第三章 動詞句とヴォイスの結合について
3.4 直接受身文
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立 政 治 大 學
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(6)b’’.[TP 太郎[Ag]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’ [vP ei [v’ [VP 次郎[Part]ニ [V’ ペット[Th]ヲ 預 k]]
e]] φ]] ru]]
b’’’.
以上で能動文の分析を終える。
3.4 直接受身文
直接受身を作るのに他動詞でなければならないので、ここでは他動詞・e 授受 動詞・そしてそれと関連する ar 授受動詞について分析する。
(7)a.太郎が次郎を殴る a’.次郎が太郎に殴られる
b.[VoiP Sp [Voi’’ S [Voi’ [vP 太郎[Ag] [v’ [VP 次郎[Th] 殴 r] φ]] Voi]]]
(7)は他動詞の例である。直接受身が非能動態であるので Voi は「(r)are」が 選ばれる。そして直接受身なので、「太郎[Ag]」ではなく「次郎[Th]」がトラジェ クターになり、Sp に選ばれ、vP 内の「次郎[Th]」が e になる。「太郎[Ag]」が Sp に選ばれなかったので、Voi である「(r)are」との一致によって与格を付与され、
S に移動し、vP 内の「太郎[Ag]」が t になる。そして時制句と結合して、(7b’)
になる。
(7)b’.[TP Sub [T’ [VoiP 次郎[Th]i [Voi’’ 太郎[Ag]jニ [Voi’ [vP tj [v’ [VP ei 殴 r] φ]] are]]]
ru]]
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そして Sp である「次郎[Th]」が T である「ru」との一致によって主格を付与さ れ、TP の指定部 Sub に移動し、文の主語になり、VoiP 内の「次郎[Th]」が t にな り、文ができあがる。
(7)b’’.[TP 次郎[Th]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’’ 太郎[Ag]jニ [Voi’ [vP tj [v’ [VP ei 殴 r] φ]] are]]]
ru]]
b’’’.
次の与格を取る「吠える」は辞書では自動詞とされているが、直接受身にな るので、三上(1972)の動詞分類に従い、他動詞と見なし、前述の対格を取る 他動詞を対格他動詞と呼び、ここの与格を取る他動詞を与格他動詞と呼ぶこと にする。
(8)a.犬が太郎に吠える a’.太郎が犬に吠えられる
b.[VoiP Sp [Voi’’ S [Voi’ [vP 犬[Ag] [v’ [VP 太郎[Part] 吠え] φ]] Voi]]]
与格他動詞の場合、「太郎[Part]」がトラジェクターになるので、Sp に選ばれ、
vP 内の「太郎[Part]」が e になる。そして「犬[Ag]」は前述のとおり、Voi である「rare」
との一致によって与格を付与され、S に移動し、vP 内の「犬[Ag]」が t になる。
そして時制句と結合して、
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(8)b’.[TP Sub [T’ [VoiP 太郎[Part]i [Voi’’ 犬[Ag]jニ [Voi’ [vP tj [v’ [VP ei 吠え] φ]] rare]]]
ru]]
になる。そして Sp である「太郎[Part]」が T である「ru」との一致によって主格 を付与され、TP の指定部 Sub に移動し、文の主語になり、VoiP 内の「太郎[Part]」 が t になり、文ができあがる。
(8)b’’.[TP 太郎[Part]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’’ 犬[Ag]jニ [Voi’ [vP tj [v’ [VP ei 吠え] φ]] rare]]]
ru]]
b’’’.
