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中国共産党中央の権力構造の分析

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中国共産党中央の権力構造の分析

坪 田 敏 孝

(財団法人未来工学研究所主任研究員)

【要約】

中国共産党中央において、重要な政策、人事に関する決定権は、 政治局常務委員会という機関に帰属し、その権限、すなわち最高領 導権は政治局常務委員によって共有されている。16 回党大会におけ る党規約の改正で、重大な問題については、「会議で決定する」と いう規則が盛り込まれるなど、集団領導の制度が強化されている。 他方、常務委員の間での担当分業の制度によって、「重大な問題」に 該当しない問題、業務執行上の問題に関する最終決定の権限は、各 常 務 委 員 に よ っ て 分 有 さ れ て い る 。 総 書 記 の 党 規 約 に お け る 権 限 は、他の常務委員とほぼ同一であるが、常務委員会の会議の議題の 選 定 も 含 め 、 会 議 の 準 備 作 業 を 行 う 中 央 書 記 処 の 業 務 を 主 宰 し た り、重要機関のトップを複数ポスト兼ねることで、実質的に他の常 務委員以上の権力を獲得している。 また、常務委員の間では、①政治局入り、常務委員会入りの早晩 という「経歴」、②担当ポストによって得られる強制装置力、資源 の大小などによって形成されるそれぞれ権威に基づいた、常務委員 会内部に権威の階層がつくられている。こうした階層の上層の常務 委 員 が 、 政 策 の 決 定 な ど 権 力 行 使 の 中 心 的 役 割 を 果 た す こ と が 多

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い。このような権力の構造は、常務委員会の運営を平常継続的に安 定させる効果をもたらしている。また、党内には、様々な民主的な 政策や人事の決定を行う手続きが講じられている。こうした「制度」 の作用により、決定の内容は、正当性(legitimacy)が党内では担保 され、政策や人事については、常務委員などの間で、不一致の深刻 化、政治的対立が生じる可能性は低くなっていると推察される。こ のような党中央の権力構造の安定という制度的条件は、党中央の政 策の実施貫徹において効果を発揮している。

【キーワード】

中国共産党中央、集団領導、総書記、権力構造、制度化

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一 はじめに

中国では、2007 年 10 月 15 日から 22 日、政権担当政党である中国 共産党が第17 回全国代表大会(以下、第 17 回党大会)および第 17 期中央委員会第1 回全体会議(以下、第 17 期 1 中全会)を開催し、 中央委員会、そして中央政治局と政治局常務委員会のメンバーを決 定した。中央委員会総書記には、胡錦濤が再任された。また、2008 年3 月 5 日から 17 日、国家の最高権力機関で、国会に相当する全国 人民代表大会(全人代)の第11 期第 1 回全体会議が開催され、全人 代の常務委員会委員長に呉邦国、最高行政機関である国務院の総理 に温家宝がそれぞれ再任された。 本文は、既公開発表の資料を活用し、中国の政権党であり、憲法 前文でも、国家建設における領導1(権)が明記されている中国共産 党における、重大政策、高層幹部人事の決定権限など、最高権力の 帰属とその行使に伴う関係者の関与の構造を分析する。こうして得 られた理解を通じて、共産党中央の権力構造の安定度及び政策策定 能力を分析する。

二 最高領導権の帰属とその運用

中国共産党の最高領導権は、党大会、中央委員会、政治局、政治 局常務委員会などに帰属する。同党の規約では、「最高領導機関は、 党の全国代表大会(党大会)と同大会が選出する中央委員会」と規 定されている(第10 条第 1 項)。しかし、党大会は、5 年に 1 回の間

1 本文では、中国語の「領導」は、そのまま領導と訳す。中国共産党が使用する「領 導」という用語は、(絶対的な)指揮命令及び服従を強いる権限を含む意味で使用さ れている。

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隔 で 開 催 さ れ 、 通 常 は 開 か れ て い な い2。 ま た 、 党 規 約 で は 、「党大 会の閉会期間中、中央委員会は、党の全部の活動を領導する」(第21 条第 3 項)とされているが、この中央委員会も、全体会議が開催さ れるのは、1 年にほぼ 1 回程度の頻度であり、1 回の中央委員会全体 会議の開催期間は数日間である。 中央委員会が開かれていない期間に、その権限を代行するのは、 中央政治局(以下、政治局)とその常務委員会である(党規約第22 条第2 項)。このように、平常時に最高領導権を有して、それを行使 しているのは、政治局とその常務委員会という機関である。総書記 を含む政治局常務委員会委員(以下、常務委員)、政治局委員は、こ の最高領導権を集団で共有し、行使していることになる。こうした ことから、その領導方式は集団領導(collective leadership)と呼称さ れている。 2002 年 11 月の第 16 回党大会では、党の規約が改正され、この集 団領導について、新たな規則が盛り込まれている。その内容は、「重 大な問題3に属するものはすべて、“集団領導、民主集中、個別協議、 会議決定”の原則にしたがって、党の委員会で集団によって討論し、 決定しなければならない」(第10 条第 5 項)という領導機関の決定 方式に関するもので、この内容は、江沢民総書記(当時)によって 1997 年に初めて述べられていた4。このように、領導権の行使につい

2 第 17 回大会は、2007 年の 10 月 15 日から 21 日までの 7 日間のみ開催されている。 3 「重大な問題」の定義については不明。ただし、「中国共産党党員権利保障条例」第 20 条第 2 項では、「重大な問題」について①党の路線、方針、政策に関わる事項、② 重大活動任務の措置、③幹部管理規定で集団討論決定が定められた幹部の推薦、任 免、異動、賞罰、④人民群衆の生産、生活など切実な利益に関わる問題、⑤新党員 の発展、⑥上級党組織が集団決定すると定めた問題、などと定められている。 4 規約の第16 条は「重要な問題は表決で決定する」としているが、同原則は、「重大 な問題」という用語を使用。同原則は、江沢民が1997 年 8 月 17 日、中央軍事委員

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ては、「重大な問題」に関するものは、領導機関のうち、一人や少 数者で決めるのではなく、同機関の構成員が全員、あるいは規定の 人員が参加する会議で決定しなければならないとされた。この規則 の効果については、決定権が共有されるようになり、議事決定の速 度が下がる可能性があるというマイナス面がある一方、各級党委員 会とその常務委員会が一体となり、活動を行うことで、全構成員の 業務能力や士気などその資質が向上すること、組織の凝集力が高ま ることがプラス面として挙げられる。江沢民は、上記原則を提起し た際に、同時に自らが鄧小平に称された領導集団の「核心」という 位置づけについて、「核心は闘争の中で形成されるもので、誰かが 核心になろうと思っても永遠になれるものではない。これは歴史の 法則である」と述べ、今後の「核心」の形成を否定した上で、「“集 団領導、民主集中、個別協議、会議決定”という、我が党の重要な歴 史経験を継承し、発揚しなければならない」と述べている5 中国共産党は、1987 年 11 月の第 13 回党大会以来、一貫して、そ の組織運営について、中央および地方の各級党委員会における常務 委員会による集団領導、そして、党外機関などへの領導について、 各級党委員会の常務委員会による同級の人代、政府、政協、群衆団 体への領導実施、といった制度化に努めている6。中央および地方の 各級党委員会とその常務委員会は、同級の人代、政府、政協、群衆

会常務委員会会議で述べた。江沢民、『論国防和軍隊建設』、(解放軍出版社、2003 年1 月 1 日)、284 ページ。 5 江沢民、前掲書。 6 第 13 回党大会で採択された「政治報告」、2004 年 9 月、16 期 4 中全会で採択され た「党の執政能力建設を強化することに関する中共中央の決定」を参照。なお、地 方では省、地級市、県、郷・鎮の4 つの行政レベルがある。

