4.3 調査結果の分析
4.3.1.1 非下降イントネーションでの発話が相対的に少なかったスクリプト
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4.3.1 【対立型】 - 非下降イントネーションに関する調査結果 -
ここでは、【対立型】「非下降の吧」のうち、非下降イントネーションでの発 話が、比較的少なかった文の性格を検討することによって、【対立型】の性格を より詳細に記述する。また、それに基づくと、【対立型】という名称を【正当性 主張型】と改めることが適当である旨、論ずる。
4.3.1.1 非下降イントネーションでの発話が相対的に少なかったスクリプト 先述のとおり、1 番から 4 番までが【対立型】と見なせる文である。被験者は、
これら【対立型】の文を、ほぼ非下降イントネーションで発話しているが(1 番 は 18 名、3 番と 4 番は 20 名全員が非下降イントネーションで発話)、2 番の
「沒錯 班長 你講的話惹人厭了吧 謝謝你毀了我們開學的第一天」は、非下降イ ントネーションで発話しなかった人数が 12 名と際立って多い。しかし、非下降 イントネーションで発話しなかった 12 名のうち 8 名は、その後のインタビュー の際には、その「非下降の吧」が自然な文であると回答している。
録音の際に非下降イントネーションで発話しなかった人数が多いということは、
2 番の「吧」の文には、第一印象としては【対立型】を想起しにくい面があると いうことであろう。しかし、文に関する説明を受けると、それなりに【対立型】
に相当する性格が見出されるため、【対立型】の文として許容する被験者が増加 したものと考えられる。では、このような調査結果をもたらす 2 番の「吧」の文 には、どのような特徴があるのだろうか。それを次節で考える。
4.3.1.2 話し手による主張の言明 まず、2 番のスクリプトを示す。
2. 状況説明:九年仁班的同學在開學第一天開心的聊天。
A:好快喔我們升上九年級了耶 B:對呀 好期待去畢旅喔
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C:各位啊 再兩天就是九年級第一次的模擬考了喔 B:吼 班長 你為什麼要提這件事啦 很掃興耶 A:就是說嘛 是過兩天又不是明天 這麼早煩惱嘛
B:沒錯 班長 你講的話惹人厭了吧 謝謝你毀了我們開學的第一天
確認されるように、2 番は、学期が始まった初日に楽しく雑談している時、突 然、場の空気に冷や水を浴びせるような話をした C に対する発話である。ここ で注意されるのは、話し手 B と、聞き手 C との間には9、「非下降の吧」の文が 言語化される時点より前に、言語として明確化された意見対立が見られないとい う点である。ただし、明確な意見対立がないのは、3 番の場合も同じであって、
その点にも注意しなければならない。
3.状況説明:A 向朋友 B 詢問遊戲破關的方式。
A:這關要怎麼過啊 我已經死了十幾次了 B:很簡單啊 把地圖給門口的守衛就好了 A:真的嗎 有這麼簡單喔
B:不信的話就試試看啊 A:真的耶 過了
B:我就說很簡單吧
3 番では、A がゲームの攻略法に関して B に質問している。ここで A は、B の 言うことを鵜呑みにはしていないものの、B との間に明確な意見対立があるわけ ではない。その点、先の 2 番と共通しているようなのであるが、しかし、3 番の
「我就説很簡單吧」は、すべての被験者が非下降イントネーションで発話してい る。では、2 番と 3 番は何が異なっているのだろうか。
9 当該「吧」の文の話し手を、単に「話し手」とのみ記す。また、「聞き手」とは、当該
「吧」の文の聞き手のことである。
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3 番「我就説很簡單吧」の場合は、「非下降の吧」の発話以前に、話し手 B が 聞き手 A に対して「很簡單啊 把地圖給門口的守衛就好了」と述べ、ゲームのク リアの仕方が簡単である旨、主張している。しかし、2 番「沒錯 班長 你講的話 惹人厭了吧 謝謝你毀了我們開學的第一天」では、談話全体を通じて、話し手で ある B(及び A)と、聞き手 C との間の対立が表面化していくが、先に触れた とおり、話し手は聞き手に対して「非下降の吧」の発話以前に何らかの言明をし ているわけではない。
以上をふまえると、【対立型】の「非下降の吧」が成立するためには、話し手 と聞き手の間に対立があった、ということのみを重んじるのではなく、話し手が それ以前に言明していた主張の正しさが明らかになるというのが、より重要な条 件であると考えられる。たしかに、1 番「我就説不要來吧 趕快下山啦」と 4 番
「你看真的下雨了吧」では「非下降の吧」の発話以前に、話し手はその主張を言 明している。 それぞれのスクリプトを引用する。
1.状況説明:B 很怕鬼,但是被朋友 A 硬是拉去後山試膽。
A:聽說有人最近在學校後山看到怪東西 要不要去看看 B:我才不要 而且今天不是要練球嗎
A:走啦 你不好奇是真的還假的嗎 B:好吧 只去一下下喔
(走了一段路後,兩人感覺空氣變的陰森) A :總覺得有點陰森耶 而且好像有點冷 B:我就說不要來吧 趕快下山啦
