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(65)a. 本が 図書館に ある b.子供が 公園に いる
のような「主格―所格」構文を所在文と呼び、存在文から派生したものであり ながら存在文とは違う構文と考えられる。また、1.3 で有対動詞を論じる際、所 格を取る自動詞句を
(14)b.庭に 木が 植わる
のように「所格―主格」という語順で扱ってきたが、本稿では存在文をふくめ てこのような「所格―主格」構文を現象文と考え、「主格―所格」構文とは異な る構文と考えている。これについては第 3 章で取り扱う。
つぎ、
(66)a.親が 子を 医者に する b. 子が 医者に なる
(67)a.戦争が 町を 焼け野原に 変える b. 町が 焼け野原に 変わる
のような変化を表すもの(略して変化構文)がある。(66,67)の例でいうと、「子」
「町」が変化する対象であり、「医者」「焼け野原」が変化の結果である。この 変化構文の特徴の一つは、語順をかき混ぜると、授受構文などと違って、非文 か、もしくは非常に不自然な文になる、という点である。
(66)a’.?*親が 医者に 子を する b’.? 医者に 子が なる
(67)a’.?*戦争が 焼け野原に 町を 変える b’.? 焼け野原に 町が 変わる
(66,67)で変化の結果を表すニ格名詞句は、日本語記述文法研究会(2009)
では「着点」と呼ぶが、そのニ格には特に名称が与えられていないようである。
小泉(2007)によると、フィンランド語には状態の移行や変化を表す「変格」(ほ かには「転格 translative」の訳もある)がある。本稿では暫定的に(66,67)のニ 格を「転格」と呼び、NP[A]、または NP[A,T]と略する。その構造は
(68)[vP NP[EA] [v’ [VP NP[IA] [V’ NP[A,T] V]] v]]
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である。一般的に、変化構文であればかき混ぜにくいようである。
(69)a.太郎が この文章を 英語から 日本語に 直す b.?*太郎が この文章を 日本語に 英語から 直す c.??太郎が 英語から この文章を 日本語に 直す d.?*太郎が 日本語に この文章を 英語から 直す e.?太郎が 英語から 日本語に この文章を 直す f.?*太郎が 日本語に 英語から この文章を 直す
これは「起点から着点へ」という人間の認知の仕方と関わるためだろう。この
「起点から着点へ」の関係が保持されていれば、(69e)のようにある程度かき 混ぜが許せるかもしれない。以上のかき混ぜにくい文のほかに、
(70)a.太郎が 次郎に 三郎(のこと)を 馬鹿だと 言う b.?*太郎が 三郎(のこと)を 次郎に 馬鹿だと 言う c.??太郎が 次郎に 馬鹿だと 三郎(のこと)を 言う d.太郎が 三郎(のこと)を 馬鹿だと 次郎に 言う e.??太郎が 馬鹿だと 次郎に 三郎(のこと)を 言う f.?*太郎が 馬鹿だと 三郎(のこと)を 次郎に 言う
のような定義・認識などの内容を表す文(定義文と略す)がある。しかし、こ れは対格名詞句をト格(便宜的に内容格と称す)で示した内容と同定するため であろう。つまり「NP1ヲ「NP2ダ」ト言ウ」は「「NP1ガ NP2ダ」ト言ウ」とい う意味であり、語順をかき混ぜると、この同定の関係が分かりにくくなる。逆 にいうと、(70d)のようにこの同定の関係が維持していれば、かき混ぜが可能 である。また、対格名詞句とト格で示した内容が同定の関係でなければ、かき 混ぜが可能である。
(71)a.太郎が 飼い猫を マルと 名付ける b.太郎が マルと 飼い猫を 名付ける
以上で、語順をかき混ぜると、存在文から所在文へと文の性質が変わる場合 と、かき混ぜが困難な変化構文・定義文について簡単にふれた。動詞によって 必要な項が違うし、同じ動詞でさえ用法によって取る項が変わってくるので、
それらを全部検討するわけにはいかない。
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29 1.8 終わりに
以上で、動詞句の構造に関する分析を終わりにし、これまで論じてきた動詞 句の構造を自他を問わず、便宜的に
(72)a.[vP (NP[EA]) [v’ [VP (NP[A]1) [V’’ (NP[IA]) [V’ (NP[A]2) V]]] v]]
(NP[A]1は相手・場所を表す与格・奪格・所格などを取る名詞句;NP[A]2は変化 の結果・内容を表す転格・内容格などを取る句である。( )はあってもなくてもい い要素であるが、NP[EA]か NP[IA]が必ずどちらか一つなければならない)
b.
と規定することができるだろう。
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造を考察し、ヴォイス(Voi)を主要部とするヴォイス句(Voice Phrase; VoiP)のほかに、さらに立場という名詞句(Standpoint; Sp)が必要であることを論じる。