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団体(共青団など)に設けられた党の領導組織である党組7に対し、 重大方針や人事などでの領導を直接行使する一方で、これら党外機 関組織の日常的な執行の問題活動は、当該組織の党組の指導に任せ るというものである。こうした措置は、各級党委員会に対して、そ の行使可能な領導権を規範化し、同時に、その領導実施の効果、つ まり党の方針、政策の実現を効果的に達成するという方法である。 この領導方式を行うにあたり、各級党委員会の領導能力は高いも のでなくてはならない。党委員会及びその常務委員会の凝集力向上 は、こうした領導能力保持の必要にも基づいている。なお、第16 回 党大会以降に制定された党内法規では、党内各級の領導グループに 対して、議事規則の制定を義務付けている8。また、政治局では、集 団学習を定期的に行い、構成員の政策に対する一致を図っている。 こうした政治過程の制度化、規範化を通じて、集団領導の効果を確 保しようとしている。他方、集団領導が、総書記や書記の個人領導 に実質上、変化しないように、党内法規では、構成員全員が自らの 意思どおりに発言し、少数意見に対して真剣な配慮を払うことも定 めている9

7 党組は、正副書記と成員の数名から構成される。そのメンバーは、当該機関組織の 幹部と同一である。党規約第46~48 条を参照。なお、当該機関組織には、党員の管 理や宣伝教育を実施する基層組織としてその人数の多少別に基層委員会、総支部委 員会、支部委員会という党組織(機関党組織と通称)が設立されている。「中国共 産党和国家機関基層組織工作条例」を参照。 8 「中国共産党党内監督条例(試行)」第 13 条第 1 項、2004 年 1 月 1 日施行。 9 「党内政治生活に関する若干の準則」(第二章)を参照。1980 年 2 月 29 日採択。

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三 政治局常務委員会と政治局の権限

次に、平常時に党の最高領導権を有する政治局常務委員会と政治 局の権限を考察する。17 期の政治局常務委員は、16 期(2002 年 11 月から)と同様、その人数は 9 名で、胡錦濤、呉邦国、温家宝、賈 慶林、李長春の5 名が留任し、2007 年 6 月に死去した黄菊のほか、 曾慶紅、呉官正、羅幹の3 名が退任10、新たに習近平、李克強、賀国 強、周永康の4 名が選出された。表 1 では、これら 9 人の序列と主 な担当ポスト、生年月、中央候補委員以上の就任経歴を示している。 表 1 政治局常務委員 胡錦濤(総書記など、42.12)12 候、12⑤、13、14、15、16 呉邦国(全人代常務委員会委員長、41.7)12 候、13 候、14、14④書、 15、16 温家宝(国務院総理、42.9)13 書、14 候書、15 書、16 賈慶林(全国政治協商会議主席、40.3)14、15、16 李長春(中央宣伝思想工作領導小組組長、44.2)12 候、13、14、15、 16 習近平(中央書記処常務書記、53.6)15 候、16 李克強(国務院常務副総理、55.7)15、16 賀国強(中央紀律検査委員会書記、43.10)12⑤候、13 候、14 候、15、 16 書 周永康(中央政法委員会書記、42.12)14 候、15、16 書 (注)( )の 中は2009 年 7 月現在の職掌と生年月。( )の右の数字は、中央 委員の選出期を表す。( )の 右の数字の意味は以下のとおり。数字のみ =第○期中央委員、12 候=12 期中央候補委員、⑤=5 中全会で選出、14 ( 太 字 ) = 政 治 局 委 員 、 書 = 書 記 処 書 記 、 16(太字下線) =政治局常務 委員。

10 退任の理由は、党大会開催当時に定年とされる 68 歳を越えていたためとされる。『大 公報』、2007 年 10 月 22 日。

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政治局常務委員 9 名のそれぞれの主な担当ポストをみてみると、 党中央の役職についているものが 5 名、行政機関である国務院が 2 名、国家の最高権力機関とされる全人代が 1 名、非共産党組織との 協商機関である全国政治協商会議(以下、政協)が 1 名となってお り、党中央の役職担当者が過半数を占めている。 続いて、政治局委員の人物を確認する。17 期の政治局委員は、16 期と比べて、その人数は25 名のままである11。この25 名には常務委 員の9 名が重複しており、常務委員以外の 16 名については、16 期の 政治局委員であった賀国強、周永康、王剛、王楽泉、王兆国、回良 玉、劉淇、劉雲山、張徳江、兪正声、郭伯雄の11 名のうち、17 期は、 賀国強と周永康の2 名が常務委員に昇任し、他の 9 名は留任した。 そして、2006 年 9 月に停職させられた陳良宇(07 年 6 月、党籍はく 奪)のほか、呉儀、張立昌、曹剛川、曽培炎の 5 名が退任、新たに 王岐山、劉延東、李源潮、汪洋、張高麗、徐才厚、薄煕来の 7 名が 選出された。表 2 では、これら16 人の主な担当ポスト、生年月、中 央候補委員以上の就任経歴を示している。 表 2 に示した政治局委員16 名のそれぞれの主な担当ポストをみて みると、中央軍事委員会を除く、党中央の役職についているものが2 名、中央軍事委員会が 2 名(胡錦濤を除く)、国務院が 4 名、全人 代が 1 名、政協が 1 名となっているほか、省級党委員会の書記が 5 名となっている。常務委員を合わせた政治局全体25 名の担当ポスト の構成は、党中央が7 名、中央軍事委員会が 2 名、国務院が 6 名、 全人代が2 名、政協が 2 名、省級党委員会書記が 5 名となっている。 数字だけをみると、党中央が 7 名と一番多いが、国務院、省級党委

11 16 期の政治局は、委員が 24 名、候補委員が 1 名の計 25 名で構成。候補委員は、会 議に列席し、発言することができるが、投票権がないとされる。

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員会の 6 名とほぼ同数となっている。常務委員会、政治局は、党中 央の最高領導機関であることから、常務委員、政治局委員がそれぞ れ兼職する担当ポスト機関の数の多少は、これらの機関の重要度を 表すものと思料される。 表 2 政治局委員(序列は中国語の姓の画数順) 王剛(政治協商会議常務委員会副主席、42.10)15 候、16 候書 王樂泉(新疆自治区党委員会書記、44.12)14 候、15、16 王兆国(全人代常務委員会副委員長、41.7)12 書、13、14、15、16 王岐山(国務院副総理、48.7)15 候、16 回良玉(国務院副総理、44.10)14 候、15、16 劉淇(北京市党委員会書記、42.11)14 候、15、16 劉雲山(党中央宣伝部長、47.7)12⑤候、14 候、15、16 書 劉延東(国務委員、45.11)15 候、16、 李源潮(党中央組織部長、50.11)16 候 汪洋(広東省党委員会書記、55)16 候 張高麗(天津市党委員会書記、46.11)15 候、16 張徳江(国務院副総理、46.11)候、15、16 兪正声(上海市党委員会書記、45.4)14 候、15、16 郭伯雄(中央軍事委員会副主席、42.7)15、16 徐才厚(中央軍事委員会副主席、43.6)15、16 書 薄煕来(重慶市党委員会書記、49.7)16 (注)( )の 中は2009 年 7 月現在の職掌と生年月。( )の右の数字は、中央 委員の選出期を表す。( )の 右の数字の意味は以下のとおり。数 字のみ =第○期中央委員、12 候=12 期中央候補委員、⑤=5 中全会で選出、14 ( 太 字 ) =政治局委員、書=書記処書記。 常 務 委 員 会 と 政 治 局 の 権 限 に つ い て 考 察 す る 。 党 の 規 定 に よ る と、常務委員会は、政治局の代行機関としての役割を担っている。