4.状況説明:A 感覺雲層很厚,判斷即將下雨,但朋友 B 不相信。
A:我們是今天下午要系烤嗎 等一下感覺一定會下雨 跟總召說改天吧
B:是下午沒錯啊 但是我們確認了很多次天氣預報 今天絕對不會下雨的 不要
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烏鴉嘴
A:就不要等等真的下雨 B:你覺得會下雨就不要來啊 (下午下了大雨)
A:你看真的下雨了吧 B:還不都你的烏鴉嘴害的
見られるように、1 番では、話し手 B が、その発話以前に「我才不要」と言明 して、裏山に行くことを拒否している。また、4 番においても、話し手 A は、
「非下降の吧」の発話以前に「等一下感覺一定會下雨 跟總召說改天吧」と主張 を言明しているのである。
以上をふまえると、【対立型】においては、話し手と聞き手の対立ということ よりも、話し手がそれ以前に言明していた主張の正しさが明らかになることが、
その成立の要件になっていると考えられる。したがって、その名称も【対立型】
より【正当性主張型】とするほうが適切であり、以下、本研究においては、その 名称を用いることとする。
4.3.2 【正当性主張型】(旧【対立型】) - 下降イントネーションに関する調 査結果 -
ここでは、まず【正当性主張型】「非下降の吧」を、下降イントネーションに 変えて発話してみると、その文の適格性はどのようになるか、という問題の検討 を行う。その結果として、「吧」の確認要求用法の C タイプには、「認識欠如 の是正」という名称が適切ではなく、「認識訂正の要求」と称するほうが妥当で あることを主張する。
4.3.2.1 「命題確認」乃至「推量」という解釈の不成立
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前述した通り、【正当性主張型】と見なされる 1 番から 4 番は、2 番「沒錯 班長 你講的話惹人厭了吧 謝謝你毀了我們開學的第一天」を除いて、ほぼ全員が 非下降イントネーションで発話している。また、2 番「你講的話惹人厭了吧」以 外の【正当性主張型】の文は、それを下降イントネーションに変えて発話した場 合、不自然に感じる被験者が多数を占める(1 番 15 名、3 番 17 名、4 番 14 名。2 番のみ 5 名と相対的に少ない)。そのように、下降イントネーションに変えて発 話すると不自然に感じる理由に関する被験者の回答のうち、注目に値するものの 一つは、コメント「1↓②」及び、コメント「3↓②」の「確認の余地がない」
というものであった。
まず、上記、コメント「1↓②」のような記載の意味するところについて説明 する。本研究では、巻末の付録 2 に、被験者のコメントを集約した。それらは、
a. スクリプトごとに、b.【当該の「吧」の文を「非下降の吧」として解釈するこ との適格性】及び【当該「吧」の文を下降イントネーションで発話した場合の適 格性】に関するコメントをまとめ、c. ①から始まる通し番号を付してある。そ れらのコメントを本文に引用する際は、「a. スクリプト番号、b. 非下降/下降の 別、c. 付録 2 におけるコメントの番号」の順に記す。たとえば上に記した、コ メント「1↓②」であれば、「a. スクリプト 1 番、b. 非下降イントネーションで 発話した場合の適格性に関するコメント、c. 通し番号②」ということを意味し ている。
では、先のコメント「1↓②」及び、コメント「3↓②」の「確認の余地がな い」という言及に戻る。まず、1 番、3 番のスクリプトを引いておく。
1.状況説明:B 很怕鬼,但是被朋友 A 硬是拉去後山試膽。
A:聽說有人最近在學校後山看到怪東西 要不要去看看 B:我才不要 而且今天不是要練球嗎
A:走啦 你不好奇是真的還假的嗎 B:好吧 只去一下下喔
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(走了一段路後,兩人感覺空氣變的陰森) A :總覺得有點陰森耶 而且好像有點冷 B:我就說不要來吧 趕快下山啦
3.状況説明:A 向朋友 B 詢問遊戲破關的方式。
A:這關要怎麼過啊 我已經死了十幾次了 B:很簡單啊 把地圖給門口的守衛就好了 A:真的嗎 有這麼簡單喔
B:不信的話就試試看啊 A:真的耶 過了
B:我就說很簡單吧
1 番「我就説不要來吧 趕快下山啦」の場合、先に話し手 B が、裏山に行くの は良くないという主旨の発言をしたことは、B にとって明白であり、それを聞き 手 A に確認するとは考えにくい。これは 3 番「我就説很簡單吧」でも変わると ころがなく、話し手 B が、ゲームクリアの方法が簡単だと発言したことは、B に とって確認を要する事柄には当たらないであろう。さらに、被験者からの特段の
1 番「我就説不要來吧 趕快下山啦」の場合、先に話し手 B が、裏山に行くの は良くないという主旨の発言をしたことは、B にとって明白であり、それを聞き 手 A に確認するとは考えにくい。これは 3 番「我就説很簡單吧」でも変わると ころがなく、話し手 B が、ゲームクリアの方法が簡単だと発言したことは、B に とって確認を要する事柄には当たらないであろう。さらに、被験者からの特段の