5-1 過去の災害実績調査
当該急傾斜地又はその周辺で発生した崩壊について,下記①~⑤に示す調査を行い,
崩壊の規模及び被災状況を把握し,危害のおそれのある土地等の範囲を設定するための 資料とする。
① 発生年月日,発生時刻,発生位置,災害発生の要因
② 崩壊の規模(表Ⅲ-5.1,図Ⅲ-5.1参照)
③ 人的被害の状況(死者・負傷者の数),被災家屋の構造(木造・非木造),
被害程度(全壊・半壊・一部破損)及び被災戸数
④ 降雨量
⑤ その他(土質定数とその求め方)
表Ⅲ-5.1 崩壊の規模
H1 急傾斜地の高さ θ 急傾斜地の傾斜度
H2 崩壊高 D 崩壊深
W1 崩壊幅 W2 土石等の広がり幅 L1 崩壊長 L2 土石等の到達距離
- 土石等の量(実績)
図Ⅲ-5.1 崩壊状況の模式図
崩壊頭部
W1
A A’
A’
A
崩壊前地盤線
L2
W2
H1
H2
D
L1
解 説
(1)発生位置の表記方法
災害発生位置については崩壊地の中央を通る縦断線が急傾斜地の下端と交わる点を記 載するものとし,その位置を平面直角座標系の(X,Y)(m)で表示する。
(2)崩壊の規模の把握方法
崩壊の規模については,資料のある範囲内で以下の精度・単位で取りまとめる。
表Ⅲ-5.2 崩壊の規模の把握方法
記号 項 目 単位 精 度 記号 項 目 単位 精 度 H1 急傾斜地の高さ m 小数点第1位 θ 急傾斜地の傾斜度 m 小数点第1位
H2 崩壊高 m 小数点第1位 D 崩壊深 m 小数点第1位
W1 崩壊幅 m 小数点第1位 W2 土石等の広がり幅 m 小数点第1位 L1 崩壊長 m 小数点第1位 L2 土石等の到達距離 m 正数
- 土石等の量(実績) m3 正数
*災害実績は,点検結果や既存資料などにより調査を行う。
(3)降雨量の表示
降雨量については崩壊発生までの連続雨量,24 時間雨量及び崩壊発生直前の1時間雨 量,10 分間雨量等について調査を行う。記載にあたってはこれらのいずれの値であるか を明示する。また,計測された雨量観測所の名称・位置も記載する。
5-2 想定される崩壊に関する調査
解 説
想定される崩壊による土石等の量の推定は,次の 5-2-1 及び 5-2-2 の手法により行う。
複数の推定結果が得られた場合には,現地の斜面状況,周辺の災害実績などを考慮し,
最も適切な結果を採用する。
5-2-1 災害実績調査に基づく方法
解 説
『当該急傾斜地周辺で同様な地形,地質状況の斜面』とは以下の 3 つの条件をすべて満 たす斜面とする。
・地理条件:当該急傾斜地の両端から連続する急傾斜地の下端に沿って 100m 程度の範囲 内
・地形条件:尾根型斜面・谷型斜面・平行斜面の地形区分が同様で,かつ傾斜度・高さ が同程度の急傾斜地
・地質条件:1/50,000 程度の表層地質図で同様の地質条件となる急傾斜地
災害実績調査に基づき,当該急傾斜地周辺で同様な地形地質状況の斜面で発生した表 層崩壊を参考に土石等の量を推定する。
がけ崩れ災害実態データ等を用いて過去の災害資料を集計・整理し,統計的手法によ り,地形・地質に応じた土石等の量を推定する。
当該急傾斜地及びその周辺で発生した過去の災害実績,既往文献等を参考に,今後当 該急傾斜地の高さに応じて発生が想定される崩壊による土石等の量(以下「土石等の量」
という)を推定する。
表Ⅲ-5.3 急傾斜地の高さごとの崩壊土量
6 危害のおそれのある土地等の設定
地形調査により得られた資料から急傾斜地の断面・平面形状を読み取るとともに,
現地調査や災害実績調査等により,危害のおそれのある土地等の区域を設定する。
6-1 危害のおそれのある土地の設定 1)設定条件
危害のおそれのある土地の設定条件は以下のとおりである(図Ⅲ-6.1 参照)。
※急傾斜地下端からの水平距離は崩壊により建築物に作用する力が通常の居室を有する建築 物の耐力を上回る範囲,及び斜面上端より比高 5m 下がった地点までの範囲とする。
図Ⅲ-6.1 危害のおそれのある土地等の設定概念図
第6章 危害のおそれのある土地等の設定■
6-1 危害のおそれのある土地等の設定
イ 傾斜度が30°以上で高さが5m以上の土地の区域
ロ 急傾斜地の上端から水平距離が10m(ただし急傾斜地の高さHが10m未満の ときはH)以内の土地の区域
ハ 急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内 の土地の区域(ただし,地形状況により明らかに土石等が到達しないと認 められる土地の区域を除く)
危害のおそれのある土地
傾斜度30°
以上
著しい危害のおそれのある土地※
2H(50mを超え る場合は50m)
10m
H<10mの場合は H 高さ H (=5m以上)
急傾斜地
2)設定手順