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常務委員会と政治局の権限は、以下の表 3 のとおりで12、基本的に「全 体局面に関わる活動の方針、政策性の文書」などの問題の決定機関 は政治局であり、常務委員会は、政治局の代行および執行機関とな っている。 表 3 政治局常務委員会と政治局の権限 政治局常務委員会 政治局 権 限 ① 全 国 代 表 大 会 と 中 央 委 員 会 が 確定した路線、方針、政策に基 づいて、全体局面に関わる活動 方針、政策性の問題について研 究 し 、 意 見 を 政 治 局 に 提 出 す る。 ②政治局が制定した方針、政策を 計画、実施する。 ③中央規律検査委員会、中央軍事 委員会、全国人民代表大会常務 委員会党組、国務院党組が提出 し た 政 策 性 の 問 題 に つ い て 決 定を行う。 ④ 党 中 央 各 部 部 長 、 各 省 ( 自 治 区、直轄市)党委書記と国家機 関各部(委)部長(主任)、各 省省長(自治区主席、直轄市市 長)の人選を審議し、政治局に ① 全 国 代 表 大 会 と 中 央 委 員 会 が確定した路線、方針、政策 に基づいて、中共中央の名義 で 発 出 す る 全 体 局 面 に 関 わ る活動の方針、政策性の文書 について討論、決定する。 ② 常 務 委 員 会 の 活 動 報 告 を 聴 取し、審査する。 ③中央規律検査委員会、中央軍 事委員会、全国人民代表大会 常務委員会党組、国務院党組 が 提 出 し た 重 大 事 項 に つ い て審議する。 ④党中央各部部長、各省(自治 区、直轄市)党委書記と国家 機関各部(委)部長(主任)、 各省省長(自治区主席、直轄 市市長)の任免の指名を審査

12 施九青、『当代中国政治運行機制』第二版、(山東人民出版社、2002 年)、462-464 ペ ージ。施九青が明らかにした政治局常務委員会と政治局の権限は、1987 年 11 月 14 日の第13 期政治局第 1 回会議で採択された政治局、政治局常務委員会の工作規則の 内容とほぼ一致しているものと思料される。政治局の工作規則については、2002 年 12 月 2 日の政治局会議で、新たな「政治局工作規則」が採択されているが、内容は 公開されていない。表3 の作成は、寇健文、「中共与蘇共高層政治的演変:軌跡、動 力与影響」、『問題与研究』2005 年 5、6 月号、(政治大学国際関係研究中心、2006 年 6 月)を参照。 13 外交事案などを指す。呉国光、『趙紫陽与政治改革』、(遠景、1997 年)、377-378 ペー ジ。

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提出する。党中央各部副部長、 各省(自治区、直轄市)党委副 書記と国家機関各部(委)副部 長(副主任)、各省省長(自治 区副主席、直轄市副市長)の人 選を審議し、指名を行う。 ⑤ 重 大 な 突 発 事 件 に 対 し て 早 期 に関連の決定を行い、中共中央 の名義で文書を発出する13 ⑥政治局に対して責任を負い、報 告を行う。その監督を受ける。 批准する。 ⑤中央委員会全体会議を毎年1 から2 回開催する。 ⑥ 中 央 委 員 会 に 対 し て 責 任 を 負い、報告を行う。その監督 を受ける。 会 議 制 度 ① 政 策 決 定 は 一 般 に 会 議 形 式 で 行 う 。 一 般 に 毎 週 一 回 開 催 す る。 ②会議の議題は、総書記あるいは そ の 委 託 を 受 け た 常 務 委 員 が 決める。中央書記処あるいは関 係 部 門 が 会 議 の 重 要 討 論 文 書 を準備する。 ③会議は、総書記が召集し、主宰 する、あるいは臨時に委託を受 けた常務委員が主宰する。 ④問題について決定を行う際、少 数 は 多 数 に 従 う 原 則 に 基 づ い て表決を行う。表決は無記名方 式、挙手方式、その他の方式を 採用できる。重要幹部の任免あ るいは人選を指名する際は、逐 一表決しなければならない。表 決 結 果 は 主 宰 者 が そ の 場 で 公 表する14 ① 政 策 決 定 は 一 般 に 会 議 形 式 で行う。一般に毎月一回開催 する。中央政治局も民主集中 と 集 団 領 導 の 原 則 を 実 行 す る。 ② 問 題 に つ い て 決 定 を 行 う 際、少数は多数に従う原則に 基づいて表決を行う。表決は 無記名方式、挙手方式、その 他の方式を採用できる。重要 幹 部 の 任 免 あ る い は 人 選 を 指名する際は、逐一表決しな ければならない。表決結果は 主宰者がその場で公表する。 文 件 の 批 准 ① 毎 回 の 会 議 は す べ て 記 録 を と り、会議紀要を編纂する。会議 紀要は、総書記、あるいはその 委 託 を 受 け た 常 務 委 員 が 署 名 し、発出する。 ②会議紀要は、政治局全体の同志 に発出する。これは、政治局へ

14 同項規定は、政治局の規定と同一内容と想定。寇健文、前掲論文、48 ページ。

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の報告の一つの形式である。 ③会議の議論の後、採択された、 あるいは常務委員の回覧、同意 を経た文書は、総書記、あるい は そ の 委 託 を 受 け た 常 務 委 員 の 審 査 の 上 、 署 名 、 発 出 さ れ る。 民 主 集 中 制 と 党 の 生 活 制 度 ① 民 主 集 中 制 の 原 則 と 集 団 領 導 の制度を実行する。集団で決定 す べ き 重 大 な 問 題 に つ い て 個 人が決定する権利はなく、集団 の決定を変更する権利もない。 ② 集 団 で の 決 定 内 容 を 断 固 と し て執行しなければならない。も し、異なる意見がある場合は、 内部で提起し討論できる。新た な決定が行われる前は、集団の 決 定 と 異 な る い か な る 行 動 も 許されない。 ③ 中 共 中 央 を 代 表 し て 行 う 重 要 講話、重要文書は、事前に会議 で討論し、採択され、あるいは 回覧し、同意を得ていなければ ならない。あるものは、政治局 の 批 准 を 得 な け れ ば な ら な い。重大な問題に関する講話あ る い は 文 章 を 個 人 が 発 表 す る 際は、発表前に必ず一定の許可 手続きを得なければならない。 ④参観、視察、会議への参加、そ の他活動の際、工作指導の個人 的意見を発表できるが、常務委 員 会 を 代 表 す る こ と は で き な い。 ※ 民 主 生 活 会 の 内 容 を 政 治 局 に 報告する15 ① 民 主 集 中 制 の 原 則 と 集 団 領 導の制度を実行する16 ②政治局は毎年一回、生活会を 開 き 、 批 判 と 自 己 批 判 を 行 う。

15 田培炎・中央政策研究室副局長によると、16 期常務委員会は、同会が開催する民主 生活会の内容を政治局に報告するようになった。田培炎、「十六大以来党内民主建設 的新発展」、『求是』、2007 年 10 月 1 日号。民主生活会では、業務や作風について批

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常務委員会と政治局との具体的な権限の相違については、まず、 「全体局面に関わる工作方針、政策」については、常務委員会が「意 見」を作成し、政治局がその「意見」を基に決定を行う。そして、 この決定内容を常務委員会が計画、実施する。ただ、常務委員会は 事務、執行機関ではないので、執行機関である中央書記処に対して、 党内関係部門へ決定内容の実行を指示することになる。常務委員会 は、このような活動内容について定期的に政治局に報告を行う。中 央規律検査委員会、中央軍事委員会、全人代常務委員会党組、国務 院党組が提出する路線、方針、政策性の問題については、常務委員 会が決定を行うが、提出される内容が重大事項に該当する場合は、 政治局が審議を行う。 人 事 に つ い て は 、 党 中 央 と 国 家 機 関 の 各 部 ・ 委 員 会 ( 省 庁 に 相 当)、地方の各省(級)党委員会、地方政府の「長」については、常 務委員会が候補者の人選を行って政治局に提出し、政治局が決定す る。中央と国家機関の各部、地方の各省党委員会、地方政府の「副 長」の人選については、常務委員会が決定する17 上 述 の と お り 、 常 務 委 員 会 と 政 治 局 の そ れ ぞ れ の 権 限 に つ い て は、基本的に全体局面に関わる活動の方針、政策性の文書などの重 大事項の「決定機関」は政治局であり、常務委員会は、政治局の「代 行及び執行機関」である。第16 回党大会以降は、政治局会議の開催

