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第五章 結論

馬琴の『椿説弓張月』は源為朝の渡琉伝説に基づいた物語で、保元の乱に敗 れて伊豆大島に流される為朝は琉球に渡って、琉球の王女である寧王女に協力 して内乱を治めた。しかし戦いの後、琉球の王位は空位のままになり、琉球の 漁師が人魚を獲ったことがきっかけで、最後は為朝の息子である舜天丸が琉球 王国の王になる。本論文では『弓張月』における琉球の王権問題について検討 し、王位の譲り合いの中に人魚が出現すること、また舜天丸が王位を継承する ことなどの意味を検討した。

琉球の王権問題を論ずる前に、まず当時、すなわち江戸時代の人々及び馬琴 の琉球に対する認識を明らかにする必要がある。したがって、第二章ではまず 琉球の政治家である羽地朝秀をはじめ、琉球に関心がある日本の儒学者新井白 石、及び国学者である伴信友の琉球認識について検討した。上述した人物の琉 球認識を分析した結果、羽地朝秀は琉球の政治家であり、政治上の立場は新井 白石及び伴信友のそれとはおのずから違うものだが、彼の琉球認識は白石と伴 信友と似ていて、琉球人の先祖は日本人であることを主張していることが分か った。このように主張した原因はやはり当時の歴史背景と関わっていると思わ れる。当時の琉球はすでに薩摩に侵攻され、その支配下になり、琉球国王であ る尚寧王が書かされた島津氏への起請文においても、琉球は古来日本の附庸で あることを認め、さらに日本への忠誠を誓っている。しかしながら、琉球は中 国との朝貢関係はまだ続けている。「日琉同祖」という概念を主張することに より、日本の直接の支配下にある琉球にとってこれは日本に忠誠を示す手段の 一つで、日本との不必要な争いも避けられるであろう。また侵略者の日本にと って、こうした血縁関係の操作により、自分の侵略も正当化できると考えられ る。

『弓張月』を書く馬琴は、『南島志』や『中山世鑑』などの資料を参考し、

また影響も受けた。馬琴は当時羽地らが主張する日琉同祖という概念を受け入 れ、さらに自ら『日本書紀』の彦火火出見尊と豊玉姫の伝説を琉球の開闢伝説 と結び付け、同祖の概念を深めようとしたと思われる。『弓張月』における琉 球認識は「日琉同祖」という概念に深く影響されていることがわかる。

第三章においては、人魚の出現の意味を考察した。中国古来の人魚について

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の記述を整理してみると、人魚の出現に伴って不幸なことも起きるが、必ずし も凶兆であるとは見なされていないと思われる。また、人魚の油や骨などに不 思議な効果があり、人魚は当時の人々にとって貴重なものだと思われる。一方、

日本の文献の中の人魚のイメージは中国から大きな影響を受けている。また、

江戸時代以前から人魚の出現は常に大事件が起きる前兆と見なされていた。江 戸時代に入ると、人魚に対するイメージがほぼ変わらないが、人魚の体は薬的 効果があり、さらに人魚の肉を食べれば不老不死の力を得るという不思議な効 能があるイメージが強くなった。また江戸時代に記録した人魚はほぼ女性で、

上半身は人の様子で、下半身は魚の模様と記されている。

『弓張月』で、馬琴は『日本書紀』巻十一「仁徳天皇」の条の記事に基づい て、似たようなパターンを作った。しかし、『日本書紀』では浦人が献上した ものは鮮魚で、『弓張月』での献上品は人魚である。馬琴が人魚を献上品とし て選択した理由は前述した人魚が持つイメージと関わると考えられる。その一 つは人魚の体についての不思議な効能である。人魚の肉は不老不死の効能があ り、貴重な献上品とされてもおかしくないと思われる。また、人魚の出現が常 に大事件に伴って、『弓張月』では、人魚の出現は王権交代の予兆とされるで あろう。さらに、前にも指摘した通り、江戸時代に記録した人魚はほぼ女性で、

上半身の様子は人で、下半身の様子は魚である。この「人」と「魚」の結合体 の出現により、舜天丸は入水した母を想起した。その後舜天丸は白縫の魂が憑 いている寧王女がいる中城へ行き、唯一琉球王国の王室の血脈を受け継いだ寧 王女もこのことによって、実は十二年前にもう死んでいることを他の人たちに しらせようとし、自害して白骨と化した。長い間定まらない王位も人魚の出現 によってようやく決まった。人魚が持つイメージが王権とは直接の関連がない が、馬琴は上述した人魚のイメージを利用し、人魚を琉球王国の王権交代の予 兆として、琉球王国の王位が空いたままの状況を打破する装置にしたと考えら れよう。