危害のおそれのある土地の区域の設定手順を以下に示す(図Ⅲ-6.2参照)。
(1) 急傾斜地の下端と上端の決定 (2) 急傾斜地の高さと傾斜度の決定
(3) 急傾斜地と急傾斜地の上方の土地で当該急傾斜地の上端から 10m(ただし急傾斜地 の高さ H が 10m未満のときは H)以内の土地,及び急傾斜地の下方の土地で当該急 傾斜地の下端からの距離が当該急傾斜地の高さの 2 倍(ただし 50m を超えるときは 50m とする)以内の土地の区域を「危害のおそれのある土地の区域」として設定す る。なお,区域は急傾斜地の上端と下端の起点を通る鉛直面と終点を通る鉛直面で 挟まれる土地の区域とする(図Ⅲ-6.3 参照)。
図Ⅲ-6.2 危害のおそれのある土地等の設定の流れ
図Ⅲ-6.3 区域の起終点の設定 急傾斜地の下端と上端の決定
急傾斜地の高さと傾斜度の決定
・ 急傾斜地自体
・ 上側・・・上端から 10m(ただし H<10mのときは H)以内
・ 下側・・・下端から 2H(ただし 50m を超えるときは 50m)以内 危害のおそれのある土地の設定
・ 移動による力と堆積による力により求まる範囲 著しい危害のおそれのある土地の設定
上端
右 下端
左
上端と下端の終点を通る鉛直面 鉛直面で挟まれる土地の区域
上端と下端の起点を通る鉛直面
解 説
(1)危害のおそれのある土地の範囲
危害のおそれのある土地の区域は図Ⅲ-6.4に示すとおり“急傾斜地”と“急傾斜地上 方の土地の区域”及び“急傾斜地下方の土地の区域”を合わせたものをいう。
1)急傾斜地
傾斜度が30度以上で高さが5m以上の土地の区域 2)急傾斜地上方の土地の区域
急傾斜地の上端から水平距離が10m(ただしH<10mのときはH)以内の土地の区 域
3)急傾斜地下方の土地の区域
急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の土地 の区域(ただし,地形状況により明らかに土石等が到達しないと認められる土 地の区域を除く)
図Ⅲ-6.4 危害のおそれのある土地の区域を設定する例 傾斜度 θ≧30°
高さH≧5m 急傾斜地上方の土地
急傾斜地
急傾斜地下方の土地
-危害のおそれのある土地設定前-
②急傾斜地の区域
2H(50m を超える場合は 50m)
上端
①急傾斜地上方の危害のおそれのある区域
下端
③急傾斜地下方の危害のおそれのある区域
10m(ただし H<10mのときは H)
-危害のおそれのある土地設定後-
傾斜度 θ≧30°
高さH≧5m
(2)危害のおそれのある土地の設定手順
危害のおそれのある土地の設定は次の手順により行う。
1)横断線の設定
「2-1-1 横断測線の設定」に基づき,横断線を設定する。
2)上端・下端の設定
「2-1-2 下端の設定」,「2-1-3 上端の設定」に基づき,横断線上に上端点,下端点を設 定する。
また,当該横断線における高さを上端点と下端点の標高として算出する。
3)急傾斜地の区域設定
急傾斜地の区域は隣接する 2 本の横断線の上端点,下端点に囲まれた範囲とする。
図Ⅲ-6.5 急傾斜地の区域設定(危害のおそれのある土地)
H≧5m
θ≧30°
急傾斜地の区域
横断線の設定
上端・下端の設定(高さの算出)
急傾斜地上方の危害のおそれのある土地の区域設定 急傾斜地の区域設定
急傾斜地下方の危害のおそれのある土地の区域設定
起点横断線
終点横断線
4)急傾斜地下方の危害のおそれのある土地の区域設定
急傾斜地下方の危害のおそれのある土地は,隣接する 2 本の横断線の下端と下端から急 傾斜地の高さの 2 倍(50m を超える場合は 50m)の地点に囲まれた範囲とする。
ただし,急傾斜地以外の土地及び地形の状況により明らかに土石等が達しないと認めら れる土地の区域を除く。
図Ⅲ-6.6 急傾斜地下方の区域設定
(危害のおそれのある土地)
2H(50m を越える場合は 50m) 急傾斜地下方の危害の
おそれのある区域
起点横断線
終点横断線
θ≧30°
H≧5m
横断線は地形変化点や対策施設の端部等を基本に配置しているものの,測線間の微地形 まで考慮していない。横断線のみを用いて設定を行うと,斜面の凹凸によって安全側また は危険側となってしまうおそれがある。このため,現地測量した下端線(点)を用いて測 線間を補完する区域設定方法とする。
具体的な設定方法を以下に示す。
① 下端点から下端線に対して二等分角方向に補完線を引く。
② 各横断線における危害のおそれのある土地(急傾斜地下方:2Hまたは 50m)の区域 延長を算出する。
③ 隣接する横断測線と下端点との距離及び上記区域延長から,補完線の下端点における
③ 隣接する横断測線と下端点との距離及び上記区域延長から,補完線の下端点における