判と自己批判を行う。「県以上の党と国家機関党員領導幹部の民主生活会に関する若 干の規定」(1990 年 6 月 30 日)を参照。 16 同項規定は、常務委員会の規定と同一と想定。寇建文、前掲論文、49 ページ。 17 党の各省党委員会の正副書記については、政治局および常務委員会が候補者を指名 するが、最終的には当該委員会の全体会議で選挙により決定する。党規約第27 条「党 の地方の各級委員会全体会議は、常務委員会と書記、副書記を選挙し、上級の党委 員会に報告し、批准を得る」を参照。

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が報道されるようになり、会議では常務委員会が提出した意見や行 った決定について審議、決定を行っていると思料される。いわば、 政治局と常務委員会は上下関係にあるが、実際の政治過程では、政 治局委員は、常務委員会の決定について、補充的意見は述べても、 反対意見によって否決することは少なく、結果として議案を追認す ることがほとんどではないかと推測される。その理由は、①常務委 員は政治局委員より高い権威を有している、②政治局委員にとって 常務委員が担当ポストでの上役に当たる、③常務委員と常務委員会 議に関係する中央書記処書記を合わせると11 名で、政治局会議の過 半数(13 名)に近い比較多数を形成している可能性が高い、ことな どが挙げられる。 ②で述べた担当ポストの多くは、中国語で「口」(kou)と称され る、宣伝、組織、財経、外事、軍事、政法、紀律、人代、政協など の党・政府の特定領域系統を指し、その中央(領導)機関のトップ を主に常務委員が務め、副トップに政治局委員や国務委員などが務 めている18。党中央の主な「口」とその担当者である常務委員と政治 局委員は、以下の表 4 のとおりである。 表 4 政治局常務委員と政治局委員の共同担当任務と機関19 (担当任務)当該機関 政治局常務委員 政治局委員 (党務) 中央書記処 胡錦濤(総書記) 習近平(常務書記) 劉雲山(書記) 李源潮(書記) (軍事) 中央軍事委員会 胡錦濤(主席) 郭伯雄(副主席) 徐才厚(副主席)

18 「口」は、「宣伝口」「外事口」などと呼称。行政部門の領導に限れば、計画、財貿、 工交、農林水、文教科技、民政、などにも分けられる。楊光斌、李月軍、『当代中国 政治制度導論』、(中国人民大学出版社、2007 年)、72 ページ。 19 楊光斌、前掲書など、各種資料から作成。

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(外事) 中央外事工作領導小組20 胡錦濤(組長) 温家宝(副組長) 習近平(副組長) 張徳江(成員) ※戴 秉 国 ( 秘 書 長 ) 国 務 委 員 など (対台湾) 対台湾工作領導小組 胡錦濤(組長) 賈慶林(副組長) 郭伯雄(成員) ※戴 秉 国 ( 秘 書 長 ) 兼 国 務 委 員 (全人代) 全国人民代表大会常務委 員会 呉邦国(委員長) 王兆国(副委員長) (国務院) 温家宝(総理) 李克強(常務副総理) 回良玉(副総理) 張徳江(副総理) 王岐山(副総理) 劉延東(国務委員) (財政経済) 中央財経領導小組 温家宝(組長) 李克強(副組長) 回良玉(成員) 張徳江(成員) 王岐山(成員) (国防動員) 国家国防動員委員会 温家宝(主任) ※梁光烈(副主任)国務委員 ※馬凱(副主任)国務委員 (統一戦線) 政治協商会議全国委員会 賈慶林(主席) 王剛(常務副主席) ※杜青林(副主席)統戦部長 (宣伝思想) 中央宣伝思想工作領導小 組 李長春(組長) 劉雲山(副組長) (党建設) 中央党的建設工作領導小 組 習近平(組長) 李源潮(副組長) (紀律検査) 中央規律検査委員会 賀国強(書記) ※何 勇 ( 筆 頭 副 書 記 ) 中 央 書 記処書記 (政法) 中央政法委員会 周永康(書記) ※孟建柱(副書記)国務委員

20 領導小組とは、「口」の中で予算や人員の編制を受けていない場合の最高決定機関を 指す。通常、複数の党政府部門に関連する問題を議事として扱い、協議調整する枠 組みである。党中央に作られた領導小組は、常務委員が組長を兼ねて、政治局とそ の常務委員会に責任を負う。領導小組での結論は、常務委員会と政治局で最終決定 を経なければならない。なお、当該小組の弁公室は、例えば、財経領導小組弁公室 など、編制を受けている例が多い。

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最後に、政治局常務委員会において、「重大な問題」とみなされな い問題、いわば「日常的な執行」についてはどのように決定がなさ れるかを考察する。党規約では、「党の各級委員会は、集団領導と個 人 の 分 業 責 任 を 組 み 合 わ せ た 制 度 を 実 現 す る 。( 略 ) 委 員 会 の 成 員 は、集団の決定と分業に基づいて自己の職責を適切に履行する」(第 10 条第 5 号)と定められているとおり、すべての常務委員はそれぞ れ、政策や党務について、分業の形式で担当を有している。 各担当分野の「政策性の問題」などに該当しない問題、業務執行 上の問題などは、政治局常務委員会および政治局には上程されず、 各担当領域の常務委員が「最高責任者」となって、それぞれの担当 領域の機関で決定が下される。党の規定では、「党の各級領導グルー プの主要責任者は、民主集中制を率先して執行し、領導グループの メンバーが職責の範囲内で独立して責任をもって業務を行うことを 支持しなければならない」とも規定されている21。このように常務委 員の間での担当分業の制度によって、「政策性の問題」及び「重大 な問題」に該当しない問題、業務執行上の問題に関する最終決定の 権限は、各常務委員によって分有されている。この分有された権力 については第四、五章で考察する。

四 総書記の権限

常務委員会の序列 1 位の胡錦濤は、中央委員会総書記を担当して いるが、総書記には、最高領導権は付与されていない。その党規約 で定められた権限は、「政治局会議とその常務委員会を招集する責任 を負い、政治局とその常務委員会の執行機関である中央書記処の業 務を主宰する」(第 22 条第 4 項)というのみである。別の党内法規

21 「中国共産党党内監督条例(試行)」(2003 年 12 月制定)第 12 条を参照。

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では、問題の決定は多数決方式によるとして、決定権限について総 書記を他の委員と平等な扱いとしている22。ただ、党内規定では、「分 業責任(制)においても、書記あるいは第一書記は、党委員会の活 動を組織し、日常的な執行の問題業務を処理する主要な責任を負っ ている。集団領導を口実として、書記あるいは第一書記の党委員会 の重要な役割を低下させたりしてはならない」として、(総)書記に 他の委員以上の役割を求めている23。また、「党の総書記として、全 局面の業務に対して自然責任を負っている」とされる24。 こうした総書記の特別な役割は、常務委員会の司会者、議題決定 の権限とも関連し、相当の大きい権限を生じさせていると思料され る。しかしながら、それは具体的な領域の問題に対する絶対的なも のではなく、相対的なもの、制限されたものと推察される。 1 胡錦濤の担当ポスト 前総書記の江沢民は、1989 年 6 月の総書記就任時に、当時の最高 実力者である鄧小平中央軍事委員会主席から、領導集団の「核心」 と称されたが、胡錦濤に対しては、2004 年 9 月 20 日、中央軍事委員 会拡大会議で述べた講話の中で、江は「中央領導集団の領頭人、班 長(それぞれleader:リーダーの意味)」と形容している。この「核 心」と「領頭人、班長」との位置づけの違いについては、「核心」の

