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第 4 章 「吧」の確認要求文についての言語調査の結果分析

4.1 調査の概要

本節では、本研究が施した言語調査の手順や内容・対象等について具体的に記 す。

4.1.1 予備的調査

第 1 章で述べたように、非下降イントネーションで発話される「吧」の確認要 求用法は、使用・不使用に個人差が認められる。本研究では、その個人差を最適 な観点から分析できるように、予備的な調査を 2 回実施した。1 回目の予備的調 査では 20 代と 50 代の男性と女性に、前掲した例(1)と(47)の 2 文が、非下降イン トネーションで発話されるかどうかを尋ねた。その結果、「非下降の吧」の使用 は、若年層を中心とするものであることが明らかになった。ただし、個人差が生 じるテーマに関して言語学的にアプローチするためには、まず調査対象の選択基 準を定める必要がある。1 回目の予備的調査においては、20 代と 50 代の間で、

使用・不使用の差が顕著であったが、同じ 50 代でも、若年層との接触の度合い によって、結果も異なってくるのではないかと考えられるため、2 回目の予備的 調査は 20 代の男性と女性に絞って実施することとした。

4.1.2 本調査の概要

次に本調査について述べていく。本研究における本調査にて、録音及びインタ ビューに用いた例文7は、基本的には、台湾中国語の話し言葉コーパス COCT2017 から集め、それを、より自然な台湾中国語に近づけるため、一部修正・加筆を行 った。ただし、本研究の筆者の内省においては存在するものの、コーパスからは 見出せなかったタイプの例文に関しては作例を用いた。さらに、使用する例文の 決定にあたっては、すべて言語学専攻の大学院生 2 名及び非言語学専攻の大学院

スクリプト 3 番は王(2013)の原文通り引用したものである。

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生 2 名によるネイティブチェックを受け、筆者が 4 名のコメントを集め、内容を 修正した。このチェックを経たことによって、14 の会話スクリプトに、台湾中国 語として容認度の高い文を揃えられたと考える。

また、14 個の会話スクリプトの構成について説明していく。3 章で提示したよ うに、本研究は「非下降の吧」には【対立型】と【新情報型】の 2 種類があると 考えている。この立場から、聞き手情報・話し手情報の別、文内容がプラスイメ ージであるかマイナスイメージであるか、といったさらなる条件を設定し、それ をもとにスクリプトを作成した。その結果、【対立型】のスクリプトが、番号 1 から 4 の計 4 個で、【新情報型】は番号 5 から 14 の計 10 個となった。【新情報 型】の方の数が多くなっているわけだが、これは、予備的調査の結果、情報の所 属先や、文内容がプラスイメージであるかマイナスイメージであるかといった点 で、【対立型】の場合よりも細かく調査したほうが良いという見通しを持ったた めである。

次頁に示す表 4 は、本調査に至る前の 2 回の予備的調査及び本調査の調査内容 をまとめたものである。

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表 4 予備的調査から本調査までの調査内容

調査の内容 一回目の予備的

調査

 20 代男性・女性、50 代男性・女性それぞれ 6 名ずつに調査した

 単文で構成される例文二つに関し、使用・不使用の二択というかた ちで質問した

 使用人数を統計するため、録音は取らなかった 二回目の予備的

調査

 20 代の男性 7 名と女性 8 名に調査した

 会話スクリプトの数は 5 であった

 フェイスシート、録音と自然度調査との三段階調査であった

 読み上げる前に被験者にスクリプト内容を理解するのに十分な時間 を与えた

 録音は非対面で、SNS 経由で録音・送信をしてもらった

 フェイスシートと自然度調査も非対面で、オンラインアンケートに した

本調査  20 代の男女各 10 名に調査した

 会話スクリプトの数は 14 であった

 録音とフォローアップインタビューとの二段階の調査としたた

 読み上げる前に被験者にスクリプト内容を理解するのに十分な時間 を与えた

 録音とフォローアップインタビューは全て対面で実施した

4.1.3 本調査の方法

本調査は、次頁の図 1 で示すように、2 回に分けて実施した。

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図 1 本調査の調査手順

1 回目の調査では、付録に提示した 14 個の会話スクリプト8すべてを被験者に 読み上げてもらい、録音を取った(2019 年 10 月中旬から下旬・政治大学キャンパ ス内において実施)。続いて、1 回目の調査から 2 週間後に 2 回目の調査を行った (2019 年 11 月上旬から中旬・政治大学キャンパス内において実施)。敢えて 2 週 間の間隔を作った理由は、被験者が録音を取った直後であると、それが文末助詞 に関する調査であると気づく可能性があるためである。2 回目は、14 個の会話ス クリプトに存する「吧」の文を提示し、「非下降の吧」及び「下降の吧」として の解釈に関して、被験者が直観的にどう感じるかを答えてもらった(以下、下降 イントネーションを「↑」、非下降イントネーションを「↓」という記号を用い て表すことがある)。実際のフォローアップインタビューでは「この前、あなた は、_番の例文を↑ /(或いは↓)で発音しましたが、↑と↓それぞれの場合だ と、文の意味にどのような印象を持ちますか」と尋ねた。意味を回答するのが難

8 この会話スクリプトは「非下降の吧」と解釈可能な文を会話に仕込んだものである。4 章で述べたように、

会話は台湾中国語母音話者 4 人によるネイティブチェックを受けている。

①会話スクリプトを黙読して もらう

②会話スクリプトを読み上げ てもらい、発表者が録音を取

った。

(①と②から二週間経った後)

③研究対象となる「吧」が丸 で囲まれた会話スクリプトを 渡し、インタビューを行う。

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しい場合、被験者には、そのイントネーションで発話すると、文が自然であるか 否かについて回答してもらった。

4.1.4 本調査の調査対象

今回の調査では、台湾中国語母語話者である 20 代の男性と女性それぞれ 10 名 を調査対象としている。また、調査対象たる 20 名は全員が同じ台湾台北にある 国立大学に所属している学生である。