続いて第四章では、寧王女、為朝、そして舜天丸三人の継承資格、また舜天 丸の継承について論じた。寧王女はすでに亡くなって、為朝も昇天し、最後に 琉球王国の王位を継承したのは舜天丸である。馬琴は「孝」という概念を投げ 出して、「孝」に背いてはいけないと、舜天丸に王位を継承する正当性と必然 性を与えた。馬琴の作品の特色の一つは、「因果応報」、「勧善懲悪」、「仁義忠

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孝」などの要素が含まれることで、創作の中にそれらの要素を作品に入れるの も合理的だと思われる。『弓張月』の物語は黒田氏が指摘しているように、「忠 と孝」をめぐっている作品と言えるであろう。しかし、『弓張月』の後半の物 語から見れば、為朝はずっと「忠」に基づいて行動し、武士としての忠義の精 神を貫こうとしている。それに対して、舜天丸の行動は常に「孝」を考慮して 判断を下すのである。馬琴はひたすらに「忠」と「孝」を融合するではなく、

為朝と舜天丸に各自の理念を貫こうとする。

また、三宅氏が指摘した舜天丸の役職の問題について、もし三宅氏の論点に 従えば、曚雲と戦っている時点ですでに琉球王国の役職に就いて為朝は琉球王 国の謀反人であろう。そうしたら、為朝の軍勢に加えた舜天丸も為朝と同様、

謀反人の一員と言えるであろう。むしろ図1 の示したように、役職に就くこと によって、舜天丸はただの外来者でなくなり、琉球王国の一員になると考えら れる。こうして、舜天丸は琉球王国との繋がりも深くなり、琉球王国での立場 も固くなると思われる。

図1:舜天丸の役職

馬琴は為朝と舜天丸の出身を繰り返し提起し、為朝父子は清和天皇の後胤で あることを強調する。そして、外来者である舜天丸の即位について、第二章で 述べたように、馬琴は「日琉同祖」の概念を意識して、日本の伝説と琉球の伝 説を結合させ、古来より琉球が日本の宗属国であることを繰り返し強く主張す る。また、役職に就くことによって、舜天丸は琉球王国との繋がりが深くなり、

王位継承での立場も固くなると思われる。こうした操作を通じて、舜天丸の支

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配に正統性を与えて、即位資格の問題も解決した。上述した王権に関する問題 の操作も、馬琴の「日琉同祖」の概念に基づいたものと考えられよう。

以上の点から見ると、『弓張月』に馬琴の「日琉同祖」思想が深く反映され ていることが分かる。この時代に多くの人々が琉球に対して関心を持った原因 はやはり薩摩の琉球侵攻後、琉球の主権がずっと曖昧なままになっていたこと にあると考えられる。白石の『南島志』は作者が琉球の使節から得た情報をま とめながら自分の琉球意識も含ませたもので、信友も同様、琉球についての考 証をしながら、自分の信条を反映した。馬琴が『弓張月』を書く原因のひとつ は、馬琴自身が琉球に対して関心を持つことであると思われる。小説家である 馬琴は、小説によって自分の琉球意識を示している。また、読本は当時に流行 した小説本で、多くの知識人もよく読むと思われる。『弓張月』も当時の日本 の人々に琉球の領土の主権を言い立てる手段の一つと考えられよう。

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【表2:日本の人魚についての記述(江戸時代以前)】

文本 名称 形状 その他

『日本書紀』 × 人の如く ×

『聖徳太子伝 暦』

人魚 × 国禍

『倭名類聚抄』 人魚

(鯪 魚、陵

魚)

人面魚身 声は小児の如く

『古今著聞集』 人魚 人のような首 ×

『吾妻鏡』 × 死人の如く 大事件が起きる前兆

『太平記』 人魚 × 人魚の油を灯油として使 う。またその火は昼のよう

に明るい。

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【表4】

番号 テキスト

1 清和天皇七世の皇孫、鎮守府将軍陸奥守源義家朝臣の嫡孫、六

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