22 「党内政治生活に関する若干の原則」(第2 章)を参照。 23 「党内政治生活に関する若干の準則」(第 2 章)を参照。 24 楊光斌、前掲書(71~72 ページ)を参照。「16 期 1 中全会で誕生した 9 名の常務委 員の中で、胡錦濤は党の総書記として集団領導の制度の下、全面的に責任を負わな ければならない。この点は、党と国家の日常活動の中から知ることができる。党の 総書記は、党の各種性質の会議で重要報告を行い、国務院系統の各種性質の業務に 指示を行うことができる」。

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場合、最終決定権を有するが、「領頭人、班長」には、この権限が与 えられていないと思料される25 ここでは、総書記である胡錦濤とその前任者の江沢民がそれぞれ 担当していたポストの多少から、両者の権限の大小の相違を分析す る。担当ポストの多少は、その権限の大きさに直接影響すると想定 されるからである。江沢民は、89 年 6 月に総書記に就任し、同年中 に、中央財経領導小組組長、中央軍事委員会主席のポストをそれぞ れ趙紫陽、鄧小平から引き継いだ。そして、1992 年 10 月の第 14 回 党大会後、これらに加えて、中央外事工作領導小組の組長を李鵬か ら、対台工作領導小組の組長を楊尚昆から、中央宣伝思想工作領導 小組の組長を李瑞環から、中央紀律検査委員会と政法委員会の主管 を喬石から、それぞれ引き継ぎ、広範な領域における日常的な執行 の問題の決定権を獲得した26。中央紀律検査委員会と政法委員会の主 管は、97 年 9 月の第 15 回党大会で以降、尉健行に譲ったが、2002 年の第16 回党大会まで総書記のほか、軍事、財経、外交、宣伝、台 湾問題などでの担当機関のトップであり続けて、大きな権限を保有 し続けたことになる。 第16 回党大会以後、胡錦濤は、江沢民から総書記、中央外事工作 領 導 小 組 、 対 台 工 作 領 導 小 組 の 両 組 長 の 三 つ の ポ ス ト を 引 き 継 い だ。そして、2004 年 9 月の 16 期 4 中全会で中央軍事委員会主席を引 き継いだ。江沢民が担当していた財経領導小組と宣伝思想工作領導 小組の両組長のポストは、温家宝、李長春にそれぞれ引き継がれた 27。このように、胡錦濤の担当ポストは、江沢民が担当した数より減

25 王昶、『中国高層謀略』外交巻、(陝西師範大学出版社、2001 年)、287-288 ページ。 26 中央規律検査委員会書記の尉建行、政法委員会書記の任建新はともに政治局委員で あったので、常務委員会における両機関の主管を江沢民が担当した。 27 常務委員会の政法業務の主管は、15 期は尉建行であったが、16 期は政治局委員兼政

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っ て お り 、 こ の こ と は 担 当 ポ ス ト の 多 少 に よ る 権 限 の 大 小 に つ い て、胡錦濤が有する権限が、江沢民に比べて小さくなっていること を意味する。 2 書記処の政治過程 領導機関における集団による決定という行為は手続きであり、過 程でもある。こうした手続きに、他者に先駆けて、初期、あるいは 中途段階から関与することによって決定に影響を及ぼすことも可能 である。関与行為に対して正当な権限が付与されている場合は、慣 習化し、非明文の制度と化して、一定量の権限が生じうる。 常務委員会の会議の討議資料の準備は、中央書記処が行い、会議 の事務的準備は、中央弁公庁が行う281987 年の第 13 回党大会での 党規約改正後から現在まで、中央書記処の職権は、政治局とその常 務委員会に対して責任を負い、業務は分業責任制とされている29。各 書記は通常、一つの業務系統(例えば宣伝部門)や若干方面の事務 (例えば中央弁公庁)に責任を負っている。下級部門の報告や計画 を聴取、あるいは審議批准し、人事の手続きに参与することなどを 通じて、所管の方面の事務に領導責任を負っている。党の下部門か ら中央弁公庁を通じて上程される案件については、書記処書記はそ れぞれの所管に応じて、直接の領導と決定の権限を有する。但し、 全体的局面に関わる、特別な問題について、その内容を担当とする 書記は、当該案件を書記処会議に提出、ひいては、政治局とその常 務委員会に提出しなければならない。その際は、当該案件について

法委員会書記であった羅幹が同書記のまま、16 期 1 中全会で常務委員に昇任した。 28 楊光斌、前掲書(74 ページ)を参照。中共中央組織部『中国共産党組織史資料』第 7 巻、(中共党史出版社、2000 年)、225-226 ページ。 29 「中央書記処:曾経的“最後決定権”」『南方週末』、(2007 年 10 月 11 日号)。

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説明を行い、また、選択可能な決定案を準備提出しなければならな い。この過程で書記処は、積極的な協調の役割を発揮することにな る30 こうした書記処の業務を主宰するのが、総書記であり、総書記は、 集団決定や個人分業責任の過程での手続きに関与する権限を有して いることで、その決定に一定の影響力を行使できる。このような総 攬的権限あるいは関与的権限は、総書記にのみ付与されている。通 常、総書記に代わり、書記処の業務を統括するのが常務書記である。 常務書記は、総書記の業務を補佐、代行する役割を担っている。 17 期の中央書記処には、党中央の政策研究、提言機関である中央 政策研究室の主任である王滬寧が加わった。王滬寧は、もともと90 年代半ばに、中央政策研究室に入り、党の重要政策文書の起草など に関わっていた。第16 回党大会後、中央政策研究室主任となってい る、17 期での書記就任により、書記処、また常務委員会に上程され る政策関連文書に対して、処理、執行権を有するようになった31。王 滬寧のこのような権限獲得は、その「上司」である胡錦濤(及び習 近平)の資源の増大、つまり権限の強化につながる。王滬寧は、16 期以降、胡錦濤の地方視察にはほとんど随行し、外国要人との会見 にも多く陪席している。その理由としては、総書記の視察中の諮問 にあずかること、地方の委員会および政府の工作報告の評価を行う こと、地方の問題点を発見することなどが思料される。

30 李林、「中共中央書記処組織沿革与功能変遷」、『中共党史研究』、(2007 年 3 月号)。 31 中央政策研究室には、政策研究部門として、経済局、党建局、哲学歴史局、文化研 究局、政治研究局、農村研究局、総合研究局、国際局などが設けられている。中共 中央組織部、前掲書、241-242 ページなどを参照。

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3 総書記の権限を制限する諸要素 ①スタッフの能力 総書記が書記処を通じた総攬的権限を実際に行使することについ ては、以下の二つの点が指摘できる。第一は、権限の範囲が広すぎ て、またその量も膨大になることから、技術的に困難が伴うという こと、第二は、書記処という機関の運用を通じての関与であるため、 書記処の運用が、総書記と常務書記を始めとする各書記との関係、 各書記間の関係といった人的要素により、スムーズになされない可 能性があることである。 第一の点、つまり「権限の範囲が広すぎて、またその量も膨大に なることから、技術的に困難が伴う」については、書記処の各書記、 党政部門の責任者などが積極的に権限の行使に寄与しなければ、総 書記一人では、書類の決裁もその量が膨大であるため、いわば「自 動的に署名する」のみで終わりかねない。したがって周辺のスタッ フが、決裁書類の重要度の高低について判断し、書類の分別を行い、 重要な内容については、その旨を総書記に知らせることが必要とな る。ここで問題になるのは、こうした通知の役割を行ううえで、そ の重要度、優先度を判断し、実際に書類の処理を迅速に適切に遂行 する能力を有しているか否かということである。 書記処の業務の実際の責任者は、常務書記の習近平である。1982 年以来、25 年間にわたって、河北、福建、浙江、上海と、地方の党 委員会の職務を歴任してきた習の官房スタッフとしての能力は未知 数である。こうした「スタッフ能力」が常務書記就任時に十分でな い場合、まず、同輩の各書記が、習近平を補佐することになると思 料される。現実的には、中央書記処には、直接の下属部門がなく、 主に全体的な事務作業は中央弁公庁が行っているため、同庁主任で ある令計画が、習近平を業務上補佐することことは日常的であると 推察される。同庁は、常務委員、政治局委員と党内各機関との文書

