第 4 章 分析と考察
4.3 イントネーションの型と意味用法
NS・NNS の「じゃないか」のイントネーションの型とその用法 の使用種類数を図 14 のように示している。NS も NNS も上昇調で
3 3 4
0 5
2
0 1 2 3 4 5
上昇調 平板調 下降調
図14 NS・NNS「じゃないか」イントネーションとその用 法の使用種類数
NS NNS
は、「述べ立て」「視覚・現実判断」「一般通念」という 3 種類の用 法が見られた。しかし、これは平板調・下降調の用法と比べ、NS では一番用法の少ないイントネーションであるのに対し、NNS では
種類の用法(「述べ立て」「視覚・現実判断」「一般通念」「仮定状況」
「否定疑問」)を最も多く使っているのに対し、NNS は平板調の使 用例が全く見られなく、一番少ない用法である。下降調の場合、NS は「述べ立て」「視覚・現実判断」「一般通念」「否定疑問」という 4 種類の用法が見られ、やや多いほうであるが、NNS は「述べ立て」
「視覚・現実判断」という 2 種類の用法だけ見られ、やや少ないほ うである。これは前述のように、NS は「じゃないか」の上昇調の 使用を回避するため、その用法の種類が少なくなり、一方、NNS は
「じゃないか」が疑問文・質問文ではないことを把握していないた め、上昇調では用法が一番多くなり、平板調の学習は上昇調・下降 調より難しいことから考えられる。
また、NS が平板調の使用も多い原因は、上昇調を回避する以外、
発話のスピード化ということが考えられる。蔡(1996)によると、
「これ、面白くない?」は「面白く」と「ない」の二文節が一まと まりとなって新しく特有の意味を持ち、アクセント核が消失し、一 文節化現象があり、会話のスピードが速くなると、文の音調の高低 を十分に発音しにくくなるからであるという。つまり、会話をスム ーズにさせるために、起伏の多い面倒な発音を避けた結果とも考え られる。これについては、アクセントに関わる研究であるにもかか わらず、イントネーションの平板調も起伏のないような音調であり、
NS は上昇調を回避する心理的要因の他、会話をスムーズに進めさ せたために、平板調をとっている、すなわち発音の利便性も考えら れるのではないかと思われる。
さらに、用法の内訳から考えると、まず「述べ立て」では図 15
図15 NS・NNS「述べ立て」イントネーションの使用率
図16 NS・NNS「視覚・現実判断」イントネーションの使 用率
18.5%
33.3%
11.1%
70.4% 66.7%
0.0% 0.0%
対し、NNS は下降調・平板調の用例が全て見られなかった。それに、
NS の上昇調の用例は非常に少ないが、NNS で観察された「一般通 念」のただ一つの用例は上昇調の使用であった。
以上のことから、NS は「述べ立て」「視覚・現実判断」「一般通 念」という用法を使用する際にいずれも上昇調の使用を避け、平板 調・下降調を捉え、特に「視覚・現実判断」では常に下降調をとる ことを示唆する。高橋(2008)によると、上昇調のイントネーショ ンを伴う否定疑問文には自分の意見を主張し、上昇調で発話するこ とによって肯定的な意味をより強調して相手に伝えることができ るとはいえ、本調査では、NS が「述べ立て」「視覚・現実判断」の ような自分の意見や感想そして価値判断などを表す場合も、あるい は「一般通念」という確信度が高いことを表す場合でも、「じゃな いか」を上昇調で発話することが極めて少ないことから、上昇調で なくとも自分の意見を表明することができ、肯定的なことでも強調 せずにし、相手に押し付けがましさを感じさせないようにすると考 えられる。しかし、このように、確信度の高い「一般通念」であっ ても肯定的に言わないようにすることは、自分の述べることに対し て責任を負うのを回避する嫌いもある。一方、NNS は「述べ立て」
「視覚・現実判断」では下降調の使用が比較的に多いものの、上昇 調の使用率がやや多いことから、一部の NNS が「じゃないか」を 疑問の意図として用いられると思われる。ただし、NNS の「一般通 念」の使用例は一つしかないため、たまたま上昇調になる可能性も あり、ここでは明確の示唆について言及できない。
最後に、「否定疑問」および「仮定状況」の二つの用法は、NS の
この節では、この二つの用法のイントネーションについて言及せず、
用法に関することとは 4.4.1 に譲りたい。