第五章、 結論
5.2 今後の課題
本研究では、主に事象における他動性の意味特徴と語彙概念構造により、日 本語の非意図的な他動詞文の多義性を考察したが、なおいくつかの問題点が残 されている。
①語彙レベルについて
第三章で既に言及したように、本研究は基本的に統語的なレベルによる意図 性の喪失に着目している。例えば、「私たちは空襲で家財道具を焼いた。」「長 男が誤って近所のガラスを割った。」「娘が熱を出した。」のように、本来の動 詞述語そのものは、意図性を表すものであるが、なんらかの統語的な特徴など により、文全体は非意図的な他動詞文になる。それに対し、「見かける」など のものは、最初から意図性が薄く感じられ、あるいは自ら意志的に表すことす らできない、という語彙的な非意図動詞である。非意図的な他動詞文の構成に ついては、引き続き検討していきたい。
②無生主語の他動詞文(原因主語の他動詞文)について
本研究の第二章では、非意図的な他動詞文についての前提として、主体が有 生主語であるという条件を設けていた。しかしある場合の無生主語は、人間な どの影響によってガ格に出現し、事象の成立を促している。これは、原因主語
X Y X′
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の他動詞文ともいう。意図性から見ると、無生主語であるゆえ、非意図的なも のとして扱ってもよいと考える。
(5)母の死が彼を変えた。 (母が事故に遭った)
(6)手紙が胸を打った。 (先生が手紙を書いた)
(7)酒が原因で家庭を壊した。 (父が酒を飲みすぎた)
(8)太陽が光を照らす。
(9)雤が身を打つ。
(5)~(7)のような文は(8)(9)の一般の無生主語の他動詞文(自然現 象など)に比べると、背景において通常有生主語による原因事象が潜んでいる という違いが見られる。これについては、今後も本研究の延張として考察して いきたい。
本研究では、まだ至らないところも多いかと思うが、本稿で得た結果をもと にして、今後もさらにこれらの問題を課題として取り組んでいきたい。
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