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の往来を担当するほか、領導幹部から業務の委任を受けることもあ り、党中央の枢要スタッフ機関の役割を担っており、同庁主任がこ うした役割から得られる知識、人脈は、広範かつ深いと思料される32 その次に習近平を補佐する者として官僚が想定される。習近平に は、常務委員として、弁公室が与えられ、秘書などの職員が振り分 けられる。これらの人員は、いわば身内のスタッフであるが、こう した人物が中央弁公庁の調研室などの部署に兼職としてポストを得 れば、常務書記としての業務もスムーズにできることが多くなると 思料される。 4 総書記の権限を制限する諸要素 ②人間関係 第二の問題、つまり、書記処の運用が、総書記と常務書記を始め とする各書記との関係、各書記間の関係といった人的要素により、 スムーズになされない可能性であるが、これには、第一の問題と重 複するところがある。書記処の業務の中での総書記の権限に関係す ると思料されるのは、総書記と各書記、とりわけ常務書記との関係 の好悪の程度である。胡錦濤と習近平の関係の好悪については不明 である。両者の経歴をみる限り、これまで業務上の交流をしたとい うことが全くなかったようである。ただ、習近平は、2008 年 1 月、 常務委員就任後の地方視察として河北省へ赴き、視察期間中、革命 の 聖 地 と 称 さ れ る 同 省 平 山 県 西 柏 坡 の 記 念 館 を 訪 れ て い る 。 同 地 は、胡錦濤が2002 年 12 月に総書記就任後、書記処書記を伴い、視 察し、「引き続き、謙虚で慎重に驕らず焦らない作風を保持し、また

32 中央弁公庁は、中央委員会の総合事務機関であり、中央政治局の直接の領導の下、 業務を行う。その編制については、中共中央組織部、前掲書、225-226 ページなどを 参照。

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引き続き刻苦奮闘の作風を保持しなければならない」という毛沢東 のかつての講話を再強調した所である。習近平は、視察の際、この 胡錦濤の講話を引用していることから、これらの言動は、胡錦濤の 執政理念、方針に従うことを示した行為と理解される33 その他の書記と胡錦濤との関係であるが、胡錦濤は、劉雲山中央 宣伝部部長(留任)とは、1982 年から 84 年に劉が内蒙古自治区の共 青団幹部当時、胡錦濤は共青団中央の書記、93 年から 2002 年に劉が 宣伝部副部長当時は、胡錦濤は、党務を主管する中央書記処常務書 記、2002 年から 07 年は、劉が中央書記処書記で、胡錦濤は総書記、 などと長い間、業務上の補佐、被補佐関係にあった。李源潮中央組 織部部長とは、1983 年から 85 年に李が共青団中央での宣伝業務を担 当していた当時は、胡錦濤は共青団中央の書記、第一書記、93 年か ら96 年、李が党中央対外宣伝弁公室副主任であった当時は、胡錦濤 は、党務を主管する中央書記処常務書記、などと接触があった。共 青団では上下の関係であった。何勇中央紀律検査委員会副書記(留 任)とは、92 年から 2002 年の間、何が監察部副部長、部長当時は、 胡錦濤は組織人事担当の政治局常務委員であり、幹部管理という点 で業務上の補佐、被補佐関係にあった。2002 年から 07 年は、何が中 央書記処書記で、胡錦濤は総書記であった。中央弁公庁主任の令計 画とは、92 年から 95 年の間、令が共青団中央の宣伝部門を担当して いた当時、胡錦濤は政治局常務委員として共青団の活動を主管して いた。95 年から 99 年は、令が中央弁公庁調研室に勤務しており、胡 錦濤は中央書記処常務書記として党務を主管していた。99 年から 03 年、令は中央弁公庁副主任兼胡錦濤弁公室主任を務めた。このよう に二人は非常に密接な関係にある。中央政策研究室主任の王滬寧と

33 『新華網』、2008 年 1 月 15 日。

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は、95 年から 2002 年まで、王が中央政策研究室幹部であり、胡錦濤 は党務を主管する中央書記処常務書記という関係にあった。胡錦濤 の所管の下、党の重要文献や江沢民など常務委員の講話などを王滬 寧が起草していたと思料される。2002 年の総書記就任後の胡錦濤の 国内地方及び外国の訪問には、常に王滬寧が同行し、胡錦濤と外国 要人との会談に同席することが多い。2005 年 4 月 29 日、台湾の連戦 国民党名誉主席が訪中し、胡錦濤と会談を行った際も王滬寧は同席 している。こうしたことから内政、外交、台湾問題で王滬寧が政策 提言に関与している可能性は相当高いと思料される。 胡錦濤と各書記との関係を整理する。これまでの業務上の接触や 補佐、被補佐の関係をみる限り、胡錦濤と常務書記である習近平と の 関 係 に つ い て は 、 こ れ ま で 密 接 な 関 係 に は な か っ た よ う で あ る が、その他の書記との関係は相当密接であると思料される。常務書 記である習近平との関係が密接ではないことは、業務遂行上の不安 定要因としてとらえられるが、習近平自身が、胡錦濤の訪問地を自 身も訪れ、胡錦濤が以前に行った講話を強調するなど、胡錦濤のプ レーアップに努めているようなので、この要因はそれほど不安定で はないと思料される。この他に大きな不安定要因は見受けられない ので、書記処の業務遂行は、今後、円滑に行われていく可能性が高 いと思料される。 ここまでは、胡錦濤の権限行使における不安定要因という観点で 指摘した習近平に関する問題は、習近平の権限行使における不安定 要因でもある。つまり、書記処の業務能力が必ずしも十分でないこ と、胡錦濤との間に親密な関係が築けていないこと、である。習近 平が担当業務を着実に遂行するためには、書記処の業務に通じた同

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輩の書記、特に中央弁公庁主任の令計画、中央政策研究室の王滬寧34 の補佐が必要であるし、胡錦濤との間でも親密になるよう積極的に 務めることが予想される。このような角度からの分析に基づいて、 胡錦濤の権限行使における習近平に関する不安定要因は、一定程度 以上、時間の経過とともに改善されることと思料される。

五 各政治局常務委員の権力

本章では、実際の政治過程において各常務委員が分有する権力を 確認する。一般に権力は、権威と権限によって形成される。本章で は、各常務委員が担当する機関において有する権威と各機関の権限 の分析を通じて、各常務委員の権力を解明する。 1 各常務委員の経歴に由来する権威 ここでは、権力を形成する要素である権威に着目して、17 期の常 務委員が有する権威の高低を分析する。権威は、権限といった明文 化される法的根拠を有するものと、人格、「長幼の序」などの道徳倫 理を根拠とするものから形成されるが、権限については、下節で考 察するので、ここでは、「長幼の序」といった道徳倫理を根拠とする ものを考察の対象とする。人格については、各常務委員の人格を分 析することは極めて困難であるので、取り上げないこととする。な お、常務委員が担当しているポストの機関に由来する権威について は、本章第三節以下で考察する。 常務委員の間の「長幼の序」を規定する基準は、一般社会のよう に年齢ではない。党中央の幹部同士の間では、党中央幹部としての

