第二章 ヴォイスの構造について
2.3 本稿におけるヴォイスの分類および種類の認定について
は、例えば 2.2.2 のように、ヴォイス、「(r)are」「(s)ase」という形態の機能に注 目し、そのヴォイス文の主語は付随的に何らかの働き・意味合いを担う、とい
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立 政 治 大 學
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ものである」と述べている。そして「主語と能動・受動の態対立の有無関係は、
前者があって初めて、後者が存在し得る」とも述べている。
つまり柴谷(2000)は、受動文を作るために能動文の目的語を主語として選 択するという、ヴォイスの形態がその主語の働き・意味合いを規定するのでは なく、動作主か対象のどちらかを文の主語に選択することによって、文が能動 であるか受動であるかを決める、というふうにヴォイスを定義していると言え るだろう。別の言い方では、ヴォイスの意味が形態・統語の操作によって付随 的にもたらされるのではなく、逆に意味がその形態・統語面を規定する、とい うのである39。
また、尾谷・二枝(2011)によると、対格言語には受動構文が存在するのに 対し、能格言語には受動構文が存在せず、代わりに逆受動構文(antipassive construction)が存在するのである。以上の対格言語・能格言語・受動構文・逆 受動構文をそれぞれアクション・チェインで示すと、それぞれ
(15)a.対格言語 b.能格言語
c.受動構文 d.逆受動構文
という構図である40。
対格言語においては、主格(NOM)が無標の格であり、対格(ACC)が有標
39 2.2.1 の類別的研究においては、ヴォイスを形態面・統語面・意味面から定義するのであ るが、意味面の定義はあくまで補助的にすぎず、ヴォイスを分類する際まったく役に立っ ていない。2.2.3 の統語的研究にいたっては、ヴォイスの意味面がほとんど注意されていな い。そして 2.2.2 の統合的研究においては、あくまでヴォイスの機能に注目し、その機能に よって主語を選択(2.2.2.1)・規定(2.2.2.2)する。つまり、以上の先行研究においては、
ヴォイスの形態面・統語面が、意味面より優位に立っているのであるが、柴谷(2000)は 逆にヴォイスの意味面を形態面・統語面より優位に立てようとしているのである。
40 ここで能格言語のことを持ちだしたのは、対格言語のみを考察する限り、2.2.3 で述べた ような分析になるのではないか、と考えたからである。ただ、本稿はあくまでヴォイスを 研究するものなので、能格言語に関する論述は先行研究の引用に留まらざるをえない。
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一部にすぎない」のに対し、「受動構文(passive construction)を形成するVの受 動形(passive-form)が、受動の態範疇(passive voice category)を即表現するも のではない」と述べている43。‧
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態(middle voice)」「静止態(stative voice)」が分類される。「中動態」は、一般的に「中相」という訳語をあてられているが、ここは尾谷・二枝(2011)の用語に従う。