国 連 が 飛行禁止区 域を設定す る任務にお いて、率先 してリビア を攻撃 し た フランスは 外交の上で さらに積極 的であった 。フランス は自ら の 画 策 と 推 進 の も と 、 9 月 1 日 に パ リ で 「 リ ビ ア ・ フ レ ン ズ 会 合 」 (Friends of Libya)と銘打った支援国際会議を開催した。国連や地域 組織および 60 カ国近い代表が集まり、リビアの復興に関する議題を 検 討、リビア の海外資産 の凍結解除 の是非も話 し合われた 。中国 当 局はサルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領の北京訪問による全力の要請 のもと、外交部の翟隽・外務次官が出席した。しかし注目すべきは、 8 月 31 日の外交部記者会見では、馬朝旭・報道官が特に、中国は今 回 「正式メン バー」とし てでなく「 オブザーバ ー」として 会議に 出 席 するのであ ると強調し たことであ る。これに 関し中国の 秦鴻・ 前 駐 リビア大使 は、これは 中国政府の リビア新政 権に対する 「非能 動 的 」な外交立 場を示すも のであるが 、結果とし ては重要性 や影響 力 と を問わず、 中国の役割 はホスト国 のフランス と並べて論 じるこ と
はできないと説明した37 。 2011 年 9 月以前には、中国当局の「リビア国民評議会」に対する 支 持は控えめ で留保した ものであっ た。このた め周囲には 煮え切 ら な い態度と映 り、何とは なしにカダ フィ政権に 肩入れして いるの で は ないかとす ら思わせ、 他の大国が 態度と手法 を明確にし ている の と は、際立っ た落差を感 じさせた。 さらにリビ ア政府の資 産凍結 の 解 除に関する 議論、カダ フィ政権が 戦時中に中 国に軍備調 達しよ う と したという 伝聞など、 リビア国民 評議会には これらの些 事が念 頭 に 残ったこと であろう。 このため、 内戦の過程 において、 反カダ フ ィ陣営の手中にあったアラビアン・ガルフ・オイル(Arabian Gulf Oil Company、AGOCO)は、将来的な石油の利益分配(契約)で中国と ロ シア当局に 懲罰的措置 を採ろうと し、これに 中国が不満 を示し た ことは類推に難くない38。
六 結論
安 保理常 任理 事国と して の中国 は、 一貫し てユ ニラテ ラリ ズムあ る いは超大国 が国際問題 を牛耳るこ とに反対し ており、国 連は世 界 で 最も重要な 多国間メカ ニズムであ るため、中 国の外交の 展開に と っ て重要な意 義と作用が あるばかり か、中国の 国益と立場 、訴求 に 合 致するもの であるとの 認識を示し ている。中 国の総合的 な国力 が 増 大を続け、 世界的な利 益ネットワ ークが複雑 で綿密とな る中、 理 論 的には国連 での事務を うまく処理 することに よって、中 国の国 益37 「中國赴利比亞之友會議 在利商機需正確評估」『中國新聞網』2011 年 9 月 1 日、 http://www.chinanews.com/gj/2011/09-01/3300845.shtml. 38
Brian Spegele, “Gadhafi Ties Weigh on China: Beijing’s Spotty Support for Rebels, Links to Regime Cloud Pursuit of Contracts,” The Wall Street Journal, September 6, 2011, http://online.wsj.com/article/SB10001424053111904900904576552161805792434.html.
の 拡大を確保 できるだけ でなく、大 国としての 地位固めと 地域的 な 影 響力を拡大 することが できる。こ れはまた、 中国が国連 のリビ ア 関 連決議を説 明する発言 において、 安保理の重 要性と主導 的な地 位 に 言及する理 由でもある 。ベイツ・ ジル氏とジ ェームズ・ レィリ ー 氏 は 「 Sovereignty, Intervention and Peacekeeping: The View from
Beijing(主権、介入、平和維持:中国当局の観点)」と題した文章で、 中 国当局の国 連介入行為 に対する立 場について 、踏み込ん だ分析 を 行 っている。 中国の国連 への参与は その歴史と 先天的な制 約(主 権 の 完全性と政 治の独立に 対するこだ わりと特別 な思い入れ )があ る も のの、明ら かに過去よ りも柔軟性 と実務的な 傾向を見せ ている 。 し かし基本的 に、中国の 国連介入に 対する態度 は、やはり 個別の 案 件 によって決 まるもので 、なるべく 政策上の変 更の余地を 留保し 、 自身の最大利益を保護するものである39。 し かしな がら 、リビ アの 国連介 入事 例にお いて 、中国 の政 策には 確実に盲点があった。9 月 16 日付 Time 誌に掲載されたメキシコの カ スタニェダ 前外相執筆 による文章 では、この 事例の勝者 と敗者 を 分 析している 。前者はリ ビアの人民 のほか、主 に仏・英・ 米など 西 側諸国と国連、国際刑事裁判所やアラブ連盟などの国際組織である。 中 国とロシア はリビアの 民主化革命 において、 カダフィ氏 の親族 と 政権以外で最も損害を被った 2 大敗者であると論じた。その理由は、 多 国による介 入の道のり で、中国と ロシアの当 局はカダフ ィ氏へ の 同情とその他の配慮のもと、武力行使(飛行禁止区域の設置を含む) の 支持と、リ ビアの人々 の安全と人 権の保護を 実現する国 連の重 要 な決議にやぶさかであったということである。その他の敗者として、