34 中央政策研究室は、習近平が組長を務める党的建設工作領導小組の秘書組、つまり 事務局機能も担っている。

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経歴の長短によって「長幼の序」が決まる。そしてこの経歴が長い 幹部ほど、権威が高くなると思料される3516 期、17 期の両期を通 じて、常務委員会で経歴が最も長いのは、1992 年から 14 期、15 期 の 10 年間、常務委員を務めていた胡錦濤である。胡錦濤は 92 年か ら 2002 年までの 10 年間、常務委員として中央書記処常務書記と組 織人事部門主管、中央党的建設工作領導小組組長、中央党校校長を 担当した。そのほか、98 年から国家副主席、99 年から中央軍事委員 会副主席をそれぞれ担当している。2001 年からは、江沢民総書記の 代理としていくつかの党活動で重要報告を行っている。17 期の他の 常務委員8 名の常務委員に初めて就任した時期は、呉邦国、温家宝、 賈慶林、李長春の4 名が 16 期からであり、習近平、李克強、賀国強、 周永康の4 名は 17 期である。胡錦濤の常務委員の経歴は、他の常務 委員と比べて 10 年以上の先輩ということになる。胡錦濤について は、総書記というポストのほか、このような、他の常務委員と比較 にならない、14 期以来の常務委員としての経歴に因る権威が備わっ ていると思料される。江沢民は、2004 年 9 月 20 日、中央軍事委員会 拡大会議で、党中央軍事委員会主席に胡錦濤が就任したことを支持 する発言を行うとともに、その主な理由として、胡錦濤の常務委員 の担当の長さを指摘している36 続いて他の常務委員について考察してみる。まず、16 期に常務委 員会入りした呉邦国、温家宝、賈慶林、李長春の4 名と、17 期に常 務委員会入りした習近平、李克強、賀国強、周永康 4 名の間には、

35 幹部としての経歴については、中国語では「資歴」(qualification)という。高新、『領 導中国的新人物』、(明鏡出版社、2003 年)、695-696 ページを参照。高新によれば、 このほか、実際の地位に基づいた「尊卑の序」もある。以前は、建国前の革命運動 への従事の早晩も、各幹部の権威の形成に大きな役割を占めた。 36 『人民日報』、2004 年 9 月 21 日。

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常務委員会入りの早晩という経歴に基づく権威の高低差があると思 料される。そして、16 期で常務委員会入りした呉邦国、温家宝、賈 慶林、李長春の 4 名のうち、政治局委員の経歴については、一番長 いのは呉邦国である。呉邦国は1992 年 10 月の 14 期 1 中全会で政治 局委員になっている。温家宝は、14 期 1 中全会で政治局候補委員兼 中央書記処書記、97 年の 15 期 1 中全会で政治局委員兼中央書記処書 記に選ばれている。賈慶林と李長春は、15 期 1 中全会で政治局委員 になっている。つまり、呉邦国、温家宝と、賈慶林、李長春の間に は、やはり権威の明確な高低の差があるものと思料される。このこ とは、現在のポストからもうかがえる。呉邦国が常務委員長を務め る全人代は国家最高権力機関で、温家宝が総理を務める国務院は国 家の最高行政機関である。他方、賈慶林が主席を務める政協は、人 民団体にしかすぎず、李長春が組長を務める中央宣伝思想工作領導 小組は、党の一つの議事協調機関にすぎない。なお、呉邦国と温家 宝との間では、経歴に基づく権威の高低の差はそれほど大きくない が、賈慶林と李長春との間では、16 期以降、担当している現在の担 当ポストから、一定の差があるものと思料される。17 期に常務委員 会入りした、習近平、李克強、賀国強、周永康 4 名の序列は、現在 の担当ポストの重要度に基づいたものである37 胡錦濤以外の各常務委員の権威の高低を考察する上では、上のよ うな経歴による「長幼の序」のほか、権力者との親疎の程度も影響 することが思料される。権力者と「親しい」人物は、その権威が向

37 また当該ポスト担当者が常務委員会入りした順序でもある。中央書記処常務書記、 国務院常務副総理は、1987 年 11 月の 13 期 1 中全会、中央規律検査委員会書記は、 1997 年 9 月の 15 期 1 中全会、中央政法委員会書記は 2002 年 11 月の 16 期 1 中全会 である。なお、政治局入りの順序は、賀国強、周永康が16 期 1 中全会、習近平、李 克強が17 期 1 中全会となる。

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上する作用があると思料されるからである。この「親しさ」につい ては、関係者の主観的判断を基準とすることは不可能なので、両者 の業務上の補佐、被補佐関係の緊密さや長さを基準とする。まず、 常務委員の中で、総書記を務める胡錦濤との関係を考察する。17 期 の常務委員について、胡錦濤と業務上の補佐、被補佐関係など密接 な交流がある人物は、交流の長さの順序で、温家宝、呉邦国、賈慶 林、李長春、李克強、賀国強、周永康の 7 名となる。つまり、習近 平以外は、みな胡錦濤と業務上の交流がある。 まず、胡錦濤と温家宝の具体的接触は、1992 年春の第 14 回党大会 準備業務からであると思料される。92 年 10 月の 14 期 1 中全会では、 胡錦濤は中央書記処常務書記、温家宝は同書記に選ばれ、業務上の 補佐、被補佐の関係になり、10 年続いている。02 年からはともに常 務委員を務めている。胡錦濤は常務書記に就任した際、党中央での 勤務歴がなかったため、組織、人の名称と役割、業務のやり方など に知識がなかったところを、中央弁公庁主任を1985 年から 7 年間既 に務めていた温家宝が詳しく紹介、説明したとされる38 胡錦濤と呉邦国は、92 年 10 月の 14 期 1 中全会で同時に政治局入 りしている。いわば「同期」として業務上の接触があったと思料さ れる。特に94 年 9 月の 14 期 4 中全会で呉邦国が中央書記処書記に 追加選出されてからは、02 年までの 8 年間、中央書記処常務書記で あった胡錦濤との業務上の補佐、被補佐関係にあった。02 年からは ともに常務委員を務めている。 賈慶林と李長春は、97 年 9 月の 15 期 1 中全会で同時に政治局入り している。それぞれ、北京市、広東省の党委員会書記であり、地方 のトップであった二人と、中央書記処常務書記であった胡錦濤との

38 宗海仁、『第四代』、(明鏡出版社、2002 年)、57-58 ページ。

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間で、密接な交流はなかったようであるが、政治局会議などを通じ た接触はあった。なお、賈慶林は、2003 年 3 月以降、対台工作領導 小組の副組長となり、同組長である胡錦濤を補佐する地位にある。 また、賈慶林は03 年 3 月以降、政協主席として少数民族問題も担当 している。少数民族の多い貴州省やチベット自治区の党委員会書記 を務めた胡錦濤とは、業務上の相談をすることも少なくないと思料 される。 李 克 強 は 、1983 年 に 共 産 主 義 青 年 団 中 央 に 学 校 部 部 長 と し て 入 り、その後、85 年までの 2 年間、当時、共青団中央書記処書記、第 一書記であった胡錦濤の部下であった。李克強は、1998 年まで共青 団の中で、第一書記まで昇進していくが、92 年からは、党務担当の 政治局常務委員に就任した胡錦濤が所管として、共青団を担当する ようになり、二人は約6 年間、領導、被領導の関係であった。 賀国強と周永康はともに、2002 年 11 月の 16 期 1 中全会で、中央 書記処書記に就任し、総書記である胡錦濤とは、業務上、補佐、被 補佐の関係にあった。 本節の結論として、常務委員の中では、胡錦濤の権威が圧倒的に 高いことが指摘される。これは、現在のポストに加えて、常務委員 と し て の 経 歴 の 長 さ が そ の 理 由 と な る 。 そ の 他 の 常 務 委 員 の 中 で は、呉邦国、温家宝の二人が、政治局入りが早い、胡錦濤との業務 上の補佐、被補佐関係が長い、ということでその権威が高いことが 思料される。 2 各常務委員が分有する権力 本節では、各常務委員が担当領域において分有する権力を考察す る。第二章で既述したとおり、党規約では、「党の各級委員会は、集 団領導と個人の分業責任を組み合わせた制度を実現する。(略)委員

