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第三章 動詞句とヴォイスの結合について

3.3 能動文

[Participant]、所有者[Possessor]3、場所[Location]、経路[Path]など)を、vの基本 的な性質によって[Agent]か[Experiencer]の意味役割の存在および(どちらかの)

性質を決め、さらにそれによって取る項の数や種類(NP[EA]かNP[IA]かNP[A]か)

を決める。VによってNP[IA]を取り、そしてvによってNP[EA]を取れば、他動詞に なる。NP[IA]かNP[EA]かどれ一つを取らなければ、自動詞になるのである。例え ばVが存在動詞なら[Location]・[Theme]を取るが、vが[Agent]も[Experiencer]も取 らない。そして[Location]なのでNP[A]、[Theme]なのでNP[IA]を取る。あるいはV が移動動詞なら着点[Goal]・[Theme]の存在を決め、vが[Agent]の存在を決める。

[Goal]なのでNP[A]を、[Theme]があればNP[IA]を、そして[Agent]があればNP[EA]を 取る。そして意味格を取る項が、付与された意味役割にしたがって格を受け、

後置詞句になる 4。例えば[Location]なら所格、[Path]なら経路格を受け、後置詞 句になる5

[Loc]は NP[A]の意味役割であり、その素性でもある。□はまだ具現(格具現;case realization)

されていない格のことである。そして NP[A]と□の一致によって□が NP[A]から[Location]という 値を与えられ、それによって□が所格ニとして格具現し、NP[A]が□によって[Locative]という格 素性を与えられ、所格を受ける(付与される)。つまり、[PP NP[A][Locative]]になる。

5 以下、[Agent]を[Ag]、[Experiencer]を[Ex]、[Theme]を[Th]、[Participant]を[Part]、[Possessor]

を[Poss]、[Location]を[Loc]、[Path]を[Pat]、[Goal]を[Go]と略す。また、主格[Nominative]を [Nom]、対格[Accusative]を[Acc]、与格[Dative]を[Dat]、所格[Locative]を[Loc]と略す。

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対動詞である非能格動詞と非対格動詞・e授受動詞 6を代表として検討する。ar 授受動詞について本稿ではそれがe授受動詞の直接受動から派生したと考えて いるので、3.3 で扱うことにする。そして存在文・存在文から派生した所在文・

存在文と関連する所有文・能力文などは 3.5 で取り扱う。

まずは有対他動詞から見よう。

(2)a.太郎が空き地に木を植える

b.[VoiP Sp [Voi’ [vP 太郎[Ag] [v’ [VP 空き地[Loc]ニ [V’ 木[Th] 植 w]] e]] Voi]]

(2b)は動詞句がヴォイスと結合する段階②を示している。他動詞かつ能動 の場合、態接辞Voiは無標の「φ」が選ばれる。そして外項である動作主「太郎

[Ag]」がトラジェクターになるので 7、立場Spに選ばれ、vP内の「太郎[Ag]」が空 名詞句eになる。「木[Th]」がSpに選ばれなかったので、他動化接辞vである「e」

との一致によって対格を付与される。そして段階③に入り、ヴォイスが時制句 と結合する。以上のことから、(2b)が

(2)b’.[TP Sub [T’ [VoiP 太郎[Ag]i [Voi’ [vP ei [v’ [VP 空き地[Loc]ニ [V’ 木[Th]ヲ 植 w]] e]]

φ]] ru]]

(2b’)になる。そして Sp である「太郎[Ag]」が屈折辞 T である「ru」との一致 によって主格を付与され、TP の指定部 Sub に移動し、文の主語になり、VoiP 内 の「太郎[Ag]」が痕跡 t になる。つまり、(2b’)がさらに

6 「e 授受動詞」という用語は第一章注 11(p.10)を参照。

7 第二章の(15a)(p.46)を参照。

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(2)b’’.[TP 太郎[Ag]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’ [vP ei [v’ [VP 空き地[Loc]ニ [V’ 木[Th]ヲ 植 w]]

e]] φ]] ru]]

b’’’.

になり、文ができあがる。

有対自動詞の場合、

(3)a.木が空き地に植わる

b.[VoiP Sp [Voi’ [vP [VP 空き地[Loc]ニ [V’ 木[Th] 植 w]] ar] Voi]]

(3a)で示したように動作主がないので、内項である対象「木[Th]」がトラジェ クターになり、Sp に選ばれ、vP 内の「木[Th]」が e になる。

(3)b’.[TP Sub [T’ [VoiP 木[Th]i [Voi’ [vP [VP 空き地[Loc]ニ [V’ ei 植 w]] ar] φ]] u]]

そして Sp である「木[Th]」が T である「u」との一致によって主格を付与され、

TP の指定部 Sub に移動し、文の主語になり、VoiP 内の「木[Th]」が t になり、文 ができあがる。

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(3)b’’.[TP 木[Th]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’ [vP [VP 空き地[Loc]ニ [V’ ei 植 w]] ar] φ]] u]]

b’’’.

非能格動詞・非対格動詞の分析は以上と同じなので、例だけをあげておくこ とにする。

(4)a.太郎が騒ぐ

b.[VoiP Sp [Voi’ [vP 太郎[Ag] [v’ [VP 騒 g] φ]] Voi]]

b’.[TP Sub [T’ [VoiP 太郎[Ag]i [Voi’ [vP ei [v’ [VP 騒 g] φ]] φ]] u]]

b’’.[TP 太郎[Ag]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’ [vP ei [v’ [VP 騒 g] φ]] φ]] u]]

b’’’.

(5)a.子が死ぬ

b.[VoiP Sp [Voi’ [vP [VP 子[Th] 死 n] φ] Voi]]

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b’.[TP Sub [T’ [VoiP 子[Th]i [Voi’ [vP [VP ei 死 n] φ] φ]] u]]

b’’.[TP 子[Th]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’ [vP [VP ei 死 n] φ] φ]] u]]

b’’’.

(4)は非能格動詞、(5)は非対格動詞の例である。e 授受動詞には与格付与 の問題があるので、(6)の例で分析する。まず、

(6)a.太郎が次郎にペットを預ける

b.[VoiP Sp [Voi’ [vP 太郎[Ag] [v’ [VP 次郎[Part] [V’ ペット[Th] 預 k]] e]] Voi]]

「太郎[Ag]」がトラジェクターになるので、Sp に選ばれ、vP 内の「太郎[Ag]」が e になる。そして「ペット[Th]」が選ばれなかったので、v である「e」との一致に よって対格を付与されるが、「次郎[Part]」も「ペット[Th]」と同じく目的語なので v である「e」との一致によって与格を付与される、と考える。すると、

(6)b’.[TP Sub [T’ [VoiP 太郎[Ag]i [Voi’ [vP ei [v’ [VP 次郎[Part]ニ [V’ ペット[Th]ヲ 預 k]]

e]] φ]] ru]]

になる。そして Sp である「太郎[Ag]」が T である「ru」との一致によって主格を 付与され、TP の指定部 Sub に移動し、文の主語になり、VoiP 内の「太郎[Ag]」が t になり、(6b’’)のように文ができあがる。

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(6)b’’.[TP 太郎[Ag]iガ [T’ [VoiP ti [Voi’ [vP ei [v’ [VP 次郎[Part]ニ [V’ ペット[Th]ヲ 預 k]]

e]] φ]] ru]]

b’’’.

以上で能動文の分析を終える。

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