2.1 ダロウの確認要求用法に関する先行研究の概要
2.1.3 三宅(2010)
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立 政 治 大 學
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「何を言っているんですか、今、3 時でしょう。」 木村・森山(1992)
また、木村・森山(1992)は、このような意味でのダロウがネと対立すると述べて いる。ネは単純に同意を予想し、認識のずれを意識しないものとされるのに対し て、ダロウの方は、何らかの認識のずれがあることを表すというのである。よっ て、「押し付け型の確認」は、「伺い型の確認」とは異なり、ダロウとネが共起 できないとされている。
2.1.3 三宅(2010)
三宅(2010)では、大きく「命題確認の要求」と「知識確認の要求」という 2 分 類が設けられている。「命題確認の要求」は「聞き手に対して、命題が真である ことの確認を求めるもの」で、一方の「知識確認の要求」は、「聞き手が当該知 識を有していることの確認を求めるもの」である。三宅(2010)はさらにこの「知 識確認の要求」を、「潜在的知識の活性化」と「認識の同一化要求」とに下位分 類している。
2.1.3.1 「命題確認の要求」
次に「命題確認の要求」と考えられる用例について、まず(11)から(12)までを 見る。
(11)「金沢、寒かったでしょう」「ええ、雪がいっぱい降ってて」三宅(2010) (12)「ねえワタナベ君、正直言って私の料理って私の料理ってそんなに期待 していなかったでしょ?見かけからして」 「まあね」 三宅(2010)
三宅(2010)は、「命題確認の要求」の例では、例(11)のように、「金沢が寒か った」という話し手にとって不確実なことについて、聞き手に確認を求めている ことが表されると述べている。また、これらにおいては、命題の真偽が確認の対
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象とされる(命題が真であることの確認を要求する)。それゆえに「命題確認の 要求」と称されるわけである。
2.1.3.2 「知識確認の要求」
先述のとおり、「知識確認の要求」はさらに下位分類されているが、まずは (13)から(15)までを見る。
(13)「あのね、 駅の地下街にね、『テイク』ってブティックがあるでしょ」
「うん、 ある」 三宅(2010) (14)「この間、私、東京に帰ったでしょう?」「はあ」
「あのとき、立川に行ってみたんです」 三宅(2010) (15)「ほら、 こういう広告がいっぱい新聞に載っているでしょう。新聞社の経
営は安い購読料ではとてもまかなってはいけないので、 こういう広告収
入で経費を出すのです」 三宅(2010)
三宅(2010)によると、上の例(13)は「~があることを知っているでしょ」と言 い換えても大差ない。また、三宅(2010)は、これらを、聞き手の知識を確認する ことによって、話し手と聞き手が潜在的に共有しているはずの知識を活性化させ る機能を有するものとして、「潜在的共有知識の活性化」という名称を与えた。
このタイプの特徴としては、“ホラ”と共起できるという点が重要であるとされ ている。
一方、次の例(16)から(17)は「潜在的共有知識の活性化」とは異なる類である。
(16)「へえ。いつからお姉ちゃんとこ、お手伝いさん置いたのかと思った」
「あんな狭いアパートにお手伝いさんがいるわけないでしょ」 三宅(2010) (17)「エーッ本気でお仕事に出るんですか?」「もちろん本気ですよ」「そん
な急に」「急ではありませんよ。前々から言ってたでしょう」三宅(2010)
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三宅(2010)は、例(16)と(17)が、聞き手の知識を確認することによって、聞き手 に話し手と同じ認識を持つことを要求する性格を持つ点で共通していると述べ、
これらを「認識の同一化要求」と呼んでいる。
2.1.4 蓮沼(1995)
蓮沼(1995)は、ダロウに限らず、ジャナイカ、ヨネも考察しているが、ここで はダロウの確認要求用法に関する点のみに言及する。蓮沼(1995)においては、
「推量確認」「共通認識の喚起」「認識形成の要請」という三つの区分が設けら れている。順に確認していく。
2.1.4.1 「推量確認」
蓮沼(1995)は、「推量確認」が、聞き手の知覚・感情・判断など、本来的にそ の直接の経験者・持ち主である聞き手に帰属する情報や、聞き手の領域の情報に ついて、話し手の推測が正しいことを確認する用法であると説明している。以下 の例文(18)から(21)がそれに該当する例である。
(18)「疲れたでしょう。ゆっくり休んでね。」 蓮沼(1995) (19)「昨日の夕方、三宮センター街を彼女と歩いていただろう。」 蓮沼(1995) (20)「私の料理の腕前上がったでしょ。」 蓮沼(1995) (21)[お酒を飲んで自分の顔が見えない状態で]
「僕の顔、赤いだろう。」 蓮沼(1995)
2.1.4.2 「共通認識の喚起」
蓮沼(1995)によると、「共通認識の喚起」は、聞き手が忘れている、あるいは、
まだ気づいていない事柄について、話し手が聞き手の認識を喚起し、その成立状 態を確認するという特徴を持つ。そして、喚起の対象となる知識・情報には様々 なものがあると指摘されている。例(22)から(24)まで及び(4)を観察していく。
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(22)[タクシーの運転手に行く先を指示して]
「あそこに郵便ポストが見えるでしょう。そのすぐ先の角を右に曲がって ください。」 蓮沼(1995)
(4)「同級生に加藤さんっていただろう。背の高い男の子。」
蓮沼(1995)
(23)A:「子供って、みんなカレーが好きでしょ。」
B:「そうね。家の子もみんな好きだわ。」 蓮沼(1995)
(24)「仮に 30 人来るとするだろう。そしたら、一人 5 千円の会費で、15 万く らいの予算でいけるよ。」 蓮沼(1995)
2.1.4.3 「認識形成の要請」
蓮沼(1995)は、「認識形成の要請」を、通常の認識能力を持っていれば認識で きて当然といった見込みに基づいて、聞き手の認識形成を要請する用法だとして いる。
(25)「だから言ったでしょ。あの人には気をつけなさいって。」 蓮沼(1995) (26)[帰りの遅い夫を非難して]
妻:「遅いじゃないの。」
夫:「仕方がないだろう。仕事が忙しいんだから。」 蓮沼(1995)