e 授受動詞の場合、直接受身を作るのには対格名詞句である直接目的語が主語 になるのと、与格名詞句である間接目的語が主語になるという二通りがあるの で、それぞれ簡単に見ていく。先に対格名詞句の場合を見よう。
(6)a.太郎が次郎にペットを預ける
a’.ペットが太郎から次郎に預けられる a’’.次郎が太郎からペットを預けられる
c.[VoiP Sp [Voi’’ S [Voi’ [vP 太郎[Ag] [v’ [VP 次郎[Part] [V’ ペット[Th] 預 k]] e]] Voi]]]
まず、「ペット[Th]」がトラジェクターになるので、Spに選ばれ、vP内の「ペッ ト[Th]」がeになる。そして「次郎[Part]」がvである「e」との一致によって与格を
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付与され、「太郎[Ag]」がVoiである「rare」との一致によって奪格8を付与され、S に移動し、vP内の「太郎[Ag]」がtになる。そして時制句と結合すると、
(6)c’.[TP Sub [T’ [VoiP ペット[Th]i [Voi’’ 太郎[Ag]jカラ [Voi’ [vP tj [v’ [VP 次郎[Part]ニ [V’
ei 預 k]] e]] rare]]] ru]]
(6c’)になる。そして Sp である「ペット[Th]」が T である「ru」との一致によ って主格を付与され、TP の指定部 Sub に移動し、文の主語になり、VoiP 内の「ペ ット[Th]」が t になり、(6c’’)になる。
(6)c’’.[TP ペット[Th]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’’ 太郎[Ag]jカラ [Voi’ [vP tj [v’ [VP 次郎[Part]ニ [V’
ei 預 k]] e]] rare]]] ru]]
c’’’.
次は与格名詞句の場合である。「次郎[Part]」がトラジェクターになるので、Sp に選ばれ、vP 内の「次郎[Part]」が e になる。一方、「ペット[Th]」が v である「e」
との一致によって対格を付与され、「太郎[Ag]」が上述のとおりすれば、(6c)が
(6d)になる。
(6)c.[VoiP Sp [Voi’’ S [Voi’ [vP 太郎[Ag] [v’ [VP 次郎[Part] [V’ ペット[Th] 預 k]] e]] Voi]]]
8 与格でもいいが、すでに「次郎[Part]」の与格があるので、奪格が付与されると分析する。
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d.[TP Sub [T’ [VoiP 次郎[Part]i [Voi’’ 太郎[Ag]jカラ [Voi’ [vP tj [v’ [VP ei [V’ ペット[Th]
ヲ 預 k]] e]] rare]]] ru]]
そして Sp である「次郎[Part]」が上述のとおりすれば、(6d’)になり、文ができ あがる。
(6)d’.[TP 次郎[Part]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’’ 太郎[Ag]jカラ [Voi’ [vP tj [v’ [VP ei [V’ ペット[Th]
ヲ 預 k]] e]] rare]]] ru]]
d’’.
そして(6d’)の述語「預 k-e-rare-ru」の古語形「預 k-φ-ar-u」は一語化して、
接辞と態接辞が融合して「預 k-(φar)-u」になり、ar 授受動詞になるのである。
ところで、e 授受動詞が「動作主から参加者へ対象が移動する」という構図なの で、[Agent][Participant][Theme]という意味役割を取る項が必要になるが、ar 授受 動詞がむしろ「経験者が参加者からの対象の移動を経験する」と考えられるの で、[Agent]の代わりに[Experiencer]が必要になると想定する。すると、
(9)a.次郎が太郎からペットを預かる
b.[VoiP Sp [Voi’ [vP 次郎[Ex] [v’ [VP 太郎[Part] [V’ ペット[Th] 預 k]] φar]] Voi]]
という構造になる。そして 3.3 の分析に従えば、(ただし、ペット[Th]は φ から、
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太郎[Part]は ar から格付与される)
(9)b’.[TP Sub [T’ [VoiP 次郎[Ex]i [Voi’ [vP ei [v’ [VP 太郎[Part]カラ [V’ ペット[Th]ヲ 預 k]] φar]] φ]] u]]
b’’.[TP 次郎[Ex]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’ [vP ei [v’ [VP 太郎[Part]カラ [V’ ペット[Th]ヲ 預 k]] φar]] φ]] u]]
b’’’.
が得られる。
以上で直接受身文の分析を終える。