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会の成員は、集団の決定と分業に基づいて自己の職責を適切に履行 する」(第 10 条第 5 号)と定められ、政治局常務委員会でも、すべ ての常務委員はそれぞれ、政策や党務について分業の形式で、それ ぞれの担当領域の最高機関で正副長職を担当している。これらの分 業状況は第三章の表 4 で示したとおりである。 まず、各常務委員がトップを担当する各機関の権限を考察する。 「重大な問題」については、党規約の「集団領導、民主集中、個別 協議、会議決定」の原則が適用され、個人が単独で決定権を行使す ることができないことは、第一章で既述したとおりであるが、「重 大な問題」、「政策性の問題」以外の日常的な執行については、そ れぞれの特定領域の最高機関のトップが最終的な決定権を有してい る。次に、主な常務委員が各機関のトップとして、それぞれの担当 領域で決定権という権力を行使する上での、①本人の知識、②補佐 者、スタッフとの関係などの資源を考察する。 (1)胡錦濤の担当ポストにおける権力 本項では、胡錦濤がトップを担当する外事工作領導小組、対台工 作領導小組、中央軍事委員会のうち、中央軍事委員会を考察する。 胡錦濤は、中央軍事委員会の主席を務めている。中央軍事委員会は、 中共中央軍事委員会と中華人民共和国中央軍事委員会の二つの組織 がある。党中央と国家という二つの名称であるが、実体は同一機関 である。中央軍事委員会の成員は正副主席と委員から成る。党中央 軍事委員会の人事は、中央委員会によって決定される。他方、国家 中央軍事委員会の主席は、全国人民代表大会で選挙され、その他の 成員は、国家中央軍事委員会主席の指名に基づいて、全国人民代表

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大会で決定される39。中央軍事委員会の職権については、党規約など 党内法規で規定が明らかでなく、他方、1997 年 3 月に制定された国 防法で、国家中央軍事委員会の職権について、「全国の武装力量を統 一指揮する」、「軍事戦略と武装力量の作戦方針を決定する」などと 定められている。同法は、「国の武装力量は、中国共産党の領導を受 ける。武装力量の中の中国共産党組織は、党の規約に従って活動す る」とされている40。党規約では前文にあたる総綱で、「中国共産党 は人民解放軍とその他武装力量への領導を堅持する」、第23 条で「中 国人民解放軍の党組織は、中央委員会の指示に従って業務を行う」 と定められている。このように、人民解放軍など武装力量は、国家 中央軍事委員会のほか、党の領導を受ける、つまり、二重領導を受 けることが定められている。 中央軍事委員会が、人民解放軍に対して行う領導は、①各総部を 通じて行う、②直接、大軍区と軍兵種に対して行う、の二つの方式 に分けられる。第一の方式については、4つの各総部という人民解 放軍の機関を通じて行うものである。この4つの総部は、「中央軍 事委員会の工作機関であり、また全軍の軍事、政治、後勤、装備の 領導機関」とされ41、中央軍事委員会に付属する、または中央軍事委 員会と一体化しているような印象を受ける。人事の上でも、各総部 のトップ、総参謀長、総政治部主任、総後勤部長、総装備部長は、 中央軍事委員に選ばれており、領導、被領導の関係にある中央軍事 委員会と各総部の両機関に席を置くことで、中央軍事委員会の領導 が軍に対して適切に実行される措置が採られている。第二の方式に

39 憲法第 62 条第 6 号。 40 それぞれ第 13 条と第 19 条を参照。 41 張万年、『当代世界軍事与中国国防』、(中共中央党校出版社、2003 年)、157 ページ。

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ついては、中央軍事委員会から「一級単位」と称される各総部、各 軍種、大軍区、国防大学、軍事科学院、武装警察総部、国防科技大 学に直接、通達や指示が送られるものである。また、共産党そのも のとは別組織である人民解放軍には、各級レベルで党委員会(党委 と通称)、党支部など党の組織が設けられており、純粋な党として の通達や指示は、党中央、あるいは、中央軍事委員会から各総部、 大軍区、各軍兵種のそれぞれの党委に送られる。実際の執行に関し ては総政治部が管理する42。 胡錦濤の中央軍事委員会主席としての権力の源となる「資源」と しては、主に、①当該領域における本人の知識(キャリア)、②補 佐者との関係、スタッフの能力、などがある。なお、軍事委員会主 席としての権限であるが、国家中央軍事委員会については、憲法で、 「主席責任制を実行する」として、主席の権限が規定されているが 43、党中央軍事委員会は、あくまで党の組織として、党規約を始めと する党の諸規則に従うことになる。第一章で上述したとおり、党規 約では、党の組織は、「集団領導」「重大な問題は会議決定」など の規則があり、主席の権限として、重要な問題を単独で決定する権 限は付与されていない。 まず、胡錦濤の権力の資源として、①の当該領域における「本人 の知識」、軍事業務に就いた経験のない胡錦濤の専門知識を客観的 に判断することは、容易ではないので、中央軍事委員会での「キャ リア」という側面から考察する。このため、17 期中央軍事委員会の メンバーの中央軍事委員会に入った時期を確認する。中央軍事委員

42 党規約第 23 条。 43 憲法第 93 条第 3 項。第 94 条では、「中央軍事委員会主席は全国人民代表大会および 全国人民代表大会常務委員会に責任を負う」と規定されている。

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会の11 人のメンバーのうち、同委員会に入った時期が最も早い人物 は、99 年 9 月の第 15 期 4 中全会が胡錦濤、郭伯雄、徐才厚の 3 人が、 そのうち、胡錦濤は筆頭副主席として、中央軍事委員会入りしてい る。02 年 11 月の第 16 期 1 中全会が、梁光烈、李継耐、寥錫竜の 3 人、04 年 9 月の第 16 期 4 中全会が陳炳徳、靖志遠の 2 人、07 年 10 月の第17 期 1 中全会が、常万全、呉勝利、許其亮の 3 人となってい る。現メンバーの中で、胡錦濤のキャリアが一番長く、その地位は 高いことから、中央軍事委員会の中で、胡錦濤の権威は相当高いこ とが推察される。なお、胡錦濤は、1989 年 3 月にチベットで僧侶を 含む一部住民と当局との間で衝突、紛争が発生し、戒厳令が施行さ れた際、チベット自治区党委員会書記、同自治区軍区政治委員とし て、その後の治安情勢回復に努めたおり、実際の軍隊出動を指揮、 紛争を処理した経験がある。こうした有事の経験は、現在の中央軍 事委員には、多くないとみられ、胡錦濤の権威向上につながってい ると思料される。 続いて、②の「補佐者との関係、スタッフの能力」について、ま ず、中央軍事委員会の全体運営を通常主宰する郭伯雄副主席と胡錦 濤との関係、中央軍事委員会の事務機関である弁公庁の主任である 王冠中の実務能力を考察する。 まず、胡錦濤と郭伯雄との関係であるが、郭伯雄は、1999 年 9 月 の15 期 4 中全会で、胡錦濤が中央軍事委員会副主席に就任した際、 同時に徐才厚とともに中央軍事委員会委員に就任しており、胡錦濤 と郭伯雄、徐才厚は、それぞれ副主席と委員として、同時に中央軍 事委員会で業務を開始している。当時の胡錦濤は、政治局常務委員、 郭伯雄は中央委員であり、党内地位としては、二階級異なっており、 郭伯雄は胡錦濤に対して、二階級上級職者としての敬意を払い、業 務上の補佐に務めたものと推察される。

數據

表 5  各常務委員の有する強制措置の高低、資源の大小と担当領域 における権力の大小  担当機関  強制装置 資  源 個別権力  胡錦濤  総書記(中央書記処主宰)  中央軍事委員会  ○ ◎  ○ ◎  ◎ ◎  呉邦国  全人代常務委員会  ○  ○  ◎  温家宝  財経領導小組  国務院  国務院中央軍委専門委員会  ○ ◎ ○  ◎ ◎ ◎  ◎ ◎ ○  賈慶林  政協  ―  △  ○  李長春  宣伝思想工作領導小組  △  ○  ◎  習近平  中央書記処(常務書記)  組織人事口  党

參考文獻

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