39 Bates Gill and James Reilly, “Sovereignty, Intervention and Peacekeeping: The View from
問 題視するに 値しないキ ューバとニ カラグア、 ベネズエラ など、 そ してインド、ブラジル、南アフリカなど他の BRICs がいると述べた40 。 中 国当局 は立 場と原 則に 過度に こだ わった ため 、政策 は硬 直化し 柔 軟性を欠い たことによ り、多くの 疑義を持た れた。リビ アの選 挙 区 の動向や政 治情勢の予 測、国際社 会の主流の 風向きの判 断とに 関 わ らず、すべ て受身で半 歩出遅れ、 大国の姿勢 と主導性は ひとか け ら も見えず、 中国当局の 外交におけ る挫折であ ると言う事 ができ る と批判された。さらに分析を進めると、筆者はこの現象を 2 つの要 素 の連動とこ れらが相互 に強め合っ たものと説 明すること ができ る と 考える。ま ず、形勢と 利益に対す る誤った判 断に基くも ので、 こ れ は主に中国 当局がリビ アで長年に わたり培っ てきた成果 がよう や く 根付いたこ とを考慮し たものであ る。例えば 、中国商務 部が公 開 す る資料によ ると、現在 中国のリビ アにおける 商業上の利 益は投 資 によるものでなく、工事の受注によるもので、主に 70 数社の中国系 企業が現地で 50 項目以上の計画に取り組んでいる。鉄道から石油、 通信、住宅などの分野に及び、総額 250 億元以上、工事関連で派遣 されている人員は 3 万人に達する規模となっている41。よって、紛争 の 初期と中期 において、 中国は状況 を把握でき ないまま慌 ててバ ラ ンスを取ろうと試み、30 数年の付き合いのあるカダフィ政権を捨て る という選択 の誤りによ るリスクを 逃れようと した。これ は中国 が なぜ安保理第 1973 号決議で棄権票を投じたか、さらに一定の長い期 間において、「我々はリビア人民の自由な決定を尊重する」という消 極 的な公式見 解を示すに 過ぎなかっ たかを説明 することが できる 。
40 Jorge Castañeda, “Losers in Libya,” The Time Magazine (Online), September 16, 2011,
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,2093345,00.html?xid=rss-mostpopular.
41 「 商務部: 中國 在利比亞 沒有 直接投資 」『中 國新聞網 』 2011 年 8 月 24 日 、
そ して形勢が 不可逆であ ると判断し て初めて、 土壇場で「 リビア 国 民 評議会」の 承認を選択 し、リビア における将 来的な政治 的・経 済 的 な利益が損 害を受ける ことを防い だ。次に、 原則的な角 度から み る と、中国は 国際介入と いう問題に 対し一貫し て慎重かつ 保守的 で あり 、慣例的に 「内政干渉 には反対 」、「主 権の独 立の保護と 領土 の 保全 」、「憲章の精 神を尊重 」、「武力行使 の反対」と いった抽象 的な 原 則を強調し 、過去の一 部の事例で は時には原 則では自身 の防衛 は 可 能であると いう立場を 重視しなが ら、対外的 にはこれを 政策決 定 の 依拠とする ことができ るが、リビ アの事例で は、過度に 原則に こ だ わった結果 、形勢と利 益の面での 誤った判断 をより深刻 なもの と してしまった。 こ れまで の記 録に照 らし 合わせ 、リ ビアと いう 最新の 事例 を検討 す ると、中国 の安保理に おける関連 決議での投 票行為は全 く意外 な も のではなく 、基本的に は本論文の 第二節の分 析に合致す る。つ ま り 特定の国連 の介入工作 に疑義と留 保がある場 合、中国は 否決権 で は なく棄権を 行使する傾 向にあり、 これによっ て「意見が 異なる こ と の表明」と 「結果の不 一致による 破局」の間 でバランス を取っ て い るのである 。その目的 はできる限 り変更の余 地を留保し 、最大 の 利益を守ることである。 確 かに、 勝敗 のみで 、結 果論を 唯一 の標準 とし て、中 国当 局の政 策 決定とそれ が成功した か失敗した かを論じる のは不当で ある。 な ぜなら、最終的にカダフィ側が勝利すれば、「リビア国民評議会」と 「 自由人民軍 」は永遠に 反政府組織 および反乱 軍となるば かりか 、 国連と NATO の制裁措置と軍事行動も継続のすべなく敗北という結 末 を迎える。 さらにいわ ゆる人民自 身の力を主 軸とした、 国際社 会 の 人道介入の 正当性、大 国の責任分 担、後方支 援に回る米 国、国 連 と 地域的組織 の完全な役 割分担など メディアが 最近高く賞 賛する 西